非単一な短編まとめ   作:非単一三角形

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 今日も今日とて頭カラッポ系オリジナル短編。
 テンプレ転生にはテンプレ転生の良さがある。スルメか炙りエイヒレ的な。

 ……誰かに似てる? 気のせいデスヨ。



チャンスの神様育毛希望

 

 

「―――魔法の存在が一般的な世界でお願いします!」

 

 

 

 わたくし花の女子高生、()()十六歳。

 このたび、何やら神様的な誰かさんがミスった的な何某により死んでしまい、そのお詫びとして望みの世界に転生させてもらえることになりました。ひゃっほい。

 

 ……説明が雑すぎ?

 別に良いじゃない。どーせ転生前の現代ぐだぐだなんて興味無いでしょ皆々様。

 どこにでもいるJKがどこにでもある事故的なアレでアレしようとしてるアレですよ。ええ。

 

 

 まあ今日日(きょうび)ありふれたアレとはいえ、私にとってはまさに降って湧いた幸運。

 だがしかし、ここで私は油断しませんぜ?

 

 求めたのはめくるめくファンタジー世界への転生、何より外せないのは『魔法』の有無。

 とはいえここで『魔法』の存在だけを求めると、『隠された秘儀』だとか『ウン十年の修行で云々』みたいな、そりゃまあ一応存在してるけど、な世界を宛がわれる危険がある。

 

 だからこその『一般的』念押し。これなら曲解の恐れもないでしょう。

 ふっふっふ……小中学生の頃から弛まず読み続けてきた各種ラノベのおかげで、この手の質問に対する脳内模擬訓練(シミュレーション)はバッチリなのさ。

 

 ……妄想癖? チャンスを逃さない女と言ってくれ。

 

 

 高貴な家の生まれだの、美少女顔だのは強請りません。

 「大人になれたら奇跡」みたいな不遇の生まれじゃなきゃ何でも良いのです。

 

 成り上がりー、とか下剋上ー、とかは自分でやろうとは思わないからね。読むには好きだけど。

 あんな見事に立ち回れるのは、それこそ物語の主人公の特権ってやつですよ。

 

 

 それに、あんまり多くを求めない方が神様にも印象良さそうだし。

 転生理由に相手の瑕疵があっても、奥ゆかしさを忘れないのが現代人の美学なのさ!

 

 

 ───えーと……テンプレ的ファンタジー系異世界。

 生まれはどこぞのご令嬢。

 魔法の才能マシマシチート有り、イメージ次第でどこまでも! なにそれ理想的!

 

 ───他に要望? いえいえ十二分です!

 準備はOK? いいですとも!

 

 

 それではいざ、第二の人生へ───!

 

 

 

        ◆ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「―――○×△、×□!」

 

 

 …………うん、やらかしたぜ☆ 何言われてるか全く分っかんね★

 いやあ、『翻訳機能』は頭から抜けてたわ。チャンスを逃さない女(笑)。

 

 うん、まあ、問題ない。言葉なんてこれから覚えていけばいいんだ。うん。

 なんたって私、()()()()()()()()()()。むしろこの状態こそが自然ですともさ。

 

 

「×△□、○○×」

 

 目の前に居るのは、多分「ご飯ですよー」的な事を言ってくれてる世話役さん。

 母親という可能性を考えないのは、服装が完全にメイドさんのそれだからだ。

 生まれは御令嬢って話だったし、きっと今「お嬢様」とか呼ばれてるよ。いやー、参ったね!

 

 

 転生にも色んなスタイルがあるけど、個人的には新生児スタートが一番無難だと思うんだよね。

 憑依とか記憶覚醒系だとどうしても『それまでの自分だった人』はどうなったん? って辺りが気になるし。私じゃない『私』が心の奥に居る!? とか言い出されたら最早ホラーじゃんよ。

 

 

 何よりこれなら、大きくなってから暫くは神童ムーブが出来る!

 ……『才子』を経て『ただの人』になるかどうかは今後の努力次第ということで。

 

 しかしその努力にしてもヨチヨチ歩きも出来ない頃から始められるんだし、転生特典的な諸々を抜きにしたって同世代に対する圧倒的優位は揺らがない。

 赤子の身体に十代後半のメンタルってだけでも正直特典レベルのアドだよね!

 

 

 ……女子高生のメンタルで強制赤ちゃんプレイだけはキツイけど。まあ、そこはしゃーないわ。

 

 

 

 

 ―――さて。転生直後の興奮もそこそこ落ち着き、お腹も満腹。

 ()()を始めるには最適なコンディションだ。早速実験と行こうじゃないか。

 ……何をって? そりゃあ勿論、特典(チート)として貰った魔法の才能の検証からですよ。

 

 この世界には間違いなく『一般的に』『魔法が存在する』。

 

 そして実は既に、身体の中に巡る不思議な『何か』の存在を感じている。

 血管か、神経か、はたまたこの世界の人間に備わった器官か。全身に張り巡らされた『それ』を巡っている『何か』の存在を。

 

 

 ……これを感じ取れる事か、それとも動かせるようなこの感覚こそが特典なのだろうか?

 まあその辺の考察は後回し後回し。『ある』と分かってるんだからそれで良いでしょ。

 

 とはいえ、いきなりで成功するとは流石に思っていないが、いざ―――

 

 

 

「……○×?」

 

 …………()()()()()

 

 本当に、なんか出たよ。空気砲というか、気弾的な何かが。

 正面の真っ白な壁に当たって、ミシッて音が鳴りましたな。

 

 

「○○×……?」

 

 そして、私と壁とを交互に見て「気のせいかな?」みたいな顔をしている世話役さん。

 そうだね。出たのは実体の無い風か何かだったし、気のせいだと思うよね。

 

 ふむう……ならば、これならどうだっ!

 

 

「…………×△□!? ××□□っ!!」

 

 ()()()()()()のは水魔法。

 虚空からドパっと現れた水流が壁に向かってく様を想像すれば、まさにその通りの景色が現実となってそこに現れた。

 

 ふふ……壁に向かってバケツをひっくり返したわけでもあるまいし、これだけ広範囲を濡らした壁があれば、彼女の気のせいと判断される心配はあるまいて。

 ……何でこんな事したのかって? そりゃあ、なるべくデビューは華々しくしたいじゃない。

 

 

 どうですか? まだ見ぬお父様にお母様。

 あなた方の娘は、生後数日でこんな魔法を使える文字通りの神童でございますよ―――

 

 

 

        ◇ ◆ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 ───明けて翌日。

 めでたく『魔法封じ』的な腕輪が装着されましたとさ。

 

 ……うん、まあ、そーよね。冷静に考えて、赤ん坊がこんな魔法使うとかね。

 ぶっちゃけ手先の器用な猿が拳銃持ってるようなもんですわよ。そりゃこーなりますわ。

 

 

 あの後、慌てた様子の皆様に鈍色の腕輪を嵌められた途端、身体の中にあった不思議な力―――推定『魔力』が殆ど感じられなくなりました。

 身体の中にあることはギリ分かる、多分魔力操作能力を抑制する感じかね?

 

 ……くっそ、こんなことなら最初は誰も見てない時にこっそり練習するんだったぜ。

 折角の赤ん坊転生の優位性(メリット)ががが……

 

 

 ……いや、待てよ?

 

 抑制されているといっても、全く動かせなくなってるわけじゃない。

 ならばこれってむしろ……養成ギプスを装着して貰ったようなものでは?

 この状態で魔法が使えるぐらいに頑張れば、能力は飛躍的に向上……すなわちコレは無双キャラ爆誕のフラグなのでは?

 

 

 

 ―――私は生来魔力が強すぎてね。この腕輪はそんな私の魔力を抑えるために、生後数日の頃に付けられた物なのだよ。

 さて、それを外すというのがどういうことか……答えは君達の身体で味わってもらうとしよう!

 

 

 

 …………いいね!

 めっちゃイイネ! 王道だね!

 よーし、『普段は力を押さえられてる系最強キャラ』に、私はなる!

 

 

 

        ◇ ◇ ◆ ◇ ◇

 

 

 

 ───そんな決意の日から数ヶ月。

 わたくし現在、腕輪が次々と強化版に(バージョンアップ)されていく日々を送っておりますです。

 

 ……こっそり頑張ってるのバレてるのかなー? 一応夜中にやるようにしてるんだけど。

 あともう少しで魔法が使えそう、ってなるたびに腕輪が次の段階に進むというね。

 

 

 くっそお……あの日の水魔法以来、まだ一度もちゃんとした魔法にまで至れてないぞ?

 魔力操作能力はガンガン鍛えられてるのが分かるし、日々目標には近付いていると思うけど……たまにはドーンと魔法打ちてえよぉ。ちっくしょお。

 

 

「×○△、×□□?」

 

 ……あと魔法のことばっかり気にしてて、言語習得が一向に進まない問題がね。

 いや仕方ない。これは本当に仕方ない。誰だって興味が他に向いてたらこうなると思うの。

 

 というかまだまだ生後数か月だし、こんなもんだよね?

 せいぜい呼ばれたことに反応し始めるぐらいが自然だよね?

 ……ま、魔法がちゃんと使えるようになったら本腰入れるから。絶対に。うん。

 

 

 

 ―――と、いうわけで今夜からちょっとアプローチを変えてみることにする。

 名付けて『何とか魔法使おうぜ大作戦』。……頭悪い名前だって? ノリだよ、こーいうのは。

 

 具体的にはどうにかしてこの『魔法抑制腕輪』を外す方法を考えるのだ。

 兎にも角にも、ここを越えないと他のアレコレに身が入る気がしないもんでね。

 

 

 さて、新生児の肌をも傷つけないすべすべ金属のコヤツには、物理的な鍵が使われている。

 その鍵を持っている人物は厳めしい顔の男性―――多分お父様―――であり、忙しいのか滅多に私の前に現れることはない。例外が腕輪の更新時。

 ……うむ。鍵の入手は厳しいと言わざるを得ないなコレは。

 

 しかして何かにぶつけて壊せるような材質にも見えぬ。まあ、そもそも赤ちゃんの周囲にそんな硬い物やら尖った物を用意するはずがない。誰だってそーする。私もそーする。

 仮にそんな物があったとして、赤ちゃんの膂力でどーにかなるわけがない。

 ……うむ、腕輪自体の破壊についても無理と判断するしかないか。

 

 

 残る方法は……魔法で開錠する? いや、それが使えないから困ってるんじゃないのかと。

 魔法を使えるようにするために魔法を使う。うーん、見事な袋小路。

 

 いーや、こちらは可能性が全く無いとは言えないぞ。

 以前使ったような風魔法や水魔法的なことは出来なくても、ごくごく僅かな魔力を動かすことはできているのだから。

 

 それすなわち、あの時のような規模の魔法じゃなければ現状でもイケるってことじゃないか?

 例えば、そう……この腕輪の()()()()()()()()()()()()()()()()()ような魔法とか。

 その難易度はともかく、必要な魔力量は滲み出るような()()で足りるのではなかろうか?

 

 

 ……自分でもなかなか辛い理屈だとは思うが、何とか頑張るしかない。

 ここさえ超えれば私には、神様公認の栄光の日々が待っているのだ。

 

 魔法はイメージ、女は根性、あとは根気と勢いよ!

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 ───そんな忍耐と努力の日々を続けること更に数ヶ月。

 私は、今…………夜空の風になっていた。

 

 

 

「(ひゃっっっはーーーーーっ!!)」

 

 

 

 なお、赤ん坊の喉じゃ叫べないので、雄叫びは脳内再生である。

 満天の星空をバックに、高速飛行する新生児、それが私。……なんつう絵面だコレ。

 

 

 転移魔法で部屋を抜け出し。

 重力魔法で空に舞い上がり。

 力操作魔法で加速度を付け。

 空間魔法で周囲を快適空間に。

 

 

 やっべえ、完全に無双キャラだわ。バランス崩壊だわ。

 腕輪(ギプス)で鍛えられた魔力操作と現代人のイメージ力が合わさって最強に見える。

 というか新生児でこれってマジやばくね? チーターやこんなん! いいぞもっとやれ。

 

 

 あれからも腕輪は次々強化換装、しかして極めて僅かな魔力での開錠を実現した私には無力!

 日々の努力の傍ら、夜中にこっそり腕輪を外しては流れ星とランデブーする毎日ですぜ。

 

 外出中は分身魔法で身代わりを作っておき、朝になる頃には寝床に戻って腕輪を付け直す!

 これなら夜遊びがバレる心配も無い! うむ、完璧ではないか!

 

 

 いやー……これは完全に勝ち組人生始まったな。

 

 あ、美少女に育つかどうかはまだ分からんか? いや、お父様とお母様らしき人達を見る限り、その心配も要らないかな。お二人とも絵に描いたような美丈夫、美婦人ですもの。

 その血をひいた私が美少女にならない筈がないってもんですぜ。

 

 

 

 …………よし、そろそろちゃんと言葉を覚えようかな。

 

 翻訳魔法的なものが作れたらなーとか思って色々やってたけど、流石に分かんないモノを分かる言葉にするイメージは無理があったよ。

 具体的な想像できないものは難しい。これ私の弱点なのかもなあ。

 

 ま、その辺はこれからこれから。

 前世の年齢になるぐらいまでに完璧美少女を目指せば良いのさ。

 

 

 何たって、私の第二の人生はまだまだ始まったばかりなのだから!

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◆

 

 

 

 ―――その式は、ひっそりと行われた。

 

 

 基本的に貴族の家では、子供がある年齢を越えるまで、その誕生を外には漏らさない。

 この世界において、生まれて間もない幼児が()()()()のは珍しいことではないからである。

 

 故に、公爵家当主たる彼もまた───未だ赤子であった()()()()を執り行ったのは屋敷の一室。

 列席者も身内を除けば、ごく数人の使用人のみに留めることを選んだのだった。

 

 

 その顔ぶれは主に、亡くなった娘の世話に関わっていた者達だ。

 即ち娘を死なせてしまった面々……しかし公爵は彼らに責を問おうとはしなかった。

 何故なら皆が皆、()()()()()()()今日まで尽力してくれたことを理解していたからだ。

 

 

 彼の娘が信じられない規模の魔法を放ったのは、生後数日の事。

 それを目の当たりにした乳母は、迅速に幼児用の魔封じの腕輪を手配、装着させている。

 

 それはまさしく()()()()()()()()対処。しかしどういうわけか用意した腕輪では娘の魔力漏出を抑えきれていないようだと、公爵が報告を受けたのがその数日後のことだった。

 

 

 その後、少年用、青年用、果ては罪人用の腕輪を用意したにも関わらず、彼の娘から魔力漏出を抑えきることは叶わなかった。

 腕輪の性能を上げれば上げる程、まるで何者かの意思が働いているかのように、漏出量が腕輪の性能を僅かに上回る量へと引き上げられていったのだ。

 

 それから公爵は自身に出来るあらゆる伝手を頼り、高品質の魔封じ材を集めさせた。

 努力を嘲笑うかのように引き上げられていく魔力漏出量に半ば心を折られながらも、娘のため、()()()()()()()()と祈りながら。

 

 

 娘に付けられた乳母たちもまた少しでも漏出を抑えられるようにと、()()()()()()()()()()()()魔封じの魔法を使用し、掛けられた期待に応えんと奮闘を続けた。

 その甲斐もあってか、ここ数日は()()()()()()()()()漏出は完全に止めることが出来ていたとの報告を受けていたのだ。

 

 ……朝になる度に止まっていた漏出が再び始まったと報告され、朝など来なければと昇る太陽に恨みを吐いたのも彼の記憶に新しい。

 

 

 

 そして先日。遂に()()()は来てしまった。

 娘から漏出した魔力が、その『()()()()()』を越えてしまう瞬間が、だ。

 

 

 棺の代わりに用意されたのは、小さな壺。

 その壺の中にすっぽりと収まってしまった、灰。

 それが、彼の娘がこの世に遺した唯一の物だった。

 

 

 『生涯魔力量』―――神によって生まれながらに定められた、人が一生の内に扱える魔力量。

 それは、残量の確認こそ可能だが、少なくとも人の世に補填する術は存在しない代物。

 

 神から許された、各々が『魔法』という名の『奇跡』を起こせる権利の総量。

 許された分を超えれば、その代償は全身が灰と化す末路。

 

 誰もが子供の時分に親から、周囲から教えられる、この世界における絶対の(ルール)

 しかし、赤子であった娘にそれを伝える術があろう筈もなく───

 

 

 乳幼児一人分の灰が納まった小さな壺を前に、彼は胸中で自問する。

 何か、どうにかして、娘を救う手立ては無かったのだろうかと。

 

 

 生後数日の娘が魔力漏出を起こしたのは、そのような体質だった、と考える他ない。

 しかし魔力の動きに最も影響するのは、当人の意思だ。

 もし娘自身に己の魔力を抑えるような思考をさせる事が出来たなら、漏出を止められる可能性もあったかもしれない。

 

 

 ああ、しかし―――と、そこまで考えたところで彼は自答する。

 

 そのような『思考』を、乳幼児に持たせることなど出来た筈もない。

 生まれたばかりの赤子の思考など、言葉の通じぬ獣と同じなのだから。

 

 

 ―――『生まれながらに明朗な思考能力を持ち、かつ言葉が通じたならば』

 頭に浮かんだ益体も無い仮定を、彼は濡れた瞳で振り払うのだった。

 





 チャンスは一瞬。幸運の女神には、前髪しかない(seize the fortune by the forelock.)。───by ギリシャ神話(諸説あり)

 ……後ろ髪も生やしてもろて。是非に。

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