非単一な短編まとめ   作:非単一三角形

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※Attention!!

 ・作者の思う、「こんなキャラが欲しかった」系オリ主をブチ込んだダンまち二次短編です。

 ・オリ主はヘスティアファミリアと懇意にしているオリジナル零細ファミリアの一団員。
  立ち位置的にはミアハファミリアのナァーザ辺りの距離感。
  対アポロン(ソーマ)ファミリア時も似たような感じで助力していたとする。

 ・本文の時期は原作の対イシュタルファミリア(歓楽街)戦直後~
  ~オラトリア側でヴァレッタ vs ベートが勃発している頃をイメージ。

 ・ややアンチ色強めです。

 これらを呑み込める方のみご査収くださいませ。



『幸運』の白兎(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

 

 

(───何を、考えてるんですか。こいつらは……)

 

 その言葉を彼女が声に出さずに済んだことこそ、『奇跡』に近かった。

 

 

 

 一夜にして無残に焼け落ちた歓楽街。

 

 ほんの数時間前までそこにあったのは、ギルドすらも容易には手を出せない治外法権に近い力を有していた大ファミリア。

 拠点だった色町は元より、ファミリアの頂く主神イシュタルの送還という形で完膚なきまでに、跡形もなく消え去ったファミリアの跡地。

 

 まさに驚天動地。都市中の男たち、男神たちに膝を突かせ嘆かせた色街の壊滅。

 そんな異常事態を眼前に、少なからず喜色を浮かべる彼女の知己たち。

 

 

 ……否。彼女自身もまた、内心に快哉の声が無かったとは言わない。

 身内の命が掛かっていた彼ら程ではないにせよ、事情を聞かされた彼女の胸中には確かに義憤に駆られる想いも存在はしていたのだから。

 

 一人の狐人(ルナール)の魂を千々に砕き、理外の魔法を繰り出す魔道具に作り変える。

 そんな企みが潰えたことに、胸のすく想いを抱くのは誰だってそうだろう。

 

 

 …………しかし。それでも。だからと言って。

 

 

(団員十名にも満たない新興ファミリアが、喧嘩を売ってどうなるというんですか……!)

 

 

 ヘスティア・ファミリア団長、ベル・クラネル。

 都市の歴史上、最速の昇華(ランクアップ)を果たした未完の大器───と目される冒険者。

 

 犠牲となるところだった狐人の身内かつ彼の派閥(ファミリア)と懇意であったタケミカヅチ・ファミリアの面々も結果的に戦域へと足を踏み入れた点では同じだがそこはそれ。

 絶望なる言葉すら生温い彼我の戦力差を前に、開戦の号砲を上げてみせた(ベル)こそを、彼女の眼は誰よりも、何よりも異質な存在として映していた。

 

 

 ───馬鹿じゃないのか。

 

 ───蛮勇、無謀にも限度がある。

 

 ───自殺と何が違うと言うんだ。

 

 

 ───その手一つで何が変わると思った? ……変えられると思った?

 

 ───義憤に駆られて? 堪らずに? 子供の癇癪じゃあるまいし!

 

 

 『結果』を目にしている今でさえ、面罵の言葉しか浮かばない彼の行動。

 その『経過』は至極当然に、自然な帰結として、迷宮都市の眠らぬ夜を支配する大ファミリアに特筆の必要もなく制圧される途上にあった。

 

 当然だ。

 

 団長だけを比較しても、一の差が絶対的と言われるレベル差が二段階。

 人数だけを比べても軽く二桁、ともすれば三桁の差があったしても驚きはない。

 机上のみで語ってもそれだけの、『敵』と計上されれば御の字とも思える差がそこにはあって。

 

 

 それを覆したのは誰一人───自ら火中に飛び込んだベル自身も想像さえしていなかっただろう盤外からの一手(横槍)

 

 

(どうしてそこで───都市最強の一角(フレイヤ・ファミリア)が動く……っ!)

 

 

 事態を有耶無耶に、盤上ごと粉砕したのは、彼女には唐突としか思えない文字通りの『天誅』。

 漁夫の利、という表現が正しいかも分からない形で彼は目的の狐人を掻っ攫い───剰え、命を賭して機会を作らんとした筈の仲間は、何故か至高の薬にて治療された状態で発見されたのだ。

 

 

 わらいがでる。

 

 ばかげている。

 

 たまたま? うんよく?

 

 縁も所縁も約定も利害関係もない【最強】が気紛れに手を伸ばしてくれたと?

 ……本当に、巫山戯ている。

 

 

 

「ベル……ベル・クラネル……」

 

 彼女が、その名を呟く。

 

 彼と喜び合う主神を、眷属(仲間)達を、その友人達を遠巻きに見ながら。

 

 

 

 何故、あなたは失わない?

 

 何故、その手からは何も()()()()()

 

 何故……なぜ、()()()───

 

 

 

「……カスターニャさん?」

 

 その顔色に気付いたのは、視線を浴びていたベル・クラネル当人。

 ()()()()()()()()()への当たり前の善意を含んだ彼の声音が、彼女(カスターニャ)の名を呼んで。

 

 

 

「…………『運が良い』んですね、ベルさん」

 

 

 

 そんな掠れ声が、彼の耳に残った。

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

 その日、迷宮都市(オラリオ)は降りしきる雨に覆われていた。

 

 昼の日中に起きた、元イシュタル・ファミリアのアマゾネスを狙った殺人事件。

 一般の市民には安全の為にと外出自粛が要請されたその日の夜のこと。

 

 

「───いやあ、すまないね、みんな。迷惑をかけてしまって」

 

「本当ですよ、神様……心配したんですからね?」

「全く、タイミングが悪いというなんというか……」

「どうしてよりによって『ダイダロス通り』になんて足を運んでいたんですか、()()()()()()?」

 

 深く深く入り組んだ通りに面する、古ぼけた空き家の中。

 そこに顔を揃えたヘスティア・ファミリアの面々───ベル、リリルカ、ヴェルフ、(みこと)達へと苦笑いで頭を下げる主神ヘスティアの姿があった。

 

 

 何となれば答えは単純。突然発布された凶報に怯える子供(下界の民)達を、事件当時には屋台に入っていたお人好しの主神(ヘスティア)は放っておけなかったとのことで。

 震える彼ら彼女らを宥めつつ各々の帰路に付き合うこと暫し、最後に立ち寄った件の『通り』に迷わされている内に日没を迎え、慌てた眷属(ベル)達に捜索される事態に発展したのである。

 

 

「留守を守ってくださっているタケミカヅチ様達や春姫様に早く連絡を取りたい所ですが……」

「まあ、仕方ないだろ。第一級冒険者が出張るような事件に巻き込まれちゃかなわん」

「既に若干巻き込まれたようですけどね……まったく」

「うぐぅ……」

「ま、まあそのくらいに……」

 

 加えて迷い込んだ場所が選りにも選ってだったばかりに、途中ですれ違った都市最大派閥(ロキ・ファミリア)からも同情混じりの苦言を呈される始末。

 そのため、懇意派閥に留守居を頼んだ拠点(ホーム)に帰ることもできず、適当な近場の家屋内で夜明けを待つよう指示(オネガイ)されたのが現状であった。

 

 主神の心根の良さを嬉しくは思うがそれはそれ。

 

 何かあったらどうしてくれるのかと発奮する家族達(ファミリア)に、ばつが悪そうに目を反らすヘスティア。

 形勢の悪さを悟った彼女はやや虚空に目を泳がせ───視界に捉えた()()()()へと、頬に喜色を宿して水を向けた。

 

 

「カスターニャ君もありがとう! キミがベル君たちを案内してくれたんだってね?」

「……まあ、この辺りには少しばかり()()()もありましたから」

 

 

 ぶっきらぼうに答えを返し、彼女は幼気な神に背を向ける。

 彼女が彼ら他派閥と行動を共にしていた理由もまた単純明快。例の『通り』の入口で惑っている知り合い達を無視はできなかった故だった。

 

 なお、行方不明の主神の捜索に出た彼らが真っ直ぐに『通り』に向かった理由までは彼女の知る範囲には無い。

 同じ恩恵(ファルナ)を受けた眷属を感知できる【八咫白烏(スキル)】で、その恩恵の根源である主神を感知できない道理はない、といったことまでは懇意派閥相手にも明かすような内情(手札)ではないからだ。

 

 

「───っ、くしゅん!?」

 

「あっ、神様!?」

「っ、ああ、そうか。俺達は恩恵のお陰で大したことなかったが、相当冷えるぞこりゃ」

「暖炉は……一応残ってはいますが、一晩もたせられる薪の量ではありませんか」

「自分達はいいですが……ヘスティア様が風邪をひかれてはいけませんね」

 

 吹き込んだ隙間風に大きなくしゃみを一つ。途端、思い出したように肩を震わせるヘスティア。

 慌てて古い空き家の中で暖を取る手段を探した面々は、何年も使われていないだろう蜘蛛の巣の張った暖炉に頬を歪めた。

 

 神の『恩恵』を受けた冒険者達の身体は、程度の差はあれモンスターの毒にも耐えうる都合上、ごく普通の病に対しても相当な頑健さを持つ。

 一方で『神の力(アルカナム)』を封印し、一般人と同じ身体で下界生活を楽しむ神は当然、人のかかる病にも罹患してしまうのだ。

 

 まともな防寒の手段も採らずに一晩を過ごせば、その懸念が現実となる可能性は非常に高い。

 降って湧いたのっぴきならない事態に彼らは頭を悩ませ……る横でヘスティアが顔を上げた。

 

 

「うぅ、寒……はっ!? そうだ仕方ない……これは仕方ない! こうなったらキミの人肌で一晩ボクを温めてもらうしかないなあ、ベル君!!」

 

「「……なにを言ってるんですか神様(ヘスティアさまぁ)!!?」」

「……理屈は分かりますが別にベル殿である必要はないのでは……」

「……ぶれねぇなあ、この(ひと)も……」

 

 災難にかこつけ欲望全開で宣うヘスティア。青い顔で叫ぶベル。荒ぶる乙女心で噛みつくリリ。

 『改宗』以来すっかり見慣れてしまった痴話喧嘩(?)に遠い目になる命とヴェルフ。

 

 

「…………これも、幸運……?」

「カスターニャ殿?」

 

「ああ、いえ。……そうですね。どうせもう、誰も使っていませんし───」

 

 他方、派閥漫才を無言で眺めていた彼女が、小さな呟きを漏らす。

 振り向いた命に一度首を振り、もう一度頷いた彼女は家屋の隅へと足を運んだ。

 

 ヴェルフと命の視線を、二人の様子に気付いた残りの三人の目も遅れて集めつつ、彼女は朽ちて黒くなった長机を脇へと押しやる。

 どこか慣れた手つきで露出した床板を剥がせば、姿を現したのは地下に続く階段だった。

 

 

「……え? これは……」

拠点(ホーム)の入口です。……かつて、この場所にあったファミリアの……大丈夫ですよ」

 

 

「此処には、()()、誰も居ませんから」

 

 

 

 

 

 

 以前の教会小部屋(ホーム)と雰囲気が似てる、とベルは呟いた。

 

 壁に残されていた『魔石灯』を触れれば、時々明滅しつつも淡い光を放ち。

 ぼんやりとした光に照らされて見えてきたのは、地上部分のものより多少はマシといった机と、煙が掛かったように白くなったソファ。

 色の剥げた床に転がるのは、何に使われていたかも不明な、くたびれた毛布が数枚。

 

 

「かつてのファミリア……でも、キミは確か……」

「ええ。『恩恵』を頂いたのは今の主神様が初めてです。……私は、まだ幼かったので」

 

 ヘスティアの問い掛けに、彼女は振り向かないまま、ただそれだけを口にした。

 自身の背で身を固くする彼ら彼女らに気付いているのか否か、どこか遠くを眺めるように。

 

 

 

「父は、母は、兄は……帰ってこなかった」

 

 

 

 訪れた長い沈黙に、微かに吹き出すような声を落として。

 様々に想像を働かせているだろう彼らに振り返った彼女は、自嘲の滲んだ声で告げていく。

 

 

「部屋数はそれなりにありますが、階段付近の談話室以外はそれこそ使わなくなって久しいので、埃も一層積もっているでしょうし、お勧めはできません」

 

「残っている家具はいずれも持ち主が()()()()()()物ですから……扱いはご随意に」

 

「……ええ。触られて困るものは何も残っていませんので気にせずに使ってください。……多少、縁起が悪いかもしれませんが」

 

 

「……よし、分かった。そう言うことなら遠慮無く使わせてもらおうじゃないか、みんな!」

「えっ……」

「へ、ヘスティア様……?」

 

 重く、暗く、圧し掛かるような地下の空気を感じないとばかりに振り払うヘスティアの声。

 動揺する眷属達へ、むんっ、と豊満な胸を張って見せた幼神に、彼女は目を細めた。

 

 

「では私は地上部分に居ますので、ごゆっくり」

 

「……あ。で、では自分もそちらに……!」

「さぁ、行くよ、リリルカ君!」

「あっ、ま、待ってください、ヘスティア様っ!」

 

「神様……」

「…………」

 

 立ち尽くす一同を横切り、降りてきた階段へと取って返す彼女。

 一瞬の惑いの後でその背を追う命。リリルカの手を引き、地下室の奥へと進むヘスティア。

 

 どちらにも行けずに深紅(ルベライト)の瞳を瞬かせるベルの隣で、ヴェルフは額を押さえて瞑目していた。

 

 

 

 

 

 

「……あの、ヘスティア様? あれはいったい───」

「ボクもね、時々は不安になるんだ」

 

 わざとらしく気勢を上げて見せた真意を問うリリルカに、ヘスティアは()()を告げた。

 

 

「キミ達をダンジョンに送り出して、ホームか、屋台で帰りを待っているときなんか、特にね」

 

「ボクには『恩恵』を刻んだキミ達の生死がいつでも分かる。いつか突然、その『恩恵』が消えたとしたら……誰か一人の、どころじゃなく全員がいっぺんに消える、なんてこともダンジョンじゃ珍しいとは言えないだろう?」

 

「ボクはまだ幸いにして経験したことはないけど……ヘファイストスなんかはもう何度もそういう経験をしたらしい。目を掛けていた子供が突然手の届かない所に行ってしまう感覚は……できればそうそう味わいたくは無いってさ」

 

 

 ───神に嘘は通じない。

 

 あの歓楽街崩壊の一夜を越え、喜び合う眷属達へと彼女が掛けた言葉に、『幸運』を祝う心とは真逆の熱が籠っていたことを、(ヘスティア)は知っていた。

 

「この地下室(ホーム)は、ボク達にとっての『明日』かもしれない。そんな『明日』が明日にでも来るかもしれない。……彼女はボク達に、それを分かって欲しかったんだ」

 

 

 ───『幸運』に縋るな。

 彼女の言葉から受け取った()()を、自身の言葉に変えてヘスティアは語る。

 

人類(こども)達の訴えは……いつも本当に耳が痛いなあ」

 

 

 

 

 

 

「───偶然、でしたよ。間違いなく」

 

 雨音と、()()()()()が響く都市を朽ちた机に腰掛け眺めて、彼女はそう言った。

 

「この『通り』に近付いていくあなた達を見つけたのも、ここに招くことになったのも……まあ、そう受け取ってくれたなら悪い気はしませんが」

「そう、ですか……」

 

 再び流れた沈黙の中、彼女を追って地上部分に上ってきた命は改めて古い家屋内を見渡した。

 そうして気付くのは、そうと知らずに見ていては分からなかった、()()の数々。

 

 壁に残っているのは、依頼書か何かを張り出していた跡だろう。

 棚に残った空の容器は、おそらく回復薬の類いを管理していた名残に違いない。

 金属で引っ掻いたような傷跡───自分たちのホームでも武具を運んでいたヴェルフがよく似た傷を付けてはリリに睨まれていたか。

 

 

「……かつては、どのぐらいの人数がここに居たのでしょうか」

「……私が知るのは両親達だけになった頃ですが、もう少し遡れば十数人は、ですね」

 

「…………」

 

 得られた答えに、目に入る痕跡に、命は今一度()()を思い描く。

 此処は、この場所は、今の自分達よりほんの一回り大きな派閥の───()()であると。

 

 命自身、オラリオに来てまだ日は浅いと言われる方だが、自分や仲間の命の危機を感じた経験は既に数えきれない。

 この都市にいれば、命を落とした、ないし志半ばで断念した同業者の話も飽きるほど耳にする。

 

 そこに恐怖が無いとは言わないが、承知の上で同郷の仲間と共にこの地に足を踏み入れたのだ。

 いざとなれば仲間の為にこの命を捨てる覚悟もとうにできている。……なんなら実行もした。

 

 それでも───その後の事を考えたことなど、無かった。

 

 

「……かつての派閥の、主神様は何処に?」

「…………」

 

 彼女の答えは、無言で天へと立てた指一つ。

 

 

「団員が全員───私は厳密には団員ではなかったので───居なくなったときに。最後の団員が怪物進呈(パスパレード)で諸共に同業者に被害を出したとされて、その責任をとられたそうです」

「…………っ」

 

 己の経験および色濃く残る記憶から、経緯と顛末を容易に想像できてしまった命が喉を鳴らす。

 

 瞬間、脳裏に過ったのは、誰も居なくなったホームに一人佇む武神(タケミカヅチ)の姿。

 記憶の中でも「憎みはしない」と言ってくれた幼女神(ヘスティア)が、その肩を叩く光景まで克明に。

 

「あなたを責めたいわけじゃありません。命を賭しても惜しくない、それほどの価値のある仲間と出会えた……それこそ素晴らしいことだと、私だって思いますから」

「……はい。自分には本当に、過ぎた仲間です……っ」

 

「ええ。本当にあなた達は……()()()()

 

 

 

 

 

 

「───こうなる可能性はいつでもある。冒険者(俺達)は忘れちゃならねえんだ」

「ヴェルフ……」

 

 瞳に迷いを宿す弟分(ベル)へと、苦く笑いながらヴェルフは自戒を込めて口にした。

 

 

「クソみたいな状況から運良く生き延びた、そりゃ良いことだ。どんだけ苦しかろうが生きてりゃ次がある。傍から見てみっともなかろうが足掻ける」

 

「だが『次』ってのは、いつでもあるもんじゃねえ。くだらねえ拘りで、生半可な選択で自分が、仲間が死んじまったら後悔なんかきかねえんだ」

 

「今日まで、運が良かった。明日は、どうだ? ……幸運を祈るのは間違っちゃないんだろうが、後悔だけはしないようにしたいもんだな」

 

 

「………………『運が良い』」

 

 かつて彼女に告げられた言葉を呟いたベルが、己の背中に手を当てる。

 時折その場所に走るくすぐるような熱さを、今の彼は感じなかった。

 





 カスターニャ(castagna)はイタリア語で小粒の栗を指します。
 大粒の栗はマローネ(marrone)と呼び分けるそうで。

 オリ主の作者脳内ビジュアルはファン〇ム・ブレイブのクローネ。
 名前と背景の由来はそういうことなのです。

 レベルや主神等は決めてません。二つ名を出すとしたら『悪霊憑き』?
 ……シャルトルーズって北欧系神々的には戦乙女(ヴァルキリー)そのものだな。死の先を征く者達よ───


 またサブタイトルはSS(ショートショート)界の巨匠、星新一氏の「幸運のベル」より。
 読者によって様々解釈の分かれる名作なのですが、手に入った品よりも『幸運』を感じることが目的になってしまった男の悲哀を描いた作品、と作者は受け止めています。

 自分達がどれだけ「運が良かった」かを指摘され、また自分達と似たような規模のファミリアの「運が無かった結果」を目の当たりにすることで、己に刻まれた『幸運』の意味を省みるベル君、といった感じの回が欲しかったなあと思うのです。


 実際この後も原作では、

 ダンジョン内で片腕を失ってここから隻腕で生き延びなくちゃならないと思ったが、治せる力を持った超希少種の異端児が偶然近くにいたからそんなことはなかったぜ! とか

 ヒロインの一人が死んじゃったけど協力者の元賢者様が実はザ〇ラルの使い手で、今まで一回も成功したことなかったけど使ってみたら今回初めて成功したぜ! とか

 モンスターに味方した罪で爪弾きにされてたけど、街中に現れたヤベェモンスターと激闘を繰り広げたらなんかイイ感じに受け入れられたぜ! とか実に『運の良い』展開が続きますからねー。

 その『幸運』はおかしい、と彼に言ってくれる人材が原作に欲しかったと思う作者なのです。
 とんとん拍子に英雄街道を進み続ける『幸運』にベル君自身が疑念を抱く回とかあれば尚ベネ。

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