八月中旬。雄英高校に大きな改革が起こった。
雄英敷地内、校舎から徒歩五分の築三日……三日?これが?うせやろ?
今日この時より“ハイツアライアンス”が俺の……俺達の家となった。
「でけえ……!!」
「恵まれし子らのー!!」
雄英高校……全寮制になるってよ。
というわけで何か久しぶりな雄英高校。夏服を着て学校に来るだけなのに変な懐かしさを感じるなあ。ああ、そういや俺合宿と拉致のせいで時間感覚がぶっ飛んでんのか。なるほど。
嬉しい事にクラスメイト全員が雄英高校への通学に許可を貰えたらしく、一人として欠けることなく再び集まれた。
あのオール・フォー・ワンとやらはぶっ倒して豚箱送りにしたけど、襲撃かけてきたヴィラン連合自体はまだ捕まってないしな。反対する親御さんがいても不思議じゃなかった。
相澤先生も一人や二人……いやもっとか?とにかく雄英を辞めさせるという保護者がいることを覚悟してたようだが、また全員で集まれた事を喜んでいた。
「さて……これから寮について軽く説明するが、その前に一つ。当面は合宿で取る予定だった仮免取得に向けて動いていく」
「そういやあったなそんな話!!」
「色々起きすぎて頭から抜けてたわ……」
仮免……そういや合宿の時に色々言及してたな。確か本来は三年生から取るのが一般的だとか。雄英が特例なのかそれとも今年の一年が特例なのか、どっちだろう。
「オールマイトも今回の件で徐々に前線を離れ、来年には引退するつもりだと発表していた……少しでも早く実戦に出られるようになってもらう必要がある」
「即戦力になってもらわなきゃ、ってことか」
「No.1の事実上の引退表明だ、一人でも多くのヒーローを増やさなきゃならん」
それじゃあ寮の説明に入るぞ、と相澤先生は先に寮へと入っていった。
……緑谷達が
◇
ハイツアライアンスは一棟一クラス。左右で男子と女子が分かれており右が女子、左が男子だ。一階は共同スペースで食堂や風呂、洗濯などはそこで利用出来る。*2
採光がしっかりとした広い共用施設というのはやはりテンションが上がるのか、A組全員の言動が全体的におかしなことになっているのはご愛嬌。エロブドウが発情していたが相澤が一言「いい加減にしとけよ??」と釘を刺した。そのうち物理的に刺されるぞお前。*3
まさかのエレベーター付きというのも驚きだが、二階にある部屋もまた驚かされる。
一フロアに男女各四部屋の五階建て。大部屋なんてことは無く一人一部屋を与えられエアコンやクローゼットは勿論の事、まさかのトイレや冷蔵庫すら各部屋に付いているという贅沢空間。下手なアパートよりも充実したワンルームだ。
ベランダもある!と緑谷と上鳴が外に出てるのを尻目に八百万が「我が家のクローゼットと同じくらいの広さですわね……」と評していた。自宅はホワイトハウスか何かですか?
「部屋割りはこちらで決めた通りだ。各自事前に送ってもらった荷物が部屋に入ってるからとりあえず今日は部屋作ってろ。明日また今後の動きを説明する」
その日はそれで解散。後は好きにしてろと相澤は校舎の方へと戻って行った。
「俺五階だ」
「間飛もか。俺もだ」
「俺も俺も!轟と間飛なら結構静かそうだな」
「瀬呂、轟、間飛か。よろしくな」
重たい物があったら任せろ、と力自慢が主張しつつも各々の部屋へと向かい部屋作りを開始する。こういう部屋作りって楽しいよね。
何とか部屋作りを終えた者から一階の共同スペースに集まり、これから始まる共同生活への不安や期待を口にしていた。飯田が張り切っていたり切島がくったりしているのも通常運転だ。
するとテーブルを囲んでいる男子達のところへ部屋作りを終えたらしい女子達も来た。手伝い合っていたのかこちらもほぼ全員が揃っていて(葉隠的なアレではなく)姿が見えないのは梅雨ちゃんだけ。
「男子部屋出来たー?」
「うん今くつろぎ中」
「じゃあさ!今話してて提案なんだけど……」
「お部屋披露大会!しませんか!?」
「「「へ……?」」」
緑谷'sルーム
「わあああ!?待って待って待って!!?」
「わあ……オールマイトグッズがいーっぱい!!」
フィギュアやポスターにコレクションカードなど。そういったものだけでなくシーツや毛布、ラグ等のインテリアすらもオールマイトの関連アイテム。
頭のてっぺんからつま先を通り越して己の部屋までオールマイトに染め上げていたらしい。
突如始まったインテリアセンスの抜き打ちチェックに恐れおののき、或いは不敵に笑う男子達。自信のなさとワンチャン褒められたりしねえかな、という希望的観測が入り交じった感情が後押しにも引き止めにも傾かない。
「フン……くだらん……」*4
「「「……」」」
無言の見せたくありませんアピールだがそんな事をされてはますます見たくなる。無言のアピールには無言の実力行使、葉隠と芦戸の二人がかりで押されては退かざるを得なくて。
常闇'sルーム
「黒!!怖!?」
「貴様ら……」
ザ・厨二病としか言えない光景。
一歩間違えるとカルト宗教の儀式場になりかねない組み合わせ。とりあえず真っ黒に統一されてるし四六時中ハロウィンかよとツッコミたくなるラインナップ。せめて日光は入れよう?
慰めなのか心の底からの共感なのか切島が西洋剣のようなキーホルダーを摘み上げては昔買ってたと言い、緑谷はクローゼットの前に置かれていた剣のオブジェを見て目を輝かせている。
尚、その後強めに追い出された。
間飛'sルーム
「何コレ!?」
「アニメ見る用のモニターだけど……?」
「わかってはいたけど……やっぱりマンガ多いな!?」
我らが古のオタク、間飛の部屋。デカい本棚には所狭しとマンガ本が並べられ、何人で観る用ですかと尋ねたくなるサイズのモニターが壁に直接取り付けられていた。
ちなみにだが実家にはこの倍以上の本が置いてあったりする。祖父母の頃から時間をかけて集められた作品群はデカめの一部屋を埋めるくらいにはあるらしい。
壁に取り付けられたモニターの下にはいくつかのレトロゲームハードが置いてあり、その中にはつい先日ヴィラン連合と遊んだ某携帯機兼家庭用ゲーム機も。
「……あ、これおばあちゃんちで見たかも」
「ま、間飛さん!!この作品、お借りしても!?」
「それはいいけど綺麗に読んでくれ」
かつて日本にシベリアンハスキーブームを巻き起こした獣医の卵達のストーリーを手に取り、口田は表紙のやや写実的なハスキーの顔を見て微笑んだ。
ヤオモモさんはフルメタルなアルケミストの書籍版にお目目キラキラ。そういえばマンガアプリを教えたけどまだ最後まで読めてなかったんでしたっけ。
じゃあ解散だなと轟が自室に戻ろうとした時、麗日が慌てて呼び止めた。次いで緑谷、飯田、切島に八百万……あの日間飛を救出に行こうと言っていたメンバーだ。爆豪は寝た。
他の人に聞かれてはマズイと寮の外にあるベンチの前に集まった彼らの前で、困ったように眉根を寄せた梅雨ちゃんが話したいことがあると切り出した。
「……私、思ったことは何でも言っちゃうの」
でも、どう言葉にすればいいのか分からない時もある。思い返されるのは病院での言葉。
ルールを破る行為は、ヴィランのソレと同じだと。
相澤にもヒーロー達にもついぞ知られることなく終わった救出も、向かった自分達だけは知らないふりは出来ない。病院であれだけの事を言ってでも引き止めようとしてくれたからこそ、八百万は自ら梅雨ちゃんへと自分達の行いを打ち明けていた。
結果だけを見れば何の意味も無かった。邪魔もしなければ助けにもなれない、自分達は何の為にあんな事までしたのかと自責したくなる。
「心を鬼にして……辛い言い方をしたわ」
「いいえ!それは……!私達が悪いので、あって……」
「止めたつもりになってた不甲斐なさや、嫌な気持ちが溢れちゃって……」
纏まらない感情を何とか言葉にして話そうと頑張るけれど、後から後から出てくる涙と違って喉に引っかかった言葉は中々出てきてはくれない、
強い言い方をしてでも止めたかった。でも助けたいという思いは同じだったし、無事に帰ってこれた彼らを「ほら見た事か」と嘲るつもりもない。
まだ未熟な彼らには意見の衝突の後すぐにいつも通りの関係には戻れない。罪悪感や気まずさが二度と修復できないのではという不安に駆られていたのだ。
「皆と、楽しくお喋り出来そうになくて、でも、それはとても……悲しくて……」
「っ……すまねえ!!」
「うん……ごめんなさい!!梅雨ちゃん!!」
「ケロ……」
大人を信じて規則に従った梅雨ちゃんも、仲間を助けたいと動いた緑谷達も間違っていない。どちらが悪などと一方的に決めつけたりは出来ないのだ。
涙をポロポロと落とす梅雨ちゃんに切島が、そして全員が頭を下げた。間違っていなかったとしても彼女を不安にさせたのは自分達だから。
だからこの話はここでお終い。誰も責めたりすることなく、いつも通りに切磋琢磨して行こうと彼らは締め括った。
「……アイツら何で外出てんだ?」
お前は腹切って来い間飛。
梅雨チャン「グスングスン……」
緑谷達「サーセンシタァッッ!!」
間飛「何してんのアイツら……」
爆豪「zzz……」
皆様にお知らせです。
既にAFO倒したしもうすぐ終わるのかと思われたかもしれませんが、残念ながらまだまだ続きます。
具体的には一年生が終わるまでは確実に書き続けるつもりでいるのでこれからも本作をよろしくお願いします。