え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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もう四天王でいいじゃん

 

 

 

「おはよー」

「んん……おはよ……」

 

 夏休みが終わってから3日目。そろそろ生活リズムが完全に戻ってきた頃だろうか。

 

 ハイツアライアンスで寝ぼけ眼の挨拶をする者も未だにいるけれど、大多数は既にしっかりと目を覚まして朝の支度をしている。

 時々どこからかドンガラガッシャーン!!と心配になる音が聞こえて来なくもない。方向的に峰田の部屋なんだが何したアイツ。

 

 制服に袖を通し身だしなみを整え、少し重ためのカバン*1を片手に今日も今日とて学業と訓練に精を出す。

 

「そういや結局インターンの追加説明ないな」

「言われてみれば……やっぱダメなんかね?」

「あれから何も触れられないからなあ。ちょっと行ってみたいんだけど」

 

 相澤が来るまでの僅かな自由時間、話題に上がるのは最近明かされたインターンの存在。

 始業式の日に少し話されてからというもの、それ以降の情報は一切音沙汰無しだ。1度経験した職場体験の本格版と言われてしまった為、尚更気になって仕方がない。

 

 そうしている内にカラカラと音を立ててドアが開かれる。いつも通り気だるげな目をした担任がノソノソと冬眠明けのクマのような速度で入ってきた。

 

「はいおはよう。今日は早速だがインターンについての話だ」

「噂してたら来たな」

「彼らの話を聞かせるべきだと思って少し遅くなった。多忙な所都合をつけてもらっている」

「彼ら?」

 

 入っておいで、と廊下に声をかけると静かにドアが開けられた。

 

 顔がカートゥーン調のようなつぶらな瞳と丸い鼻と愛嬌のある見た目をしながらも、半袖から伸びる前腕やズボンがはち切れそうな程の筋肉が見える男子。

 膝まで届く水色のゆったりと捻れた超長髪。ニコニコと笑みを振りまく可愛いと綺麗が両立された女子。

 やや猫背気味で鬱陶しいくらいに伸びた黒髪、ジロリと視線を向けられてしまうと萎縮してしまいそうになる目つきの悪い男子。

 薄らと青みが見られる銀髪と儚げな顔立ちの男子制服に身を包んだ女子にしか見えない男子。

 

「現雄英生の中でもトップに君臨する3年生4名(・・)──ビッグ4の皆だ」

「あ゙っ!?」

「……?間飛どうした」

「い、いや何でも無いです」

 

 只者では無い雰囲気を纏う4人の3年生。そのうちの1人……最後に入ってきた男の娘的な人物とバッチリ目が合った間飛が素っ頓狂な声を出していた。

 

 ビッグ4という肩書きを聞いた他のA組生はにわかにざわめき、四天王!と上鳴や常闇はテンションが上がっている。

 

 しかし一部の生徒は少し困惑していた。

 というのもビッグ4というには過去の体育祭の上位に居たという記憶が無い。一応男の娘は毎回トップ3に食いこんでいたとは記憶しているが、他の3人を上位で見かけていないのだ。

 どんなヒーローなんだ、と緑谷や爆豪などの体育祭で分析していたメンバーは期待が高まる。

 

「じゃあ手短に自己紹介をよろしく頼む。氷叢(ひむら)から」

「ッ……!?」

「はい」

 

 相澤が自己紹介を促すと男の娘が反応する。それに轟が一瞬顔を顰めていたがどうしたのだろうか。

 

「初めまして!僕は氷叢零治(れいじ)って言います。今日はインターンについて皆に話をして欲しいと頼まれて来ました」

「氷叢って……あっ!去年の体育祭の2位の人!?」

「あ、見ててくれたんだ。ありがと〜」

 

 ニへへ……と笑いながらヒラヒラと手を振る。

 

 去年の体育祭2年の部。第1種目から暴れ回っていた氷結系の個性の生徒。あまりにもインパクトが強すぎて視聴者全員の記憶に焼き付いていた。

 惜しくも最終種目決勝で敗退したものの、ルールとの相性が悪かったという声がほとんどだった。

 

 いざ対面してみると本当にあの光景を作り出した本人なのかと疑いたくなるくらいには無害に見えてしまう。

 

「それじゃ(たまき)、次君ね」

「ヒュッ」

「……環?」

 

 それじゃあ2人目に、と氷叢が隣の猫背男子……天喰環に話を振ると、妙な呼吸音を立ててフリーズ。氷結系個性であっても別に人をフリーズさせる能力は持ち合わせていないのですが。

 

 迫力のある視線だなあと思っていたのも束の間。天喰はカタカタと震え出すと他の2人にボソボソと話す。

 

「駄目だミリオ……波動さん……」

「うん?」

「ジャガイモだと思って臨んでも……頭部以外が人間のままで依然人間にしか見えない……」

「何そのポテトゴーレムみたいなの」

 

 威圧感や迫力はどこへやら。早口オタクの緑谷や自称(詐称説アリ)陰キャの間飛よりもよっぽどコミュ障陰キャな様相を見せた。

 A組に背中を向けて黒板にゴヅン!!と額を預けるとそのままブツブツと何かを呟き始めた。

 

「……じゃあ、ねじれちゃん」

「うん!あ、聞いて聞いて!彼は天喰環、私は波動ねじれ!」

 

 天喰をどうこうするよりそっちが早い。そう思った氷叢は説得も激励も諦めて女子に、ねじれへと振ることにした。

 何かもう3年生とかビッグ4の威厳とか死にかけてる気がしなくもないけどきっと気のせいだ。気のせいであってくれ。

 

「ねえねえところで君は何でマスクを?風邪?オシャレ?」

「これは昔に……」

「あら、あとあなた轟くんだよね!?ね!?何でそんなところを火傷したの!?」

「……!?それは──……」

「芦戸さんはその角折れちゃったら生えてくる?動くの!?ね?峰田くんのボールみたいなのは髪の毛?散髪はどうやるの!?蛙吹さんはアマガエル?ヒキガエルじゃないよね?」

 

 威厳は教室(ここ)で死にました。

 

 いや正直……というか最初から分かってはいた。4人中2人が色んな意味でコミュニケーションに難ありなのだ、円滑に進むなどと微塵も思っちゃいない。

 

 天然を通り越して幼稚園児が「何で?何で?」と尋ねているようにしか見えない、好奇心の赴くままなねじれ。目に付いた生徒の疑問を思考も挟まず矢継ぎ早に繰り出す。

 自分に来ませんように……!なんて皆が思い始めた時、波動の視線が間飛を捉えた。

 

「あー!あなただよね!?ね?氷叢くんが言ってた凄い人!」

「へ?」

「ちょっ、ねじれちゃん……!?」

「いつも凄く褒めてたよ!」

「ねじれちゃんステイ!それ以上はヤメテー!?」

 

 するとどうだろう。これまでとは違って質問ではなく『見つけた!』という態度でとんでもない事を言い放った。隣で氷叢君が泣きそうな顔してますよ。

 

 そしてそんな話を放り込まれてしまえばA組の視線も間飛に集まる。

 

「知り合いなの?」

「……知り合いってか、年上の幼馴染。小学校に上がる頃にはセット扱いされてた」

「へー!幼馴染の男女(・・)!?」

「ガハァッ!?」

「ああっ、氷叢くんが吐血しちゃった!」

 

 雄英ビッグ4との幼馴染という事実にアオハルの匂いを嗅ぎつけた芦戸の一言。それがまさかの氷叢にクリーンヒット。ギャグとはいえ軽々しく吐血はしないでもろて。

 

 さすがのねじれも心配が先行し、天喰は皆に背を向けたままだが「ああ……」と可哀想なものを見る目で声を漏らしていた。

 

「あの……僕、男だからね……!?」

「「「ええええええ!!?」」」

「ヒィン……移ゥ……」

「……もう諦めるしかないって」

 

 そう、氷叢零治は立派な男子である。

 まつ毛バッサーでお目目パッチリの儚げ美女に見えるが股座にはしっかりぶら下がっておられるし、性自認も男のソレだ。ついてるからお得だな。

 

 嘘だろ、いやでも確かに骨格とか、と喧しくなるA組。一向に始まらないインターンの話にそろそろ相澤先生もご立腹だ。「合理性に欠くね?」と残った最後の1人をジロリと睨んでいる。

 

「イレイザーヘッド安心して下さい!大トリは俺なんだよね!前途───!!?」

「「「……?」」」

「多難ーッ!っつってね!よォしツカミは大失敗だ!」

 

 貴方達の方が前途多難に見えるんですがそれは。

 本当に相澤が頭を抱えそうになっているが、安心して欲しい。彼も比較的まともな部類だ。

 既にビッグ4というには威厳が……となりつつあるA組達の前で男子は話を続ける。

 

「俺、通形(とおがた)ミリオ!何が何やらって顔してるよね!……いやホントに。必修てわけでもないインターンの説明に突如現れた3年生がこうだもんね」

「それはまあ、はい」

「うんごめんね!それはそれとして、1年から仮免取得したとも聞いたし……君達纏めて俺と戦ってみようよ!!」

 

「「「へ……?」」」

 

 突然のミリオの提案。1VS21というだけでも正気の沙汰とは思えないのに、その中には間飛や爆豪、轟に緑谷と戦闘能力に秀でたメンバーがいる。

 それを分かった上での提案なのだろうかと心配すらしてしまうA組に対し、相澤は「好きにしろ」の一言。

 

 

 

 ところでインターンの説明まだですか?

 

 

 

*1
雄英基準。一般人にはクソ重たい






氷叢(ひむら)零治(れいじ)
雄英高校ヒーロー科3年生。

間飛との関係は幼稚園の頃からで卒園が近い頃に間飛家のご近所に引っ越してきてからの縁。
家族がギスギスした空気になっており、引越したばかりで友達もいなかった所を間飛と邂逅しメンタルリセット。それ以来彼にとってのヒーローは間飛になった。
何やら激重感情を抱えているらしいが、間飛はそれを知らないし氷叢本人もさほど自覚がない。でも同級生との会話でちょくちょく滲み出ているとか。







間飛と出会わなければ外典の名を与えられていた。
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