「分かったお前達の記憶と情念を俺が継承しよう」
虚数空間を彷徨っていた若干7歳の少年白銀武は、数百数千の白銀武の魂と出会い、彼らの記憶と情念を引き継ぎ、対BETAとの戦いを決意した。
数百数千の白銀武の大半は対BETA戦争に敗れ、志し半ばで散った。中には戦い抜いた者はいるが、多くの者を失い後悔と懺悔の思いを持つ。
そしてまた、1人の少年白銀武が戦士として立ち上がろうとしている。
「武ちゃん朝だよ~!」
隣家の幼馴染鑑純夏はそう言うなやいなや、白銀武の部屋に早朝に駆け込むと武のベッドに飛び込む。
「ぐはぁ、純夏お前なぁー!いきなり飛び込む奴がいるかよ……」
武はダイビングモーニングをした純夏を睨む。
「えへへ」
「えへへじゃないよ、もっと別のお越し方出来ないのかよ、まったく……」
武はぶつくさと文句を言いながらも、上半身を起こしながら着替えを始める。
「お母さんが、武ちゃんを起こして来なさいって、朝ご飯出来ているよ」
「うん、分かった……」
「部屋の中に一杯有るの、武ちゃんのお誕生日のプレゼントなの」
武の部屋の中には、昨日の内に京都から届いた武の誕生日のプレゼントが陳列をしていた。
「ああそうだよ、殆どが母さんと亜真音さんと斑鳩雛子様からだよ」
武の母親の名前は京夏日向で、三大有力武家の一つ京夏の女性で、斯衛軍の赤で、階級は大尉で斑鳩家の現女当主・斑鳩雛子の御側役で、京夏家の当主名代を務めている。
亜真音のフルネームは京夏亜真音で、武の3つ年上で、楓夏家の現女当主なのだが、生まれながらの病弱で、武家の当主で在りながら、将来性が全く期待をされていない。亜真音の母親・京夏黎子が家を取り仕切ってはいるが、日向と武の事を余り良くは思ってはいない。
病弱の1人娘を思う余り、京夏家の御家乗っ取りを企んでいるのではと、疑心暗鬼の目で見ていた。
京夏日向は幼い頃に両親が殉職をした為、それを不憫に思った先々代当主が日向を楓夏家の養女として引き取る。
周囲も武家間の養子縁組は珍しくはないので、然程気にもしなかったのだが、実は京夏家に取っては大当たりだった。
彼女は小柄ながらも卓越した身体能力の持ち主で、剣術と人型機動兵器戦術機の衛士として、抜群の力量を示した。
そんな京夏家に相次いで悲報が起きる。
先々代当主と先代当主が相次いで遺伝子疾患から来る大病を患い、先々代当主は四十代で、先代当主が三十代で、相次いで没したばかりか、先代当主の1人娘も生まれながらにして病弱と、城内省と五摂家が頭を抱えたくなる事態に。
京夏家は三大有力武家(月詠家、真壁家と並ぶ)の一つである以上は城内省も五摂家も楓夏家の御家断絶は避けたい。
京夏家先代当主・京夏哲雄は見舞いに訪れた日向に対し、
「……日向済まないが、京夏家に戻って来てくれないか、影行殿と義甥っ子には、本当に申し訳ないと思うし、遺恨を残さない様便宜はきちんとする……」
哲夫は見舞いに訪れた日向に苦渋に満ちた顔で言う。
日向の手には生後半年しか経っていない乳のみ子・武がスヤスヤを眠り、夫と離婚し子供と離れる事への抵抗感は間違いなく存在しているのだが、大恩が有る京夏家の御家断絶の危機を見過ごせない良心の呵責がせめぎ合う。
そこに城内省が仲介役へと動く。
城内省の法務部の担当者は横浜の白銀家と京都の京夏家を幾度か往復し、以下の点で纏めへと動く。
①帝国政府、城内省、五摂家に取って京夏家の存続は何よりも最優先事項
②白銀夫妻は離婚
③離婚への慰謝料として、城内省と京夏家から双方合わせて一億円の慰謝料他、日向の生家風祭家(白の外様武家)の家名と遺産を白銀武に相続させる(実際に城内省には日向の実子に相続させる予定だったが、日向の武家間の再婚させる予定でもあった)。
④相続させる条件として、白銀武が15歳の成人を迎えたら。
⑤風祭家は城内省の管理下に有り、風祭家の財産状態は至って健全で有り相続には至って心配はない。
⑥黒の近衛鑑家をお世話役(&監視役)として、引き続き横浜市内に残す。
⑦母子の面談と家族水入らずは保育園、幼稚園、小学校、中学校が長期の休みとなる春休み、夏休み、冬休みの年3回とし、帝都・京都で一緒に暮らすのを認める。
⑧連絡の取り合いに付いては基本自由だが、子供の誕生日と病気と怪我と冠婚葬祭以外は余り宜しくはない。
⑨白銀夫妻の離婚日時は白銀武の一歳の誕生日の翌日とする。
城内省と武家の保守派がいざと為れば、非情の手段を厭わないのを知っている影行と日向の2人は、1人息子の身の安全を確保する為に城内省の仲介案を飲んだ。
いや、2人は飲むしかなかった。
城内省と武家の保守派には、白銀夫妻が過去には無い最大限の譲歩と自負する仲介案を飲まなければ、日向への見せしめと武家内の引き締めを狙い、影行と武を国外追放した上で謀殺する計画を立てる。
その動きを斑鳩家現女当主・斑鳩雛子から知らされた白銀夫妻は涙を飲んで離婚案を受け入れた。
この離婚劇は後世の歴史化達からは城内省や武家の選民思想と傲慢の表れだと批判の対象となるが、後に白銀武の戦友となる真壁介六郎は引退後の自著で仕方なかったと擁護。
『もし白銀夫妻が離婚しなければ、保守派の怒りを買って白銀武は間違いなく謀殺された。それ程迄に当時は保守派の力は大きかった」
と自叙伝に印している。
だけど武は京都から贈られた8歳の誕生日プレゼントを複雑な思いで見た。
両親が置かれた苦しい立場は理解はするものの、やはり両親には仲良く一つの屋根の下で、仲睦まじく暮らして欲しいのが本音だ。
京夏亜真音と斑鳩雛子の2人は日向と武が置かれたに同情的なのか、武の誕生日にはお祝いの品を贈り、春休み、夏休み、冬休みでは、母子や家族水入らずの時間を取らせる。
その様な措置や配慮をして暮れる城内省と京夏家に武に両親は感謝をするのだが、武からすれば、
「なんで家族が一緒に居るのに、城内省の糞役人の許可が必要なんだよー!」
怒鳴り散らすたくもなる。その都度、武の両親と鑑家夫婦は武を窘める。それが武の不満を蓄積させる悪循環。
(だけど今優先すべき事は……)
そう数百数千の白銀武の情念を受け継いだこの世界の白銀武だが、どうすれば城内省や武家の頑迷な封建主義保守派を刺激しないで、目を盗みながら、対BETA戦略を構築すればいいのか暗中摸索の段階だ。
(仲間が欲しい。出来れば、神宮寺大尉や伊隅大尉の様な信頼が出来る仲間が……)
彼女達なら自分に的確な助言をして暮れるのではと思いもあるからだ。
何よりも、
(純夏の安全をどうやって確保するかだよな……)
この世界の純夏は他の世界の記憶が一切無く、年相応の女の子だと言う事。
武に取ってそれだけが救いだった。
(夕呼先生が自分に気付けば、純夏に辿り着くのは簡単だ)
純夏の安全を確保するにはどうするか。
(武勲が欲しい。出来ればハイヴ攻略を成し遂げた武勲が)
比類なき武勲を立てれば、その軍功と名声で純夏の安全を確保が可能になる。
(少なくとも、夕呼先生に純夏への手出しが出来なくなる)
「武ちゃん、一緒に帰ろう」
純夏に取って学校の行き帰りは何時もの日常だ。
「ああそうだな…」
その為、何時も冷やかしの対象とされる2人。
照れる純夏だったが、武はそれどころではなかった。
(まただ……)
武はここ数日奇妙な゙気配を感じていた。物影から自分をじっと観察をする気配をだ。
(気付かない振りをしていよう)
気付かない振りはしているが、背中に冷や汗が流れる。
「武ちゃんどうしたの?、何か顔色が悪いよ?」
武の変化に人一倍敏感な純夏が心配な顔をして、武の顔を覗き込む。
「大丈夫だよ純夏、ちょっと考え事をしていただけ」
懸命にその場を取り繕うとする武。
「えー、武ちゃんが考え事!?何か似合わないー!」
まるで天変地異が起きそうな顔をする純夏。
「お前、俺をいったい何だと思っているんだ?」
「えーだって武ちゃんだよー!」
武はこの他愛ない喧嘩が、何時まで出来るのか不安で押し潰されそうだった。
(父さんと母さんには言えない、一つ間違えたら間違いく純夏を危険に曝す)
これから先の未来を知った武に取って、純夏の安全確保は急務だった。
(いっそうのこと、インドにも行くか・・・)
インドは昨年にカシュガルハイヴから発したBETA群がアフガニスタン→パキスタン経由でインドに侵攻、ボパールにハイヴを建設。そのボパールのハイヴを巡りインド軍、パキスタン軍、国連軍、ASEAN諸国を中心とした大東亜連合軍が、寸土を争う決死の防衛戦を展開をしていた。
日本帝国政府も東南アジアとオセアニアの資源・穀倉地帯を守ろうと、大規模は支援を行っている。
その危険地帯に自分から赴けば、純夏への監視の目が緩んで逆に純夏が安全になるのではと。
(いや駄目だな、俺1人で外国に行く手段が無い。それに周りが認めるはずがない。……政治的後ろ盾が必要だな)
この一ヶ月半、武は全く何もしないでいた訳ではないのだが、1人で外国に行く選択肢も現時点では捨てる訳ではないのだが凍結をするしかない。
心配をする純夏とは玄関前で別れて、武は自宅の中に。
「ただいま、……と言っても誰もいないか……」
父親の白銀影行は光菱重工の戦術機開発部の技術者で、日本帝国初の戦術機開発計画『曙計画』に参加。第一世代機F-4ファントム系列の戦術機『撃震』の開発にも携わったのを皮切りに、斯衛軍専用戦術機『瑞鶴』、第二世代戦術機F-15系列の戦術機『陽炎』、帝国陸軍が開発中の第三世代機『不知火』の開発にも関わっている。
「確か母さんとは、『瑞鶴』の開発の途中参加の時に知り合ったんだったんだよな……」
今では世界初の第三世代機を開発をしている日本帝国ではあるが、人型機動兵器戦術機の開発黎明期の頃は、技術の蓄積不足が原因で第1.5世代機『瑞鶴』の開発が難航。
理由と原因は『瑞鶴』を限りなく第二世代機に近付けさせようとしたのが理由と原因。
大幅な遅延の懸念とそれに寄って開発予算の枯渇。
そんな折に白銀影行は城内省と斯衛軍から、知人の斯衛軍の2人の中尉篁裕唯、巌谷榮二の推薦で、状況打開の為に呼ばれたのだ。
途中参加ではあるが、纏め役に長けた白銀影行は、即座に開発スタッフ全員を招集し、今一度原点へと立ち戻らせると同時に、問題点をガラス張りにして全員に整理理解させる。
アメリカ的に言えば、白銀影行はゼネラルマネージャーの立ち位置でこそ真価を発揮する人物なのだ。
其れまで停滞していた『瑞鶴』の開発は、一気に進みだして何とか納期ぎりぎりで、『瑞鶴』の開発に漕ぎ着ける。
その報酬で城内省からは横浜の一等地に家一軒を立てられる高額報酬と、有力武家・京夏家からは開発衛士だった京夏日向との結婚の承諾を得た。
結婚式は保守派への配慮から極一部の親しい内輪だけの結婚式で済ませたのだが、当の本人達は幸せだった。
まあ日向の合法ロリの容姿が原因で、影行の幼女趣味ロリコン疑惑を持たれるのだが………。
何しろ武と日向が並ぶと母子には見えず、年が離れた姉弟にしか見られない。それで良く斑鳩雛子に誂われてしまう。
最もその幸せな結婚生活は3年も持たなかったが。
ランドセルを勉強机の上に置いた武は、帝都・京都から贈られて来た誕生日プレゼントの開封作業を開始、母親・日向は武の身体の成長に合わせて冬服を贈る。
中身を全部確認をして、日向、雛子、亜真音の3人に御礼の手紙を送らなくてはならない。
「これで今日一日が潰れるな……」
何も知らなければそれでも良いのだが、これから先の未来を知ってしまった今、平穏無事に一日を終わらせてはならなかった。
「やはり危険は覚悟の上で動くしかないのか……」
武は腹を括るしかなかった。このまま平穏無事の日々を過ごせば、幼馴染の純夏と生まれ故郷横浜を危険に曝してしまう。それは武にからしたら許容範囲外だ。
武は日向達への御礼の手紙だけではなく、日本帝国政府外務大臣榊是近へ封筒を送る事に。
【帝都・京都 御剣邸】
御剣家の1人娘御剣冥夜は自宅の道場で木刀を振っていた。
「相変わらず練習熱心ですなぁ冥夜嬢」
「鎧か……」
鎧の姿を確認した御剣冥夜は、剣術の練習を中断し、手拭いと水筒を手に取り、汗を拭きながら水分補給を取る。
「して、措置に頼んだ件はどうだった……」
「例の王子様の件ですな?」
鎧はやや冷やかし気味に言う。
「からかいや挑発には乗らんぞ」
御剣冥夜は素っ気なく答える。
「やれやれですなぁ……」
肩を竦める鎧だが、こう言った所はやはり姉妹なのだと思うと。
「で、どうだった?」
御剣冥夜は促す。
「私が見た所では、貴方様同様普通の子供ではありませんなぁ。何しろ私の尾行と隠形に気付いていましたから」
「そうか、手間を取らせて済まなかった。そなたに感謝を」
「いいえ、宜しいのですよ。で、どうなさるおつもりなのですか?」
「冬休みに武と会う、手配を頼めるか鎧?」
少しばかり考え込む鎧。
下手に2人を会わせれば保守派を刺激しかねないからだ。
況してや帝都・京都は保守派の牙城、その帝都・京都中には保守派の目が付き纏う。
そして武と冥夜の2人は保守派に取って、目の上のたん瘤扱いに為っている。
「どうしても、白銀武に会いたいのですな?」
「今の私は京都からは出られないのだ……」
「やれやれ不便ですなぁ、もうすぐ21世紀だと言うのに」
鎧にしても保守派の頑迷固陋には呆れている、
いったい何時の時代に生きているのかと。
御剣冥夜は五摂家の一つ煌武院家に生まれたのだが、御剣冥夜には一卵性双生児の姉がいた為、煌武院家の分家の一つ御剣家へ養女に出された。
御剣冥夜の義両親が子宝に恵まれないが表向きの理由だが、本当の理由は別にあった。
それは『煌武院家の呪い』だ。
第三者からすれば今時呪いかよと呆れるが、保守派からすれば『錦の御旗』であり、必要とあれば非合法活動を公然と行う『大義名分』でもあるのだ。
(白銀武の方は斑鳩家が後ろ盾なのだから、保守派と言えど迂闊な事は出来ないだろうが、冥夜様の方は煌武院悠陽様の地盤固めはまだ終わってはいない……)
鎧としては其の危険度を計るしかない。
「駄目なのか鎧?、私はどうしても武に会いたいのだ」
御剣冥夜は縋る目で鎧を見る。
「分かりました、会う場所と日時は私に一任させてくださるのが条件です。宜しいですね」
「ああそれで構わない、そなたに感謝を」
「いやいや別に、息子の友達の頼みですから、はっははははははは」
「そなたの子は娘であろう?」
「おや、娘の様な息子、息子の様な娘でしたかな?、まあどっちでも構いませんが」
御剣冥夜は良くないと思ったが、突っ込んだら負けと思ったので何も言わない冥夜。
そう御剣冥夜も記憶持ちなのだ。
正確には記憶と性格が上書きされたと言っていい。
「では、私はこれで」
用件を済ませた鎧は、直ぐ様姿を消す。
御剣冥夜は鎧が姿を消すと、剣術の練習を再会した。
「そうか、武ともうすぐ会えるのだな」
そう思えただけで練習に熱が入る彼女だが、それと同時に気掛かりも。
『母様、父様のお星様は遠いの?』
『そうだな、私達がこの星で平和で暮らして居られるのはそなたの父様が、地球でBETAで戦っているからだ明日香』
「明日香は元気であろうか……」
不思議な感覚だった、未だ8歳の身なのに、武との間に出来た子を生み、育てた感覚が蘇る。
その後の記憶がどうしても思い出せない。
思い出そうとすれば頭の中が真っ白になる。
ただ漠然とだが、自分は長く生きられなかったのだけは分かり得た。
「もう二度とあの様な思いはしたくはない」
愛する夫と子供との離別等と。
そしてもう一つの世界では……。
「武、私は強く為って見せる。そなたにもう二度とあの様な真似はさせない。そして私の思いを叶えて見せる、私とそなたの絶対的運命を」
【1991年12月21日土曜日】
武は家の近くにある帝国軍衛士訓練学校横浜基地に向けて歩いていた、柊町御自慢の桜並木を見に行く為だ。
(やるだけの事はやった、後は榊外務大臣次第だ)
お誕生日のプレゼントを贈って暮れた日向、亜真音、雛子への御礼の手紙を送ると同時に、榊外務大臣宛にこれから対BETAで起きる事を記した封筒を送った。
これと言ってまだ返事は返ってはいないが、決して無視は出来ないはずの自信はある。
「こんな時、母さんや俺の立場は便利だよな……」
何しろ母親の日向は五摂家の一つ斑鳩家現女当主斑鳩雛子の御側役で斯衛軍大尉、しかも有力武家京夏家当主の名代。
武本人も日向の実子だと認知され、日向の生家風祭家の新当主候補だ。武本人は余り乗り気ではないが、この際は利用出来るモノはとことん利用するしかない。
そうこう土曜日の昼下がりの午後武は桜並木へと向かう。
帝国軍衛士訓練学校横浜基地は、1995年春に日本帝国政府が誘致したオルタネイティヴⅣ計画開始後に、国連軍横浜基地となるが今はまだ帝国軍基地だ。
ふと気付くと中学生と小学高学年ぐらいの背丈の女の子2人が、自転車を持って在る桜の前に立っていた。
(・・・・・・・・)
武はそんな2人に何処か懐かしさを感じた。
2人の女の子も武に気が付いたのか、武に振り向く。
「っ……」
武からしたら懐かしいどころではなく、思わず立ち尽くして息を飲む。
2人の女の子も同様なのか武の顔を見て驚く。
「し・ろ・が・ね・なのか……」
やや背が高く、ボーイッシュの女の子が口を開いて問う。
「そうですが、お二人の名前は?」
「い「しろがねーえ!」……」
もう1人の女の子が自転車のスタンドを立てて、怒った顔で武に向かって突進して来た。
「いっ」
武にはもうそれだけで誰なのか分かった。
「速瀬中尉落ち着いてぐださい」
「これがどう落ち着けって言うのよ、私は横浜基地の反応炉で死んだはずなのに、気付いたら昔住んでた家の自分の部屋で寝て致し、しかも子供の身体に戻っているし、これはどう言う事なのかきちんと説明しなさい。3.2.1.はい!」