【完結】TS〜朝目が覚めたら万能執事長はダメイドになってました〜 作:ラットマンΣ
「クリス、そっちいってもいい? 閉められちゃったし寒くて……」
「あ、ハイ大丈夫ですよ! シャワー変わりますね! 私は風呂のお湯張りながら湯船に入ってます」
いや、ハイ大丈夫ですよ! じゃねぇよ馬鹿! 無能執事! ダメイド! 何ちゃっかり一緒にお風呂入ろうとしてるんだよ色欲の塊が俺は! 違う違う違う! コレはあくまで作戦を考えるための一時的時間稼ぎであって下心とか全然ないし、それに蒼葉邸の風呂は最大三人入れる設計になってるから何の問題もない! いや問題しかないけど!
「ありがとうクリス」
「いえいえ」
顔は見れない、と言うか見たら色々見えちゃうから全力で後ろを向いている。
確かにアキルと俺は恋人同士だ。
お互い好き合ってる。
けど、こう言うのはまだ早いと思うの!
せめて後2年くらいはダメだろ!
……ふぅ、クールになれクリス。
幸い今は女性の身体、最悪の事態は避けられてる。
とにかくつっかえ棒をどうにかしないと……
「てい! 」
アキルが気づかない程度に脱衣所側の扉を蹴る。
コレでうまく外れてくれたらいいんだが……
カタンと音がする。
やった! 外れた! これで!
「逃がさないわよ、クリス? 朝の恨みここで晴らすわ」
聞こえてきた声の主はケイトさんだった。
即座にまたつっかえ棒を扉にかける。
「ちょ、何してるんですか!」
「何って朝飯の仕返し。けど、私は優しいからクリスにご褒美をかねた仕返しをプレゼントしてあげたわけ。精々喜びなさい」
「何がご褒美ですか! こんなの緊急事態でしかないですよ!!!」
「そうね。精々面白おかしい顛末を期待してるわ!」
以降ケイトさんからの返答はなかった。
……マジであの人狂ってやがる。
「クリス! お風呂沸いたよ! 寒いでしょ? 一緒に入りましょ?」
「は……えっと……ちょっと待ってくださいね」
絶対にアキルの方は見ちゃダメだ。
見た瞬間色々終わる気がする。
上手いことアキルのことを見ないで浴槽に浸かる。
あったかい……こんな状況じゃなかったらもっと安心して浸かれるのに……
「クリス、さっきから私のこと見ないね」
「?! いえ……それは……」
「私は別にクリスになら……その……見られてもいいよ?」
思考がバグる。
本人の許可出たんだし見ちゃえよと悪魔が囁く。
対する天使は見ないのは失礼見なさいと囁く。
よしお前ら黙れ。
理性で己をがんじがらめにする。
無心の境地に達するのだクリス・フォスターよ。
「……えい!」
瞬間柔らかいものが背中に押しつけられか細い手が私を抱きしめる。
「……! やっぱりちょっと恥ずかしいかもだけど堅物のクリスにはコレくらいしないとダメよね」
あ、あぁ……
ダメだ考えるな柔らかい考えるなスベスベしてる考えるなあったかい考えるな!
こう言う時の対処は……
「? クリス、どうしたの? ……あ、気絶してる」
クリスは最後の力を振り絞って自ら自我を断ち切った。
それが彼に出来る唯一の抵抗だったからだ。
「まだ、早かったかなぁ……けど、クリスの温もりは感じる」
そんなアキルの言葉もクリスには届かない。
外で爆笑しているケイトの笑い声も届かない。
彼の精神は深い闇の底に消えていったのだから……
追記
後に起きたクリス(パジャマ)はケイトに対して一週間自分の作った料理しか食べさせないと言う罰を実行することにした。