え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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その人にしか分からない葛藤

 

 

 

 緑谷がケミィ達とわちゃわちゃしてて、爆豪達が可哀想なくらい受験生を蹂躙している頃。一次試験を通過した者達は控え室へと案内され、張り詰めた空気から一足先に抜け出し休息を取っていた。

 

 既に先着百名の半分を切った事でますます激化する戦いを尻目に、想像以上に疲れた体を癒そうとする者がほとんどの中。

 

 

「ハァン!?エンデヴァーはちゃんとヒーロー()してますが!?」

「ンなわきゃないでしょ!アレ滅茶苦茶冷たかったぞ!?」

「……お前らうるせえ」

 

 間飛と夜嵐の二人はエンデヴァーについての論争を繰り広げていた。轟は死んだ目で咎めた。多分聞いてないなコレ。*1

 

 

 まさかのほぼ同時合格を果たした三人。そうなると控え室でも当然三人だけになる瞬間というものがある。

 

 最初のうちは間飛も楽しく雑談に興じていたのだが、一向に轟に話しかけない夜嵐に違和感を覚えた。

 

 ──同じ雄英生だけどアッチはスルーなのか?

 

 指摘、というよりは純粋な疑問。そりゃあ三人いて二人でしか会話をしていなかったらもう一人にも気を配ろうとするだろう。この時の間飛は叱るでも咎めるでもなく、気になったから話題に出しただけだった。

 

『……俺、エンデヴァーと轟焦凍は認めないんだ』

 

 それこそ間飛には知る由がない話だ。

 かつてエンデヴァーにサインを頼みに行った時、冷たい目で邪険に扱われた。その時の彼の目からは冷えきった怒りが伝わるばかり、おおよそヒーローと呼ぶには相応しくない物だった。

 

 雄英推薦入試当日、轟を見た夜嵐はもう一度同じ目を見た。

 一言一句エンデヴァーと変わらない『邪魔だ』という言葉。それは夜嵐に雄英高校への入学を蹴らせるに足るだけのトゲを残していた。

 

『……はあ?馬鹿か?』

 

 それに対してイラッとしたのは間飛。何故か轟が何かリアクションを返すよりも早くキレた。判断が早い。

 

 そこから何故か口論が進み、こうしてエンデヴァーの炎も鎮火するのではと思う水掛け論が発生しているわけで。

 

「つーかアンタ体育祭で『頭エンデヴァー』とかいう名言残してんでしょーが!」*2

「ありゃ個人として見た時の話だバカタレ!」

「はい!?」

「……間飛、俺が辛くなってきた」*3

 

 夜嵐が認めない根拠として提示しているのは過去の体験談。どれだけの言葉を尽くそうとも()()()()()()()のだから夜嵐が中々譲らないのも当然だろう。

 

 確かに過去は消えない。だからこそ。

 

「俺が褒めてんのはヒーローとしてのエンデヴァーだよ!そりゃ私生活じゃドメスティックでバイオレンスな加齢臭かもしれんが!」*4

「それはそれで酷い!?」

「あの脳筋万歳ゴリラ(オールマイト)の次に来る実績があるヒーローだぞ!?」*5

「───それは……そう、スけど」

 

 積み重ねた実績も消えない。

 万年No.2と言われると『一番にはなれない可哀想な奴』と思う人もいるだろう。しかし逆に言えば『常に二番手に居続けるだけの実力がある』事にもなる。

 

 更にその点で言えば轟だって同じ。

 

「そもそもの話、推薦入試でチョロっと見ただけで決めつけてる方が失礼だろ。中学の頃の俺なんざド級の陰キャだったからな?」

「……それは、何か、ご愁傷さま?」

「同情すんな泣くぞ」

 

 過去は消えないと言うが轟と夜嵐の間にある過去など推薦入試の極僅かな時間のみ。その一瞬を切り取ってネチネチと論っているようにしか見えない。

 

 夜嵐はチラリと横目に轟を見てみる。

 再会したばかりの印象は『少しは変わったらしい』だった。しかし改めて真正面から見据えてみるとどうだろうか、エンデヴァーと同じと言えるだろうか。

 

「……悪い。夜嵐、イナサだったか」

「……ウス」

「俺もエンデヴァーは、嫌いだ」

「!!」

「アイツを否定したくて必死で……周りなんか全然見えてなかった。お前の事すらも」

 

 フィルターはお互い様。夜嵐がエンデヴァーを嫌っていたから轟を嫌ったように、轟もまたエンデヴァーを嫌悪したが為に夜嵐を見ていなかった。

 

 悪かったという言葉と共に頭を下げられ、夜嵐も決心した。

 

「ごめんっ!!」

「うおっ……」

「鼓膜ゥ!?」

 

 ゴスン!と床にまで届く大袈裟なお辞儀と、よく通る大きな声での謝罪。近くにいた間飛の耳には大ダメージ。ナイス。

 

 エンデヴァーを嫌悪し、轟を嫌った。

 怪物を退治する過程で己が怪物にならないように気をつけろという教訓。過ぎた拒絶の意思は同じ道を歩む事にも繋がるのだ。

 

「間飛に言われて……ようやく気づいた!俺が悪かった!ごめん!」

「……いや、俺も悪かった」

「いいや!俺の方が悪かった!」

「そこで張り合うなよ」

 

 二次試験までの小さな一幕。いがみ合う間に間飛を投げておけば何とかなるかもしれない説が生まれた瞬間だったりする。尚、成功率には期待しないであげて欲しい。

 

 

「……そういや間飛、エンデヴァーファンなのか?」

「いや?俺リューキュウファン」

「違うのかよ!?熱弁の意味は!?」

「どっちかっていうと、轟をアレと一緒にした事に腹立ってた」

「ええ……」

「間飛、親父のファンだけはやめとけ」*6

「息子さんからは否定しないであげて?」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 あの日、僕は安堵した。

 

 幼い頃……皆と違うことが怖くて仕方なくて、パパンもママンも僕の事を抱きしめながら泣いていた。どうしてと繰り返しながら。

 

 関わってしまった。

 

 無個性の僕(・・・・・)が皆の輪から外れてしまわないように、皆と一緒に夢を追いかけられるように。パパンもママンも僕の幸せを願ってくれてたんだ。

 

 死なせたくなかった。

 

 絶対に疑われないように、罪悪感に押しつぶされないように。無理やり気丈に振舞って、体質と合わない個性だけが原因じゃない腹痛に苦しんできた。

 

 違うのはとても怖いから。

 

 藁にも縋る思いで僕の幸せを願って、嘘か本当かも分からない『個性を自由に与えてくれる誰か』を求めた。

 

 

オールマイトが教師になると噂がある。雄英に入りなさい。

 

クラスが孤立するタイミングを教えなさい。

 

合宿先を教えなさい。

 

 

 ……どの面下げて、僕はここに居るんだろうか。

 もう、僕の事は僕にも分からなくなってしまった。

 

 間飛君。僕は正真正銘、クズのヴィランだよ。

 あの日あの時あの場所で……攫われたのが君でよかった、なんて少しでも思ってしまったから。君なら無事に戻ってこれるはずだって思ってしまったから。

 

 なのに。なのに、彼は何一つ顔色を変える事無く帰還して。

 

 自分の命が懸かっているのに少しでも情報を集めようとして、自分が逃げた時の被害を考慮してヴィラン連合の元に自ら残った。*7

 

 その果てに彼は僕達が恐れて止まない魔王に立ち向かい、オールマイトと共に勝利してみせた。

 ……分かるとも。報道に彼の姿はなく、オールマイトやミルコによって捕縛されたと言われていたけれど。僕には分かってしまう。ヴィラン連合のバックに居たのが彼だと分かっていたから。

 

 僕は、どうだろうか。怯えて逃げて、自己保身に走ってばかり。彼の身をどの面下げて案じていたのか。

 切島君達が助けに行こうと語っていた時、病室で蛙吹さん達が強い言葉を使ってでも止めようとした時。僕はひたすらに『死にたくない』と思っていた。

 

 ……これで、いいのだろうか。

 

 

 

 状況は最悪。戦乱の真ん中で飯田くんと二人での行動。ターゲットは二つ発光……あと一つで脱落。

 

「……これもう、生き残るの難しいよ飯田くん☆」

「何を言う!諦めるなんて誰でも出来るぞ、頑張ろう!」

 

 出来る限りA組の補助を、と一人で駆け回っていた飯田くん。委員長というクラスを導く立場にいるのだから、時間と足が許す限りはクラスに貢献したいと、彼はそう言っていた。

 

 兄のように、インゲニウムのようになりたいと夢を語る彼に助けられてばかり……。

 

 それでいいはずが無い。

 

 

 FSHAM!!

 

「っ!?何をして……本当に何をしている!?」

「目立ってる☆」

「とってもな!違う!そうじゃなく!」

 

 僕を庇っていては飯田くんも共倒れになってしまう。ならばいっそ、自分に注目を集めて囮の役割になればいい。

 僕のターゲットを狙いに来た受験生の裏。飯田くんのスピードで彼一人なら確実に可能だ。

 

 何を急に、と彼は言うけれど。僕はずっと───

 

 

 その瞬間、ハトの大群が飛来した。

 

「っ!?」

「ハトォ!?」

「何だコレ……いって痛!?」

 

「【深淵闇躯(ブラックアンク)】……!!」

 

 視界を封じられ、突然のダメージに困惑が広がる中で見慣れた黒い影が……【黒影(ダークシャドウ)】の腕が伸びた。

 動揺は伝播する。A組の姿や個性が周囲を掻き乱し、続々と集まってくる。

 

「お先ねー!!」

「俺も!」

 

 そうしている内にも葉隠さんと尾白くんが通過。瓦礫を盾に砂藤くんが攻撃を防ぎ、芦戸さんが【アシッドベール】でボールを絡めとる。

 

「青山のおへそレーザー見えたから!また集まれたよ!」

「ああ……!ありがとな!」

 

 芦戸さん、常闇くん、峰田くん……残るは僕と、飯田くん。

 

「青山君!」

「──うん」

 

 

 ───僕はずっと、対等になりたかったんだ。

 

 

 

『百人!今埋まり!!終了です!!ッハー!!!』

 

 

 A組21名。第一試験突破。

 たった一人、胸中で何かを決意していた事に誰も気づかぬまま。

 

 

*1
多分じゃないぞ。確実に聞いてないぞ。

*2
迷言の間違い

*3
割と一番ダメージ受けてる人

*4
No.2「おい」

*5
No.1「……ぐすん」

*6
グッズとか少ないぞ、という心からの気遣い

*7
尚、ピザパ






夜嵐「ちなみに何でリューキュウ?」
間飛「クールビューティーお姉さんとカッコイイドラゴンの二属性だぞ。好きにならん方がおかしい」
夜嵐「ドラゴンカッコイイッスよね!」
間飛「……後、昔一度だけファンサ貰ったことがあって惚れた」
夜嵐「…………え!?ガチ恋勢って奴ッスか!?」

※デビューしたての頃にこっそり背中に乗せて貰えたらしい。リューキュウが21歳、間飛が10歳の頃の話。ここから色々性癖が捻じ曲げられた模様。
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