間飛達3人がインターンに参加し、すれ違うように初日のインターンを終えた緑谷がいつも通りに登校した週明けの朝。
インターンということで他にも何人かの姿が見られず、切島や轟に爆豪といった少し騒がしいメンバーがいないA組はいつもより静かに感じられた。
そこに唯一インターンを体験してから登校して来た緑谷は質問攻めにあうのも当然で。
「なあなあ緑谷ンターン、インターンどうだった!?ドスケベエロコス女ヒーローいたか!?」
「いや……イナカッタヨ?」*1
「どんくらい行くのー?私も入れてー!」
「まあまあ、ちゃんと自分の目標にあったヒーローんとこ行くべきだろ」
ちょっとで済ませていいのか分からないくらいには色々とあったけど、初日は
『死穢八斎會』という小さな指定ヴィラン団体について秘密裏に捜査中であり、最近はあのヴィラン連合と接触を図ったという噂もあるとか。
ミリオと共に周辺のパトロールをしつつ監視……という話だったが、本当にただただパトロールだけで終わってしまったのだ。サーは『そんな事もよくある』とすぐに見切りをつけて撤退を指示していた。
「麗日君と梅雨ちゃん君……間飛君は同じ事務所だったか?」
「そうなんですの?」
「ドラグーンヒーロー、リューキュウの所だ。竜騎士……いい……!」
「リューキュウ!?ど、どうやって……?」
「この前のビッグ4の先輩達に紹介してもらったらしいぜ」
間飛達はリューキュウ、爆豪と轟はエンデヴァーの所と揃いも揃ってビルボードチャートのトップ10に入ったヒーローの下でインターンに参加している。そう思うと今年度の1年生は本当に優秀なのかもしれない。
それでは今日も授業を始めようか、と相澤が教室に入ってくるとやはり皆すぐさまシン……と静まり返った。だいぶ染み付いちゃってるね?
時間が経って昼休み。何だかんだで一緒にいることの多い飯田と緑谷の2人で昼食を取ろうとランチラッシュの食堂に到着。今日はどれにしようかと食券機の前で頭を悩ませていると。
「あ」
「あ。心操くん……と、発目さん?」
「ん」*2
「小大君、だったか?」
「ん」*3
B組2人とサポート科1人。普段ならそこに間飛が加わっていつもの4人組……になる顔ぶれ。傍から見れば少し珍しいなと思う組み合わせだ。
せっかくだし、と一緒に食べようという話になり、昼食を受け取って5人とも席に着いた。
ヒーロー科どう?まだキツイな……なんて雑談をしていれば、話題は自然とインターンに向かう。
「そういや……緑谷はインターンどうするんだ?」
「あ、僕はもうインターンに参加してるよ。昨日がインターン初日だったんだけど、特に何も無かったかなあ……」
「いいんじゃないですか?平和なのが一番です」
「しかし経験を積みたいという思いもあるだろうしな。平和であるべきなのだが……ううむ、これはヒーローを志す者としては悩ましいな」
B組でもインターンに参加したい者はおり、鉄哲や拳藤なんかは既に参加中*4らしい。他の生徒達も後に続こうと動いているようだが、あまり芳しくは無いらしい。
特に心操と小大は体育祭で結果も残していた為、指名先に頼み込めば何かしら引っかかるとは思われる……のだが、どうも2人はインターンにさほど乗り気ではないとか。
「ほら、俺は元普通科だからな。まずは基礎をしっかり固めておきたいんだ」
「ん」*5
「……すまん、彼女は何と?」
「心操さんと同じで今回はやめとく、とのことです」
何か発目が小大の圧縮言語分かるようになってるし。仲良いな?
今年の1年生は特例で早めに仮免を取得こそしたものの、こうした結論になった生徒も少なくない。B組ではインターン参加希望者よりも今回は見送り……という方が多いのだ。
「ところで緑谷さん。間飛さんもインターンですか?」
「うん。麗日さんと梅雨ちゃんと一緒にリューキュウのところに行ってるよ」
「リューキュウ……上半期のNo.9かよ。サラッとすげえとこ行ってんなアイツ」
「発目君は彼がインターンに行っていたのを知らなかったのか?」
「今初めて知りましたね」
ちなみに発目、普段はサポート科の工房にこもりきりで昼食を抜かすことが多い。
それをよろしくないと思った間飛が毎回無理やり引っ張り出して昼食を取らせていたのだが、予め心操と小大に話を通して2人に発目の面倒見を任せていたりする。
その為発目からすれば「今日は間飛さんじゃないんですねー」くらいのつもりでいたのだが、そもそもインターンで来てなかったのかと今初めて知らされた形になっている。
「困りました。間飛さんに試して貰おうと思っていたアイテムがいくつかあったのですが」
「どんなアイテム?」
「……あっ!そういえば緑谷さんも間飛さんと同じくらいのパワーがありましたよね!?」
「うわわっ!?お、同じかなあ……?」
「とりあえず増強系なら問題無いです!そうと決まればアイテムのテストを!」
「発目、ステイ」
「嫌です!」と元気に返事。はい【洗脳】入りますね。カクンと停止し急に静かになった。もういつもの事になりつつあるけどそれでいいのか。
「悪い。コイツの無茶振りは大抵間飛が何とかしてたんだが、アイツがいないとこんな風に暴走するんだ」
「ん」*6
「い、いや大丈夫だけど……」
意外な所で間飛の交友関係の一端を知ってしまった緑谷と飯田はなんとも言えなさそうな顔で昼食を終えた。
◇
「本当にすいませんでした……」*7
「……オールマイト。いくら貴方であってもコレは、無い」
同時刻いつもの仮眠室。やけに綺麗な姿勢での土下座をするオールマイトの前には疲労が滲むサー・ナイトアイと……またやらかしてやがったなコイツとブチ切れ寸前の相澤。もう助からないゾ。
何でここにサーが?なんて聞くまでもない。緑谷と間飛を巻き込んでしまった後継者問題など、諸々の件について問い詰める為だ。
ちょっと聞いてませんが?で済ませられないレベルの話なので『開けろ!デトロイト市警だ!!』ぐらいの勢いで突貫してきた。行動力があってよろしいが出来れば最初からそうして欲しかった。
「サー・ナイトアイ……お聞きしたいんですが【ワン・フォー・オール】関連の話はどこまでご存知です?」
「私の情報は『無個性の中学生に継承させた』と言われたところで止まっています。去年の頭くらいですね」
「おい脳筋」
「すすす、すいませんでしたァッ!?」
あーあ、とうとう名前ですら呼ばれなくなっちゃった。社会人なら“ホウレンソウ”くらいちゃんとしてもろて。*8
今回の件というか緑谷と間飛が巻き込まれた原因はほぼ全てがオールマイトにある。他に何があるんだよって?ちゃんとドア閉めなかった相澤先生とかかな。*9
「とにかく、何があったのか教えてはくれないか?【フィジカルギフト】に間飛移……聞きたいことが多すぎる」
「……そうは言ってもねえ。間飛少年は元々無関係な生徒の一人でしかなくて、その【フィジカルギフト】だって【ワン・フォー・オール】も【オール・フォー・ワン】とも関係ないところで生まれただけの個性だよ?」
「ナイトアイ、俺が聞いた話では【ワン・フォー・オール】は二つの個性が混ざりあって生まれたと……」
真面目に話す為に強引に流れを切って尋ねるも、オールマイトも相澤も答えられる事はそれだけだ。後は精々どんな過程を辿って長い因縁に巻き込んでしまったのか、くらいしか話せることは無い。
しかしだ。オールマイトと相澤は先に【ワン・フォー・オール】を知っていたから【フィジカルギフト】を疑っていたけれど、個性の成り立ちとしては極自然な発生なのだ。
むしろ2つの個性が混じりあって生まれた【ワン・フォー・オール】の方がイレギュラーと呼ぶべき存在であり、そういう観点から見れば彼らの方がよっぽど怪しい。
それを『【ワン・フォー・オール】はまだ分かるけど【フィジカルギフト】は怪し過ぎる!』と宣っていたわけで。多分間飛が訴えたらストレートに賠償するしか無くなるんじゃなかろうか。
加えてグラントリノにサー・ナイトアイ、果ては宿敵のオール・フォー・ワンまでもが間飛を後継者と誤解した。仮にオールマイトが巻き込まずとも別の誰かに巻き込まれていた可能性は高い。
「そういう意味では私も貴方を責める事は出来ない。何せ職場体験やインターンの誘いをかけていたわけだからな」
「……ああ、来てましたね」
「な、ナイトアイ……!」
「それはそれとして対応が酷すぎる」
「はい」
うん、まあ……だからといって無罪とはならないよね。メガネを整えた後にゲンドウポーズをとってオールマイトを睨みつけた。
では改めてオールマイトの罪状を確認しよう。
1つ目。人格的には100点満点の選択だったとはいえ、無個性かつ鍛えてもいない男子中学生に独断で個性を譲渡した。
2つ目。怪しいのは重々承知だけど無関係の男子生徒を教師陣達に疑わせ、無駄に多くの人間に【ワン・フォー・オール】と【オール・フォー・ワン】について教えた。
3つ目。ヒーロー以外の職業適性がカス過ぎて緑谷の育成が全然出来ていない。
4つ目。ヘタレまくった結果グラントリノやサー・ナイトアイに真実を伝えきれず、無関係だったはずの間飛を危険な事に巻き込んだ。
5つ目。そもそも弟子と言う程緑谷を育てることに関わっておらず、なんなら間飛の方が師匠っぽい。
6つ目。1人で色々と抱え込んだ挙句に向こうから来るまで何も話さず伝えず、腹を括るのが遅過ぎる。
7つ目は……と次のやらかしを挙げようとしてオールマイトがストップをかけた。何?ライフがゼロ?ヒーローなら『Plus ultra!!』出来るんだろ?しろよウルトラ。
「……本っ当にヒーロー業以外ポンコツですね」
「ごめんなさい……」
「サイドキック時代の仕事のほとんどが書類仕事でしたから……そういえば今は大丈夫なのか?」
「…………」*10
この日の放課後、緑谷がそれなりに怒った顔でオールマイトに詰め寄るのだがそれはまた別の話。No.1の座を長らく守り続けたヒーローも、舞台から降りればただの人になるらしい。
苦労人2人が揃ってため息をつき、再び静かに頭を下げるオールマイトだった。
「……悪かったな。少し用事が長引いた」
「いえ、大丈夫です」
「それで何の相談だ?かなり深刻そうだったが」
「……薄汚い、
雄英教師に聞きました!
ズバリ!オールマイトの教師として悪い所は!?
相澤「教師としての自覚が薄い」
マイク「書類作成をまだ覚えてネーのはマズイな」
ミッナイ「感覚派過ぎて話が通じない時があるわね」
セメントス「訓練場の破損報告が遅いです」
13号「説明が分かりにくい……とか?」
リカ婆「生徒相手にやり過ぎだよあのバカタレ」
オールマイト「……ぴえん」
皆様いつもありがとうございます作者です。
ようやく少し体調が整いつつあるので今回からいくつか感想返信を再開させていただきます。ご心配をおかけしました。
執筆時間との兼ね合いで全てに返信は出来なくなってしまいましたが、これからも本作をよろしくお願いします。
アンケートに御協力いただきありがとうございました。