非単一な短編まとめ   作:非単一三角形

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 うわー せかいのききだー たいへんだー()


 うだうだプロット練ってたら浮かんでしまった益体も無いネタの一斉供養。
 すなわちいつものアレ。



世界の危機(お徳用)

 

 

 ───人の世から『神秘』が忘れられて久しき何時かの時代。

 

 

 灰色に覆われた地表の上、無数に屹立する灰色の箱。

 その隙間を縫うように地を駆けるは鉄の獣。

 

 灰色の世界に生きる人々は皆、空を忘れたかのように地を向き歩く。

 何かに追い立てられるように、或いは何かに囚われるように。

 それでいて……目の前の世界を『不変』と信じ切った瞳で。

 

 嗚呼、果たして彼らは想像できるのだろうか?

 己を取り巻く世界に、目に映る景色のすぐ裏側に、薄氷の如き実態が鎮座している事実など。

 

 己が信じる世界が、ある日突然消失するかもしれない。そんな未来を。

 忘れられた筈の『神秘』が、突如目の前に現出するかもしれない。そんな可能性を。

 

 嗚呼、果たして。

 盲目的に信じた彼らの世界に、そのような異変が訪れたとして。

 

 彼らは果たしてそれらを、現実と認めることができるのだろうか───

 

 

 

「…………なんて、ちょっと退廃的過ぎるかな?」

 

《一人で長々と何を語っとるのじゃ其方は》

 

 

 手に慣れた学生鞄を背負い直した帰り道。

 ぐだぐだと流した思考に応えたのは、俺にだけ聞こえる呆れたような呟き一つだった。

 

 

 ───俺の名前は虎福(とらふく) (じん)。齢は今年で十七歳。

 特筆するような肩書なんか無い、どこにでもいる男子高校生……だったのはつい先日までの話。

 

《それとも厨二乙、とでも言っとけば良いのかの? 無駄に飾り立てた表現を散りばめおって……まったく今度は何に影響されたのやら》

「おいおい、お前がそれを言うのかよ……亜奈座(あなざ)姫様?」

 

 そんな俺の頭に響いてくるのは、どこか年季の入った口調を使う女声。

 ……俺の頭がおかしいわけじゃないぞ? 彼女は確かに実在する人間だからな。

 ただまあ、ちょっと……『この世とは別の世界に』という冠詞が付いてくるわけだが。

 

 

 ───遥かな昔、とある理由で『現世』と分岐してしまった『可能性の世界』。

 そこは俺達が生きる『現世』では遥か昔に忘れ去られた『神秘』を今に残した幻想の都。

 ……要はファンタジー要素が消えなかったifの地球。そこに存在する日本……にあたる国こそが彼女にとって本来の居場所というわけだ。

 

 並列に存在し、しかし決して交わるはずの無かった二つの世界。

 けれどひょんな事から彼女と俺には───彼女にとっては不本意な事に───切っても切れない繋がりが出来てしまってから今日で丁度一週間になる。

 

 

《……嗚呼、何故に儂の魂はこんな男の子の身体などに引っ掛かってしまったのじゃ。気が付けばやれ『ねっと』だ『てれび』だと日がな一日遊び惚けて……こんな有様では我が肉体を取り戻し、悪しき『隠匿寮』の者共に荒らされた国の復興などいつの話になるやらのお……》

「……そのネットやTVを嬉々としてせがんできたのは何処の誰だよ」

 

 人の頭で嘆き節を漏らすお姫様にジト目で反論する。……言っとくが俺は止めたぞ?

 彼女の国、というか『可能性世界』とやらがまあまあな危機に陥ってるらしい状況でこんなことやってて良いのかよ、ってな。

 

 溢した愚痴の通り、彼女の肉体は彼女本来の世界に今も置いてきているらしい。

 『隠匿寮』───要は悪事に手を染めた陰陽師、的な連中の謀った国家転覆により、色々あって追い詰められた当代国王の一人娘である彼女が、己の魂のみを異世界へと送る秘術を用いて助けを求めて『現世』へと転移、現在は魂のみの状態で俺の身体に寄生、もとい居候中……といった構図らしいのだが。

 

 

「今はまだ時間があれど、いずれは王家の秘術を研究した彼らがこの『現世』にも手を伸ばす筈。それまでに今の状態でも対抗できるように俺の身体で力を使う方法を考える……と言って一週間が経過したわけですが果たして進捗は?」

 

 まあそんな事情を聞かされたとなれば俺とて一般日本人にして模範的現代人。求められた助けに応じるのもやぶさかではない。

 そこで悪しき野望を抱いてやってくるだろう陰陽師達との対決に向け、正しき陰陽術、的な力を彼女から教わっていた、訳なのだが。

 

《…………ええい、分かっておるわい! だからこうして自省しとるじゃろうが!》

「……あ、『こんな有様』って自分の事だったのかよ。いや分かり辛いわ」

 

 悲しいかな、異世界生まれ異世界育ちのお姫様の心を鷲掴んだは現代サブカルチャー。

 型にハマったスイーツの如く、その魅力に憑りつかれた彼女の指導は実にそぞろ。

 未だ基本術的なアレが多少出来るようになっただけなんだが、本当に大丈夫なんですかねコレ?

 

 

《……というか別に良いじゃろ其方の場合。だって(わらわ)の術に拘る必要も無いではないか》

「え? いやまあ、それは───」

 

 

 

〈───その通りだよ! (じん)君!!〉

 

 

 

 微妙にしょんもりした姫様の声を押し退けるように響いたのは、溌剌とした少年声。

 脳内で腰に手を当てた姿を幻視させる声の主は、俺の心の裡に存在する先住民だ。

 

〈『可能性世界』の陰陽師? そんなの『鏡器(ボク)』と仁君なら十把一絡げさ!〉

「……いやまだ戦うどころか見たことも無いんだからな? そいつらが今まで戦った『鏡魔』より強かったらどうするんだよ、カガミ?」

 

 …………俺の頭がおかしいわけじゃないぞ? こいつも間違いなく実在する人間なんだからな。

 まあ、そこにはやっぱり『この世とは別の世界に』という枕詞が付属するわけだが。

 

 

 ───『現世』に在る全て、遍く何もかもを写し取り形成された『鏡世界』。

 二つの世界にて同時に生を受け、お互いを写し取った『鏡像』……それが彼、カガミなる少年と俺との関係を表す肩書なのだそうで。

 

 互いに目と鼻の先に存在し、しかし決して重なり合うはずの無かった二つの世界。

 けれどひょんな事から俺達に───主にあちらの世界の都合で───打っても割れない繋がりが出来てしまってから今日で凡そ二週間になる。

 

 

「確かにお前便利だから使ってるけど……武器扱いされることにもうちょっと疑問とかねーの?」

〈無いね! 仁君に出会って分かったのさ。コレこそがボク達のあるべき姿だったんだって!!〉

 

 あちらの世界に行われる儀式、的なサムシングにより『鏡像』たる二人は融合を果たす。

 これにより鏡世界の人間は『鏡器』と呼ばれる武具となって現世の人間側の心に間借り、もとい居候する形になるそうな。

 

 ……それで鏡世界側に何のメリットが? と誰だって思うだろう。俺も真っ先に聞いた。

 すると返った答えは、二つの世界に迫る危機に対抗する為だとのことで。

 

 

〈世界の歪みから生まれて、二つの世界を滅ぼそうと暴れる存在こそが『鏡魔』だよ? そんな、ちょっと野心を抱いただけの人間と比較になるわけないじゃないか、バカだなあ〉

《ぐ、ぐぬ……正直反論出来んのじゃが……何故じゃろうな、凶悪な陰陽師共にやられて後悔する此奴の姿が無性に見たくなっておる……》

「……それ被害を受けるの俺だからな? 変な呪い掛けたりとかマジでやめろよ?」

 

 ある日突然、我々こそが世界の意思、なんて主張を掲げて鏡世界に現れた怪物『鏡魔』。

 凡そ人間の文明というヤツを目の敵に襲い掛かって来たソイツらに、鏡世界の人間は当初混乱、その後は徹底抗戦に移ったそうだが……最早定番というべきか並の兵器では碌に傷も付けられず。

 そのため遥か古の時代に存在した秘術───件の儀式に踏み切ることになったそうな。

 

 まあそんな事情を聞かされたとなれば俺とて一般高校生にして規範的文明人。求められた助けに応じるのも人の道というやつだろう。

 そもそも別世界の出来事とはいえ互いに鏡合わせにある世界、大きな破壊が起これば俺達が住む『現世』も全く影響無しとはいかないというのだから、初めから選択肢など無かったのだが。

 

 

〈いやあ、仁君に出会えたキミは本当に幸運だよね。ボクの鏡世界のついでに、つ・い・で・に、キミの国も助けて貰えるんだからさあ?〉

《…………今に吠え面かかせてやるからの》

「……取り敢えず人の頭ン中で喧嘩しようとするな。家主って言うとなんか語弊ありそうだけど、他人のスペースを借りてる身ってことをもう少し───」

 

 

 

【───仰る通りです。(あるじ)どの】

 

 

 

 険悪ムードになりかけた二人をバッサリ切り捨てるように響いたのは凛とした女性声。

 甲冑の音でも聞こえてきそうなお堅い口調の彼女もまた、俺の心内に控える住人の一人だ。

 

(それがし)も己の生きた『灰世界』をこそ救いたいという想いが無いでもない故、その諍いも理解こそ及ぶが……それにより主殿を煩わせるなど言語道断。恥というものを知らぬではあるまい?】

《〈…………〉》

「ま、まあそのぐらいにしといてやれよ、炭香(すみか)? 二人も反省してるだろうからさ」

 

 ………………俺の頭はおかしくないぞ? 実在してると言ったらしてるんだ。

 まあ、もう言うまでもなく『この世とは別の世界に』という補足が必要になるわけだが。

 

 

 ───『現世』に比べて少しばかり戦乱の世が続き、いつしか一切の彩が失われた『灰世界』。

 誰もが止め時を失った戦火の中に生まれ、最早記憶どころか記録にすら遠い平穏を取り戻す為に剣を取った者……それが炭香という少女を示す足跡であるようだ。

 

 無数に隔てられた壁の先、万が一にも交わるはずの無かった二つの世界。

 けれどひょんな事から俺達に───全くの不運、とも言い辛い経緯で───切ろうにも切り難い繋がりが出来てしまってから本日をもって約三週間となる。

 

 

【そも何れの世界の事変にも、主殿に関わらねばならぬ縁など無かったであろうに……言い出せば某の身にも返る故、慙愧の念に耐えませぬが……】

「おいおい、誰の世界だって望んで窮地に陥ったわけでも無ければ、好きで俺達の世界に関わったわけでもないだろ? ……炭香の場合は特にさ」

 

 戦乱に暮れる『灰世界』の中でも特に終末思考に染まっているという宗教集団『焔滅教』。

 その教祖が何やら怪しげな儀式により、遂に人知を超えた力を手にせんとしている、という噂を聞き付け、数少ない仲間と共に教団に殴り込んだというのが彼の世界における彼女の最後の記憶。

 

 次に気付いた瞬間、彼女の目の前にあったのは虚空に刻まれた巨大な傷跡。

 そこに生物の、生きた世界の気配を感じると共に、そこへ徐々に伸びゆく教祖(らしき怪物)の指先を見た彼女は、自身の状態を省みる時間すら惜しんで穿たれた穴に飛び込んだのだそうだ。

 

 

「その時は自分の身体が既に無い事すら気付かないぐらいに夢中だったわけだし、そのお陰で俺達こっちの世界の人間も少なからず助かったわけだし……なにより、炭香がこうして『現世』の……平和な世界を見る機会が生まれたことを、不幸な遭遇なんて言いたくねーよ」

 

【っ、主殿……!】

《……まあ、それについてはのぉ》

〈だよねえ……〉

 

 果たしてその瞬時の見立て通り、教祖とやらは『現世』の存在を認識してしまっていたらしく。

 彼女の魂が俺の心の中に入ってからの三週間、既に何度か『焔滅教』を名乗る輩が『現世』にて迷惑行為に───世界渡航時に魔力的な力を粗方消耗するらしい───勤しむ姿を目撃している。

 

 そんな連中を人目に付かないようにコッソリとしばき倒しては、魔封じ的な処理をして交番前に転がしておくまでが俺の役目。

 身元不明住所不定かつ意味不明な理論を声高に叫ぶ末期患者の対処に追われる警察の皆さんには大変心苦しくは思いますが、これも世界の為と思い職務を全うして頂きたい所存でございます。

 

 

「……というかどの世界に関しても、何も知らないまま、何の力も無いまま危険に晒されるよりは遥かにマシだっての。それに、退屈な日常に辟易してた俺にはお似合いの役目───」

 

 

 

『───大変だフォビア! 街に怪人が現れたフォビアー!!』

 

 

 

《〈【「…………は?」】〉》

 

 

 …………四度(よたび)、頭に響いた声は俺の心内の住人……ではない。取り敢えず。

 コイツは今、俺の自室に居る筈で。これは念話的なアレを飛ばしてきたわけで……いやしかし。

 

 

「……お前、昨日までそんな尖った語尾のキャラじゃなかっただろ。何してんだ」

『え? いやその……アニメに出てくるオイラのポジションには特徴的な語尾のキャラが多いし、オイラにも必要なのフォビアかなって……』

 

「……お前がニチアサアニメに影響されんなよ!? なんだその逆輸入!?」

 

 

 ……………………俺の頭はおかしくなってない。実在してるんだ、コイツも。

 もう『この世とは別の世界に』という但し書きも要らないぐらいだろうが。

 

 

 ───『現世』……とは特に関係なく単に近くにあるらしい『夢世界』。

 そこで世界浸食を目論む『悪夢団』なる集団と戦う人間を選び、力を与える……とかなんとか、そういう感じの役目をしてるらしい存在、天使ドリム。

 

 

 …………何で選んだのが俺みたいな男子高校生なの? そこは小中学生女児の役目じゃね?

 初対面でそう聞いた俺が、『そんな幼気な子供を怪人と戦わせる気か? 何考えてんだお前』と正論をぶつけられたのが約一ヶ月前。……そりゃそうなんだけどさあ。

 

 

「というかなんでその流れでソレ(フォビア)を選んだ!? もっと他にあっただろ!?」

『…………遠い何処かから求める叫びが聞こえた、気がしたんだフォビア』

 

「確実に電波か幻聴だ!! もっと(ラブ)とか平和(ピース)とか無難なの選んどけ!!」

『え、そういう趣味なの? うわぁ……』

 

「真顔トーンで返すなよ!? そこで恐怖症(フォビア)選んだヤツが!!」

 

 

《……の、のお、其方?》

【心中はお察し致しまするが……】

〈街に現れたっていう怪人に対応するのが先じゃない?〉

 

「『ハッ!?』」

 

 煮立った頭に響いた三人の声に意識を切り替える。

 ……どうにもこの天使からの連絡は危機感が薄れるから困るんだ。

 

 怪人とか『悪夢団』とか先入観が働いてゆるふわな絵面が浮かんでしまうが、こいつらの目的は割とマジな意味での()()()()

 街に現れたってんなら、どうせまた都市部の上下水道に異世界製の文字通り悪夢みたいな毒でも流す気だろ! そうはいくか!

 

 

「ドリム! 今すぐ怪人の場所を俺の頭に送れ!!」

『了解だフォビア!』

 

「炭香! 俺の身体に憑依を!!」

【心得ました、主殿!】

 

「カガミ! 分かってるな!!」

〈勿論だよ! 『鏡器』変転!〉

 

「亜奈座! は、えっと……」

《…………大至急何か考えるわい》

 

 

「……よ、よし! 準備完了だな! それじゃ早速───」

 

 

 

 

{───やぁ、マイマスター。『裏世界』から悪魔の顕現をお知らせするよ?}

 

 

 

 

 …………。

 

 

《…………》

〈…………〉

【…………】

『…………』

 

 

 

 

 

「……………………多いよ!!?」

 

 

 

 俺は叫んだ。

 

 今更と言えば今更な、だけど叫ばずにはいられなかった諸々を込めて。

 

 

 

「多いよ! 多いんだよ!! そりゃ俺も初めは少なからず興奮したけども! してたけども!! 普通は一人に一つか多くても二つまでだろ!? 何で全部俺に集約してんだゴラアァァッ!!?」

 

《〈【『{……いや、儂/ボク/某/オイラ/吾輩に言われても……}』】〉》

 

 

 

「そうなんだけどね!? 基本皆偶然の遭遇だもんね!!? というかそれ以前にどんだけ危機に晒されてんだこの世界!! 世界の危機が大渋滞じゃねえかぁっ!!?」

 

《た、たまたま時期が重なっただけ、じゃよな?》

〈う、うーん……〉

【他の世界の事など考えたこともありませぬ故……】

『…………あ、怪人が』

{お、悪魔と合流しそうだな。双方が争えば周囲の被害がどうなるか分からぬぞ、マイマスター}

 

 

 

「だぁー! もう、分かってんだよ!? 暴れる前に纏めて叩きのめしてやるあぁぁっ!!」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「―――ほぉ、現れたか。いやはや情報通りの出で立ちだな」

「なっ……!? 俺を知ってるのか!?」

 

 

 念話によるナビゲートの元、辿り着いたのは街の交差点。

 そこに堂々と立ち尽くしていた一人の男……もとい男性型怪人の第一声は、まるで俺がこの場に駆け付けてくるのを待っていたかのような言葉だった。

 

「これは異な事を。怪人とて同僚や、部下上司といった関係はあるのだよ。仲間がやられた相手について情報を集めぬわけもなかろう?」

「…………確かに」

 

 俺が『夢世界』由来の魔法少……青年的な力を得てからもう一ヶ月だ。

 撃退してきた怪人の数もそれなりになるし、あちらで脅威認定されてもおかしくはない、のか。

 

 しかしこの怪人、やけに余裕……というか泰然とした空気を漂わせてやがる。

 ……これは今までのようにはいかないかもしれないな。気を引き締めないと。

 

 

「まあ、とはいえ……こちらだけが君の事を知っているというのも座りが悪い。ここはこの世界の流儀に合わせて私も名乗るとしよう」

 

 そう言いながら男性怪人は、なにやら大仰な手振りで立ち姿を改め始める。

 一度広げた両腕をゆっくりと合わせ、片手はそのまま二本の指を立て顔の前に、もう片方の手は緩く作った拳をみぞおちに添え、それからニヤリと吊り上げた口で揚々と言い放った。

 

 

 

「我の名は『悪夢団』が幹部の一人……にして『()()()()()()()ならびに『()()()()()()()、怪人アクドーイである! いざ、尋常に───」

 

「───いや兼任してんのはおかしいだろうがあぁぁっ!?」

 

 

 

 俺は叫んだ。

 

 再び。

 

 喉も涸れよとばかりに。

 

 

 

「…………それ君が言うの?」

「でしたねすみません!!?」

 

 が、男性怪人の言葉で即座に頭を下げる側になっていた。……これ俺が悪いのか?

 いや、でも、俺の場合はそれぞれの世界がこの世界と繋がったことで生まれた縁が偶々重なっていったってだけで……悪役側(そっち)が世界間で役職重ねてるのとは訳が違くない?

 

「己という前例があるのだ。似たような事が起きたと考えればそう理解できぬ事でもあるまいに」

「え、あ、まあ、それは……えぇ……?」

 

「それに、だ。……我としても君のような存在は有難いのだよ?」

「……はあ?」

 

 困惑に染まっていた頭に男性怪人の意味深な笑みが向けられ、少しずつ別の疑問が湧いてくる。

 ……有難いだと? 幾つもの世界由来の力を同時に使う俺は、敵にする側としては厄介な相手に違いない筈だ。こいつはいったい何を考えて───

 

 

「何しろ君一人と対峙すれば───三つの役職のノルマを一気に果たせるのだからね」

 

「……そういうありがたさなの!? ていうかノルマ制!?」

 

 

「いやはや、これは久し振りに今日は定時で帰れるかもしれないな」

「突然の社畜発言!? 定時とかあるのかよそもそも!?」

 

 困惑がどんどん別ベクトルの疲労に変えられていく。そういう話術か? だったらすごい。

 気力が急降下する俺を尻目に、取り出したハンカチで汗を拭く男性怪人……もうサラリーマンのオッサンにしか見えねーぞオイ。

 

 

「さあ、もう疑問は良いだろう? 何やら出鼻は挫かれてしまったが、今一度気を取り直し尋常に勝負といこうではないか!」

「…………そうだな! こっちだって予定が詰まってんだ! さっき顕現した悪魔が来ちまう前にさっさと片付けて───」

 

 

 

「───見付けたわよ! 『悪魔狩り』の少年!!」

 

「うっ……」

「……む?」

 

 

 再び対峙した俺達を遮るように甲高い女性声が響いた。……どうやら間に合わなかったらしい。

 男性怪人も気になったのだろう。互いに視線を交わし頷き合った後で、声の方向を振り返る。

 

 

「これまで随分と好き勝手してくれたじゃない? でもそれも今日でオシマイ。ワタクシは今まで貴男が屠って来た悪魔とは格が違うんだから」

「……ほお、中々活躍しているようではないか?」

「ちっ、言ってろ」

 

「けれど貴男も自分が倒される相手の事ぐらいは知りたいでしょう? だから教えてあげるわ……ワタクシが何者なのか!!」

 

 そこに居たのは、背に生えた黒い翼を広げて宙に浮かぶ、勝気な表情を浮かべた女性型悪魔。

 俺達のやり取りが視界に入っているのか否か、無駄に大きな胸を張り、高らかに言い放った。

 

 

 

「ワタクシは貴き『裏世界』の王に直接お仕えする第二階悪魔……並びに『()()()()()()()()()及び『()()()()()()マリスリベルよ! さぁ、神妙に───」

 

「───待ってなんか俺が知らないの混じってる!?」

 

 

 

「えっ…………? あ、そっか貴男『電脳世界』とは無関係で……もう! それだけ色々繋がりがあるんだから『サイバース』にもなっときなさいよ! 面倒くさいわね!!」

 

「罵倒が理不尽過ぎるわ!? ていうか何!? まさかまだ他にも危機抱えてんのこの世界!?」

 

 

 

「ふむ、成程そういう……なあ、君? この際、『サイキッカー』にも目覚めてくれたりしない? そうすれば『ベータ世界』のノルマも一緒に───」

 

「あんたはあんたで横着しようとすんな!? これ以上何に目覚めろってんだ俺に!!?」

 

 

 

≪───ああ、やっと通じました! あの、そこの御方! わたし達の住む『銀河世界』の危機を救うため、力をお貸し頂けませんか!? 最早わたし達が頼れる存在は貴方だけ───≫

 

「すいません今立て込んでるんで後にして頂けますかねえぇ!!?」

 

 

 

〔───朕は『量子世界』が『虚神』キャットレスである。そこな人間よ───力が欲しいか?〕

 

「間に合ってまああぁぁす!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………その後。

 

 俺の双肩に乗る世界が十を超えたのは、そう遠くない未来の話なのであった。

 





 虎福(とらふく) (じん) → traffic jam = 交通渋滞

 クロスオーバーものはプロット考えるの難しいよね、って話。


・可能性世界

 和風ファンタジーなifルート日本。妖怪とか陰陽師とかがブイブイいわせてる。
 危機の原因は陰陽師同士の派閥争い。多分ラスボスは安○晴明。

 担当は亜奈座(あなざ)姫。のじゃロリ枠。実は一番の新顔(現時点)。
 主人公の渋滞具合にちょっとぐらいサボっても良いかなと思っちゃった。わりと残当。


・鏡世界

 現代風ファンタジーな日本っぽい世界。現実にダンジョン出現系みたいな雰囲気。
 危機の要因は世界の怒り的な魔物的な存在。多分ラスボスは星の意思的な何某。

 担当はカガミ少年。生意気ショタ枠。……高校二年生な主人公と同い年なショタとは(哲学)。
 意思を持つ系の武器。要は○リーチの斬○刀ポジション。そのうち○解もする。


・灰世界

 ポストアポカリプス系異世界。某世紀末的な。多分ヒャッハー系は元気に生きてる。
 危機の要因は手持無沙汰になったラスボスが隣の世界に手を伸ばし始める的なアレ。

 担当は炭香(すみか)少女。献身系女剣士枠。ハイツ主人公内では委員長ポジ。
 現代人に憑依して戦う英霊系キャラ。……巫術系か聖杯系かで世代が分かれるのかな?


・夢世界

 ニチアサの神様的存在が住んでる系異世界。
 作者の過去短編とは何の関係もない。ないったらない。

 担当は天使ドリム。マスコット枠。
 愛と平和に紛れた誰かさんなんて知る由も無い。


・裏世界

 とりあえず異世界。
 空間一枚捲ったら顔を出す世界、的なイメージ。

 担当は魔人ウラ(作中で名前出せず)。腹黒系執事枠。
 なんか、こう、複雑な事情で主人公に協力してる、らしい。


・電子世界

 サイバーワールド。以上。


・ベータ世界

 超能力者とか居る系の異世界。たぶん。


・銀河世界

 なんだろうね。


・量子世界

 ねこでもいるのかな。

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