DOG DAYS 〜The Demise Hero〜 作:セラフィエル
第2話の冒頭部分、二学期ではなく、一学期です!!
ホントごめんなさい!
二学期の後が夏休みて。なんでそこ間違えたんだろう。
以後気をつけます・・・。
それでは第3話どうぞ。
青く澄み渡る空。
初夏の香りが風と共に僕の体を包み込む。
風に揺られ、軽やかな音を奏でる緑樹。
そして、
『『『待ちやがれッ、クソがあああああッッ‼︎』』』
僕を追い詰める地獄からの断罪者。
「なんでこうなるのさあああッ⁈」
遡ること10分前。
七海とベッキーと一緒に見学先の高校へ登校していた。
ただそれだけなのである。しかし、彼らにとっては万死に値することなのだろう。昨日僕を襲撃してきた男子生徒達が、再び僕を殺さんと鬼の形相で襲ってきたのだ。
しかも始めは一人だったのに、連絡を取り合ったのか、いつの間にか十人に増えていた。
そして、今に至る訳である。
「ううッ、なんでこんな目に・・・。」
体力に自信のあるシンクでも、全力で長距離を走ればさすがに疲れてくる。
しかし、後ろの悪魔達は一切疲れの色を見せず追いかけてくる。さっきより確実に距離が縮んできている。
このままでは捕まるのも時間の問題だろう。
「くっ・・どうすれば・・。」
そう思案を巡らせていたせいか、横道から出てくる人影に気付かなかった。
「ッッ‼︎」
とっさにブレーキを掛けるが勢いを殺しきれず、そのまま人影にぶつかってしまった。
「痛てて・・。」
強く打った尻を摩りながら、前を見ると、男子生徒が僕と同じように尻餅をついていた。
「あっ、ごめんなさい!大丈夫ですか⁉︎」
慌てて声を掛けるが、その男子生徒はさして気にする様子もなく立ち上がり、尻を払った。
あれ?この人どこかで見たことあるような・・・。
その男子生徒は僕を一瞥すると、呟いた。
「アイツらに追われているのか?」
「へ・・・?」
まさかこの人、今現在僕が置かれている状況を把握している⁉︎それなら話が早い!
「うん、そうなんだ。できれば助けて欲しいんだけど・・。」
男子生徒は少し思案顔をすると、僕の手を引っ張った。
「こっちだ。隠れろ。」
「ありがとう!」
心からの感謝を込めて、礼を言い、示された物陰へ体を隠す。少し窮屈だが、今は我慢しよう。隠れられるだけでもありがたい。
体を隠し切った時、ドタバタと悪魔達が走る音がした。
『おう!クズ神!ここに吐き気を催すほど腐り切った顔の黄色髪を見なかったか⁉︎』
酷い言われようだ。
「ああ、そいつなら向こう側へ走って行ったぞ。」
『あっちか‼︎行くぞおめえらッ‼︎』
『おおおおおおッッ‼︎』
ドダドダドダドダ・・・。
どうやら行ってくれたみたいだ。
助かった・・!生き残った・・!
そうだあの子にきちんとお礼を言わなきゃ。
物陰から出ると、その子は既に去ろうとしていた。
「まっ、待って!」
僕が言うと、その子は立ち止まった。
仕方ねえな感が思いっきり出ていたが。
その子は黙ってこちらを向き、初めてはっきりとその顔を見ることができた。
ボサボサの黒髪、少しやつれた頬、目の下には濃い隈がその存在を誇張している。
・・・この子、大丈夫かな・・?
何より彼を病んでいるように見せているのは、その瞳だ。
先程、目が合った時、感じたのだ。
言い知れない何かを。
底知れないどす黒い蟠りを。
彼の瞳に光は無かった。
ぽっかりと空いた穴の中に虚無が広がっていた。
次の瞬間には、僕は目を逸らしていた。
それ以上見ていたら僕まで飲み込まれそうな気がしたのだ。
「なんだ?」
僕が何も言わないので、彼は抑揚の無い声で聞いてきた。
「あっああ、・・さっきは助けてくれてありがとう。君、名前は?」
「・・・和斗、黒神 和斗。」
「クロガミ カズト・・・。かっこいい名前だね。」
「・・・フン。」
無愛想に彼が鼻を鳴らす。照れてるのか、それとも、不機嫌なのかわからない。なかなか感情が読み取れない。
「俺も・・・お前に聞きたいことがある。」
「ん?何かな?」
「お前はアイアンアスレチックの優勝者だったな?」
「うん。そうだよ。」
「そうか、ならお前は・・・その立場から何を見た?」
「へ・・・?」
なんだ?一体どういう意味だ?
「えっと・・何を見たっていうのはどういう・・?」
しかし、和斗は少し目を伏せて、僅かに首を振った。
「いや、分からないならそれでいい。それじゃ、俺はこれで。」
そう言って、和斗は僕に背を向け、歩いて行った。
その背中はどこか悲哀に満ちているようだった。
分からない。
アイツは一体何なのだ。
なぜ俺はアイツを助けた?
どんなに考えても、その答えは一向に出てこなかった。
「クソッ。」
まただ。またこの感じだ。
アイツのことになると俺の中の何かが騒ぎ出す。
一体何なのだ。この感情は。
分からない。嗚呼、きっとおかしくなっているのかもしれない。
誰か、俺に答えをくれ。
そんな俺を嘲笑うかのように、重々しい風が吹き抜けた。
それから数分後、僕は無事学校に辿り着き、七海とベッキーに合流した。
「大変だったね、シンク。」
ベッキーが慰めを込めて声を掛けてくる。
その声を聞いただけで、殺されそうで傷ついた心が癒されていく。
ああ、やっぱりベッキーといると落ち着く・・。
「でも、一緒に登校しただけで狂戦士化するんだったら、シンクのフロニャルドでのモテモテハーレムっぷりを見たらどうなるんだろうね。」
「やめて七海。考えただけで、寿命が削られるから。」
もし、彼らにそのことが知られたら・・・多分、魔王サタンですら子犬のように泣いてしまうだろう。
そして、僕は肉片すら残されず葬られ、末代まで呪われるだろう。
何が何でも秘密にしなければ。
「モテモテハーレムのところは否定しないんだね・・・。」
ベッキーが呆れたように呟く。
いや、まあ・・そこそこモテていると思うから・・ね?
「そういやさ、シンク。」
「ん?なに?七海。」
「よくあんな鬼のような連中から逃げれたね。」
「ああ、それには訳があって・・。」
僕は黒神 和斗と出会ったことを話した。
「ふぅん。そうなんだ〜。いい人だねその人。」
「ホントあの時は心から感謝したよ。でも・・・。」
「「でも?」」
「その後、妙なことを聞かれたんだよね。」
「妙なこと?」
「うん。確か、『お前はアイアンアスレチックの優勝者という立場から何を見た?』って。」
ベッキーと七海の頭上には見事なクエスチョンマークが浮かんでいた。
「うーん、なんかすっごい意味深な言葉ね。七海は分かる?」
「うん、ラマーズ法は三回で十分だと思う。」
「七海、思いっきり明後日の方向を向いてるよ。」
「分からないからって、意識を放棄しちゃ駄目だよ。」
七海にとってはそれほど難問らしい。
「まっ、いっか。また機会があれば聞いておくよ。」
「うんそうして。多分、次は七海の頭がショートするから。」
「もうっ、バカにしないでよっ。」
七海が頬をぷくーっと膨らませる。
その様子がなんだか可笑しくて僕とベッキーは声を合わせて笑った。
この時、僕はまだ気づいていなかった。僕の心を引っ掻くものの正体を。
目の前に迫る体躯。その大きな体で僕を止めようと立ち塞がる。このまま進めば確実に止められるだろう。だが、
「フッ‼︎」
前屈しながら、軸足に力を込める。そのままターンをして相手の脇を高スピードで走り抜ける。シューズが体育館の床と摩擦し、キュッ!と小気味好い音を奏でる。そして、上方のゴールに向かってジャンプ。
ガタンッ!
ボールは吸い寄せられるようにゴールに入った。
『よっしゃああああッッ!』
チームの歓声が響き渡る。僕達は、体育の授業でバスケを楽しんでいた。
「さっすがシンク!ナイスシュート!」
七海がハイタッチをかましてくる。
「七海もナイスパス!」
これで三連勝だ。確か次が最後のチームのはず。
『よし、それじゃあ最後の試合するぞ!』
教師の声が響き渡る。僕は気合を入れるために頬を二回パンッパンッと叩いた。
よし!気合注入完了!どんと来い!
折角三連勝したんだ。最後も勝って終わらせる!
十分後。試合終了。
あまりに呆気なく終わった。なぜなら、三十三対四で僕達の大勝利だったからだ。
あまり言いたくはないが、理由は恐らく彼だろう。
クロガミ カズト。
彼のプレーは惨憺たるものだった。パスは全て取り落としていたし、シュートも全く別方向に投げていた。
その度に周りから野次が飛び、罵られていた。どうやら周りからは疎遠されているようだ。
今朝もクズガミと呼ばれていた気がする。
彼は今みんなから離れた場所で一人汗を拭いている。しかし、彼なりに努力はしていたはずだ。たとえ今は酷くても努力を続ければ、必ず上達する。それは僕が今までの経験から学んだ事実であり、教訓だ。
それを伝えるべく、僕は彼に近づいた。
「クロガミ君。」
声をかけると彼の背中が微かに動いた。しかし、今朝のように振り向きはしなかった。その背中からは彼の瞳と同じものが感じられた。
「気にすることないよ。僕は君が一生懸命頑張ってたって分かるから。今は下手でも、努力を続ければ必ず上手くなる。努力は報われるんだ。だからーー」
手を差し伸べる。
「一緒に、頑張ろ?」
今朝感じた彼の悲哀はこれが原因なのだろう。
一生懸命頑張ったのに悲しみを感じるなんて、残酷じゃないか。それならば・・・手を差し伸べるべきだろう。一緒に頑張れば、大丈夫だ。僕もそうだったから。
がーー
彼は体を震わせると、僕の手を払いのけた。
そして、目が合った。
瞬間、背筋が凍りついた。心臓を鷲掴みにされるようだった。
その瞳には、虚無ではなく、紛れもない憎悪が渦巻いていた。
今回では若干、七海がおバカキャラになってます。
七海ファンの方、ごめんなさい。
読んでて気づいたのですが、
聖耶君いねぇな。
出したいけど、出せません。
それはなぜか?
私に文才がないからです。すまない、聖耶君。
君の出番は必ず設けるから、今は我慢してくれ。
次回はもっと大きく物語が動く予定です。
それでは第4話でお会いしましょう。