※元小説ID:302085 投稿日:2022年11月11日(金) 14:40 一部改稿あり
連載中のヒロアカ二次の息抜き兼布教用としてサクッと……のつもりで書いたところ、ヒロアカ原作におけるとある重要シーンのif展開風味に仕上がりました。
「ガレリアの~」でハーメルン全作品検索したら一件しか出なかった衝撃を込めて。
―――思えばアレが、アタシの人生のケチの付き始め。
「これは……身体の中の『何か』が、栄養その他を吸い取っておるのか?」
「え、……そ、それじゃ、それがこの子の"個性"、なんですか?」
「いや、まだ何とも言えん……が、この年齢で突然の体調不良となれば、"個性"発現による体質の変化という可能性が高いのは事実ですな」
「それは……い、一体どうしたら……」
「対症療法になるが……吸われる以上の栄養を摂取し続けるしかありませんな。食事だけでは限界がある故、栄養剤の類を特注する必要が……しかし"個性"事故の一種と捉えるとしても、保険料で賄える額にはならんでしょうな……」
「そんな……」
生きているだけで、呼吸をしているだけで、アタシの存在は重荷になる。
……そんな厄介な娘、さっさと放り出してしまえば良かったのにさ。
「……あなたは、心配しなくて良いわ。私がそれだけ働けばいいのよ。絶対に……絶対にあなたを捨てたりなんかしないから……っ!」
……根性だけで解決するなら、世話は無い。
意気込みが美談で終わってくれるなら、神様に祈るヤツなんかいないさ。
「ああ……ごめん、ね? あなたを、置いていきたく、ない、のに……」
抱えきれない重荷を抱いて、文字通り倒れるまで働いて。
今際の際で伸ばした手に差し伸べられたのは、神様の手でも無けりゃヒーローの手でも無く。
『―――それじゃあ、僕の友達になってくれないかい?』
引き込んだのは、最低最悪の『魔王』の手。
……ああ、どこまでも、アタシって存在は罪深い。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――おい、その指、出せ」
「えっ……?」
彼、緑谷出久にとって、それが彼女と関わった最初の機会。
指一本を犠牲に迫る除籍の恐怖に立ち向かった彼に、掛けられたのは端的な言葉。
「自分の意思でこんな……どうかしてるぞ、お前……【
「うえっ!? あ、ち、"治癒系個性"……!? あ、あれ、"増強系"だったんじゃ……」
「あー……アタシの"個性"は、『魔女』だ。魔法っぽいことが色々、出来る。RPGなら回復魔法は最初に覚えるもんだろ? ……自分の計測の時は、ほら、身体強化魔法ってヤツだ」
そう言って、周囲を見る余裕もなかった自分に手を差し伸べてくれた彼女。
日光に弱い体質故にと、学校指定のジャージの上に羽織った黒ローブの下から垣間見えたのは、ぶっきらぼうながらも温かな血の通う心遣い。
「そんな強い回復じゃないけどな。まあ、痛みでこの先の種目動けないってことはないだろ」
「あ、ありがとう……」
「……お礼を言われるようなことじゃない。ただ、放っとくのも座りが悪かっただけだ」
結果として、貰った気遣いを生かすことなく緑谷の総合記録は最下位を飾る。
しかし除籍自体が嘘だった、という宣告で復活を遂げた彼は、この日の恩を返せる機会を求め、決意を新たにすることとなった。
「―――金の為にヒーローに。それってそんなに恥ずかしい理由か?」
ヒーローを志す理由が話題となったとき、それまでほとんどクラスの輪に加わることのなかった彼女は、静かに燃える瞳でそう言った。
「アタシの母さんは、アタシが小さい頃に罹った病気の治療費を稼ぐ為に、身体がぶっ壊れるまで働いてくれたよ。……比喩抜きにな」
続いた言葉と苛立ちを込めた声に、その場にいた緑谷は背筋に冷たい物が流れる感覚を覚えた。
「どんな手を使ってでも目的を果たす。……そこに恥ずかしいも何もあるもんかよ」
しかしそこに宿っていた熱量に、誰かを貶めるような意図は無く。
冷めた印象のあった彼女もまた、同じヒーローを目指す仲間なのだと認識を改めることとなる。
「―――ああ、分かったやるよ……やりゃあいいんだろ……っ」
万全を期した筈の合宿が、ヴィランの襲撃を受けてから二日目の夜。
両腕粉砕した緑谷が送られた病院前、『行動』すべく集まった面々の中に、彼女の姿はあった。
「だ、大丈夫なの……? 無理矢理連れて来たんじゃ……」
「もしそうならそもそもここに居ねえよ。……爆豪を救けたい気持ちはこいつも同じってことだ」
「口では色々言ってるけどな……お前はアツイ奴だと信じてたぜ!」
A組二十名、さらわれた爆豪を除いた十九名の中で、特に高い万能性を誇る"個性"の持ち主。
いざという時の逃走手段といった保険にもなり得る彼女の参戦に、義憤と焦燥から集まった一同の表情は明るくなる。
「……言っとくが、アタシの"個性"だってそう万能じゃないんだからな? 『
結果として、彼らが挑んだ無謀な試みは奇跡の成功を収めた。
ヴィランにさらわれた一人のクラスメイトを見事に戦場からかすめ取ってみせ、また誰一人怪我を負うことなくその場からの撤退を達成する。
「……てめェも居たのか……クソ根暗」
「爆豪お前なあ……助けられたんだからせめて名前で呼んでやれよ」
「……いや、いいよ。呼び方なんてどうでも」
成功の興奮冷めやらぬ中、緑谷の耳は小さな、そして不可思議な呟きを拾う。
「…………そもそも、お前がさらわれたのもアタシが……」
「えっ? 今何か言った?」
「……何でもない」
随分先になって、緑谷はこの瞬間のことを思い出すことになる。
この時、この呟きの意味を知っていれば。
その心中にあるものを探る手立てがあったなら。
あれほどまでに後悔せずに済んだのではないか、と。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――って、わけだ。USJも、合宿も、全部アタシが手引きした」
同じ学び舎で机を並べたクラスメイトの突然の告白に、緑谷出久は呆然と立ち尽くした。
「ヒーローもヴィランも、アタシにとっちゃどうでも良かったんだよ」
いつも気怠げではあっても、その芯にはヒーローらしい気質が確かに宿っていると思っていた、赤毛の女子生徒の口から伝えられるどうしようもない現実に。
「緑谷おまえ、"無個性"だったんだってな? アタシもいっそ、その方が良かったよ……っ!」
その言葉と共に、彼女の手から放たれた雷撃を緑谷は辛くも『回避』する。
それと同時に、クラスメイトから一人離れていく彼女の様子を訝しみ、緑谷をこの場へと連れて来た葉隠が、彼女の心を確かめるように呼び掛けた。
「……ああ、そうだよ葉隠。アタシのせいでみんな死ぬかもしれなかった。それでも同じ教室で笑っていた、笑えていた。アタシはそんな、クズのヴィランさ」
しかし涙ながらの訴えに返ってきたのは、情を感じさせない言葉と、"個性"による炎の放射。
正面から炎を浴びかけた葉隠を抱え上げ、その場を逃れた緑谷の目に映ったのは、彼の手の中にいるクラスメイトのお株を奪うように『透明化』していく彼女の身体。
「っ、はは……逃がさないってか? まあそりゃそうだよな。こんな厄介なヴィラン、ヒーローが放置出来る訳ないよなぁ!」
咄嗟に緑谷が打ち込んだ衝撃波に、体勢を崩された彼女は自嘲の滲む声音で嗤う。
彼女の持つ『転移』技―――黒霧の"個性"ほど自由ではないが―――の存在を知っていた彼は、相手に息を吐く暇も与える訳にはいかないという答えに辿り着いていた。……感情とは別として。
AFO側に高性能な転移手段はもう存在しない……そんな大前提を覆し得る内通者。
この場このタイミングで露見したことが如何なる幸運であっても……如何なる不幸であっても、緑谷に他の選択肢は存在しなかった。
「―――緑谷ぁ! 何が起きてんだ!?」
「デクくん!? どうしたん!?」
「葉隠さん!? どうして……これはっ!?」
たとえこの場所が監視の目の死角であろうと、戦闘音が響けば人は集まる。
信じがたい光景を眼前に、信じたくない真実を伝えられた彼らもまた、この一年間学んできたヒーローとして取るべき行動を、直ちに取らざるを得なかった。
雷撃が飛び交う。
炎と炎がぶつかり合う。
文字を綴れるほどに繊細な操作を受ける水が、各人の喉元を狙う。
糖分を蓄えた剛腕を、黒ローブの下から覗く細腕が受け止め。
影の"個性"は光に照らされ、爆破の熱は向きを変えられて。
ともすれば消えるその姿を、幾人かが聴覚を頼りに見つけ出し。
「―――もう……もう、やめよう、こんなこと……っ」
果たして軍配は、十九名のクラスメイトに上がる。
精魂尽き果てた様子で緑谷に組み敷かれた彼女は、しかし諦念に沈む笑いを消さずにいた。
「そうだな……そろそろ、限界みたいだ」
「何を……なっ!?」
緑谷が押さえていた彼女の腕が、ボロリと取れた。
あまりの光景に思考から硬直する彼らの前で、彼女の身体は端から灰のように崩れていく。
「……ヴィラン連合に居ただろ、トゥワイスって奴。似た"個性"がアタシにもあってさ」
「アイツの場合は、『本物』が死んだことで全部消えたらしいけど……」
千々に崩れ、風にさらわれていく彼女の身体。
目を逸らすという選択すら頭に浮かばないクラスメイト達に、彼女はもう一度笑う。
「アタシの命は、母さんが『死んでも』永らえたかった命だからさ」
「アタシも……ちょっとでも長く、『アタシ』を永らえさせたかったんだ」
「……そんな顔するなよ。どうせ……とっくの昔に消えてた命だ」
「だから……これで良かったんだよ」
ヒーロー科、A組の一同が喪失を理解出来たのは、彼女の全身が灰と化した後。
残されたコスチュームと、握り拳ほどの灰を抱いた緑谷の慟哭が、虚しく天に響いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
―――金の卵を産む鶏。
その腹を裂くのは愚かな行いだろうか?
より多くの卵を、より多くの幸福を求めて
為される行動は必ずしも愚行なのだろうか。
ヒロアカ世界に彼女が生まれたらという想定でゲーム原作から要素を抜き出していったところ、ポジション青山一直線で困惑。……これ布教になってるんだろうか?(本末転倒)
でもゲーム原作に比べたらこれでも全然マシだから困る。
クラスメイトに欠員出てないし。ヒロアカ世界を滅ぼすまではいってないし。
……いったとしても一つだけだし。
そもそもが共存不可能な二つの世界の為に、片方の世界を滅ぼすべく送り込まれた尖兵ですからね、彼女。
(↑重大なネタバレになるので透明化。気になる方は行ごとコピーしてメモ帳等に貼り付けを)
・名前:????
・公称していた"個性":『魔女』
・与えられていた"個性":
『
『
(ゲーム側ストーリー中の能力とギミック解除系スキル等を"個性"で表現した結果)
・本来の"個性":『灰化』
身体が内部から破壊されていく"個性"。
大量の栄養分を与えることで小康状態を保つことが可能だった。
この世界線においてはAFOに『奪って』もらうことで完治。その見返りに内通者となる。
炎熱系の"個性"を持って生まれれば、程度の差はあれ熱耐性のある身体になる世界であるため、この"個性"を持って生まれた彼女は常人の比ではない強靭な肉体を持つことに。
そのためAFOはギガントマキアに比肩する存在を目指し、入るだけの"個性"を詰め込んだ。
実質自殺されてしまい「百円ライターが点かなくなった」と、AFOもちょっとしょんぼり。
「ナチル・コルベール」 出典:ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団
幼女に厳しい日本一こと「日本一ソフトウェア」の送る同タイトルの主人公……の片割れ。
作中での「主な」年齢は幼女ではないが、その不幸は幼女期から始まっているのでセーフ。
色々とネタバレになるので詳しくは解説しないが、その人生は徹頭徹尾救いが無い。
ゲーム全編通して理不尽な理由で殺されかけるわ犯されかけるわ辱められるわボコられるわ……
自業自得なケースもないわけではないが、大抵が良かれと思って行動した結果だったりするので尚更救いが無い。
というよりストーリー全体のテーマが「良かれと思ったすれ違い」にあると思われる(あくまで作者の解釈です)。
そんな彼女も要所要所では、そして最終的には主人公らしい、ヒロアカ世界でいうところのヒーローらしいところを見せてくれるのだが……
話は変わりますが、トゥワイスの分身がトガちゃんにハンカチを返すシーン、良いですよね。
……うん、まあ、そういうことなんだ。
クリア後の裏ダンジョンまで攻略すれば一応救いっぽいエンドは見られるものの、あれを救いと捉えるかはプレイヤーの意見が分かれるところだろう。
……まあ、そもそも約4000階(400階にあらず)の裏ダンジョンを最後まで攻略したプレイヤーが全国に何人いるかという話だが。開発スタッフに救いを見せる気が無さ過ぎる……
気になった方は、ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団、プレイしよう。
なお作者的にクリティカルだったのは、もう一人の主人公の幼少期。どっちも幸薄過ぎるんよ。