一次試験、雄英高校一年生A組全員突破という快挙。ギリギリの所に滑り込んだ飯田と青山を迎えながら、集まって喜び合っている。
士傑では爆豪達にちょっかいを出してしまった肉倉が脱落してしまい、夜嵐や現見から「あの人落ちたの?何で!?」という扱いを受けている。手を出す相手は選ぼう。
「雄英一次試験通っちまった!やったぜええ!!」
「お前らギリギリで怖ェって!」
「肉倉先輩落ちちゃったんスか!?マジっスか!!」
「先走って単独行動して雄英に負けたらしい。というかケミィはよく無事だったな?」
「んー……ゆーえーに助けられた」
第一の壁を乗り越えてホッと一息。時間にすれば分単位の短い間ではあるが、久しぶりにも感じられるクラスメイトとの再会に会話が盛り上がっていた。
すると控室のモニターが切り替わる。アナウンスからもモニターを見るように促され、そこにはつい先程まで争いあっていたフィールドが映し出されており───
──爆発していた。
(((何故───!!?)))
これから行われるのは第二次試験にしてラスト。
第一次試験のフィールドであった場所を被災現場へと変えて、バイスタンダーとして救助演習を行うとの事。
「「パイスライダー……?」」*1
「バイスタンダー、ね。現場に居合わせた人の事だよ。授業でやったでしょ?」
「一般市民を指す意味でも使われたりしますが……」
被災現場には【Help Us Company】……通称【
彼らは血糊や演技を利用して己の状態をヒーローの卵へと見せつけ、的確な対応が出来るのかを見極める。
彼らが瓦礫の中に散らばっていく所を見て、何人かの人間はそれが何を模しているのかに気づいていた。
「緑谷君……」
「うん……
本来ならばオールマイトとオール・フォー・ワンの戦いにより、試験以上の被害となっていた神野区。
しかし間飛とヴィラン連合の存在が被害を抑えてはいたものの、決して被害ゼロという訳ではなかった。戦いの余波は確かに死傷者を生んでいる。
噂だが、間飛がおらず、ヴィラン連合が敵対していた場合の損害を想定したところ神野区は半壊、オールマイトも後々ではなく即座に引退していたのではという仮説が立てられたとか。
「……頑張ろう」
「ああ!」
あの日の緑谷達は逃げることしか出来なかった。今度は助けられる権利があるのだ、逃げたままでは終わらせられない。次は助けられるようになるとやる気に燃えていた。
『ヴィランによる
『規模は○○市全域建物倒壊により傷病者多数!』
『道路の損壊が激しく救急先着隊に著しい遅れ!到着するまでの救助活動はその場にいるヒーロー達が指揮を執り行う!』
『一人でも多くの命を救う事!!』
第二次試験、開始。
◇
「俺!傷病者の位置分かります!」
「探知系も複合してるのか!頼む!」
開始と同時に真っ先に都市部エリアへと駆け込んだ。リアリティに拘ってるなら室内に居た為に瓦礫の中に閉じ込められた……という設定の人が居そうな気がするからな。
ついでに周囲は初対面ばっかり。まずは自分に出来ることを伝えなきゃならねえ。
ようやく安定してきた半径
「そっちの倒壊跡!7m先に一人伏せってる!向こうの二階部分の奥にも一人蹲ってるぞ!」
「よし来た!」
「っと……!居ました!大丈夫ですか!?」
……しかしあれだな。俺自身に出来ることはかなり少ない。場所を探って知らせる代わりにあんまり動けねえし、動けたとして俺じゃなくてもよくね?になるからこれちゃんと点数取れてるのか分からんな。
まあ指示関係をカウントしない程雑な採点では無いだろう。最初に俺がやった『自分、こんな事出来ます!』って宣言を真似してやってくれてるし、このまま順調にいけば都市部の要救助者はすぐ終わるはずだ。
「よっし!じゃあ早速……!!」
「待て夜嵐、安全確認と状態確認からだ」
「……確かに!」
救助演習……炎ではなく氷を中心に立ち回る必要がある内容だな。もし延焼でもすればその時点で脱落になっちまう。
いきなり夜嵐に襟首掴まれた時は何かと思ったが、コイツなりに歩み寄ろうとしてくれてんのかもな。半分はブレーキ役に士傑の人が呼んでたのかもしれねえが……自分達で手綱握っとけよ。*2
まずは動かしていいのかの確認、その後なら夜嵐に任せられる。今回は……動かしても問題なさそうだ。
「問題なし……と。イナサ!!」
「おーっしゃァ!!頑張るッスよォー!!」
こちらの合図を受け取った士傑の先輩が指示を出した。こういう形ならアイツがいると頼もしいな。
強い風が瓦礫だけを巻き上げていき、怪我人役を救ける邪魔物が消えた。どういう個性なのかオッサンの顔をした赤子サイズの人間に一瞬硬直してしまったが、とりあえず二人救助だ。
「腕を怪我したの!」
「助けてくれ!痛い!」
「騒ぐな!動けるだろうが!!」
一方爆豪withまたもやついてきた切島と上鳴。
怪我した部分を押さえるように歩く中年男性と中年女性に対し、まさかの真っ向からうるせえという扱い。ヒーローを志している者の姿か?これが……。
実際のところはちゃんとした判断に則っての言葉だったりする。
自力で歩いている→押さえている箇所は片腕のみ→声もちゃんと出せる→目の前の人物をヒーローと認識出来るくらいには落ち着いている=元気じゃねえか。
……まあそうだよね。なんなら少し小走りで駆け寄って来てたもんね。
「クソ髪、お前が誘導してこい」
「俺ェ!?お前は!?」
「万が一戦闘が発生した時お前なら守れるだろうが」
「……確かに。おっし!俺に付いてきてください!」
何より今の彼は少しピリピリして……否、何かを警戒している。
爆豪の頭に残っているのは試験開始時のアナウンス。
(ヴィランによる大規模破壊……ならヴィラン役の誰かが出てくる可能性が高ェな……!!)
忘れてはならない一文。これはれっきとしたヴィランによる被害として進められている。ならばヴィランが大人しく立ち去った後と考えることは出来ない。どこかのタイミングで必ず戦闘が起こるはずだ。
爆豪とて己の個性が救助向きでは無いことぐらい理解している。なればこそ、己が最も輝ける舞台であるヴィランとの戦闘に備えて両手はフリーにしておきたい。
「いつでも来やがれ……!」
「えっ?なんか来んの?怖っ!?」
そう、忘れてはならない。
ヒーローには怪我人を救ける能力だけでなく、現れたヴィランを倒しうるだけの戦闘力も求められていることを。
BOOOMB!!!
「な……!?」
「っそうか!演習のシナリオ!!」
「まじか……」
「そういう奴かよ!」
突然の爆発。救護所の近くで起きたそれは壁を崩し、その向こう側の光景を見せつけた。
「救護……対敵。全てを並行処理、出来るかな?」
「出来なきゃ不合格ってのは哀れだが……頑張ってみな!ひよっこ未満!!」
ぬらりとした黒い肌、頭の後ろに見える特徴的な背鰭。パンツスーツに押し込まれた肉体はひと目でわかる筋肉質で、ヒーローに興味がなくても名前を知っている程の人物。
兎の耳に褐色の肌。ニヤリと釣り上げられた口角からは個性とは裏腹に捕食者の雰囲気を思わせる。もう一人と同じく先の神野区に参戦していた人物。
「ギャングオルカと……ミルコ……!?」
「嘘だろビルボードトップ10の常連二人かよ!?難易度おかしいって!」
多分どこかのワープする脳筋のせいなので諦めてください。
公安A「……9月の仮免試験にあの子が来るって?」
トガ「ですです。根津さんからそうお聞きしました」
公安B「ギャングオルカ一人は……無理、ですかね?」
公安C「オールマイトと同格のヴィラン相手に真っ向勝負出来ちゃう生徒かあ……」
公安A「……単独ヴィラン枠でミルコ、増やしません?」
公安C「来てくれるかな」
公安B「職場体験の時の件を持ち出せば何とか」
トガ(……クソゲー待ったナシですね)
ミルコ「仮免試験?メンド……」
公安A「神野区の少年が参加するので難易度にk」
ミルコ「行くわ」
公安A「えっ」
ミルコ「というか行かせろ」
公安A「アッハイ」