読者様にお知らせです。
これから頂く感想への返信をしばらくの間辞めさせて頂きます。
最近の暑さにやられたのか体調が不安定になり、最近は沢山の感想をいただけるようになって返信にもそれなりの時間がかかるようになりました。ありがたい限りです。
睡眠時間もだいぶ短めになっていたのでいい機会と思って少し体調を整えようと思います。申し訳ありません。
皆も熱中症にはお気をつけて(n敗)
水分塩分心の養分を欠かさないように気をつけてください。
仮免試験を終えて寮へと帰宅したA組。全員合格ヤッター!のテンションもすっかり鳴りを潜め、また明日から始まる普通の授業を思うと眠気やら疲れやらを自覚し始めていた。
それでも昂りは収まってはいないらしい。身体が追いつかないだけのようだ。
共同スペースにはいつもより多くの生徒が集まっており、お菓子を食べたり口田のペットのウサギを可愛がっていたり……思い思いの過ごし方をしていた。
「メールか?」
「うん!仮免取れました!って」
「俺もさっき親にチャット送ったわ。返信スタンプ一つだったけどね……」*1
「そ、そういう事もあるよ」
スマホを見つめる緑谷に間飛が声をかけ、誰かしらに仮免合格の報告をしていたらしい事を話す。ちなみに間飛家ではおじいちゃんが3Dピンボールみたいになってるとか。危ないのでやめて?
もう少ししたら消灯時間になるという所で、その二人に爆豪が近づきながら簡素に伝えた。
「後で表出ろお前ら」
「へ?」
「……デクの個性についての話だ」
「───それ、は……」
「…………また一悶着か?」
すれ違った爆豪の顔は見えない。間飛は面倒くさそうにスマホを弄りながらも了承した。
◇
夏休み最終日の夜をこんな事に費やさなきゃならねえとは……本当に面倒事に首を突っ込んでしまった。
日が暮れるどころか良い子はねんねしなと言いたくなる夜遅く。夜とはいえまだまだ蒸し暑い気温の中、無言の爆豪を宥めるように声をかけては無視される緑谷を追いかける形でついて行く。
どこまで行くんだアイツはとコッチが苛立ちそうになった所で、ようやく爆豪の足が止まった。
グラウンドβ。初の戦闘訓練が行われた訓練場であり、爆豪と緑谷の二人に俺が振り回されまくった場所だな。
「……ずっと気色悪かったんだよ」
「…………うん」
「無個性で出来損ないのはずのテメェが、いつの間にか個性を発現させて……どういうわけか雄英合格までしやがった」
何で俺が呼ばれたのか分からねえ過去話はやめてくれ。普通に話についていけねえから。
ヘドロだのオールマイトだの、お前らは一体どんな刹那的な中学時代を送ってきたんだ?俺の中学時代なんざ……吐き気がして来たので思い出すのやめますね……。
「……間飛」
「あん?」
「ヴィランのボス野郎は……人の個性をパクって使ったり与えたりする。間違いねえな?」
「……一応聞くが、何でンな事確認するんだ」
「ベストジーニストに対しての個性の品定め、全身手だらけ男の個性が複数あるみてえな言い方から予想しただけだ」
そりゃそうか。爆豪はバカだろと言いたくなることはやらかしても頭ん中までバカじゃねえ。
個性複数持ちが俺と脳無とオール・フォー・ワンの三種類しか情報は無いはずだが、俺と後者二つは明確に違うと理解してるな。
口には出さず、首肯だけを返す。
爆豪は「だろうな」と短く会話を終わらせると、再び緑谷の方に向き直る。
「
オールマイトと会った緑谷が変わって、オールマイトが衰えを実感するセリフが増えた。果てには今年中の引退宣言。
「確証はねえ……だがここまで揃っちまえばバカでも想像がつく」
「オールマイトから貰ったんだろ、その個性」
……シリアスな空気の中言うことでもないが、ちょっと意外だな。
どいつもこいつも【フィジカルギフト】と【ワン・フォー・オール】を間違えてばっかりだったのに、爆豪はちゃんと見分けられたのか。
「それだと俺も候補に入らね?」
「オールマイトの見る目が違ェんだよ。お前と、デクだと」
おい脳筋ゴリラ。バレバレじゃねえか。
俺緑谷とオールマイトにゲンコツ落とす権利くらいあるよね?何から何まで巻き込まれ損じゃねえか。
そりゃオール・フォー・ワンとの戦いについてはこっちから了承したけどよ、師弟関係から発生したイザコザは協定外なんだわ。
……えっ、もしかして俺が呼ばれたのってオール・フォー・ワンの個性の確認の為だけ?マジで言ってる?
「ンなわけあるか。テメェにも確認したいことはある」
「それならさっさと終わらせて欲しいね。これでも疲れてるんだ」
ああクソ。疲れると不機嫌になっちまうな。だからさっさと寝たかったんだが……自分で自分の態度の悪さが目について嫌ンなってくる。
「お前とオールマイトの関係はなんだ?」
「……?」
「デクはまだ分かる。個性を渡した奴だ……だが、お前がボス野郎に狙われた理由が分からねえ」
「………………」
何で、と言われましても……。
「俺ただただ巻き込まれただけの一般人だし……」
「ハァ!?」
「……いや、まあ、うん……そうだね」*2
多分だけど爆豪なりに気を遣ってくれてたんだろうけど……俺、完ッ全に巻き込まれただけなんだわ。ああもうほら、予想外の返答でクソ長ため息吐きながらしゃがんじゃったじゃん。
考えてみればそういう方面の情報については、爆豪は何一つ持ってないのか。緑谷とオールマイトがどこかで関わりを持ち始めたのは分かっているけど、俺とオールマイト……そんでオール・フォー・ワンとの関係性の情報は皆無。そりゃ気になるか。
だけど残念、俺とオールマイトの関係はただの生徒と教師に始まり、うっかり正体を知ってしまって長らく続いた因縁とやらに巻き込まれただけの哀れな一般通過生徒だ。
決して魔王討伐の使命を与えられた勇者でもなければ、先祖代々の因縁を持つ訳でもない。
「たまたまオールマイトの話を耳にして、放っておく訳にもいかないから事情を聞かされただけ(という事にしている)……つっても納得いかねえか?」
「納得出来るかよンなもん……!!」
「わかる。俺もまだ納得してねえし」
「そうなの!?」
「そうだよ?」
理解はしても納得なんざしとらんわい。
あんなもんそうせざるを得ないから受け入れただけで、本音のところでは『何つうことに巻き込んでくれとんじゃボケ』だからな。*3
ただまあ、お陰で色々と縁も出来たし悪いことばかりでも無かったけど。
というか……想像よりも大人しいな。てっきり俺よりデクを〜、とかでブチ切れてんじゃねえのかと思ってたが。もしかしてそうでもない?
「……それ以前の話だろうが。嫌だった、見たくなかったで遠ざけたくて虐めてたっつう自覚はあンだよ」
「え……」
「否定して優位に立とうとして……雄英入ってからも散々だ。テメェと見比べれば見比べるほど惨めになる」
頭を抱え込んでしゃがんだまま、爆豪は懺悔でもするように……いや、懺悔そのものだな。
現実を受け入れたくなくて悪い方向に進んでしまったと、自分がソレを認めたくなくて逃げ回っていたのだと爆豪は語る。
強烈な向上心とプライドの塊だからこそ、精神が未熟な頃から継続してきた否定も逃走もやめ時を見失っていた。
「デクだけじゃねえ、テメェと半分野郎も……俺より強い奴なんざゴロゴロいた」
「で、でも……」
「神野と仮免で理解した。ガキの理想だけで出来る事なんざたかが知れてる。現実も見れてねえ奴が誰かに勝てるかよ」
ガバッと立ち上がり、そして───
「……今までごめん」
「……ッ」
「これで終わり、なんざ思っちゃいねえ。許されるようなことでもねえし……お前からすりゃ身勝手もいい所だろうが」
頭を下げたまま、爆豪は続ける。
「言ってどうにかなるもんじゃねェけど……これは本音だ」
「かっちゃん……」
「……よし、緑谷。一発殴ってやれ」
「ちょっ!?」
うるせえ。こちとら眠たいんだよ。お前らにとっちゃ大事な話なのかもしれないが、許すかどうか悩むくらいならまず一回罰の一つや二つ与えてやりゃいいんだ。
要はガキの頃からの喧嘩をずっと引き摺ってましたってんだろ?それがいつの間にか一方的になって虐めになってた……と。
同じく虐め……虐めと呼んでいいのか分からんが、虐めを受けていた立場から言わせてもらうが。
「お前ら本音でぶつかったりとかしたことないのか?」
「本音で?」
「譲れないものがあって互いに納得出来なくて、譲歩も擦り合わせも出来ないってンならそうした方が早い」
俺の偏見だが、人間関係の拗れなんざ究極的に言えば“主張が足りていない”が原因の九割以上を占めていると思う。
自分が何を思って何をしたくて何をしようとしているのか。それが相手に伝わらないから変に見られて機嫌を損ねて、怒りが生じて喧嘩に発展する。
一から十まで全部話すべきとは言わんが、せめて5W1Hをちゃんとしろ。*4それだけで大抵の事は問題になる前に解決出来る。
で、爆豪のやらかしは間違いなく爆豪の独り相撲なんだが、コイツの根底にあるのは緑谷への不理解だ。
人間は基本的に未知を怖がるように出来ていて、爆豪は緑谷について何かしら恐怖を感じる程の未知を見つけてしまったんだろうと推測する。
「……考えられそうなのは、こんだけ突き放してんのに何で付いてくるんだ、とかか?」
「ッ、ああ……かもな」
「えっ……」
爆豪曰く、何を考えているのか分からない。叩いても貶しても突き放しても張り付いて来て、無個性で何も無いはずなのに俯瞰したような目で見てくる。
まるで何もかもを見下ろしているようにも見える態度が目障りだった、と。
「そりゃあ……普通はバカにされ続けたら関わりたくなくなるとは思うけど……」
「……」
「でも今言っていたように、何もなかったから……嫌なところと同じくらいに君の凄さが鮮烈だったんだ」
「!」
緑谷曰く、自分に無いものを沢山持っていた。個性もあって頭もよくて、だからこそ本気で追い抜きたくて。どんなヒーローよりも……それこそオールマイトより身近な“凄い人”として見ていた、とのこと。
だからこそ、緑谷は爆豪を追いかけていたんだ、と。
「……負けねえからな」
「僕だって!」
「結局やる事は変わらね「ちょっと待ったァ!!」……ああ?」
雨降って地固まるかー……なんて典型的な感想を抱いたのも束の間。ズシャッ!と音を立てて現れたのは脳筋の権化であるNo.1ヒーローオールマイト。遅ェよ。
慌てて飛んできたらしく、額には薄ら汗が滲んでおられる。あと今夜なのでもう少し静かにしてもろて。
「……えっ、アレっ!?もしかしてもう終わっちゃってた!?」
「話し合いという意味なら終わっておりますが?」
「マイガッ!?出遅れたッ……!!」
「おい」
「ん?」
「……何でデ、出久だった」
何の事……などと尋ねるまでもない。個性を継承させたのは何故か。爆豪の聞きたいことはそれだ。
オールマイトは少し躊躇いつつも、理由を語る。
かつてネットニュースにもなっていたヘドロヴィランの事件。あの日誰かの為に駆け出したという同い歳の少年は緑谷の事で、無個性ながら誰かのために動ける緑谷を誰よりもヒーローだと感じたのだと。
個性を持ち既に土俵に立つ爆豪ではなく、土俵にすら立たせて貰えない緑谷を立たせるべきだと判断したそうだ。
「……そうか」
「すまないね……」
「アンタが謝ることじゃねえよ。選ばれなかったくれえで駄々こねるほどガキじゃねえ」
──もし間飛がいなかったなら。
爆豪は己がヴィラン連合に攫われ、その結果オールマイトはオール・フォー・ワンを撃破する代わりに引退していた。
苛立ちや心のつかえが取れる事はなく、仮免試験にすらも落ちていたかもしれない。
そうなれば益々緑谷と自分自身を比べ、蓄積した感情が行き場を失って爆発していただろう。
しかしオールマイトは健在。爆豪とNo.1の引退宣言には何の因果関係もなく、仮免試験においても緑谷と差はつかなかった。
行き場の無い苛立ちも自責思考もなければ、身を焦がすような焦燥感もない。
少なくとも、二度と同じ間違いを犯すことは無いだろう。
「……で?夜遅くに出歩いたと?」
「ウス……」*5
「はい……」*6
「ですね」*7
「あ、相澤君……?これは私の落ち度であって……」
「それはそれ、これはこれです」
「アッハイ」
「はぁ……初回かつ短時間だから今回だけは大目に見てやる。二度とやるな」
「「「はい……」」」
爆豪「……何でアイツだけ放置した?」
相澤「巻き込まれてばかりだからな。色々と」
緑谷「ああ……」
間飛「……zzz」
相澤「おいここで寝るな」