この短編集の8話目、ガレ魔女二次の続きになります。知名度を、上げたい。
ゲームバランスはディスガイアの日〇一さんらしいアレですが、ストーリーは神なのですよ。
復活アルムーンっぽいアルステラ時代な捏造世界で巫女ユリ様に囲われナチさんほのぼの話。
近頃ダークっぽい短編が続いたので、ちょっと優しい世界を書きたくもなったのです。
「―――巫女様の『予言』は、一種の安全保障でもあるんだよ」
「主に数ヶ月先にある式典等を対象に、それが恙無く行われる様を『視る』。予定日までにそれを行えなくなるような災害・人災が起きるのなら、その存在を予見できるというわけさ」
「そうなれば次はどうやってそれを避けるか……そうして『視る』過程で、世界が『予言』通りに進む『条件』が見えてくるそうなんだ」
「例えば指定された誰かが、あるいは誰でもいいから特定の場で特定の行動が取る者がいることでその後の悲劇を回避できる、とかね。特に不都合が無ければボクが担当するんだけど」
「……巫女様の『予言』が覆る要因は、主に二つだ」
「一つは巫女様自身が新たに『視て』上書きすること。もう一つは『予言』を知った者が意図的にそれに逆らった行動を取ること。……そしてこれは極稀になんだけど、何も知らないはずの人間が
「つまり結果的に、ある程度まで巫女様が望んだ未来に誘導できるといった一般認識は、そこまで的外れでもないんだ。直近でもなければ全くの回避不可という事態はそうそう無いからね」
「そうして巫女様が『視た』結末に辿り着けるように『条件』をこなしていく。……それがボク達魔女の、『ソサエティ』という組織の業務というわけだよ」
「その性質上、『予言』を詳しく知る人間はなるべく少ないことが望ましい。……
「だから、まあ……この場でボクからお願いすることは、たった一つさ」
「…………ユリィカとのお茶会。楽しんでくれ、ナチル君」
「あ、はい。どうも……」
───拝啓、母さん。
アタシは今、せかいでいちばんえらい人と、お茶会の席を囲んでいます。
あと巷で大人気な魔女と、山ほどの
そんな思考を遠い目で虚空へ飛ばすは、雑貨店から瞬く間に連れ去られた赤毛の少女、ナチル。
「ねえねえ、これも美味しいよ、ナチ?」
「え、あ、うん。いただきます…………うわ、マジで美味……っ、なんだこれ……!?」
どうしてこうなった───その一心に顔を染めつつ、進められるままお茶菓子へと手を伸ばし。
きっと何を食べても味なんて分からない───そんな心持ちを、おそらく目玉が飛び出るような価格が付くのだろう本物の美食に蹴飛ばされたりもしながら。
「ええと、さっきの理屈だと……これが、その、条件ってやつなんだよな?」
「…………ああ、どうやらそうらしいね」
そんな彼女の姿に、にこにこと実に幸せそうな笑顔を浮かべる
その傍らで頭痛を堪えるように、こめかみを押さえ続けている
数日前にも味わった、されども前回と違って時間的余裕はあるらしい非日常。
菓子と同様に『お高い』味の紅茶も口にし、多少なり持てた余裕から為されたナチルの疑問に、キットは淡々と答えていく。
「さっきも言った通り、極端に外れた行動を取らなければ『予言』通り……詳しくは言えないが、ある式典の成功が九分九厘約束されているんだ。ひいてはこのお茶会は世界の為とも言える」
「……なんて壮大な職権乱用なんだ」
「むぅ……『視え』たんからしょうがないんだよ、ナチ、キット」
満面の笑みのまま軽く頬を膨らませ、説得力の欠片もない「しょうがない」を宣うユリィカ。
悪びれない彼女に再度遠い目になった二人は、どちらからともなく視線を合わせた。
「……で、実際んとこ、どうなんだ?」
「まあ……目指す未来が実現困難なものでもない限り、そうそう不自然な行動を要求されることはないからね。先日のやり取りを思えば、今日この席が用意されたのは自然な流れだよ。うん」
「アタシの半生にとっては何も自然じゃないんだが?」
「だろうね」
打てば響くとばかりに帰ってきたキットの答えに、溜息を堪えて内心でうなだれるナチル。
抱いていた畏れ多さは既に鳴りを潜め、あるのはただ振り回される者同士の連帯感であった。
「……なあ、えっと、巫女様?」
「? なあに、ナチ」
「その……アタシで、いいのか? だって、別に居るはずなんだろ……
ある程度、穏やかな時間を過ごしたナチルの口から、絞り出すように『それ』は尋ねられた。
この奇怪に過ぎる縁と場が作られた原因にして、彼女としては当然でもある問い掛けが。
今では権力を欲しいままにする『巫女様』の、百年探し続けた友人……のそっくりさん。
それがどんなに『似ている』かはともかく、結局は赤の他人でしかないだろう自分を、こうまで歓待するのは───どのような心の持ち様から来ているのかと。
「…………うん、それは勿論、考えたんだけどね」
言外に含まれたある種の残酷な問いまでも受け取ったか、ユリィカの顔に寂しげな影が落ちる。
その様子にやや焦りの入ったナチルの視線を、キットカットの泰然とした眼差しが受け止めた。
「でも……こうして新しく出会えたナチにそっくりなナチと、友達になっちゃいけない理由なんて何もないでしょ?」
「え、あ……そりゃ、まあ……」
「ふふっ……いつかナチが見つかったら、ナチもナチと友達になってね? そしたらナチが二人になるよ。えへへ……」
「……それは、なんつーか……楽しそうだな?」
想像を遥かに超える前向きな答えを返され、ナチルが浮かべられたのは引きつり笑い。
思わず漏れた「呼び分けてくれ、ややこしい……」との呟きは、彼女から一層の笑いを誘った。
───ここに居るナチルは知る由もないが、百年前の過酷な環境を生きたユリィカを支えたのはこの能天気とすら言われた
また、それらが培われた背景に、まともな倫理観を持つ者なら必ず眉を顰めるだろう生き地獄が広がっていたことを知るのは、本人を除けば背後で目を細めるキットカットただ一人だった。
「……近頃元気がなかった巫女様が笑っていられる機会が増えたのは本当に良いことなんだけど。偶に出席する式典なんかで、うっかりこの顔が出てこないか今から不安で仕方ないよ、ボクは」
「う……だ、大丈夫だよ、キット!」
「式典……? ああ、ひょっとして……」
言葉だけは嘆くように、その一方で微笑みの表情は崩さないままのキットに、どうにも不安しか感じさせない反論を返すユリィカ。
そんな二人の、主に『巫女様』の
「ああ……『予言の巫女』として要人の前に出る時には、それなりに超人然とした振る舞いをしてもらっているんだよ。なにしろ、普通の感性をした普通の女の子、なんて思われると忽ち良からぬ輩が沸いて集まってくるからね」
「……だろうなあ」
「その習熟の為に周りにボクしかいなくっても『巫女様』を演じるように頼んだのが数十年前さ。もうボクでさえ、そっちが素になったかと思っていたんだけどね……」
「それは……あんたはそれで良かったのか?」
「…………だから、ボクだってキミには感謝してるんだよ、ナチル君」
「……そうかい」
───どちらがイイか、と問うならば。
言葉にはしないまま沈黙で
まだまだ付き合いの浅い彼女すら、
「……それはそれとして頭が痛くはあるけどね。この席も安全確保にどれだけ苦労したか……」
「あー……」
一転して沈み込む、まではいかないまでも深い溜息を漏らしたキットに、ナチルが虚ろな同意を示しつつも改めて周囲を見遣る。
お茶会会場として彼女が連れてこられたのは、
折角の眺めの良い景色を大いに阻害する、厳つい
過日の宣言通り『大概の無理』をバッチリ通して見せた
「……まあ、これでもマシになった方だよ。初めはキミを
「は? …………それって、いわゆる機密ってやつじゃ?」
「うん。軽く見積もって、国家元首の警護情報以上の特級機密だね」
「……んなもん絶対に知りたくねえよ!? というか何しようとしてるんだ、ユリィカぁっ!?」
「だ、だってぇ……」
「「だってじゃない!」」
「あうぅ……」
「―――さて、ナチル君にはこれを渡しておくよ」
「っ、これは?」
「『ソサエティ』の一員である証さ。おめでとう、これでキミも栄えある至高の魔女の一人だよ」
「…………は?」
出し抜けに、キットの手から渡された道具と、続いた言葉にナチルの口がパカンと開いた。
これまでとは毛色の異なる驚きに染められた脳内で、彼女は耳にした単語の意味を巡らせる。
『ソサエティ』―――それは『予言の巫女』様を擁する、世界最高峰の魔女が集う組織。
その性質上、如何なる国家でも決して表立って逆らうことは許されず。
そこに所属する魔女達は皆、個人で軍隊をも相手取れる人外の存在であるとされ。
時に畏怖を、時に憧憬を向けられる、誰もが一度は耳にするだろう雲の上の組織───
「え…………冗談?」
「いいや? 本気だし、本物さ」
「いや、だって、アタシ……そりゃ、魔法は……!」
「そうだね。キミの魔力はいいとこ三級魔女というところだ」
「……そ、それじゃあ尚更、そんな組織にアタシが入れるわけ……!?」
「んー……どこから話したものかな」
畏れ多さと不可解に震える彼女に、悪戯でも考えていそうに小首を傾げてみせるキット。
答えを求めて彷徨った視線がにっこり微笑むユリィカを捉え、ナチルの顔はくしゃりと歪んだ。
「今では色々言われてるけど元々は巫女様の為にできた組織なんだよ。『予見の魔女』が身体的、精神的問わず憂いなく活動できるように補佐を買って出た魔女達のね。ほうら、キミはその理念にこの上なく適う人材じゃないか?」
「えへへー」
「…………」
「まあ、流石に魔女としての働きをキミに望むことはまず無いよ。……とはいえ最低限の力は身に付けておいて欲しいし、折を見て指導員を付ける形になる予定さ。このまま我流で突き進まれても厄介だからね」
「……ああ、はい……」
「今は他の魔女への情報共有および根回しを進めている段階。それが終われば次はキミにも会合に出てもらって、誰が
「頑張ってね、ナチ!」
「…………うん」
二心を感じさせないユリィカの励ましに、毒気を抜かれたナチルは力なく頷いた。
幸か不幸かで語るならば、途方もない幸運としか表す言葉はないだろう。
つい先日まで出所の怪しい魔導書を捲り、一攫千金を夢見ていたしがない不登校児にとっては、あまりというにもあまりに不相応な程に。
加えて彼女の視点からは、人違いからという、自身の努力とは一筋の関係も無い掴み方。
今も善意と打算を隠す素振りもない
「(だけど……なあ?)」
「……?」
儘ならない感情の中、それでも彼女は百歳以上年上な筈の『少女』へと目を向ける。
初めて顔を合わせたその時の、
───あれを見た上で、それでも切り捨てるってのは、無理だ。
胸の内に秘めたその想いが、『少女』の知る『友人』が抱いた
「……頑張るよ」
『ナチル』が返せた言葉は、それだけだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「―――良かったね、ユリィカ。彼女が了承してくれて」
「……うん。キットもありがとう。ごめんね、苦労かけて」
「良いんだよ。キミの健やかな精神こそ我らが珠玉ってね」
「もう……昔から大袈裟なんだから」
「さて、誰なら彼女の師を引き受けてくれるだろうか? ここはやはり『ソサエティ』の良識ことミラージ女史か……ドリスくんあたりも相性は悪くないと思うけど……」
「…………ねえ、キット」
「……どうかしたかい、巫女様?」
「その…………
「―――本当に、人違い、なのかな……?」
「……それが分かるのはキミだけだと思うけど?」
「えっと……キットも言ったでしょ? 似てると思っても段々違うところが見えてくる筈だって」
「『本物を知っているキミこそ次第に細かな違いに気付いていく。そのとき辛い思いをすることになるのは他ならぬキミ自身だ』……ボクはそう言ったね」
「うん……だから、ナチとは違う新しいナチと友達になるんだって、そう考えてたの」
「だけど…………おんなじ、なの」
「見れば見るほど、話せば話すほど、あれは私が知っているナチなんだ」
「喋り方も、小さな仕草も、わたしを見るときの視線だって、それこそ出会った頃の……」
「…………記憶が無くなってるって言われたら、わたし信じるよ……」
「……そこまでくると、確かに偶然で済ませるのは難しいね」
「けれど、彼女の経歴におかしなところは特に無かったよ」
「強いて言えば生まれた病院の情報がなかったが、自宅出産なんて今どき珍しくもない」
「父親は不明だが、母親もまたごく普通の人間だった。魔女のマの字も出てきやしないよ」
「ただ……そうだね。そうすると……」
「っ、何か思いついたの? キット」
「……思いついたと言えるほどじゃないよ。そう……仮説として聞いてくれ」
「キミが出会ったナチル君が―――未来から来ていたとしたらどうだろう?」
なんか続きそうな引きですが、続くかどうかは現状未定。
とにかくナチユリのほのぼのいちゃいちゃを書きたかった。……などと供述しており(ry
やるなら前作ルフランの設定も良い感じに混ぜて長編化できないもんかなとも思うのです。
……母親認定ガッツリ拒否されたルカちゃんェ……いやナチルさんの認識も仕方ないけども。
原作とはまるっきり違っているソサエティの実態。
あちらでは無数の魔女が所属する組織の頂点9人がキット達でしたが、TOが無い以上ぞろぞろと勧誘する必要も無いので割と小規模。ナチル勧誘にも特に裏は無いので実に和やか。
ウールーも下手に盾に取らずに真正面から協力を仰いでいれば彼女の予言通りの『逆転勝利』を迎えられたのだろうか。まあ、百年培われた猜疑心が邪魔になってできなかったのでしょうけど。
言ってみればナチルにもマダム・マルタにも出会わなかったユリィカですからねえ。
……結局同一人物だし、ナチル不在だと腹黒度MAXのウールーになるってことなのか。
いやしかし育った環境が違い過ぎて何とも言えないところもあるような。
そもそもユリィカ=ウール―=マーガレット誕生の瞬間が二つの世界の分岐地点のはずなのに、二人の生育環境が全く違うのはどういうことなのぜ。
ちなみに原作における二人の馴れ初めは、塩対応通り越して岩塩対応なナチルさんに心折られたユリィカがレ〇プ目で泣き始めるところから始まってたりします。
流石に罪悪感で潰れそうになったナチルさんが慌てて歩み寄りに移行したという。これはひどい
気になった方は、ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団、プレイしましょう。