DOG DAYS 〜The Demise Hero〜   作:セラフィエル

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どうもセラフィエルです。
今回はいつもよりやや長めになっております。

ハッピーハロウィンですね。
うちの学校ではみんなトリックオアトリートを連発していました。
正直、どうしてそこまで盛り上がれるのかと不思議に思っています。
では、本編をどうぞ。


第8話 最前線

戦が始まってから、二時間が経過。

戦場のボルテージは最大にまで膨れ上がっている。

あちこちから、進撃する兵士達の雄叫びや歓声が上空まで聞こえてくる。

しかし、その熱気もレベッカの心までは燃やせなかった。

「ハァ・・・クー様、まだかなぁ・・・。」

パスティヤージュ公国第一公女クーベル・エンシェンバッハ・パスティヤージュ。

私がこの世界で一番大好きな女の子だ。

フロニャルドに来たら、思いっきり抱き締めたいと思っていたのだが、クー様は今緊急の仕事によってまだ戦には参加していない。

仕事だから仕方がないとは思うけれども、やはりクー様がいないとやる気が出ない。

「ハァ・・・クー様ー・・・。」

と、その時だった。

目の端にキラリと何かが光ったのだ。

まさか、紋章砲⁉︎

迎撃体勢を取るが、すぐに気付く。

紋章砲はもっと速いはず。それに、光線の光というよりは何かに光が反射して光っているといった方がいい。

あれは・・・

 

「レェェェベッカァァァァッ‼︎」

 

この声は・・・!

「クーーー様ーーーッッ‼︎」

猛スピードで接近してきた光の正体は操縦機のついた空飛ぶ絨毯に乗ったクー様だった。

その手にはパスティヤージュの宝剣<天槍クルマルス>が握られている。

恐らくあれに光が反射したのだろう。

しかし、今はそんな事はどうでもいい。

クー様に会えたのだから。

箒型の<神剣メルクリウス>から思いっきり、クー様の方へ跳ぶ。

そのままクー様の小さな体に抱きつく。

クー様の柔肌から伝わる温かさとパスティヤージュ特有のモフモフしっぽが私の感覚を刺激し、言いようのない喜びと心地良さが、心さえも包み込む。

「クー様ーー!」

「レベッカーー!会いたかったのじゃーっ!」

クー様も私の胸にスリスリと頬を寄せ、喉を鳴らす。

ああ、ここが私のパラダイス・・・♡

それから数十秒間お互いにナデナデスリスリし合った後、ようやく体を離した。

するとクー様はシュンと首を垂れた。

あれ?まだスリスリしてたいのかな?

しかし、クー様の口から出た言葉は意外な言葉だった。

「レベッカ・・・ごめんなさいなのじゃ・・・。」

「え・・・?」

「必ず迎えに行くと約束したのに・・・迎えに行けんかったのじゃ・・・。」

そう言って、体を震わせるクー様。

 

ああ、なんというか・・・クー様らしい。

仕事なのだから仕方がないというのに、この子は小さな約束ですら、必ず守ろうとする。

そして、それを守れなかったら自分の不出来として自分を責める。

それがクー様の長所であり、短所でもある。

私はクー様の頭を優しく撫でた。

「いいんだよ、クー様。お仕事だから仕方がないって私分かってるから。それに、お仕事を頑張ってるクー様も大好きだし、ずーっと会えないわけでもないしね。だから、元気出して。」

クー様はパァッと顔を輝かせ、大きく頷いた。

「うむ!やっぱりレベッカは優しいのじゃ〜♡」

そう言って、さらにスリスリしてくる。

良かった。元気なクー様の方がよっぽどいい。

「そうだクー様。ずっと気になってたんだけど、お仕事ってどんなお仕事なの?」

戦を置いてまでしなくてはならない仕事だったのだ。どういう内容かは聞いておいた方がいいだろう。

するとクー様は気まずそうに目を逸らした。

「た、大した事ではないのじゃ。その・・・パスティヤージュ内でちょっとした騒動が起きただけなのじゃ。だから、レベッカはなんにも気にすることではないぞ。」

明らかに目を泳がせながら答えるクー様。

恐らく、いや、ほぼ間違いなく嘘だろう。

気になる所だが・・・聞かないでおこう。クー様ならきっといつか話してくれるに違いない。

今は戦をクー様と楽しまないと!

「分かった、クー様がそう言うなら信じる。さ、行こうクー様!みんな待ってるよ!」

「うむ!」

嬉しそうに呼応するクー様。

だが、その笑顔に一瞬陰がよぎったのは気のせいだろうか?

 

 

一方その頃、戦場最前線では。

 

「はぁぁぁッッ‼︎」

雄叫びをあげながら、棒型の<神剣パラディオン>を真一文字に薙ぐ。

途端、周囲に爆風が巻き起こり、壁を作っていた敵を紙切れのように吹き飛ばす。

そして、辺りに目を配り、一瞬で状況を確認・把握する。

 

最前線ということもあり、ガレットとビスコッティ、そしてパスティヤージュの兵士が入り乱れている。押されてはいないようだが、押してもいない。ここを突破するかしないかで戦局は大きく傾くだろう。

何としてでも押し切らないと。

 

幸い、最前線にいるガレットの主力はジョーヌ、ベール、ノワールのジェノワーズ、バナード将軍、ゴドウィン将軍だ。

ジェノワーズはエクレールが、バナード将軍はエクレールの兄であるロラン騎士団長が相手をしている。

となると、必然的に僕はゴドウィン将軍を相手にするはずなのだが・・・。

どうやらゴドウィン将軍は僕を避けているようなのだ。

先程会ったので、いざ勝負と思いきや、ゴドウィン将軍はガレットの騎士団員に僕の相手をさせ、どこかに行ってしまった。

 

ムゥ・・・あのゴドウィン将軍なら絶対に突っ込んでくると思っていたんだが・・・。

何か僕を相手にできない理由があるのだろうか?

 

思案する僕に新たな敵が襲いかかるが、パラディオンを一閃させ、打ち倒す。

 

その時だった。

突如、強烈な気を感じた。

咄嗟に地を蹴り、横に大きく跳ぶ。

コンマ数秒後、さっきまで僕がいた場所を紅蓮の巨鳥が奔り、焦土と変えた。

今のは・・・!

焔の鳥が飛んできた方に振り返る。

そこには、巨大な戦斧を担ぎ、獰猛な笑みを浮かべたレオンミシェリ閣下が獅子王の如く仁王立ちしていた。

そして、その後ろにはガレットの大軍隊。

 

「・・・ッ!」

なるほど、そういうことか。

一瞬の内に理解した。

恐らくガレット側も、ここが正念場だと感じたのだろう。

三国の力が拮抗しているこの最前線にガレットのほとんどの兵力を投入し、力尽くで突破するつもりだろう。

そして、ガレット最大戦力であるレオ様がこの大軍隊を率いることで、より確実に、より迅速に、作戦を遂行する。

だからこそ、ゴドウィン将軍は僕を避けたのだ。

レオ様の手で僕を潰すために。

普段、参謀を担うバナード将軍が最前線にいるので、この作戦を考えついたのは領主であるガウルに違いない。

 

くっ、ガウルの奴・・・・!

どうする?このままレオ様の相手をすれば、ゴドウィン将軍に突破されてしまう。

かと言って、レオ様を野放しにしていては、こちらに大損害が出るのは想像に難くない。

 

「シンク!」

その時、エクレールが僕のすぐ後ろに、背中を向けたまま現れた。

「エクレ、まずいことになったね。」

「全くだ。このままでは突破されるのは時間の問題だ。」

この答えからして、エクレールも今の状況を理解ているようだ。

「・・・どうする?ユキに出て来てもらう?」

ユキこと、ユキカゼ・パネトーネはビスコッティの隠密筆頭で、今は後ろの方で、漏れ出てきた敵兵の相手をしてもらっている。ユキは僕らの大きな戦力なので、最前線に来てもらえば何とかなるかもしれない。

しかし、僕の提案を親衛隊隊長はすぐに却下した。

「いや、あれだけの大軍隊が投入されれば、最前線を抜ける敵の数も確実に増える。ユキがこちらに出てくれば、本陣の守りがかなり薄くなってしまう。ユキと私が入れ替わるということも考えられるが、移動が完了するまで、本陣もここも手薄になる。今のこの状況では、移動している暇は無いだろう。」

「た、確かに・・・。」

さすがは親衛隊隊長。頭の回転の速度が違う。

 

だが、それではどうすればいいのか。

答えは、後ろから聞こえてきた。

「シンク。お前はレオ閣下の相手をしろ。ゴドウィン将軍とジェノワーズは私に任せておけ。」

「で、でも、それだとエクレの負担が・・・。」

ジェノワーズもゴドウィン将軍も強敵である。

この四人を相手にするのはさすがに無理があるだろう。

しかし、エクレールは不敵な笑みを浮かべ、

「心配はいらない。言ったろう?私は勝つために強くなったのだと。それに、レオ閣下とまともに打ち合えるのはお前とダルキアン卿くらいだしな。ダルキアン卿は今、ビスコッティにはいない。だから、お前にしかレオ閣下を倒す可能性はないんだ。お前が行け。行ってレオ閣下に勝って来い。」

 

「エクレ・・・。」

エクレールは僕を信じてくれている。

だからこそ、僕に行って欲しいのだ。

あのエクレールのことだ。きっと内心では、自分が行きたいと思っているのだろう。

しかし、その思いを抑えてまで僕に、行けと言っているんだ。

ならば、その思いを無駄にすることはできない。

 

「ああ、行ってくるよ。そして、必ず勝つ!」

「そうだ。それでこそ我が国の勇者だ。シンク、この戦、勝って終わらせるぞ!」

「おう‼︎」

こうして僕らはそれぞれの戦場へと駆け出した。

 

 

和斗は戦慄していた。

最前線を目指し、敵を斬り伏せていたところ、突然前方から巨大な焔の鳥が突っ込んで来たのだ。

間一髪躱したものの、さっきまで周囲にいた敵が一瞬にして焔に呑まれ、地面は真っ黒に焦げてしまった。

「なっ・・・!」

さすがにこれには恐怖を隠せなかった。

尻餅をつき、しばらく動けなかった。

 

だが、その恐怖が引いていくと、和斗の心は高揚した。

今のを放った奴はかなり強い。

その強い奴を倒せば、きっと俺は自分を変えられる。

そして、姫様にも認めてもらえる。

 

その時、近くにあった空中のキューブに一人の女性が映し出される。

銀の長髪をたなびかせ、巨大な戦斧を担いでいる。

実況者の興奮した声が聞こえる。

その実況によれば、先程の焔の鳥はどうやらあの女が放ったらしい。

 

あいつだ。あいつさえ倒せば・・・!

 

興奮する俺の頬に汗が滴り落ちた。




和斗君、今回は出番少なめでしたね。
この戦が終われば、ぐっとストーリーが進むのですが・・・
戦は、あと二・三話くらい続くかと。
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