運営様復旧作業ありがとうございました。そしてお疲れ様です。
昨日はサーバーが攻撃を受けていたらしいですね。作者はハーメルンが閲覧出来なくてSAN値チェックファンブルしました。何とか致命傷で済んだので今日の分も更新させていただきますね。
時は少し遡り、間飛がAFOとの戦いを始めたばかりの頃。
恐怖で固まっていた緑谷達は良くも悪くもいつも通りの間飛のペースにより、ただ震えているだけの臆病者を脱却していた。
身体の震えは治められて深い呼吸を取り戻し、狭められていた視野と聴覚が本来の範囲へと広がった。
分かるのは戦い始めたという事だけで、相変わらず壁一枚の向こう側は分からないままだけど。助けなきゃと皆の制止を振り切りかけたところに第三者の手が待ったをかけてくれた。
「ッ……!?君は……」
「シーッ!!大きな声を出すとバレます!」
「ごめん……ね?」
謝ったところではたと気がついた。今自分を止めたのは誰だ?つい先程まで右隣には誰もいなかったのに、自分を止めてくれた右側にいる人物とは?
バッと顔を上げるとそこにいたのはセーラー服に身を包んだ、緑谷より少し背の低い女子高生らしき人。
当然この場に似つかわしくない人物像に緑谷達全員がギョッと驚いた。いや自分達だってこの場に相応しいとは言えないけれど、目の前の推定女子高生よりはまだマシだろう。
「私、とあるヒーローのサイドキック……トガヒミコと申します。ヴィラン連合について探るように言われてたんですが……何で子供がこんな所にいるんです?」*1*2
「え、えーっと……その……」
「……俺達は誘拐されたクラスメイトを助けに来たんです。戦闘は避けて、何とか間飛をこっちに来させられないかって」
「なるほど……」
聞かれてはマズイ所に的確に質問をされて焦る緑谷。すかさず心操がフォローに回って隠し事するよりは、と事情を明かした。
それを聞いた推定女子高生は暫し悩む素振りを見せて、それからすぐに結論を出した。
「ハッキリ言いますと、多分皆様の助けは無駄になるかと」
「何だと……!!」
「轟君!!」
「お、落ち着いて下さい!?貴方達をバカにしたわけじゃないんです!決して!!」
自分達の覚悟も決意も『無駄』の一言で切り捨てられるのは我慢ならない。轟が真っ先に反応し声を荒らげそうになるも、頭は冷静なのか止めようとした飯田共々声自体は小さいままだ。
トガは豹変した轟の態度にビクビクしながらも、何故彼らの助けが無駄だと言ったのか理由を述べる。
まず推測でしかないが間飛に逃げるつもりがない。
自分が調べた限りでは間飛に拘束や個性妨害などは施されておらず、逃げようと思えばいつでも逃げられたはずなのだ。それを事が起こるまでは自分から動こうとはしていなかった。
「ここから五キロほど離れたバーにいたのを確認してましたから。何で逃げないんですか移くぅん……」*3
「……じゃあ、何で逃げなかったんだよ?」
「それは、分かりません。というか私が聞きたいくらいです」*4
妙に圧のある返事にたじろぎつつ、次の理由を尋ねる。
二つ目の理由は単純に人手が足りているのだ。
間飛に逃げる気が無くて戦闘するつもり満々なのは分かっているが、彼一人で互角まで持ち込めるのならプラスアルファのあるヒーロー達がどうしたって勝つ。
折角来てくれた彼らには悪いが、出る幕がないの一言に尽きる。
「それで最後なんですが……」
「まだあるのか……」
「ええ。何なら最後の理由が一番大事です」
三つ目の理由。それは単純な実力不足。
この壁の向こう側は死地であり、迂闊に踏み入れば容易く命を落とす。命のやり取りに慣れた魔王とヴィラン連合、そして【フィジカルギフト】によって経験値を得た間飛でなければ戦いを成立させる事さえ難しい。
ちらりと目をやれば楽しそうに、余裕そうに見えるだろう。しかし現実は一手間違えただけで死人が出る綱渡りの戦局だ。
なりふり構わなければAFOは次の瞬間にも逃げ出し、或いは人質を得ているだろう。それが出来ないのは間飛による【瞬間移動】の割り込みが原因だ。
「あ、オールマイトが到着しましたね……ほら、尚更貴方達の役目はないですよね?」
「……」
「厳しい事を言いますが、今のままでは足を引っ張るだけです。早急にこの場を離脱する事をオススメします」
No.1ヒーローが全力で戦う場に立てるのは間飛だけ。その事実が彼らの胸に重くのしかかった。それでも何か……と食い下がることも出来ず、グッと下唇を噛んで涙を堪えながら子供達は戻ることしか出来なかった。
「そういえばクラスメイトって……え?じゃああの人達雄英生?」
「……後で顔合わせる羽目になるじゃないですかヤダー!!」
◇
「終わった……か」
【オール・フォー・ワン】は倒された。地面に背中をつけたまま、起き上がることも無い。死柄木が離れた後には弱々しく「嘘だ……嘘だ……」と呟くばかりだ。
そうなれば次はヴィラン連合……魔王を倒すために共に戦っていた彼らの処遇を決めなければならない。
オールマイトは構えは取らず、ミルコは悩みながらも棒立ちのままで。戦いが終わったこの場所で決定権を持つ二人は次の行動を決めあぐねている。
「死柄木、弔……君は……」
「志村転孤」
「────え?」
「俺の本名だよ……志村菜奈の孫、志村転孤だ」
「何……ッ!?」
どうしたい、と尋ねるつもりがそれをぶっ飛ばす程の情報で返された。頭が真っ白になる。
志村菜奈の……オールマイトの先代の【ワン・フォー・オール】継承者の血縁という情報は、オールマイトにとってそれだけの衝撃を与える代物だ。
死柄木……否、転孤がどうでも良さげに語るのはあまりにドス黒い悪意の道筋。
オール・フォー・ワンはオールマイトへの嫌がらせの為だけに志村菜奈の家族を探し出し、何らかの手段で転孤を死柄木弔というヴィランに作り替えた。
長い年月をかけて社会やオールマイトへの憎しみを刷り込まれていたところ、間飛との問答によって刷り込みに綻びが生まれた。それからは絶えず湧き続ける疑問の果てに、刷り込まれた憎しみ全てがオール・フォー・ワンへの憎しみに転じた。
「……それ言っちゃって良かったのか?」
「俺にはどーでもいい……今の俺には過去の事でしかないしな」
スラスラと出てくる重く暗い体験も、魔王が堕ちた今では既に過去の事だ。後生大事に抱え込むほどのものでもないのだから、ここでオールマイトにバラしてしまったところで何ら問題は無い。
それを聞かされたオールマイト以外には、だが。
フラフラと頼りない足取りで間飛に近づき、力強く抱きしめた。
「ありがとうっっっ……!!!」
「ウギャア!?汗臭いむさ苦しい筋肉祭りいいいい!!?」
「筋肉祭り……フッ」
師匠の大切な忘れ形見。自分の手では取りこぼしていた、師匠が生きた証。それを自分の代わりに救ってくれた彼には感謝してもしきれない。だったらまずそのハグを止めてやれ。
あらゆるヴィランにとって恐怖の象徴であるオールマイトの目からは涙が零れ、小さな嗚咽が漏れる。それだけの事を、間飛はしてくれたのだ。
思ったより強めに拒絶されて落ち込んだけれど、オールマイトはひたすらに感謝した。
「……そんで、お前らはどうすんだ?」
「ヒーローがヴィランの将来を心配すんのか?」
「あ゙!?喧嘩売ってンのかテメェ!!」
「……荼毘」
「ミルコ君さあ……」
しかしそれとこれとは別。自分がどうしたいかはさておき、ミルコとオールマイトは職務的に彼らを捕まえるしか選択肢が無い。このままだととっ捕まえるけどいいのか?とミルコなりに気を遣っていた。荼毘が煽ったから無意味になりそうだけども。
転孤達の腹はとうに決まっている。
「そりゃ勿論……逃げるぞ黒霧!!」
「了解です……!!」
「あっテメェ!!」
「ええ……」
いや大人しく捕まるとは思ってなかったけどさあ。ミルコもオールマイトも切り替えの速さにちょっと引いた。
黒霧が一気に【ワープゲート】を大きく広げ、マグネの【磁力】が彼女の手にある巨大な磁石へと引き寄せる。あっという間にヴィラン連合離脱の準備が整った。
マグネ、ジャックガム、トゥワイス、Mr.コンプレス。次々と黒霧のゲートを通ってどこかここではない場所へと消えていく。
「俺達はオール・フォー・ワンの遺産でも消しに行くさ。どうせ幾らでも隠してんだろ」
「確かに……脳無もあれが全てとは思えんが……」
「でも、俺達はヒーローじゃねえし、ヒーローと手も組まねえよ」
転孤の身体が半分ほどゲートへと沈む。もう間に合わないな、と苦笑いを浮かべて二人のヒーローは確保を諦めた。
「またな!!間飛!!」
「……おう。また、な」
悪どい笑みで別れを告げて、転孤と共に【ワープゲート】は消え去った。
「そんじゃあオールマイト。後でピザおごってもろて」
「そういえば何か食べてたっぽかったけど……え?あれ君も食べる分だったの?」
「えー、私寿司がいいんだが」
「君も来るの……?あっごめんなさい。奢らせて頂きます!だから脛蹴らないで!?痛い!!」
トガ「危ないよ?」
緑谷達「クゥーン…」
トガ(まあ私も危ないんですが。帰りたいんですが!!)
オールマイト「……あっ、私引退しなくて済む感じ?」
間飛「何かしら帳尻合わせあるやろ」
オールマイト「だよねえ……」