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《1992年4月1日水曜日・帝国陸軍横浜衛士訓練校》
「ふうん〜それが斯衛軍の軍服なんだ……」
水月は斯衛軍の赤色の軍服を身に纏った武をジロジロと舐め回す様に見る。
「余りジロジロと見ないで下さい」
二日前、斯衛軍技術少尉に任官をした武はやや気恥ずかしい気分でいた。
武が技術少尉なのは斯衛軍第16大隊が新OSを含む特殊支援装備開発部隊に決まったのと、武の斯衛軍と帝国軍内での立場を保証する為の措置。武としては正式な衛士になりたかったのだが、やはり武の年齢が引っ掛かり、せめて元服する15歳迄は極力戦場に出さないが帝国政府と軍部の決定だ。そして武が赤服なのは、五摂家の斑鳩家と煌武院家に親藩武家京夏家を始めとする複数の譜代武家と外様武家の推薦が合った他ならない。
富士教導団富士裾野演習場での新OS運用試験での結果に加え、シュミレーターでの時間制限付きとは言え、8歳の未訓練の身でありながら、AAAの衛士適性数値に加え、熟練衛士顔負け操縦技量を持っているのが決定打となる。
斯衛軍としても武と言う逸材を逃したくはなく、斑鳩家に貸しを作る意味でも武の斯衛軍技術士官少尉として任官へと舵取りを切ったとも言える。
簡易ながらも、1992年3月30日月曜日、帝都城内で両親と斑鳩雛子と煌武院悠陽を始め、推薦した武家達が立ち会う中で任官式が厳かに執り行われた。
この時、武と初の顔合わせとなった現政威大将軍斉御寺行徳と煌武院悠陽との間に、其々個別の会談が。
城内省の老中保守派を中心とした保守派は、武の武家社会上位に当たる【赤服】着用に、苦々しい顔をしたが、正式な手続きに基づいての任官だったのと、煌武院家当主煌武院悠陽が賛成側に付いたのが、保守派の出鼻を挫いた。保守派からすれば煌武院家が武の任官賛成側に付くのは全くの予想外過ぎて身動きが取れなくなる。煌武院家は五摂家筆頭家の立場と過去の苦い経験から、本来は保守派寄りだった。だからこそ武の斯衛軍技術少尉としての任官賛成は痛手になった。
武からすれば両親の復縁再婚の道が拓けたので、取り敢えずはそれで良しとする事に。
(余り欲を描いても良いことないよな……)
正直に言えば武の心情で複雑だ、武が強く望んだ帝国陸軍技術廠への出向と、第三世代機の開発、電磁・高周波系新兵器の開発、支援装備一式の開発、120ミリ電磁加速狙撃砲2門を搭載した支援砲撃自走砲、新型装甲の開発、水素燃料と放電推進機関の開発、360度全周囲モニターの開発と言った案は全部通った格好。日本帝国の技術的革新を引き起こして、ハード、ソフトの両面の引き上げを行い、帝国の継戦能力を引き上げてBETAの対抗出来る質を持たせる計画はスタートをさせる事が出来た。
序でに言うと冥夜の問題に関しては、煌武院家は不介入の姿勢を取っており、冥夜は横浜市柊町に住み、武が通う小学校に転入予定。住まいは武と同じ学区内で、大空寺財閥が所有する大きめの邸宅を借り切り、義両親と家政婦も一緒なので私生活面での心配もない。
本来なら完全勝利と雄叫びを上げても良いのだが、両親や京夏家の問題や保守派との確執はちっとも解決をせず、どうも私生活の方は先送りさせらてしまっている感が拭えない。
その原因は斉御寺政威大将軍と煌武院家当主煌武院悠陽の2人に有った。
平たく言えば、
《お前の要望は殆ど飲んだのだから、両親の復縁再婚問題は当面は棚上げしろ、戦場に出ようとするな、大人しく日本国内で開発に専念していろ》
となる。
現政威大将軍斉御司経盛は典型的な凡庸な人物で、何かを変える事への発想がなく、利害関係の調整型。武が見た所可でも無ければ不可でもない印象。戦時向けの人物とはとても言えない印象を持っ。斉御司経盛自身も自分が凡庸で、古い価値観寄りなのを自覚している。
(まあ本人が其れを自覚しているだけ、未だましなのかもしれないけど)
煌武院悠陽の方は、聡明の一言だが、武と同じ歳で両親が不慮の交通事故で亡くなった事で、足場固めの期間も無く五摂家筆頭格煌武院家の当主に成った事で、かなり苦労している最中だった。だから冥夜の件が無ければ、この件に関わる気は全く無かっただろう。冥夜の件で老中保守派からかなりやいのやいのと言われたたが、冥夜の安全の為に、敢えて京都と煌武院家から遠ざけたいと考えた彼女は、老人達の反対意見をかなり無理して、武の斯衛軍赤としての任官を支持し冥夜を武に託したとも言えなくもない。
だからこそ、武には、
「白銀殿宜しいですね、幾ら御両親の為とは言え、妹の冥夜を任せる以上、迂闊に戦場に出てはなりません。白銀殿の身はもう武殿一人の身ではないのですよ。白銀殿が戦場で戦死すれば、武殿の御両親と冥夜はどうなります?」
と、武に釘を刺しに来た。だが武は【白銀武】課せられた生き様を受け入れ、道半ばでBETAとの戦い敗れ散って行った数多の【白銀武】無念を晴らしたかった。だからこそ、BETAとの戦いに勝つ為の兵器や装備を開発し、持続的其れ等を前線に供給が可能な生産力を日本帝国に持たせねばならなかった。それと同時に進捗で、北東アジア戦線を維持しながら、95年にはマンダレー・ハイヴと96年にはウランバートル・ハイヴをフェイズ1で攻略か、ハイヴ建設を阻止しなくてはならない。その上で、喀什・ハイヴと重慶・ハイヴのBETA集団を朝鮮半島チョルウォンに引き摺り出しての一大決戦に持ち込む気でいる。此処で勝てば、日本帝国は数年の猶予を得られる。だからこそ武は安全な後方でのんびりと兵器開発をしてばかりとは行かないのだ。
無論悠陽の耳にもOS・XMシリーズを始め、数多くの技術的革新を齎している情報は知っている。今後の日本帝国の国際的評価を高める為にも、武を迂闊に戦場に出して死なせる訳には行かない。技術士官とは言っても列記とした斯衛軍士官だし、異例中の異例では有るが、武を赤に据えたのも武が日本帝国に取って必要不可欠と武家社会に認知させ、冥夜を託したのも武に戦場に出るのを思い留まる為でもある。
「それは聞けません」
「何故です?」
「時間が無いからです」
武はそう断言する。そう時間が無さ過ぎた。すべき事は山積みなのに、この国の支配階層の大半は危機意識が余りにも低すぎていた。だからこそ、武は自分が未だ子供だからと言って大人達に丸投げして甘える事は出来ず、馬車馬の如く働かなくてはならないし、周りの大人達の尻を蹴飛ばさなくてはならない。
「時間がない……」
「そうです、時間が無いから急いでいるんです、このままでは後十年もしない内に、この国はBETAに攻め滅ぼされてしまうでしょう。自分は何としてでもそれを阻止したい。だから子供だからと言って、何もしない訳にはいかない」
複数人の転生者が居るか、科学技術に強い専門家が後十年早く転生していれば、武の負担は大きく減ったのだが、生憎と世の中そう簡単に便利に出来ていない。
「白銀殿……」
「分かって下さいと言うつもりは有りません、ですが、自分の邪魔だけはしないで下さい」
「ッ・・・・・・・・・・・・」
武は悠陽に一礼して立ち去る。
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煌武院悠陽はショックを受けていた。武が置かれている状況や、両親の離婚原因が武家側の一方的な都合に寄るモノで白銀元夫妻の本意ではなかったのも。だから武が頑張っていているのは両親を復縁再婚させたい一心なのだと、その為なら子供の身で合っても両親の為に敢えて戦場に出ようとしているのだと。
「でも違いましたね……」
だから思い留まる為に冥夜を武の傍に置けば、冥夜の為に戦場に赴こうとしないのではと。今度の人事に関しては斉御寺行徳と悠陽の意向が強い。斉御寺行徳も悠陽も本質的には保守派に属する。改革を否定する気は無いが、急激な変革を2人は余り好まない。斑鳩家、京夏家、篁家の顔を立てて赤にしたが、保守派を刺激するのは良く無いと思い、技術士官と言う武勲を立て難い中途半端な人事を行った。
「私は浅はかだったのでしょうか……」
武は言った時間が無い、後十年も無いのだと。
「私はどうすれば良いのでしょうか……」
幾ら自分が煌武院の当主で合っても、今は御飾りも当然で煌武院家の実権は家老達が掌握している以上、武の為にしてやれる事は少な過ぎた。
「どうやら振られた様ですな悠陽様」
「鎧……、ええ、そうですね、儘ならないものですね……」
煌武院悠陽が家老達に蛇蝎のごとく嫌われている鎧左近を重宝するのは、鎧と知己の間柄だった今亡き父親の遺言。
『自分に何か遭った時は、鎧左近を知恵袋として頼れ』
と。
実際に悠陽に取って貴重な知恵袋的存在だ。この鎧左近が居なければ、煌武院家は海千山千の家老達の喰い物にされて四分五裂していたはずだ。
「悠陽様もお年の割には聡明な方ですが、白銀武は本当に十歳未満なのかと疑いたくなります。彼処まで知識と見識が卓越していますと、一種の化け物ですな」
「……私の手に余る方と……」
「まあ、今はそうですな」
「はっきりと言うのですね、面白くありません」
悠陽は余程面白くなかったのか、年相応の表情で顔を膨らませる。
「白銀武は今は斑鳩家に任せるしかないでしょうな、ですが帝国に取って彼の存在は諸刃の剣です」
「諸刃の剣?ですか?」
「はい、扱い方を間違いなければ、この国をアメリカからの軛から解き放しますが、一度扱いを誤れば、この国の滅亡の原因になりかねかないかと」
「それ程ですか、白銀武は」
「今は未だですが、十年後には『彼に率いられた羊の群れは一国を攻め滅ぼし一国を興す』存在になるでしょう」
煌武院悠陽は驚きの余り目を丸くする。
「……随分と高評価なのですね鎧」
「……まさか自分が生きている内に、英雄の器を持つ者と出会えるとは思いませんでしたなあ」
「英雄の器ですか?」
「ええ、自ら陣頭に立ち、万の民や兵を覚醒させ、万の民や兵を奮い立たせ、万の民や兵を勝利へと導く者、其れを英雄と呼びますが、歴史の紐を解いてもそうは織りますまい」
「具体的には?」
「そうですな、分かりやすく言えば、フランス皇帝ナポレオンと言えば分かりやすくかも知れませんなあ」
「そうですか……」
「話は変わりますが、悠陽様に御報告せねばならぬ事が御座います」
「報告ですか?良い報告ですか?悪い報告ですか?」
「短い目で見れば悪い報告ですが、長い目で見れば良い報告になるでしょう。あの家老達から、煌武院家の実権を取り戻す良い機会になるかと」
「……分かりました、人気の無い場所で受けましょう」
「悠陽様、今はその時が来るまで、学び経験を詰む事です。そうすれば、十年後には、白銀武の隣に並び立てますよ。捲土重来を」
「分かりました、鎧、そなたの言う通りにしましょう。彼の横に並び立つ為に」
煌武院悠陽は決意をした、白銀武の横に並び立つ為に、煌武院家の実権を自分の手に掌握するのだと。
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さて、帝国軍横浜基地衛士訓練校の面々は、本日臨時行われたみちる、水月、冥夜の3人の衛士適性検査の結果に頭を抱えた。
みちると冥夜はA認定、水月はAAの認定を受けた。
衛士の評価認定は事細かく決められており、AAAを最高値として、AA、Aランクに続き、BBB、BB、B、CCC、CC、Cに続く。C迄は衛士候補生として合格基準に入るのだが、C以下のDになると衛士への道は閉ざされ、戦車兵や機械化歩兵に回される。
かと言って一回切りの適性検査で決まるのではなく、2年から3年の予備訓練を得て、適性数値が合格基準に到達すれば衛士になる事が可能だ。
斯衛軍では武家の子弟や子女を軍人として育成する中等部(12 歳→15 歳)が此れに当たる。
「だがこれはないぞ?」
ウイングマークを持つ大尉が呻く様に言う。
「確かにな、中学生の伊隅みちるは未だ分かる。過去に幾つもの事例があるからな、だが……」
「未だ小学生の速瀬水月と御剣冥夜はの適性検査の検査結果は異常だ」
「小学生でAAやAの事例は存在していないからな」
「で、どうする?」
全員が全員、此処で思考停止してしまう。
自分達は軍人、必要で有れば、如何なる非常手段を用いる覚悟は有る。有ることは有るのだが、日本帝国は未だに安全な後方支援国家(お茶を濁す為に国連軍経由での小規模派兵は経験有り、主に懲罰兵や囚人兵ばかりだが)なのと、一応議会制民主主義国家の政治形態な為、世論の動向は無視する事は出来ない。
「幾ら本人達が志願しているとは言ってもなあ……」
「小中学生の女の子を軍属にするのか?」
決して女性差別や蔑視から来る発言ではない。
戦術機乗りと言う軍事的新しいジャンルで有り、何よりも高い適性を求められる職種なので、女性でも戦術機乗りとして高い適性を持つ者なら、誰でも歓迎される傾向が強い。
実際に西ユーラシア大陸がBETAに侵略制圧されてしまった直後から、女性の志願入隊が大幅に増加。特に女性戦術機乗り衛士の数は右肩上がりだ。
だがそれとて限度と言うのも存在している。
大抵の女性軍人は国防軍高等学校や訓練施設での2年から3年の時間を掛けて、衛士訓練学校に入隊し、此処で本格的な戦術機乗りに成る為の訓練を受ける。
それを伊隅みちる、速瀬水月、御剣冥夜の3人の少女は其れ等の途中過程を完全に無視して、衛士への道を歩み始めようとしていた。
「今回はあくまでと衛士としての適性検査を行うだけではないか、必ずしも、この訓練学校に入隊させる必要はない」
士官の一人がそう言った直後、それまでずっと沈黙をしていた訓練校の校長が口を開く。
「実はそうでもないのだ……」
「と、言いますと?」
「今、内閣府では徴兵年齢の引き下げが検討されているのは皆も知っているはずだ……」
「それとこれとどういう関係があるのです?」
「大いにあるんだよ……」
「校長、もっと分かり易く言って欲しいのですが」
「実はな、徴兵年齢引き下げと同時に、衛士の大量育成計画も持ち上がっていてね、早ければ小学生の段階から、衛士の適性検査を受けさせ、適性検査に合格した小学生を軍に志願か徴用させてだね」
その時誰かが我慢出来ず会議テーブルを叩く。
「上は正気ですか、さもなければ狂っている!小中学生を軍に志願や徴用させて、最前線送りですか?」
「皆には黙っていたが、京都の訓練校でも、小学生を対象にした衛士適性検査が実施されている」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
「何ですって……」
一瞬の沈黙が支配した後、誰かが呻く様に言う。
「対象者は僅か3人だが、内2人の親が問題だ」
「誰と誰ですか?」
「……一人は榊是近外務大臣……」
「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」
「……もう一人は彩峰萩閣少将だ……」
「彩峰少将閣下が一人娘を・・・・・・」
彩峰萩閣が一人娘を目に入れても痛くない程に可愛がっているのは、軍関係者の間では有名だ。余り宜しくはないがその一人娘は徴用拒否対象者で、帝国軍の方でも徴用回避対象者に入っている。
・・・・・・・・・・・・・・
「つい先程、京都の訓練校から連絡が入り、3人とも衛士適性検査に合格したそうだ。しかも3人共、8歳の女の子だ」
「3人共8歳の女の子なのですか、男の子は一人も居ないのですか?」
「男の子は一人もいない……?」
「一人も居なかったそうだ……」
校長は自嘲気味の笑みを浮かべる。
「そうですか……」
「榊是近外務大臣と彩峰萩閣少将からは、自分達の娘だからと言って特別扱いや待遇は不要と言われたそうだ。遠慮なく一衛士として最前線に立たせて構わないと……」
「そうですか、それ程迄の覚悟を……」
意味する事は簡単だった。日本帝国は国家の総力を上げて対BETA戦争に突入を開始すると。
と同時に徴兵逃れや徴兵制度の悪用を認めない。国家や軍部の要人の子弟たからこそ『ノブリス・オブリージュ』の義務を果たせろとのメッセージだ。
国は大荒れになるだろう。富裕層等は上流階級は逸早く国から逃げ出そうとする。だが待っているのは、裏切り者の汚名だし、国内の私有財産は全て凍結され、海外に追っての刺客が送られて来るのは確実だ。
「ならば、我々も腹を括るしかないでしょうな……」
「そうだな、我々も腹を括るしかなかろう、幼い子供達を死地に送る死神を役目を果たすしかない」
「こりゃあ、百回死んでも地獄の特等席が約束されたもんですな我ら全員」
「「「「「「あははははははははは」」」」」」
「皆、済まない、相手は異星起源主BETAだ、こちら側の都合なんて考えては暮れないのだからな……」
訓練校校長は静かに立ち頭を下げた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《横浜市内柊町・御剣家》
御剣家が大空寺財閥から借り受けて使用している御剣家内は安堵の空気が流れていた。
衛士適性検査を受けたみちる、水月、冥夜の3人が無事に衛士適性検査に合格したから。
「やれやれだな、何とか3人共、第一難関突破だな」
「突破したのは良いですけど、衛士としての正規の訓練と教育を受けるのは、みちるさん一人だけなんて狡くない?」
水月は一番の成績で合格したにも関わらず、まだ小学生をなのを理由に、座学と体力訓練主体なのだ。
「だけどそうでなければ、水月さんの御両親の同意は得られませんでしたよね?」
「うっ、」
武の指摘は御尤もで、親達には本当の事を、話せない異常は、ある程度妥協するしかなかった。
「それは冥夜も同じですし」
冥夜はお茶を飲みながら苦笑する。
「何で白銀、あんただけ正式任官されているのよ、しかも斯衛軍の赤として、それこそずるいわよ」
水月の怒りの鋒先が武に向かい出し、武は慌てて釈明に。
「正式任官とは言っても技術士官ですし、戦術機に乗って戦場に出られるのは何時になるのか分かりませんよ」
「それでもよ」
「寧ろこの状況を利用して、不知火と吹雪の開発への参加と砲戦型支援機【玄武】と小型戦術機【燕】の開発に動こうと思っています」
「玄武と燕?」
「はい、玄武は上半身が砲戦使用戦術機、下半身が戦車と言う代物で、両肩に120ミリ電磁加速狙撃砲を装備し、両腕は30ミリか36ミリガトリング砲、両腕にクラスター・誘導弾4発装備、小型ロケット弾ポットを2乃至4基を装備させます。主に拠点防衛用か後方砲撃支援が目的の機体です」
「なるほどね、確かにそれなら心強いわ。横浜基地防衛戦では火力不足を痛感していたから。それで小型戦術機燕は?」
「サイズは戦術機の三分の一程度の大きさで、量産性と整備性と汎用性を重視した設計で、固定武装は両腕にアンカーだけとします。用途はBETAの対小型種用機動兵器です。何しろ彼奴等数だけ半端ないので」
「あーなんか分かる様な気がするわ、彼奴等に殺られた衛士の数は馬鹿にならないもんね。確かにそんなのが大量に有ればBETAの小型種は燕に任せたいわ。うんうん」
水月は両腕を組んで関心してしまう。
「話しは解った。で、両方の開発に時間はどれくらい掛かりそうなんだ白銀」
みちるは開発期間を気にする。両方の完成が早ければ早い程助かるからだ。
「玄武の初期型は既存技術の応用で済みますので、2年有れば可能ですね。もう既に設計図の方は、帝国陸軍技術廠と光菱重工の方に送ってあります。もう既に父さんと巌谷少佐が動いていますので」
「そうか、其れは何よりだ。で、燕の方は」
「燕の方も設計図は出来ていますし、戦術機開発の権威とも言うべき斯衛軍篁裕唯少佐の協力は取り付けて有ります」
斯衛軍少佐篁裕唯氏は、斯衛軍専用戦術機【瑞鶴】の設計者で、戦術機開発では右に出る者は居ないとも言われている人物だ。武は両親と一緒に初詣に訪れた神社で知り合う。その際に篁家の一人娘・篁唯依が石畳の繋ぎ目に躓き、倒れそうになったので、武が倒れるのを阻止しようとしたが、2人が縺れて仕舞一緒に倒れ、偶然では有るが2人はキスをしてしまうハプニングが起きた。
その後篁唯依はショックの余り、数日間落ち込む羽目に。
「では、それも2年で済みそうなのか?」
「そうですね、2年で開発したいですね」
武はやや言葉を濁す。燕の方は、本来の開発元と言うべきあの異世界に行かなくては、自分が求める性能を得られないのではと懸念している。
(だけど行ったら行ったで、戻って来れる保障が何処にもないんだよな……)
武の【燕】の本当の開発目的に付いては口を閉ざす。
(あの世界の軍事技術さえ手に入れば、00ユニットもXG-70も必要なくなる)
(00ユニットはBETAの反応炉が無ければ、機能を維持出来ないのは失敗作の欠陥品だし、XG-70は破壊力は絶大だが動きが鈍重過ぎる。一度BETAに対応策を取られたら、先ず通用しなくなる)
「たけどさ白銀、衛士の数は足りるの?」
武は思考の海から引き戻される。
「それに付いては冥夜にも言われましたが、玄武の方は戦車兵でも操縦出来る様にしますし、燕の方は普通に車の運転が出来れば操縦出来る様にしますので」
「それは凄いな、其れなら数を揃えられるな」
みちるは目を輝かせる。其処に御剣家の家人が申し訳なさそうな顔で襖を開ける。
「ご会談中失礼をします、冥夜様宛に電報が届いています」
「私に?」
「はい」
冥夜は腰を上げて電報を家人から電報を受け取る。
「冥夜?」
電報を受け取った冥夜の顔が綻ぶ。
「武喜べ、美琴達も京都での衛士適性検査に合格したぞ」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
《1992年5月下旬・国連本部》
1992年4月、BETAは中国領ドゥンファンに、
1992年5月、BETAはソ連領クラノヤルスクに、
ハイヴの建設を開始、BETAの本格的な東進が始まる。
此れに危機感を抱いた国連は、予てからインド政府から提案が合った、ボパール・ハイヴ攻略【スワラージ作戦】の開始を決議。準備期間は2ヶ月とし、
同日、日本帝国政府は国連とインド政府の要請に基づき東南アジア派遣部隊の【スワラージ作戦】の参加を決定した。
帝国陸軍は【スワラージ作戦】に参加予定の全戦術機への新OS・XM2と改良型CPUの搭載を急ぐと同時に、XM2発案者にして開発者である斯衛軍所属白銀武技術少尉に、教導及び技術士官としてスワラージ作戦への参加を要請。
斯衛軍所属白銀武技術少尉は教導及技術士官として【スワラージ作戦】への参加を受諾した。
兵器設定
玄武∶ガンダムSEEDのカズウートが原案
燕∶聖戦士ダンバインのダンバインが原案
120ミリ電磁加速狙撃砲∶面制圧ではなく、数十キロ先の突撃級、要塞級、重光線級を精密射撃で破壊するのが目的
120ミリ電磁投射砲∶皆さんお馴染みの面制圧が目的の兵器、電磁加速狙撃砲が大口径長距離ライフルなら、大口径重機関銃見たいなもん
36ミリ?電磁加速突撃砲∶セミオートで単発撃ちも連続撃ちも可能、正面から突撃級を打ち敗れる
水素燃料∶固形型と液体型の二種類が有る。固形型は野球ボールと同じ大きさで、ガソリン20リットル分のエネルギー量を得られる。調達費用も同じ量で数分の一以下で調達か。水素エネルギーの実用化で、日本帝国は高周波・電磁系兵器の実用化に漕ぎ着ける
土竜∶「青き清浄なる世界の為に、3・2・1カチ」で有名な電子レンジ戦略兵器。食後に土竜を使った映像は見るなが合言葉になる「そんな、味方事だなんてー(絶叫)」
不知火乙型∶93式不知火でXM3と高周波長刀と腕部に連装無反動砲を採用したのを除けば、ほぼ原案通り
不知火甲型月光∶93式不知火の発展型、フレー厶は93式不知火乙型のフレー厶を用いているが、装甲は電圧相転移装甲を採用。これはハイヴ内での近接戦闘を想定しての事。水素燃料、電磁加速突撃砲、取り付け型頭部バルカン、腕部連装無反動砲弾、アンチ・レーザー爆雷を標準装備している
吹雪乙型∶95年に高等練習機として正式採用、XM3、高周波長刀、電磁加速突撃砲、頭部バルカン、腕部連装無反動砲弾、水素燃料、アンチ・レーザー爆雷を標準装備。装甲は形状記憶発泡装甲を採用、実機使用の甲型と違い出力は低めで有る
吹雪甲型∶95年に撃震の後継機として正式採用された吹雪の実機使用機、出力は93式不知火と89式陽炎のほぼ中間に設定されている。此れは継戦能力と長時間に渡っての戦線維持が目的、基本武装は吹雪乙型と同じである
95式防盾∶従来の爆発反応装甲型防盾とは違い、対レーザー用電磁シールドを内蔵、重光線級なら2・3回、軽光線級なら5・6回迄ならレーザー照射に耐えられる優れもの
95式電圧相転移装甲∶被弾寸前に機体表面に電圧を流す事で機体装甲の強度を上げる仕組み、主に不知火甲型機で使われる装甲。理由は不明だが、装甲色が黒でしか機能を最大限に発揮しない為、斯衛軍では不知火甲型月光諸共不採用に終わってしまう。機体色に拘りが無い帝国軍、国連軍、フランス軍を除く欧州連合軍で正式採用される。機動戦士ガンダムSEEDのストライク・ノワールが原案
城内省・斯衛軍∶武との考えの違いと年間30機しか作れない生産性、整備性が悪い武御雷への拘りから、次第に溝が出始め対立する様になり、武の対BETA戦略から次第に除外される様になる
今の所はこれだけかな?