DOG DAYS 〜The Demise Hero〜   作:セラフィエル

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どうもセラフィエルです。

今回はいつもより遅くなってしまいました。
そして、今回もやや長めになっています。
もう少し早めに投稿するつもりだったのですが・・・。
なかなか難しいものです。


第9話 邪魔

大きく深呼吸をする。

微かに焦げた匂いが鼻腔を刺激する。

シンクと別れてから数分後。

エクレールは待っていた。あの人が来るのを。

 

そして、あの人のことだ。

自分の行く手を阻む者がいたらどうするだろう。

しかも、それが急を用する時であったら。

 

「・・・ッ!」

眼をカッと見開き、大きく跳躍する。

そのまま宙返りをし、後方に勢い良く着地する。

さっきまで私のいた所を見ると、そこには、私の頭二つ分はあるであろう鉄球が半分ほど地面にめり込んでいた。

そして、その鉄球に繋がっている鎖の先にはーーー

 

「まぁさか、貴様がここにいるとはなぁ。」

 

ドスの効いた低い声。

黒い頑丈な鎧に身を包み、巨大な鎖斧を携えた巨漢。

ガレットのゴドウィン・ドリュール将軍だ。

 

「残念だが、今は急いでるんでなぁ。できれば、そこを通してもらいたいのだが?」

「・・・・嫌だと言ったら?」

ゴドウィン将軍は泣く子も黙るであろう獰猛な笑みを浮かべた。

「その時は・・・力尽くで通してもらうしかあるまい。」

そして、大斧を担ぎ、姿勢を低くする。

その双眸からは強烈な気を放ち、その巨体は途轍もない威圧感を生み出している。

 

私の目的はゴドウィン将軍の阻止。

だが、対処せねばならない事がもう一つある。

 

あの三馬鹿のことだ。すぐに私を追ってここに来るはずだ。

 

予想は現実となった。

「や〜っと見っけたで。エクレはん。」

「さっきは見失いましたけど、もう逃がしませんからね。」

「・・・・今度こそ決着をつける!」

私の右方に、西方独特の喋り方をし、王冠のような形をとる大斧を担ぐジョーヌ・クラフティ。

左方に、聖ハルヴァー王国特有のウサギ耳に装飾の施された弓を構えるベール・ファーブルトン。

そして後方には、小柄な体躯にナイフを幾本も構え、眠そうな双眸には闘志の炎が燃えているノワール・ヴィノカカオ。

ガレットの名物、ジェノワーズの三バカである。

 

「ふん。逃げる気など、さらさらない。貴様らこそ、恥ずかしい肢体を晒す前に逃げた方が良いのではないか?」

「うっさい!全裸んなるんはそっちの方や!」

「そうですよ!こっちはガチムチも入れて四人なんですからね!」

「おい、そのガチムチって俺のことか?」

「・・・・その通り。才色兼備の完璧な私達と頭に鉄が詰まってるガチムチが相手だからあなたに勝ち目はない!」

「おいゴラてめぇら、さりげなく人をバカにするんじゃぁねえ!」

 

「「「・・・・・」」」

 

「『え?』って顔すんじゃねぇ!俺が本当にバカみてぇじゃねぇか!」

 

「そんなことより!ちゃっちゃと始めさせてもらうで!エクレはん!」

ジョーヌの掛け声でジェノワーズが一斉に紋章を展開する。

ゴドウィン将軍も舌打ちしつつ、紋章を展開する。

私も二振りの短剣を構え、神経を集中させる。

 

互いに睨み合うこと数秒。

ジェノワーズとゴドウィン将軍が動いた。

 

四方から放たれる紋章砲。

それらを跳んで躱す。紋章砲がその威力を爆発させ、地面を抉り、土埃が私を覆う。

同時に私も紋章を展開し、力を込める。

身体の内側から熱いものが両腕へと流れていく。

 

土埃が晴れると、真下にはジャンプしたジョーヌが迫り来ていた。

その目は勝利を確信している。

 

ふん。舐めるなよ。

 

「輝力武装【光輪剣 双牙】‼︎」

私の両腕を覆うように輝力の巨腕が形作られる。

その手には巨大な二振りの剣。

 

「セアァァッッ‼︎」

光輪剣が淡い燐光を放ちながら振り下ろされ、空中のジョーヌを吹き飛ばした。

 

フワリと地に降りる。

燐光を纏うその姿は妖精を彷彿させた。

触れるだけで切り刻まれてしまいそうな修羅の妖精。

 

「覚悟しろ。お前達は私が倒す。」

 

 

 

エクレールがゴドウィン将軍達と戦闘を開始した頃、シンクはレオ様と対峙していた。

 

「自ら来てくれるとはありがたい。今から探しに行こうと思っておったところじゃ。」

眼前のレオ様に緊張は一切感じられない。

だが、そこから放たれる気はジリジリと僕の肌を焼いていた。

「ご冗談を。さっきの紋章砲、完全に僕狙いでしたよね?」

レオ様はフフッと微笑んだ。

「フフフ、主の目立つ髪がちらと見えたのでな。試しに撃ってみたんじゃ。残念ながら外したようじゃがの。」

「いえいえ、あと少し気付くのが遅かったら、今頃丸焦げになってましたよ。」

 

レオ様は顎を撫でながら、さらに愉快そうに笑った。

「そうかそうか。まぁ良い。あそこでくたばってしまっては面白くないからの。さて、前置きはこれくらいにして、そろそろ始めようか。」

そう言い、肩に担いでいた<グランヴェール>を身体の前に構えた。

 

僕も<パラディオン>を構え、意識を集中させる。

 

刹那ーー

 

レオ様の姿がブレた。

常人ならば絶対に捉えられないスピードで僕に肉薄する。

しかし、僕には見えていた。

レオ様の足の動きが。

そして、グランヴェールが斬り上げる腕の動きが。

身体を僅かに右に逸らし、攻撃をやり過ごす。

すかさずパラディオンをレオ様の脚へと突き出す。

だが、レオ様は僕が攻撃するコンマ数秒前に既に動いていた。

グランヴェールを持ち前の腕力で引き戻し、柄でパラディオンを弾く。

 

そして、僕とレオ様の間に火花が弾けた。

目にも止まらないスピードで攻防が繰り広げられる。

躱して、攻撃して、躱して、攻撃して、防いで、攻撃する。

数秒で幾度もの攻撃を打ち出され、その度に躱し、防ぐ。

そして、その数だけ僕も攻撃する。

 

傍から見ると、その闘いはもはや次元を超えていた。

互いの腕が霞んで見える程のスピード。

それを視認できるのは輝力によって輝く互いの得物が描く軌跡だけ。

その軌跡は二人を包み、赤と緑の膜を作り出していた。

攻撃がぶつかり合う度に周囲に衝撃波が生じ、それに巻き込まれた兵士が次々とダマ化する。

 

これ程の業を成し遂げることができるのも輝力のおかげである。

輝力によって自身の身体能力を強化しているのだ。

攻撃を視認するための動体視力。

凄まじいスピードを生み出すための脚力と腕力。

それが【輝力補正】(ブレイブリビジョン)である。

非常に便利だが、その分、扱うのはかなり困難だ。

輝力を均等に分配するので、相当の集中力が必要になる。

そして、長時間使い続けると逆に輝力が乱れ、能力が落ちてくる。

恐らく、使いこなせるのはシンク、レオ様、七海、ダルキアン卿だけだろう。

 

速い。

強い。

【輝力補正】(ブレイブリビジョン)を駆使していてもレオ様の猛攻は防ぎきれない。

時折、頬や腕を、大威力を秘めたグランヴェールが掠める。

その度に冷や汗が吹き出す。

だが、集中力だけは落とさない。

少しでも集中力が落ちれば、一瞬で持って行かれるだろう。

 

しかし、レオ様の闘い方には弱点がある。

それは、輝力に少々頼りすぎているのだ。

つまり、レオ様の方が疲れやすいということになる。

 

だからこそーーー

レオ様の猛攻が一瞬だけ、ほんの一瞬だけ乱れたのも当然と言えば当然だろう。

 

そして、シンクの眼はそれを見逃さなかった。

 

(ここだッ!)

パラディオンを振るい、グランヴェールを弾く。

そして、パラディオンから右手を離し、拳を握る。

右手に炎を纏わせる。

 

「はぁッ!」

気合を溜めた一撃が無防備になったレオ様の懐へと吸い込まれていく。

いけるッ!

 

そう思ったその時だった。

レオ様の目が僕の後ろを見て、驚愕に見開かれる。

?一体何が?

 

そして、右の側頭部に衝撃が奔った。

 

「ぐぁッ・・・」

横へと飛ばされ、地面に叩きつけられる。

くそっ、あと少しだったのに!

一体誰が⁉︎と思い、前を向く。

 

そこには予想外の人物がいた。

 

「俺の獲物に手ぇ出してんじゃねぇよ、イズミ。」

そこには僕を嫌悪と憎悪の眼差しで睥睨する黒神 和斗がいた。

 

 

「なっ・・・黒神君!どうしてここに⁉︎後ろにいるはずじゃ・・・⁈」

和斗には最前線は危ないので、後方で敵の相手を任せていたはずだ。

なのに・・・どうして?

「どうしてって、決まってんだろうが。この女をぶっ倒すためだ。」

まさか・・・!

和斗は分かっているのだろうか。

レオ様の強さを。その凄まじさを。

「幾ら何でも無理だ!その人は君に勝てるような相手じゃない!」

すると、和斗は僕にも聞こえるようにギリリと歯を噛み締めた。

「るっせぇんだよ!俺がどうしようと俺の勝手だ!テメェにゴチャゴチャ言われる筋合いは無ぇ!それともなんだ⁉︎

俺みてぇな底辺は上を目指しちゃ駄目だってのかぁ⁉︎」

そう言い、和斗はレオ様に向かって駆け出した。

その目は、僕を怒鳴りつけたあの時の目にそっくりだった。

 

和斗の剣がレオ様に振るわれる。

だが、遅い。レオ様にとってはスローモーションにも等しいだろう。

レオ様は攻撃を弾き、和斗にグランヴェールの腹を叩きつけた。

和斗の身体が後方へ吹き飛ばされる。

 

急いで和斗の元に駆けつける。

「黒神君!大丈夫⁉︎」

「うるせぇ!テメェに心配される程ヤワじゃねぇ!」

そして、和斗は立ち上がり、再び駆け出した。

 

しかし、果敢に攻撃を繰り出すも、レオ様はそれを軽くいなし、和斗を吹き飛ばす。

あまりにも絶対的な差だ。

あれじゃ勝てる訳が無い。

 

・・・あのバカ野郎!

 

気づくと僕も駆け出していた。

 

和斗にグランヴェールが振るわれる。

それに僕はパラディオンを打ちつけ、弾く。

和斗の目に怒りが灯る。

「イズミ!テメェは引っ込んでろっつったろ!」

「ダメだ!君には勝てない!自分の持ち場に戻るんだ!」

「んだとゴラァ!ぶっ殺すぞテメェ!」

和斗は僕を押し退け、レオ様に剣を振るう。

しかし、弾かれ、体勢を崩す。

ダメだ・・・!話にならない!

 

僕もレオ様にパラディオンを振るう。

和斗の攻撃をいなしていたため、ガラ空きになるレオ様の右半身。

だが、あともう少しで当たるというところで、和斗が再び僕を殴りつけた。

「ッッ!」

体勢を立て直し、前を向くと、黒い影が目の前に迫っていた。

「なっ⁉︎」

避けきれずに黒い影と激突する。

 

それはレオ様に吹き飛ばされた和斗だった。

「イズミこのクソ野郎!邪魔すんじゃねぇって何度いったら分かんだ!」

クソ野郎って・・・僕は和斗を助けようと・・・!

流石に僕もカチンときた。

「そっちこそ!折角もうちょっとだったのに何てことしてくれるんだ!邪魔なのはそっちだ!」

「あんだと⁉︎」

「やるか⁉︎」

ガンをくれあう僕と和斗。

 

その時だった。

四方と頭上に紋章が現れたのだ。

「「⁉︎」」

この紋章は・・・!

レオ様の方を見ると苦笑いをしていた。

「すまんの。ワシもヌシらの戯れに付き合っとる暇はないんじゃ。二人まとめて散れ。」

そう言い、レオ様が指を鳴らした。

 

瞬間

 

目の前が眩い光に包まれた。

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