前回の前書きへの温かい言葉ありがとうございます。
私の地域では防災速報が大雨警報から熱中症警戒アラートへと切り替わり、エアコンと扇風機がフルスロットルになって参りました。
皆様も暑さに負けませんようお気をつけてください。
塩昆布は塩分補給において最強……!
「皆いいか!?列は乱さず、それでいて迅速に!!グラウンドへ向かうんだ!!」
「いやおめーが乱れてるよ」
「入学式出れやんかったから今回も相澤先生何かするんかと思った」
「まあ四月とはあまりに事情が違うし」
雄英高校にも始業式はある。A組の視点でいると忘れがちだが雄英はちゃんと学校なのだ。相澤が一人で割と好き勝手にしてるから感覚が麻痺しているのだろう、もう少しちゃんと行事に参加させて……は、いるのか。最初だけだな、うん。
そして始業式ならば当然他の学年やクラスとも遭遇する事になるわけで。
「お、心操」
「よっ。仮免、どうだった?」
「全員合格。ミルコとギャングオルカがヤバかった」
「クリアさせる気のないクソゲーか?」
下駄箱まで来るとそこにはB組がいた。何とか煽れる要素はないかとギリギリまで情報を集めていた物間は少し疲れている。何してんだお前。
顔を合わせれば話題に上がるのは先日の仮免試験について。心操の問いに体験してきたことと成果をシンプルに伝えると、有り得ないものを見るような目で間飛を見つめていた。
ちなみにB組の方にはリューキュウと何名かのプロヒーローが立ちはだかっていたとか。それはそれで高難易度なのでは、と思った普通科の男子よ……その通りだ。
「ブラド
「マジか。B組厄介な個性持ち多いから怖いな」
「ん」*1
「おわっ……と、いちいちちゃんとくっついて来るの何とかならねえ?」
「ん」*2
「そっかぁ……」
いつかはあるかもしれないクラス対抗戦。単独での戦闘や拘束に長けた個性が多いA組、やや搦手寄りな個性が多いB組……一対一ならともかくチーム戦となれば勝ち切れるとは断言できない怖さがある。
そんな真面目な考察を他所に小大から背中にくっつかれて小さく悲鳴をあげる間飛。エロブドウさん目からぶどうジュース漏れてますよ。
「何故……何故オイラには……ッ!!」
「そういう所だろ」*3
「心操バッサリいくなあ……」
というか下駄箱前で話し込むのはやめておこうか。後ろ詰まってますよ。
◇
雄英高校は日本一有名なヒーロー科を有していると同時に、学科も生徒も相当な数を誇る超マンモス校。始業式の為にグラウンドに集められているのに室内かと思うほどの窮屈さを感じさせる。
朝礼台に登るのは皆大好き(?)小型哺乳類の根津校長。いつもの調子で軽快にマイク越しに語りかける。
「やあ!皆大好き小型哺乳類の校長さ!最近は私自慢の毛質が低下しちゃってね、ケアにも一苦労なのさ。これには人間にも言えることさ。亜鉛・ビタミン群を多く摂れる食事バランスにはしているものの、やはり一番重要なのは睡眠だね。
(((ものすごくどうでもよくてありえないほど長え)))
アイスブレイクと言うには少々……いやかなり長いどうでもいい話。基本テンション高めの上鳴ですらスンッ……という顔で前の尾白の【尻尾】をいじり回している。尾白は何か擽ったそうだ。
すると長い長い校長の私事の話から、急に真面目な話題へと切り替わる。それは夏休みに起きた事件……神野区の戦いやオールマイトの引退宣言だ。
事実上のNo.1の喪失は予想を超えた速度で全国に影響を及ぼしており、これからの社会には多くの困難が待ち受けているのが分かっている。
他のヒーローは?という話では無い。たった一人で国全体の犯罪率を抑制出来ていた今までとソレが消失したこれからでは話が違ってくる。
「特にヒーロー科諸君にとっては顕著に現れる。2、3年生の多くが取り組んでいる
「ヒーロー……インターン?」
「職場体験の発展形みたいなものかしら……?」
何やら気になるワードも飛び出したが、ソレについての説明がされることは無く根津校長は話を締め括って朝礼を降りた。
その後は生活指導担当のハウンドドッグが人語を失いつつ注意するという通常運転のアクシデントがあったが、内容がどう考えても前日の夜に外を出歩いていた緑谷達の事だった為に三人はそっと目を逸らしていた。
「じゃあまあ、今日からまた通常通りに授業を続けていく」
真っ当に学校行事に参加し、教室に戻ってきた後はいつも通り。席について相澤の話に耳を傾けては私語を睨まれて背中に冷たいものを感じる。
下手に自分達だけで考えようとして怒られるくらいならば、いっそ堂々と先生に尋ねよう、と梅雨ちゃんが手を挙げながら質問した。
「さっき始業式でお話に出ていたヒーローインターンってどういうものか、聞かせてもらえないかしら?」
「そういや校長が何か言ってたな」
「職場体験とは何が違うんだろうな?」
通常のインターンシップであれば在学中に一定の期間企業にて就業体験を行い、そこで自分の適正や仕事内容の理解を深める為のものという扱いだ。
ではヒーローインターンはどうなのかと言うと、校外でのヒーロー活動。体育祭の後に行われた職場体験の本格版だ。
「校外活動は体育祭で得た
「……だとすると、体育祭で指名が無い人はインターン自体が難しい?」
「ああ。元々は各事務所が募集する形だったが、雄英生徒を引き込みたいが為にイザコザが多発してな。生徒の自主性に任せる形に落ち着いたわけだ」
職場体験と違って仮免を取得した今ならより本格的、長期的な活動への加担が可能となる。お客様扱いから一人の同僚として扱われるようになるのだ。
しかしだ。1年生の仮免取得自体は異例の事であり、ヴィラン活性化の件もあって1年生のヒーローインターンは慎重に考えている真っ最中。
また『大丈夫だろう』という考えで動いて死者の1人でも出そうものなら、今度こそ雄英の信頼は地に堕ちる事だろう。
「まあ体験談なんかも含めて後日ちゃんとした説明と……今後の方針も話す。こっちにも都合があるんでな」
後は授業だ、と相澤は廊下でソワソワしながら待機していたプレゼントマイクに任せると教室を出ていった。
◇
ちょっと前までは自宅に帰っていた所を寮に帰る事になった、というだけで不思議な違和感を覚える。帰巣本能的な奴が不具合起こしてんのかな。
元々雄英に通うにあたって一人暮らしを始めた口で、前のアパートの方が少しだけ狭かったから助かるんだが……見知った友人との共同生活となると勝手が違ってくるな。特に風呂とか洗濯。
「たった一人のエロブドウの為に男女の入浴が逆になってんだぜ?」
『ははは……僕の方ではさすがにそんな事にはならなかったなあ。こっちは女子から入るし』
「普通そうだよな。相澤先生が静かにキレてて怖かったわ」
『よっぽどだね!?あの人そうそう怒らないよ!?』
え、相澤先生って基本怒らない人なの?マジで?俺ら怒ってるところの方がよく見るんだけど。
『……今年の1年生は優秀かつ問題児だらけ、っていうのは本当なんだね』
「おいなんだその噂」
『え?知らないの? 僕達
「困ったな否定できねえ」
確かに爆豪とか轟とか頭良いのにどっか抜けてたりどデカい欠点があったりするけども。同じ学校の3年生からもそういう認識をされているとは……!
あ、そういや3年生ならインターンについて何か情報持ってるんじゃねえかな。ちょっと聞いてみるか。
「そういやインターンの話が出てたんだが……」
『あー!そういえば仮免取ったんだっけ?おめでとう!』
「おう、ありがとな。そんでさ、インターンの申し込みとかってどんな感じでするんだ?」
『え、もう参加出来るの?』
「いやまだ分かんねえ」
『んー……じゃあまだ教えない方がいいかも?』
何でだよ、と思ったが勝手に申し込まれても相澤先生が困るか。どうも参加出来るかどうかも怪しいみたいだし。
コイツは割と濃い経験して来てるだろうし、それでも聞かせてもらおう。
「そんならお前はどこ行ったか教えてくんね?参考にしたい」
『いいよ!僕はねー……2年生の頃からリューキュウさんの所に行ってるんだ。同級生の女子と一緒に』
「は?リア充か?」
『ピイッ!?ちちち、違うよ!!?というか先に申請したの僕だし!』
「だろうな。お前その辺ヘタレだし」
『ねえ暴言』
話を戻しまして。どうもリューキュウの所で異形系個性への対応力を磨きたかったとかで申し込んでいたらしい。それが上手いこと通ってくれたのか。
最初のうちは実力を把握する為の小さな事件や組手が中心だったそうだが、場合によってはそれなりの規模の組織的犯罪や大捕物に参加することもあったらしい。
座学や訓練とは違う現場の空気はピリピリとしており、別の所にいった知り合いが吐きそうな顔で戻ってきたこともあったとか。
だからこそ経験しておくべきだ、と語る。
『移は強いけど……君自身の経験値はそこまででもないでしょ?早いうちから現場で数こなした方が君にとってもいいと思うんだ』
「……経験値、か。どうなんだろうな」
『え?何かあったの?』
「やー……それがな?」
そういえばコイツにヴィラン連合に攫われた一件について話してなかったっけ。いい機会だし話しとくか。
〜
『バーカ!』
「うるっせえ……!?」
『バカバカバーカ!何でそういうことするかな!?』
「しゃあないだろ。あの時は──」
『あの時はそれが最善だった、とか言ったら次会った時引っぱたくよ?』
「……しかしだな」
『しかしもカカシもない!あのさあ……僕前も言ったよね?君の中ではコレで良い、ってなってても他の人には違う見え方になってるって』
ぐうの音も出ない。中学1年生の時は滅茶苦茶迷惑かけてたし助けられてたからな。授業中に血涙出して大騒ぎになった時は本当に大事になってた。
その頃は俺も血涙くらいは慣れてたんだが、同級生達にとってはンなもん初めて生で見るグロゲーやホラゲーのイベントシーンみたいなもの。隣の女子にギャン泣きされた記憶が蘇る……。
一応は解決済みだ、と言うと不満そうに分かってると返ってきた。
「やっぱ怒ってる?」
『自分にね!……移が強いのも分かってるし、簡単には死なないことだって知ってるよ』
でも、と何かを堪えた後に言葉は続く。
『……信頼と心配は別じゃん』
「……ごめん」
『別に謝らなくてもいいって。半分くらい八つ当たりだし』
……その辺の機微には疎いな、俺。
しかしせっかく久しぶりに電話出来てるんだからもうちょっと明るい話題がいい。反省はしてるけどたまの会話は楽しいものをしたい。
ちょうどよく今日耳にしたとある
「なあ、
『……うん、知ってるけどそれがどうしたの?』
「何か雄英で今一番強い4人の3年生らしいから、模擬戦とか体育祭の映像とか見てみたいなーって」
『ふふ……大丈夫。そのうち直に見られるよ』
「へ?」
電話の向こうでカラカラと笑う幼馴染。なんのこっちゃと不思議に思い首を傾げていると、時計の針はそろそろ消灯時間に近づきつつある。
これ以上の電話は明日に響く。名残惜しいがそろそろお終いにしなきゃ。
「じゃあまた今度な、
『うん、また……ね』
プツッと音を立ててスマホの画面が切り替わる。最後のワクワクしているような声音は少し気になったが、一体何だったのだろうか。
心操「行きますよ!」
ヒーローA「来い!───……」
心操「え!?○○がヴィラン役やってるんですか!?」
ヒーローB「ほほう、俺の事を知って───……」
心操「痛っ……!」
ヒーローC「やべ、やり過ぎたか───……」
物間「心操君強いね……?」
拳藤「間飛に鍛えられてたって言ってたろ」
小大「ん(知ってた)」
鉄哲「アイツ1人で半分くらい倒した……!」
心操「いぇーい」←計画通りの顔