え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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改めて名乗らせて頂こう……

 

 

 

 ヒーロービルボードチャート。

 プロヒーローの事件解決数や社会貢献度に国民の支持率……要はヒーローとしての能力の優劣が分かりやすく現れる番付。

 

 ある時期を境にトップ2の名前は固定されているものの、様々な要素から入れ替わりも激しい為に年二回の発表でさえ顔ぶれはコロコロと変わる。

 

「ギャングオルカに、ミルコ……!?」

「今年度の試験厳し過ぎないか!?」

(……間飛の、いや違うな。雄英に限らず全体的にレベルが高くなっているからか?)*1

 

 そんな競争が激しい環境下でTOP10の常連と認識されている二人。並のヒーローとは比べ物にならない実力を有しているのは言わずとも知れたことだろう。

 

 片や多数のサイドキックを引き連れ、片や一人で多数を蹴散らす速度を持つ。質も数も揃えられた絶望的な布陣だ。

 

 

 

『ヴィランが姿を現し追撃!!』

 

『現場のヒーロー候補生はヴィランを制圧しつつ!』

 

『救助を続行してください!!』

 

 

 さあ、第二ラウンドといこう。

 

 

 

 

 

「皆を奥へ避難させろ!ヴィランから出来るだけ距離をおけ!」

「真堂……さん!」

 

 真っ先に動いたのは傑物学園高校、真堂。皆の硬直を他所に駆け出し、地面に手を当てて個性を使用。揺れの大きさや速度が反動になって動けなくなる事を考慮し、一秒間のインターバルで済む程度の【揺れ】を放った。

 

 音を立てて前方へと伸びる振動と地割れがサイドキック達を襲う。ミルコは無理でもギャングオルカくらいは……という考え方は相当に甘かった。

 

「温い」

「な───!?」

 

 

 キィン!!

 

 

 ギャングオルカの個性はヒーローネームの通り【シャチ】。シャチっぽい事が陸上でも可能であり、その内の一つが超音波での攻撃だ。

 至近距離で耳をつんざく様な高音を受けた真堂の身体がぐらりと崩れる。

 

「この実力差で殿一人とは……舐められたものだな!!」

 

 一撃。一秒にも満たない片手間の超音波だけで二年生が撃破された。

 それを目の当たりにした周囲の者にも脅威は伝わり、傷病者の避難誘導から何名かがこちらに来ようとするも。

 

「切り替えが遅ェんだよ!!」

「っ!ミル──がっ!?」

「づぅ……!!」

 

 ヴィランは一人では無い。彼女らしくもない手加減された打撃が、容易く受験生数名をダウンさせる。

 

 人数による面での制圧のギャングオルカとサイドキック。個人による速度の暴力であるミルコ。決してたった一人で相手取っていい組み合わせでは無い。

 では誰がどちらを担当するべきかと言われても、アレに立ち向かえる実力も勇気も並大抵では持ち合わせていない。

 

 ならば並大抵ではない者なら?

 

 

「いーや!一人じゃないっスよォ!!」

「夜嵐!使え!」

 

「ぬうっ……!?」

 

「死に晒せや!!」

「言葉使い何とかしろよマジで!?落ちるぞ!!」

 

「おわっ!?」

 

「轟くん!間飛くん!かっちゃん!」

「雄英入学を蹴ったとかいう奴……!」

「いいぞ、戦力が集まって来た。今のうちに避難を!」

 

 轟の炎を掬いとった夜嵐の【旋風】が、間飛に速度を上乗せされた爆豪の【爆破】が。二人の脅威に向けて放たれた。

 

 未だチグハグで未熟な連携。決定打には程遠いけれど、ヴィランの二人に彼らに注力するべきだと判断させた。

 

「ミルコは任せろ!その代わりそっち任せた!」

「押忍!!やってやるっス!」

「お互い巻き込まねえように気ィつけるぞ」

「巻き込むわきゃねえだろうが半分野郎!!」

 

「……なるほど、これは厄介」

「ハハハ!だから言ったろ?拘束用のプロテクターなんざやめとけ(・・・・)って」

 

 彼らの狙いはヴィラン達の分断。ギャングオルカとミルコの連携も脅威だが、それ以上に広範囲攻撃に長けた味方の同士討ちを避ける目的が大きい。

 間飛と爆豪がミルコを、轟と夜嵐がギャングオルカ達を受け持つ形になった。

 

「さぁて……久しぶりだな?間飛」

「お久ですね。こんな所で会いたく無かったッスよマジで」

「だろうな!……そんで、決まったのか?納得のいくヒーローネーム」

 

 もう轟達には目もくれず、ミルコは間飛を見据えている。彼女の問いは職場体験中に最初の一回を除いて名乗られることの無かったヒーローネームについて。

 

 考え抜いて決めていた名前を却下された事で投げやりにつけた物ではなく、もう一度時間をかけて考えたいからと保留にしていた。

 次会う時までには決めておけよとミルコに言われ、神野区の事件を経て決められた自分のヒーローとしての在り方。

 

「……【In X Apex】、未知(X)(In)頂点(Apex)

「?」

「それが俺の目指す先、ヒーローネームIXA(イグザ)です」

「……ははっ、はははははは!!そうか!頂点と来たか!」

「あ゙!?一位になんのは俺だクソ陰キャ!!」

「そっちもか!?いいな!今年は豊作じゃねえか!」

 

 これ以上なく面白い。目の前の有望株に笑いが収まらないミルコはとうとう我慢の限界を迎えた。

 

「っし!じゃあ……死ぬ気でついてきなァ!!!」

「言われなくても!!」

「上等だコラ!叩きのめしたる!!」

 

 兎の脚とニトロの手、継承を重ねた拳が激突する。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ───予想外。

 

 引率の教師達も公安の採点者達も、何ならギャングオルカのサイドキック達もだ。

 

 ミルコから拘束用のプロテクターは使わない方がいいと提案があったらしいが、なるほどそんなものを装備していれば今頃サイドキック達は全滅していた。

 

「……イレイザーんとこの子達、やばくね?」

「本来ならプロでも何人が対応出来るんだという案件……俺も予想外だよ」

 

 A組というクラスをしばらく見てきたが、未だに測りかねている部分は多い。

 しかし確実に言えることは三人(・・)の存在の大きさだろう。

 

 一人は緑谷。入学時点では誰よりも未熟だった個性の扱いをみるみる成長させ、気がつけば既に最前線でトップ争いに食いこもうとしている。

 二人目は爆豪。言葉使いや態度から嫌悪されがちだが、その実態は誰よりもストイックであり続ける真面目さ。窘められつつも周囲に真剣さを与えている。

 三人目は間飛。入学時点からのトップクラスの実力に加え、個性に対する柔軟な思考と対応力。コミュニケーションを不得手とは言うが、奴の考え方に影響を受けた者は多い。

 

「何よりアイツらに負けじと食らいつく周囲。三人に負けてたまるかと飯田や轟が発奮すれば、それに釣られて他の連中も立ち上がってくる」

「随分と惚れ込んでるねえ……」

「……そうかもな」

 

 観客席とフィールドで異なる空気。キロ単位も離れていない場所でトッププロを前に大立ち回りするアイツらを見ているのが楽しい。

 轟の炎を夜嵐が掬い上げて送り込み、夜嵐の風を轟の氷が凶悪に仕立て上げる。やってる事がエグイな。

 

 厳しくした自覚はあるし、青春を望む気持ちを理解した上で辛く当たった事だってあった。

 

 でもこの光景を見ていると間違ってなかったと断言出来る。

 

「アイツらはいいヒーローになるよ」

「……ははは!そりゃ私なんかじゃフラれるわな!」

「?」

「自覚無いのか?イレイザー……」

 

 

 ──いい顔してるよ。

 

 ジョークはそういうと視線を生徒達に戻したっきり、微笑むばかり…………。

 

 

「おっしゃあ!!やったれ真堂!!!」

「……こういう時は黙るのがお約束じゃねえのか」

 

 前言撤回。コイツがただ静かに笑ってるだけなわけない。うるせえ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 神野区の戦いで公安にとある疑問が生じていた。

 

 それは【オールマイトと間飛移の力関係はどうなっているのか】という点について。

 

 伸び盛りの【フィジカルギフト】に対して衰えるばかりの【ワン・フォー・オール】の残り火。この二つが比較対象になる時点でオールマイトの勝ちではないかという声もあった。

 

 全盛期のオールマイトを知るオール・フォー・ワンは5kmの距離を30秒で駆け抜けて尚衰えた、と評価していた。

 今の間飛なら【瞬間移動】も込みでより速い移動は出来るが、純粋な走力のみでオールマイトと同じ速度が出せるのかは不明なままだ。

 

 しかしオール・フォー・ワンは間飛の攻撃を『オールマイトと同等以上』と評価しており、この時の比較対象が全盛期のものなのか……それとも今の衰えたオールマイトとの比較なのかで話は変わってくる。

 

 水掛け論を続けるくらいならば、と公安はオールマイト本人に尋ねる事にした。その結果……。

 

『彼のパワーを私と比較したら……?そうだね……』

 

 彼はすこし悩む素振りを見せた後、困ったように告げた。

 

 

『今の時点で衰えた私以上……全盛期の私未満かな?しかしあのままいけば全盛期の私すら超えるかもね!』

 

 最後の言葉は公安職員を戦慄させるには十分過ぎた。

 

 

 

 

 

(っぶねえなマジで……!?条件が悪けりゃ初手で負けてた!!)

 

 【兎】の脚力による高速戦闘の最中、ミルコは冷や汗を流して二人の攻撃を凌いでいた。

 

 周囲が被災現場で傷病者やヒーロー候補生がいなければ、間飛は遠慮なくその超パワーを振り回して瓦礫ごとミルコを吹き飛ばしていただろう。

 巻き込んではならない者がいるからこそ間飛のパワーには制限が付きまとい、爆豪も攻撃範囲を考慮しなければならない。

 

 同じ戦場に立っていたからこそわかる。間飛とオールマイトの違いは“超パワーを街中で振るう経験値”の差だ。

 彼の攻撃は確かにオールマイトに並ぶが、街の中で最小限で最大限の成果を出す事に慣れていない。

 

「チッ……!爆豪ォ!!」

「指図すんな!!」

「それを踏まえても……やべえな!!」

 

 その上で、だ。たった二人の学生を前にミルコが苦戦させられているのは信じ難い光景だろう。

 

 自慢の足技を避けられ受け止められ、カウンターを狙われ。変則軌道と起こりの早い【爆破】に牽制され、立ち止まれば【瞬間移動】からの一撃で容易く落とされる。

 ミルコから高速戦闘に持ち込んだのではなく、二人を相手取るには高速戦闘をせざるを得ない。フィールド広域を駆け抜けながらの殴り合いでなければ即座に負ける。

 

(ギャングオルカには悪いが……私はコイツら二人で手一杯だなこりゃ!)

 

 救護所から離れた都市部エリアに再び突入する。瓦礫の山を跳び移り、スピードを乗せたドロップキックを放つ。

 

 しかし間飛、これを回避せず。

 【瞬間移動】での強引な回避すらもせず、敢えての真っ向からガード。掴まれる、と間飛の手を警戒しダメージを与えることを諦めてガードの腕から飛び跳ね──

 

「……よし、爆豪!!ここなら大丈夫(・・・)だ!」

「やっとかよ……!!」

「あ?……!まさか!!」

 

 ──空中で身動きが取れなくなった瞬間を見逃さず、爆豪が手のひらをミルコへと向ける。

 

 あの短い一瞬、ミルコを受け止めている間に周囲に人が居ない事を把握。逃げる方向を限定させる為にやや上目に跳ね除けた。

 

 

 遠慮の無い超火力の【爆破】が放たれた。

 

 

「熱っつ……!!痛ってェ!!やるじゃねえか!」

「……マジ?まともに食らったじゃん」

「トッププロがこの程度でくたばるかよ」

 

 ギリギリ。かろうじて【爆破】を受ける寸前にスナップロール*2で軽減が叶った。

 蹴りの風圧と回転による軽減をした上での痛手。想定外に続く想定外だ。

 

「いいなお前ら!まだまだ戦れるよな!?」

「当たり前だ……!!」

(これ点数大丈夫か?)

 

 まだまだ二次試験の終わりは遠い。【HUC】全員が救けられるか、彼らのどちらかが倒れるか。決着は誰にも分からない。

 

 

*1
半分は間飛のせいです

*2
戦闘機が水平方向に行うスピン





※爆豪は間飛が回収してきました



間飛「先生!やっと決まりました!」
相澤「……?ああ、ヒーローネーム」
間飛「はい!【IXA】です!」
相澤「──……カッコつけたな、かなり」
間飛「ヒーローならカッコつけてなんぼでしょ!!」
相澤「そうだな……カッコつけてこい」
間飛「はーい!」
相澤「伸ばすな」
間飛「はい!」

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