アーカイブ・ドロップアウト   作:カムラン

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ゲーム本編開始直前からのスタートなので、主人公はある程度精神的に成長している状態です。
勘違いや百合要素盛り沢山なトリニティ在学時代から会社発展までの過去話は、序盤の戦闘がひと段落ついた後に始める予定です。


というか早くアルちゃんと絡ませてぇーーーー!
まあその前にゲームのストーリー進めないといけないんですけどね(白目)




災厄の狐

 

 

 

──〈七囚人〉の矯正局脱獄が発覚してわずか数時間後、シャーレオフィスビル前は銃弾の飛び交う戦場と化していた。

 

 

 

ㅤ流れ弾で爆発した自動車の黒煙が、天高く昇る。互いに視界を遮られている中、カサネたちシャーレ警備班は自らの装甲兵員輸送車(サラセン)を盾に防衛陣地を形成している。

 

ㅤ七人の凶悪犯が矯正局から脱獄したことを知り、ランチタイムを中断して戦闘服に着替え、警備の任務に戻ったカサネたちを待ち受けていたのは、突如として現れた多数の不良集団の襲撃であった。

 

ㅤその数はこちらの倍近く、そしてもちろん、各々が多種多様な銃火器で武装している。

ㅤ赤いナポレオンの三対一の法則に当てはめれば現状有利なのはカサネらであったが、かといって一気呵成に攻めてくる敵集団を無力化するには至らず──次第に、負傷する隊員も出始めてきた。

 

 

「──ぐっ、総帥! 手榴弾の直撃により一名意識不明、一名重傷です!!」

 

「……アルファ分隊は2ブロック後退して、 ブラボーはそのカバー!! チャーリーとデルタは私に続きなさい、こっちに向かってる第二小隊と挟み撃ちにするわよ!」

 

「了解!!」

 

 

ㅤカサネは大きな声を張って、各員に指示を出す。帰りたいとか怖いとか、そんな余計な考えを抱く暇もまるでなかった。愛銃の白い〈フィーアト・ルクス(Janson rifle)〉は火を吹き続け、敵の頭をぶち抜いてる。

 

ㅤヘイロー持ちは総じて頑丈だが、痛いものは痛い。カサネの放った弾丸が敵の額に当たり、倒れた少女が見えた。気にせずトリガーを引き続けて、負傷者の救護のために後方に下がったアルファ分隊を援護するかのように着実に進む。

 

 

ㅤ敵集団はタワーの方向からやって来ている。

ㅤ彼女たちがどうやって第二小隊の警戒網を潜り抜けてきたのかは知らないが、幸運にもカサネたち第一小隊と挟み撃ちに出来る位置にいる。

 

 

『総帥、哨戒班の到着まで約二分です!』

 

「オーケイ、皆聞いたわね!? あと二分、死守するわよ!」

 

 

ㅤイージス・ディフェンスの戦闘指揮所にいるオペレーターが、装甲兵員輸送車のGPS情報から到着時間を予測。

ㅤあと約二分で挟み撃ちが可能となる距離に来ると聞いたカサネは、視線を逸らさず声を上げた。

 

 

ㅤフィーアト・ルクスに付けられたチャームが揺れる。敵の放った弾丸がカサネの頬をかすって、僅かに血が流れた。

 

ㅤただ単に敵集団を潰すだけならばカサネ一人で事足りるが、今回の依頼はあくまでもシャーレオフィスビルの警備。

ㅤ一人で突っ走った挙句に撃ち漏らして、ビル内へ侵入されたら目も当てられない。それ故に彼女はこうして小隊を指揮しながら防戦に専念せざるを得なかったが──哨戒班が近付いてきたおかげでこの硬い戦況が打開出来る。

 

 

「──そこをどけ〈鉄の女〉ァ!! 」

 

「さっさとブラックマーケットへ帰りなさい、三下」

 

 

ㅤ膠着状態に痺れを切らした敵の一人が、弾幕を掻い潜ってカサネに突進してきた。

ㅤ彼我の距離はおよそ五十メートル、銃撃戦を行うにはあまりにも近すぎる。部下たちもカサネへのフレンドリーファイアを警戒して、そちらに銃口を向けることが出来なかった。

 

 

ㅤしかし彼女は冷静さを崩さず、思い切り前に踏み込んだ。こちらに向かってきた敵の眼前に、凄まじい勢いで移動したカサネは、自らの〈フィーアト・ルクス〉に取り付けられた銃剣を強めに振り下ろす。フルフェイスヘルメットがぱっくりと脳天から割れて、辺りに砕け散った。

 

ㅤ続けざまにカサネは、幼げな素顔が露わになった敵の腹部を蹴り、相手集団の方へ飛ばした。

ㅤくの字に曲がったまま人間大砲の如く宙を舞ったその敵は、相手集団が固まっている場所へ倒れ込んだ。何名かを巻き添いにして地面に叩きつけられたらしく、弾幕の密度がわずかに弱まった。

 

ㅤその隙を見逃すカサネではない。

 

 

「ブラボー、チャーリー、デルタはこのまま前進! アルファはサラセンの機銃で私たちを援護して!!」

 

「「「了解!!」」」

 

 

ㅤ銃剣を引っ提げたカサネを先頭に、隊員たちが一斉に突進した。絶対に近付けさせてなるものかと、蜂矢のような陣形をとって突っ込んでくるカサネたちに敵集団も勇猛果敢に機銃掃射をしたが──突如としてその背後からも銃撃を受け、何名か倒れた。

 

ㅤ敵リーダー格の少女が慌てて振り返ると、そこには戦闘指揮所からの報告を受けて駆けつけてきた哨戒担当の第二小隊が銃を構える姿が見えた。

 

ㅤ形勢逆転。

ㅤカサネの脳内に、そんな言葉が浮かび上がる。

 

 

『総帥! 第二小隊が到着しました!』

 

「Excellent. 分隊各位、一網打尽にするわよ!」

 

 

ㅤ敵の数は目測でおよそ七十人。

ㅤ対してカサネたちシャーレ警備班の数は一個小隊すなわち五十人であったが、哨戒班の到着によりその数は倍に膨れ上がった。

 

ㅤ単純計算で百対七十。

ㅤしかも戦闘開始から二十分は過ぎた現時点で、カサネたちが与えた損害を鑑みるに、敵の数は二十人は減っているだろう。

 

ㅤ百対五十。

ㅤおまけに直線道路での挟み撃ち。

ㅤ路地にでも逃げ込まない限り、敵はこの挟撃状態から脱却する術をもはや持たなかった。

 

 

「これで──最後の一人!」

 

「ぐっ!?」

 

 

ㅤカサネのかかと落としが、敵の肩を強打した。相手はそのあまりの衝撃に体勢を崩した。カサネはすかさず側頭部を回し殴り、ふらついた敵の足を掴んで近くのビルに投げつける。

 

ㅤ雑居ビルの2階の窓を突き破っていった最後の残存戦力を横目に、カサネは「ふぅ」と荒れた息を整えた。

 

 

 

ㅤ第二小隊の合流からわずか三分で敵集団を沈黙させることに成功したA.D.C部隊は、銃声が止んで静まり返った道路上で互いの無事と健闘を称えていた。「おつかれ」「ありがとう」、そんな声を聞きながらカサネは顔に付いた埃を払う。

 

「──総帥、お顔に血が!」

 

「ただのかすり傷よ、気にしないで。……そんなことよりも貴女たちは一体何をやっていたの? こんな数の武装グループを見逃すなんて、職務怠慢にも程があるわ」

 

「うっ……す、すみませんでした。どうやら下水道を伝ってコチラに侵入して来たようで……面目次第もございません」

 

 

ㅤ第二小隊のおかげで戦闘は予想よりも早く終息したが、そもそも彼女たちがしっかりD.U.の哨戒をしていたならば、こんな苦労はせずに済んだはずである。

ㅤカサネの頬に流れる血を見て、慌てて駆け寄ってきた第二小隊の隊長を軽く叱ると、彼女は罰が悪そうに眉を下げた。

 

 

「……まあいいわ。アルファに負傷者が出てるから、第二はその穴埋めをお願い。それと、意識飛ばして倒れてるその子はすぐ病院に運んであげて」

 

「ハッ!」

 

 

ㅤ久々の戦闘で頭に血が上っていたらしい。

ㅤ気持ちを落ち着かせるように深く呼吸をしたカサネは、第二小隊隊長の彼女に負傷者の救護を命じたあと、麻縄で縛り付けられながら地べた座る集団に重い足取りで近付いた。

 

ㅤ約七十名を超えるその不良たちは、小銃を構えた第二小隊のエコー分隊が取り囲んでいる。隊員らはカサネを見るやいなや一斉に敬礼し、うち二名がカサネの傍に素早く付いた。

 

 

ㅤカサネはリーダー格であろう少女の前に屈んで、彼女と目線を合わせる──しかし少女は負けたことへの苛立ちを募らせて、カサネの顔に向かってペッと唾を吐いた。

 

 

「貴様っ!!」

 

 

ㅤ傍に居たエコーの隊員が、少女の胸ぐらを掴んだ。

ㅤしかしケラケラと軽快に笑うその少女は唾を吐いたことに一切悪びれもせずに、飄々とした態度を崩さない。

 

 

「(えっ、なにこの子こわい)……構わないわ。下がりなさい」

 

「しかし総帥、このような無礼は見逃せませんッ!」

 

「私が良いと言ったの。聞こえなかった?」

 

「ぐっ……失礼しました」

 

 

ㅤ渋々と隊員は手を離して下がった。少女をキッと睨みつけながら自身の後ろに付いたのを確認し、カサネは頬についた唾をハンカチで拭き取りながら少女に訊ねる。

 

「ねぇ貴女、色々聞きたいことがあるのだけれど……少しよろしくて?」

 

「チッ……なんだよ、〈鉄の女〉」

 

「その呼び方はやめて頂戴」

 

 

ㅤつい先日自分に変な異名が付けられていることを初めて知ったカサネは、そのことに対して恥ずかしさを感じていた。

ㅤ”アイアン・レディ”なんて呼ばれるほど大層な人間では無いと思っているからだが、そもそもそんな異名を名乗った覚えは無い。

 

 

「誰に言われてここに来たのか、そして何のために襲ってきたのか──もしこの二つを答えてくれるのであれば、この場で貴女たち全員解放してあげてもいいわ」

 

「はっ、そりゃお優しいこって……だが、解放した瞬間にまた襲いかかるかもしれないぜ」

 

 

ㅤニヒルな笑みを浮かべる少女に、カサネは内心「いやさっさと帰って欲しいのだけれど」と思いながらも、さも驚いたかのように眉を上げて彼女を揶揄った。

 

 

「あら? たかが不良如きに私たちが遅れを取るとでも?」

 

「よく言うよ。誰もが恐れるあのゲヘナの風紀委員長サマと戦って引き分けたと聞いてみりゃ、まるで亀みたいにビルを守ってばかりだったくせにさ──挟み撃ちにされてなきゃ、最後に勝ってたのは間違いなくアタシらだ」

 

 

ㅤ少女の目に浮かぶのはカサネへの失望。

ㅤ不良界隈では知らぬ者は居ない、ブラックマーケットの有力者。去年から続くカイザーPMCとの熾烈な争いを間近で目にしてきた彼女にとって、青山カサネは尊敬の対象である。

 

ㅤたがいざ戦ってみれば、本気なのか真剣にやっていなかったのかは分からないが、かつて自分がゲヘナの風紀委員長と対峙したときのような威圧感や彼我の差を少女が感じることはなかった。

 

ㅤそれ故の失望。

ㅤカサネに憧れていたからこそ、少女にとって先ほどの戦いは到底満足がいくものではなかったのだ。

 

 

ㅤしかし、相手からの印象はどうでもよく、ただシャーレオフィスビルを守ることしか考えてなかったカサネからすれば、そんな思いは知ったことでは無い。

 

ㅤもしも正々堂々戦いたいなら、果たし状でも何でも持ってくれば良いのだ、と彼女はシビアに割り切っている。そもそも顔も知らぬ誰かに侮られようが大して気にしていなかった。カサネは器が大きいのである。

 

ㅤリーダー格の少女は先ほどの戦いがお気に召さなかったようだったが、いずれにせよ勝利したのはカサネたちであり、彼女たちは敗者。

 

──選択権を与えたのは、あくまで建前に過ぎなかった。

 

 

「では、質問には答えてはくださらないの?」

 

「残念だけど、アタシより強くないヤツには従わない主義でね。黙秘権を行使させてもらうよ」

 

「そう……ならいいわ」

 

 

ㅤ少女の返答を聞いたカサネは、突如として腰のホルスターから拳銃を取りだし彼女の顎に突きつけた。銃で彼女の首をクイッと上げて少女とカサネは視線を合わせる。

 

ㅤ不良たちに緊迫感が走り、何人かはリーダー格の少女を何とか助けようと藻掻き始めた。

ㅤしかし硬く縛られた麻縄は外すことが出来ず、彼女たちはただカサネを睨むことしか許されない。

 

 

「ここから先は尋問の時間ね──もう一度聞くけど、何のために、誰に言われてここに来たの?」

 

「…………」

 

「言っておくけれど、このまま撃ったら死ぬほど痛いわよ」

 

 

ㅤ沈黙。

ㅤカサネの纏う急に雰囲気が変わり、少女は冷や汗を流した。カサネのそれは殺意──ではなかった。

ㅤしかし少女の内に秘めた恐怖がグツグツと湧き上がってくるかのような、そんな鋭い視線だった。

 

ㅤまるでメドゥーサの邪視に睨まれたかの如く固まった少女は、叫びたくなる衝動を堪えながらカチカチと歯を震わせている。

 

 

「(なんか胃がキリキリしてきたわ……)」

 

 

ㅤしかし実際には、カサネは急な胃痛で歪みそうになる表情を必死に抑えているだけだった。銃を突き付けたのは単なる脅しに過ぎず、本当に撃つつもりはない。

 

ㅤカサネと少女がお互いに黙り続けて、数分。

ㅤ少女は声を震わせながら、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「……朝、ブラックマーケットに一人の女が来たんだ」

 

 

ㅤカサネを侮っていたはずの少女は、今のやり取りで逆らうべき相手ではないと判断した。観念したかのように青い顔で知りうる限りの情報を吐き出し始める。

 

 

「女?」

 

「ああ、そいつは暫く矯正局に収容されてた犯罪者でな。今朝脱獄したらしい。そんでいきなり縄張りに入ってきたからアタシたちは追い出そうとしたんだが、一瞬でコテンパンにやられちゃってさ……」

 

 

ㅤその後、女はD.U.へ攻めなさいと指示してきた。

ㅤ少女は事の経緯をそう締めくくり、少なくとも自分のグループに関しては金品や連邦生徒会がどうとかは一切考えていなかったのだと。

 

 

ㅤカサネは銃を下ろして立ち上がり、考え込むような仕草を取って眉をひそめる。

 

ㅤ矯正局からの脱獄、そして同日にブラックマーケットの不良を叩きのめして従えるような女など、カサネは心当たりありまくりだった。

 

 

「……ねぇ、それってもしかして狐坂────っ!? 全員伏せなさいッ!!

 

 

ㅤカサネの研ぎ澄まれた警戒心が警鐘を鳴らし、彼女は隊員たちにそう命じた。条件反射的に指示通り地面に伏せた隊員たちと不良らは、耳をつんざくけたたましい爆発音に驚愕した。

 

ㅤ一体何が起きた──?

ㅤ爆風に髪をたなびかせながら、音の発生源をカサネは見た。彼女の視線の先には、オフィスビルの前で轟々と黒煙と赤い炎を上げる装甲兵員輸送車が数台あった。

 

「(ひぇぇぇ……一番来て欲しくない人が来ちゃったのだわ)」

 

「──あらあら、随分と懐かしい顔ですね。一年ぶりでしょうか? お久しぶりです、カサネさん」

 

 

ㅤ空からスタッと舞い降りたのは、狐の面をつけた一人の少女。その正体を一瞬で見抜いた隊員たちは、一斉に彼女へ銃口を向けて引き金に指をかけた。

 

 

──狐坂ワカモ。

 

ㅤ矯正局から脱獄した七人の犯罪者の一人。

ㅤ多くの襲撃事件を起こし、無差別広域破壊テロによって甚大な被害をもたらしたことで付いた異名は〈災厄の狐〉。

 

 

ㅤ”真紅の災厄(九九式短小銃)”を担ぐ彼女のその姿と迫力は凄まじく、隊員らも急な襲撃の動揺もあって銃身がぶれていた。あれでは当たるものも当たらないだろう。

 

ㅤ自らの恐怖心を誤魔化すように深呼吸をしたカサネは、意を決してワカモの方へ歩いた。

 

 

「危険です!総帥!!」

 

「危険なのは私じゃなくて貴女たちよ。さっさとそこのヘルメット団を離れた場所に全員で護送しなさい」

 

「し、しかし──」

 

 

ㅤ尚もカサネを止めようとするその隊員を、第一小隊隊長が手で制する。”総帥の命令だ!”、彼女はワカモへの警戒態勢を解くことなく各分隊へ指示を放った。

 

ㅤそこからの動きは早く、第二小隊がカサネらと合流するために乗ってきた装甲兵員輸送車やまだエンジンの生きているトラックの荷台に不良たちを詰め込んでいく。

 

 

ㅤそう、この場で最も危険なのはワカモへ近付いたカサネではなく、彼女の背後に控えていた小隊各員と捕まっている不良集団であった。

 

ㅤこのキヴォトスといえど、ワカモに並び立つ実力者はそうそう居ないだろう。その戦闘能力は先ほどの不良たちとは天と地の差ほどある。カサネも彼女とは過去に何度か戦ったことがあるが、ついぞ勝つことは叶わなかった。

 

ㅤしかしいくらワカモに勝てなかったとはいえ、カサネもまたキヴォトス有数の実力者の一人である。A.D.C各戦闘員も練度は高いが、カサネ単独の強さには遠く及ばなかった。

 

 

ㅤ当の本人はタイマンでの勝ち数がないせいで「自分はさほど強くない」という認識を抱いているが、そもそも相手が悪いことを突っ込める人間は周りにいなかった。

 

ㅤ誰がゲヘナの風紀委員長や災厄の狐と真正面からやり合おうと考えるのか。ただ運が良かった程度で風紀委員長と引き分けることが出来たのならば、彼女はゲヘナ最強なんて恐れられるはずもない。

 

──つまるところ何が言いたいかというと、青山カサネは狐坂ワカモに勝るとも劣らぬ実力者であるということだ。

 

 

「ふふふ、実は檻の外へ出たらまず貴女を潰そうと思っていたんです。いつも邪魔されてばかりで迷惑を被っていたので」

 

 

ㅤ面のせいでカサネからはその表情を窺えないが、彼女は心底機嫌の良さそうに笑っている。

 

ㅤ狭苦しい牢屋を出れた矢先に、気に食わない因縁の相手を叩き潰せるとは幸先が良い。ワカモはそう思っていた。

 

ㅤブラックマーケットでそれなりの人員を有していたヘルメット団をD.U.にけしかけた所までは良かったが、しばらくして定期通信が来なかった。何かと思って様子見に来たら居るではないか、かの青山カサネが。

 

ㅤ居ても立っても居られずこうしてカサネの前に降りたワカモは、喜色と敵意の混じった視線を彼女に向けていた。

 

 

「人に迷惑をかけているテロリストがそれを言うのかしら。そもそも迷惑を被っているのは私たちよ。何度あなたに拠点が潰されたことやら……私が今までどれだけのお金を使ったか分からないでしょう」

 

 

ㅤ『あなたのせいで迷惑しました』なんて言われて黙っていられるカサネではない。即座にワカモに反駁を加えて、同時に拳銃からフィーアト・ルクスに持ち替えた。

 

ㅤワカモも同じようにして、二人は互いに銃口を向けた。

 

 

「ええ、あなたのお金の使い道には興味ありませんから」

 

「ならばもう一度矯正局へ送り返してあげますわ──ごめんあそばせ」

 

 

ㅤシャーレオフィスビル前で、二人のツワモノが衝突する。そんな彼女達のもとへは、ある大人の男が偶然出会った四人の少女を連れて近付いてきていた。

 

 

 

 






話し方難しすぎるんよぉ〜
あと二話くらいでようやく導入終わります。ボチボチ更新していきますのでよろしくお願いします。
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