非単一な短編まとめ   作:非単一三角形

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 生・存・報・告ー☆
 今回はちょいと原点に帰ってヒロアカほのぼの日常回なのです。


 日常回、なのです。



とある女子寮の一日(原作:僕のヒーローアカデミア × ■■■■■■■■■■)

 

 

「───ねえねえ耳郎ー、この辺の楽器とかちょっと弾いてみてもいーい?」

「ん? ああ、まあ、別に……」

 

「いやいやいや三奈ちゃん待った待った!? 楽器って高いやつはめっちゃ高いんよ? うっかり傷つけて弁償せなー、ってなったら多分エライことなるから!」

「……それで響香ちゃんの部屋だといつも緊張してたのね、お茶子ちゃん」

「そんなに気にしなくても。わざと壊した―、とかでもなきゃ弁償なんて言わないって」

 

 

 とある日の雄英高校ヒーロー科A組寮『ハイツアライアンス』、女子寮側の一室。

 そこには姦しくも華やかな、何でもない日常を過ごすA組女子生徒達の姿があった。

 

 諸般の事情から急遽始まった全寮制。少なからず戸惑いのあった新生活という名の非日常。

 それでも慣れてしまえば日常、住めば都とはよく言ったもので。

 

「……ちなみにこのギター……ベース? とかだと、おいくら万円で?」

「あー……それだと、その……プロ用のハイエンドモデルで、さ。だいたい……二十万ちょい?」

 

「…………ふう」

 

「ああっ! 麗日が卒倒した!?」

「しっかりー! 傷は浅いぞー!」

「……響香ちゃん」

「ちょ、ちょっと見栄張って買ったヤツだっただけだって! 他は高くても十万前後だから!」

 

「……いやそれ追い打ちでは?」

「あ、すいません。こちら、丁寧に扱わせていただきますね、耳郎さん」

「急な他人行儀ヤメテ!?」

 

 空いた時間に誰かの部屋に集まりのんべんだらり。そんな形で余暇を過ごす時間が珍しいものでなくなったのはいつ頃からか。

 日夜夢に向かってひた走るヒーロー科生徒、その激動の日々の疲れを癒すそれは、彼らにとって何でもなくも大切な憩いの時間。

 

 

「……ああ、もう! お金関係でオチつけるのはヤオモモの役目じゃん! たまたま居ないときに限ってウチを弄るの勘弁してよね!」

 

「ぶっちゃけたなー」

「ぶっちゃけたわね耳郎ちゃん」

「怒られても知らんよー?」

「ヤオモモもすぐ来ると思うけどねえ。ちょっと先生に質問があるって言ってたけど……」

 

 

 ───扉を叩く音がした。

 

 

「耳郎さん、扉をあけていただけますか?」

 

「おっ、噂をすれば影とやら」

「待ってましたお金関係担当」

「ちょっ!? 本人に言うのは反則だって!?」

「鍵はかかってへんよー」

 

 扉越しに聞こえた、聞き慣れた級友の、律儀に部屋主へ伺いを立てる声。

 実にお嬢様然とした───否、純然たる名家のお嬢様な彼女らしい振る舞いに部屋内の一同から笑みが溢れた。

 

 

「その、ちょっと手が塞がっておりまして……そちらから扉をあけていただけませんか?」

 

 

「おおう、ならしょーがない」

「一番扉に近いの……あ、私か。ちょっと待っててね、ヤオモモー」

「…………」

 

 続いた言葉に、頷いた面々の中から麗日が腰を上げる。

 そのまま数歩、大した距離もない扉の取っ手へと、何の気もなく手を伸ばし

 

 

「待って!」

 

 

「へ? ……梅雨ちゃん?」

「……どしたの? 急に」

 

 常には無い、切り裂くように響いた声に麗日の手が止まる。

 振り返った彼女が見たのは、普段表情の変化に乏しい友人(蛙吹)の、鋭く瞳を見開いた顔で。

 

「……今、両手が塞がってるのよね、八百万ちゃん」

「はい。ですので扉をあけてくださいまし」

 

 

「だったら、さっき───()()()()()()()()()()()の?」

 

 

「「「……っ!?」」」

 

 一同の表情が、固まった。

 

 

「……手首から、短い棒を『創造』したのですわ」

「その棒、今も出してある? ……いえ、八百万ちゃんならそんなはしたないことはしないわね」

 

「そうですわね。ノックをしてすぐ、解除しましたわ」

「……響香ちゃん?」

「っ……しなかったよ、戻す音。何かと聞き違えるような音じゃないし、ウチの耳なら扉越しの、この距離でも絶対聞こえる。……あんた、誰?」

 

 

 

 

「───扉を、あけてくださいまし」

 

 

 

 

「「「…………!」」」

 

 確かに、そして致命的に、噛み合わなくなった扉越しのやりとり。

 受け答えをしていた二人、硬直していた三人の顔が、理解の及んだ者から順に険を増していく。

 

 初めの驚きが過ぎ去れば、そこは非常事態にも慣れたヒーロー科生徒、ヒーローの卵。

 扉の前に居るのだろう、()()()()()()への対応に彼らの意識は切り替わる。

 

 

「扉をあけてくださいまし」

 

 

「(何回聞いても声はちゃんとヤオモモやね。……まさか、トガヒミコ?)」

「(……にしてはお粗末じゃない? 流石に真正面から雄英に入り込めるとは思わないし……)」

「(……ウチの耳でも声から位置が特定できない。なんか間に()()()()喋ってるのかも)」

 

 

「あけてくださいまし」

 

 

「(……これもうバレてるって分かってるよね?)」

「(この融通の利かない感じ……そういう"個性"ってことかな?)」

「(かもね。とにかく先生達にも連絡を───)」

 

 

 

 

 

 

     「あけて」

 

 

 

 

 

 

 息を呑む音が、重なった。

 

 

 

  「あけて」 「あけて」  「あけて」

 

 

 

 その手の"個性"。

 そういう『演出』。

 

 素直に考えれば()()言い切ってしまえるはずの答えが、何故か頭に浮かばない。

 

 

 

 

 

 「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」

 

 

 

 

 

 扉一枚、隔てた先から響く『声』が、総身を荒く撫でつける。

 

 

 浅い息遣い。誰のもの? 隣の友人? それとも、自分?

 

 扉が揺れている。取っ手が揺れている。部屋が、視界が? 世界が、ぐらぐらと。

 

 

 

 …………あける?

 

 あければ。とびらを、あければ

 

 

 あ keれバ  おわレ る?

 

 

 

 

「……っ、駄目よ!!」

「「っ!?」……つゆ、ちゃん?」

 

 扉に近付いていた麗日、『相手』の位置を探っていた耳郎の身体が、部屋の奥に()()()()()()

 長く伸ばした『舌』で硬直していた友人達を回収した蛙吹は、未だ地震のように揺れ続ける扉を睨みつつ、声を張り上げる。

 

 

「扉に鍵はかかってないわ! それでも入ってはこない! きっとそういうルールなのよ!」

「「「……!」」」

 

 自身も滝のような汗を流し、誰より己に言い聞かせるように、推測を叫んで。

 

「執拗に私達の手で扉を開けさせようとするのも……そうしないと何もできないからだと思うわ。響香ちゃん、扉の向こうで今、相手がどうしてるか分からない? ……響香ちゃん?」

 

 

「」

 

「……アカン! 真っ先に気絶しとる!?」

「頼みの綱ァ!?」

「仕方ないけど!! こればっかりは本当に仕方ないけど!?」

 

 「あけろ」

 

「「「ひぃいいい!!?」」」

 

 扉を叩く音が次第に強く、荒々しく、鈍器を打ち付けるような重低音へと変わっていく。

 聴こえる声も響きだけは八百万(級友)の、しかしどこかざらつく合成音───()()()を廃した『音』が少女達の耳朶を殴りつけた。

 

 

 けれどもそれ以上は、何もない。

 何をしてくる様子も、ない。

 

 

 ああ成程、蛙吹の推測は正しいのだろう。

 ……発言した本人を含め、各々の頭の中で実感が少しづつ湧いてくる。

 

 ならばこのまま扉に近付かなければ無害だ───などと気を落ち着けられる筈もなく。

 

 

 

 

 「あけろ」「あけて」「あけてくださいまし」「あけて」「あけ」「あけてください」「けて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけてくださ」「けて」「あけて」「あけろ」「あけろ」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけて」「あけ───」

 

 

 

 

 

「……………………止ま……った?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       「ハ イ レ タ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 びくりと震えたのは───誰だ?

 

 握っている手は、誰のモノ?

 

  いま  どこから  きこえた ?

 

 

 

 

「ハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレタハイレギッ───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途切れた。

 

 ナニカが。

 

 身を覆う寒気も、揺れも、声も。

 小さな悲鳴一つを最後に。

 

 

 

「……全員無事か? 扉は、開けてないな?」

 

 

 

 代わりに扉の向こうから届いたのは、男性の───心底望んだ、先生の声。

 

 

 

「「「あ゛ い゛ さ゛ わ゛ せ゛ ん゛ せ゛ い゛ーーーーッ!!!」」」

 

「うおっ」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───不動産界隈では多少は知名度もある現象の一つなんだが……まさか築数ヶ月と経ってない寮に『出る』のは想定外でな。……専門の『業者』を入れるのが遅れていたんだ。すまんな」

 

「「「……はあ」」」

 

 

「丁度それが今日だったのは運が良いのか悪いのかだが……とにかく今は冷静に対処できたことを褒めるべきか。よくやった、蛙吹」

 

「けろぉ……」

「うん……それはほんと、うん……」

「間一髪だったよね……」

「……あの、先生? 結局その、アレって、何なんですか?」

 

 

「…………分からん」

「「「え゛」」」

 

 

「……こう言っちゃなんだが、世の中科学や"個性"で説明できないことはそれなりにある。アレもその一つだ。世界のどこかの人間が無自覚に発動させている"個性"とする説もあるにはあるが……まァ、古い建物にはなるべく近づくな、ぐらいしか言えることは無いな」

 

「いやバリバリ新築ですよね? この寮」

「ああ……『業者』も首傾げるレベルのレアケースだったらしいぞ」

「うへぇ……」

「なしてぇ……」

 

 

 

「…………ちなみにアレ、扉開けたらどうなったん、ですかね?」

「それも分からん。……なんせ報告者が居ないからな」

 

 

「」

 

「ああっ!? 耳郎がまた卒倒した!?」

「先生! 手加減!」

「……すまん」

 

 

 

 

 

 

 ───その後、事態に遭遇した五人が、この日の事を話題に出すことは無かった。

 

 ただ一人、もしやと思った麗日が電話越しに両親に確認したところ、建築業界でも知ってる者がちらほらいる、という新事実を聞かされて青い顔をしていたり。

 

 なんとなく五人の間で共有されている空気感に、一人だけ参加することができなかった八百万がほんのり拗ねて、一同から分からない方が良いことだからと宥められる一幕があったり。

 

 そもそも呼ばれた『業者』って何者? と、今更な疑問を浮かべた一同がネットを中心に情報を集めた結果、おどろおどろしく紹介された類似事象の記事を引き当てて肝を冷やしたり卒倒したり───といった日々を重ねて、数日後。

 

 

 

 

「おーい、ここ開けてくれよ、耳郎ー…………ん゛っん───あけて?

 

「【ハートビートファズ】」

「あ゛あ゛あ゛ぁっ!? 目から爆音があ゛あ゛ぁッ!?」

 

 

 

「引っかかるわけないでしょ、峰田」

「そのうちやるとは思ってたけど……なんでやろうと思ったの」

「ぶれないのね、峰田ちゃん」

「第一、足音がある時点でバレバレだっての」

 

 

「…………足音、無かったんや?」

「…………後から思い返すとね?」

「「「…………」」」

 

 

 深く、深い、溜め息が重なった。

 





 トガちゃん「……なんか風評被害を受けた気がするのです」

 業者A:???さん「怪異の相手は任せろーばりばりー」
 業者B:??ちゃん「原作時空に出ちゃ駄目ですからね、わたし達」


 アライさんマンションから出張、『あけて』さん。……なんか混じってる? んにゃぴ。
 冗談で卒倒する麗日さんの後でガチ卒倒する耳郎ちゃんを書きたかった、などと供述して(ry

 ……でも書いてる途中で「あれ? この子たち冷静に対処しちゃうな?」「普通に侵入者()の確保に動くよね?」「……これだと全滅BADEND待ったなしなんだが?」というわけで、仕方なくオカルトパワー全開でゴリ押していただく展開に。これなんて企画倒れ。



 そして文字数制限で「アライさんマンション」をタグに加えられないでござる。どうすべえ。

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