非単一な短編まとめ   作:非単一三角形

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 出オチ系タイトル。
 たまに書きたくなる頭空っぽ系短編。

 作品にならなかったネタはこうして消化するのです。



暇を持て余したい神々の憂鬱

 

 

「「―――あっ」」

 

 

 此処ではない何処かで。

 今ではない何時かに。

 零れ落ちたのは、二人分の小さな声。

 

 

「「あー……」」

 

 悔恨に悲哀。

 憐憫と失笑。

 

 総じて薄味な負の感情を撒きながら、二つの人影が天を仰ぐ。

 

 

「……死んじゃったね」

「……死んじゃったな」

 

 視線を交わし、溜息を吐いて、一つの大きな椅子の上に腰を下ろす。

 ひとりには広過ぎる空間を押し合うように埋めた彼らは、しかしそれを気にすることなく互いの顔を覗き合って。

 

 

「意外と上手くいかないねえ」

「上手くいかないもんだなあ」

 

 首を傾げる彼らの前に、何処かの景色が映された窓が寂しげに浮かぶ。

 先程まで食い入るように見つめていたそれを、二人は乾いた目で一瞥した。

 

 

 窓の向こうに映るは、一つの人影。

 倒れ込むその身体には、今や指先一つ動く気配は無く。

 

 周囲を紅色に染めているのは、その身体のどこかから漏れ出た血潮。

 頭部か、腹部か、空から眺めるようなこの視点では見えない箇所に、文字通りに致命的な傷を作ってしまったらしく。

 

 

 遠い、遠い、窓の向こうから。

 一人寂しく倒れ伏す骸を眺めて、二人は呟く。

 

 

 

「「『一見使えそうにない能力が原因で冷遇されてからの華々しい逆襲』が、最近の流行りだって聞いたのに……」」

 

 

 

 

 

 

 人が一定の年齢に達したとき、天より特別な能力が授けられる世界。

 窓の向こうに広がっているのは、そんな世界の片隅で起きた悲しい事件だった。

 

 

 同じ村で育った幼馴染と共に、こんな能力が欲しい、あんな能力だったら良いなと笑い合い。

 大人になったらこんなことをしよう、いやこんな人物になるんだと夢を語り。

 希望と期待に満ちた顔で『その日』を迎えた一人の少年。

 

 そんな彼に与えられた能力は、どうにも耳に馴染みの無いもので。

 それでもと能力を使ってみれば、理解できたのは極々小さな現象に留まり。

 

 同年代の少年少女の嘲りが、周囲の大人達の困惑と同情が少年を包み込み。

 その耳の奥では、思い描いていた雄大な夢が砕け散る音が響いていた。

 

 

 

「―――で、そのまま崖から飛び降りちゃったんだよねえ」

「……イヤ諦めるのが速過ぎなんだよ! 自分に配られた手札をもっと精査しろよ!! というかそれ以前に残された親御さんの気持ちとかもうちょっと考えろやぁ!?」

 

 

 地上に生きる人々が目にすれば、『天界』とでも呼ぶだろう場所。

 同じく目の当たりにしたならば、『神々』と呼称されるだろう二人。

 

 

 片や、夢破れたとはいえ―――彼らの目線ではそれすら勘違い―――若い身空で最悪の親不孝をかました少年を喧々と罵り。

 此方、そんな相方の姿に苦笑いを浮かべつつ、眉の下がった額に手を当てる。

 

 全知全能には程遠くも、一の存在には余りある『能』を湛えた彼らはしかし、その身をもって尚儘ならぬ現実に苦悩を吐くのだった。

 

 

「……とりあえず彼が辿るはずだった運命の帳尻をどこかで調整しないとだね。本来なら大陸中の国を跨いだ英雄に成るはずだったから……はあ……」

「あー……現役の英雄達の運命にちょっとずつ分配しなきゃだよなあ……まったく……」

 

 ぶつぶつと、徒労の滲む息を吐きながら二人はそれぞれ手の上に取り出した賽子を握る。

 ころり、ころりと賽の転がる音の毎に、周囲に浮かぶ無数の窓のどこかで、誰かが動き出す姿が次々と映されていった。

 

 

「……与えた能力が分かり辛過ぎたのかなあ?」

「んー……それより自殺が想定外だったな。冷遇されてる間は他人から致命的な傷を負わされない加護はちゃんと付けてたんだろ?」

 

「うん。そうしないと逆襲に入る前に九割が再起不能になるって話だったし」

「生き延びても手足無くなったりとかな。腕一本ぐらいなら何とかする奴も割と多いらしいけど」

 

 偉丈夫が、麗人が、古強者が、それぞれの窓の向こうでまた何処かへと。

 それは人々に無作為に与えられた神々の啓示、神々の御意志。

 

 

「……あいつらも長いこと英雄やってくれてるし、早いところ良い感じに若くて血気盛んな勇者の一人や二人、景気良く追加してやりたいんだけどなあ」

「いっそ次はどこかの世界から喚んでみる? そっちも今流行りみたいだよ?」

 

「えぇー……他所様に迷惑かけるのはなあ。それに最近は『身勝手に召喚されたから復讐する』も流行ってるって聞くし、対象が現地民になるのも私達になるのも御免だぞ」

「……それもそうだね」

 

 反省の片手間に行われる宙に浮かんだ運命の消化、あるいは適当な在庫処分。

 適切な人材をいちいち見出すのは面倒くさい。神だってサイコロを振りたくなる時はあるのだ。

 

 

「……とにかく次だ、次。他にはどんな流行りがあったっけか?」

「えっと……じゃあ今度は『いきなり史上最強!』にしてみない?」

 

「ああ、それならさっきと同じ展開はないか。……ちょっと気は進まないけど」

「大きな力を持つならそれに見合った努力があって欲しいって願いは多いもんね。それじゃ時間が掛かり過ぎるからしょうがないんだけど」

 

 くい、と手繰り寄せるように彼らの手が動けば、何処より現れた光の板がその手元に滑り来る。

 無数の文字列が踊る坂上を彼らの指先がなぞれば、浮かび上がった光が新たな窓を生み出した。

 

 

「……んじゃ、一番に重視するのは人格面だな。『この力で俺は魔王になる』とか言い出されたらシャレにならんし」

「ああ、あるよね、それも……貰った力を世の為人の為に使ってくれるような人柄で、だけど今は無力に打ちひしがれてるような感じの人材なら……あっ」

 

「おっ、良さそうなやつ見つけたか?」

「うん。この人なら大丈夫じゃないかな。真面目で誠実で…どんな相手にも筋は通すって感じ」

 

「…………ん、これならイケるだろ。与える(チート)は……ま、こんなとこか」

「うんうん。後は運命を調整して……よし完了! それじゃあ行くよ───」

 

 

 

「「いざゆけ、新たな『勇者』となる者よ!」」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「「───あ゛っ」」

 

 

 此処ではない何処か。

 今ではない何時か。

 零れ落ちたのは、二人分の濁り切った悲鳴。

 

 

「「うあ゛ー……」」

 

 悔恨に悲哀。

 憐憫と同情。

 

 総じて絶妙な負の感情を撒きながら、二つの人影が目頭を押さえる。

 

 

「女の子に刺されちゃったね」

「背中からグッサリ……うわ即死じゃねえかコレ」

 

 

 窓の向こうに映るは、一つの人影。

 倒れ込むその身体には、今や指先一つ動く気配は無く。

 

 周囲を紅色に染めているのは、穿たれた心の臓より溢れ出た血潮。

 乗りかかった少女が握る刃から、垂れ落ちる赤き水が彼の背を濡らし。

 

 

 遠い、遠い、窓の彼方から。

 骸の上で、周囲で、身も世もなく崩れ落ちる()()()を眺めて、二人は呟く。

 

 

 

「「『彼を巡る女の子同士の取り合いの末に刺されて死ぬ』、かぁ……」」

 

 

 

 

 

 

 人が一定の年齢に達したとき、天より特別な能力が授けられる世界。

 窓の向こうに広がっているのは、そんな世界の片隅で起きた悲しい事件だった。

 

 

 長く邪悪なる者の侵略に晒されてきた街に生まれた救世主。

 非才の身を嘆きながら、清く誠実に生き続けた青年の身に降りた神々の微笑み。

 

 彼に与えられた能力は見た目にも分かり易く、その周囲に降りかかる悲劇の尽くを打ち払い。

 その姿は畢竟、悲嘆を託つ人々の希望の象徴となりて。

 

 惜しみない喝采と期待、喜色と憧憬の眼差しが青年を包み込み。

 その瞳の奥には、思い描いていた切なる願いが現実となった様が輝いていた。

 

 

 

「―――で、めっちゃくちゃ女性にモテるようになったと」

「そこはまあ、当然と言えば当然の帰結ではあったんだけどなあ」

 

「でも誠実な彼は、自分が愛する女性は一人だけって宣言したんだよね」

「まあ、真面目男としては当然の回答だったよな」

 

 

 

「結果、彼の唯一になりたい女性達による仁義なき殺し合い(バトルロワイアル)開始と」

「そうはならんやろ」

 

 なっとるやろがい。

 

 

 

「刺した女の子メチャクチャ泣いてるんだけど……あっ、自分も刺した」

「幾ら他の女に勝てそうにないからって……自分のモノにならないなら貴方を殺して私も死ぬ系の地雷乙女(ヤンデレ)混じってたのは想定外過ぎるんだが?」

 

「でも神公認(公式チート)『勇者』が一刺しで……あっ、コレ千年前に降ろした神器だ」

「……何でよりによってそんなモン持ってんだよヤンデレが!? 幾らチート持ちでも神器で急所ブッ刺されたらそりゃ死ぬわ!!」

 

 窓の向こう、絶望に打ちひしがれ泣き崩れる乙女達。

 窓の手前、儘ならない現実に嘆く神々。

 一番嘆きたいのは殺された彼……および折角の救世主を奪われた周囲の街人達だろう。

 

 

「……なんでこう『勇者』の周りってメンドクサイ女が多くなるんだ? 愛してる、貴男の為なら何でも、とか言いながら当人の意思置いてけぼりにする奴が多過ぎるだろ……」

「集まって来る母数が多いから、自然とそういうのも混じるだけ……だといいなあ」

 

 誰のせいだと罵り合う街人の姿が映り始めた窓が、鷹揚な手振りによって音も無く閉じられる。

 暫しの沈黙の後、どちらかともなく伸ばした彼らの手から、軽快なサイコロの音が響いた。

 

 

「…………次、どうする?」

「…………刺されなそうな男性を探す?」

 

「それだとすぐハーレム作りそうだなあ……イヤ、悪いとは言わねえけどさ」

「本人達がそれで幸せなら文句を言う筋合いはないもんね。……ピンクな方向に耽って『勇者』の役目を放棄されたら困っちゃうけど」

 

「まあ、現役英雄の中にも何人かそういうのは居るし、節度を保ってくれりゃ問題は……あっ」

「? どうしたの?」

 

「いや、良いこと思い付いてさ……ほら、こういうのはどうだ?」

 

 くい、と手元に寄せた光の板を二、三度つつけば、再び新たな窓が彼らの眼前に現れる。

 期待に微笑んで、首を傾げて、覗いた窓の先に映ったのは、十人並みな容姿を持つ一人の少女。

 

 

 

「『健気な女主人公の周りで男達がスパダリ化』ってのも流行りのジャンルだったろ?」

「……ほほう?」

 

 

「ついでに本人に与える能力(チート)を防御特化か回避特化辺りにすれば背中を刺されたり監禁されたりのデッドエンドルートも避けられる、ハズだ!」

「……うんうん!」

 

「これなら上手く行けば英雄レベルの人間を一気に増やせるまである! これで人材不足も一気に解消! まさに一石二鳥の名案だと思わないか?」

「……なるほど! 弄らなきゃいけない運命がネズミ算的に増えて急激に忙しくなりそうな以外は完璧なアイディアだね!」

 

 

 ……朗々と返された見解に、一拍。

 微笑む相方に振り返り、じっとりとした目を向けて。

 

 

「…………まあ、その、なんだ。それぐらいの手間は惜しまず頑張ろうぜ、神として」

「ふふ……そうだね。一緒に頑張ろっか」

 

 片や、肯定なんだか何なんだか微妙な同意を見せた相方に渋い顔で決意を語り。

 此方、そんな相方に朗らかな横顔を見せつつ、粛々と手元の作業に着手して。

 

 全知全能には程遠くも、一の存在には余りある『能』を湛えた彼らはされど、他者に求める故に見合う働きを為さんと気を取り直すのであった。

 

 

「…………ん、これで調整完了。与える(チート)も……こんな感じっと」

「こりゃ初動が安定するまでは付きっ切りかな……まあ、いいさ。それじゃあ行くぞ───」

 

 

 

「「いざゆけ、新たな『勇者』となる者よ!」」

 

 

 

        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

 

「───あ」

 

 

 此処でない何処か。

 今でない何時か。

 零れ落ちたのは、呆然とした呟き。

 

 

「うえぇ……?」

「……オイ何だ? 今度は何が起きた? 今日まで何も問題は無かったハズだろ?」

 

 悔恨に悲哀。

 驚愕と困惑。

 

 総じて惑いに満ちた負の感情を撒き、目頭を押さえた相方の元に駆け寄るもう一人。

 

 

「えっと……彼女の周りに集まった男性達、皆しっかりスパダリ化したよね?」

「あ、ああ、非の打ち所の無い……とまでは言わんけど、各方面で大活躍してるな」

 

「それでいて男性同士も仲は悪くないし……伴侶を定めた彼女を祝福もしてたよね」

「そもそも歳が釣り合う男を少なくしたからな。同世代か、子世代あるいは孫世代か……そこらが分散するように年齢設定すれば、その辺は平和になると思ったし」

 

「……最終的に彼女の心を射止めた彼、その中でも頭一つ抜けてたよね」

「ああ……傍から見てるだけで幸せになれるぐらい、おしどり夫婦してたよな」

 

 

「…………神々(私達)由来じゃない、すごーく優秀な人材、になってたよね?」

「…………つまり?」

 

 

 窓の向こうに映るは、一つの人影。

 空を見上げる少女の顔は呆然と。

 

 遠い、遠い、窓の彼方から。

 少女を見下ろす神の一柱は、据わった眼差しで相方に告げる。

 

 

 

「『勇者候補として他所の世界に召喚』されちゃった、彼」

「…………は?」

 

「これが神のやる事かー、って今メッチャ恨みの視線でこっち見てるよ彼女」

「…………」

 

 

 

 片や、相方を見つめて。

 此方、相方を見つめて。

 

 

 

「……殴り込み、行くか」

「おーともよ」

 

 

 

 これは、暇を持て余したい神々の()()奮闘、その一幕である。

 





 わたしだ

 お前だったのか

 暇を

 持て余した

 神々の(ry


 おお、メタいメタい。
 テンプレにはテンプレの面白さがあるんですけどねー。


 神々の作者脳内ビジュアルはガレ魔女真Endの世界創世ナチル&ユリィカです。尊い

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