え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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蒼い炎に薪を焚べる

 

 

 

 間飛という人物の存在は世界の運命を大きく変えてきた。

 と言っても彼が世界的に見て重要な人物という意味ではなく、本来の運命の流れと比較した時の最も大きな差異として挙げた場合は真っ先に彼の名が挙がるというだけだが。

 

 例えばオール・フォー・ワンとオールマイト。

 神野区でオール・フォー・ワンを倒す事は叶っても、オールマイトは積み重ねてきた無茶と残り火を使い切った事で完全に戦線離脱。オール・フォー・ワンもまたタルタロスの奥底で不敵に笑っているはずだった。

 

 しかしそうはならなかった。

 間飛がヴィラン連合と手を組んだ事でオール・フォー・ワンが孤立。加えて間飛を気に入っていたミルコの参戦もあってオールマイトにはまだ幾分かの余裕が残されている。

 

 これはそのバタフライエフェクト……蝶の羽ばたきと呼ぶには些か強すぎる差異の影響の一つだ。

 

 

「ここが死穢八斎會のアジトか……」

「随分とまあ広げたもんだ。バレたりしないのかね?」

「……その辺りはオーバーホール様が上手く誤魔化しておられる。それに所詮は監視止まりだ、既に作り上げた空間には気づかん」

「そうかよ」

 

 自由連合の中でも広範囲攻撃と逃走手段を持つ2人、荼毘とMr.コンプレスは形だけでも同盟を組んだ為に死穢八斎會に出向していた。

 

 地下空間故に電灯以外の光源は無く、明るいはずなのにどこか薄暗さを感じる長い通路を歩く。カツンカツン、と小さな足音すらも閉鎖空間では反響する。音を立てないように出来ないものかと試したけれど、面倒になってすぐに放棄する辺りは子供っぽいと言うべきか。

 

 当然だが2人共……自由連合は律儀に手を貸す為にいる訳では無い。

 2人の衣服には小さな発信機を取り付けられており、ソレを持っていればいつでも黒霧の【ワープゲート】が2人を回収してくれるのだ。

 

(探れとは言われたが、ここまで閉塞的な空間だと何しても面倒事になる未来しか見えねえな)

(オジサンの個性じゃ限界があるしねえ……こりゃほとんどタダ働きもあるかもな。それはともかく、1人で勝手に動くなよ?)

(分かってる)

 

 転孤からの指示は『探れ』の一言だけ。まあ死穢八斎會の内情や目的が何なのか調べてこいという意味だとは理解しているが、それにしたってもう少し詳細な指示を出して欲しいものだ。

 

 今は主要なエリアと道を案内されており、その後にオーバーホールの下へ向かって諸々の擦り合わせ……という予定だった。

 

 ピタリと荼毘の足が止まる。視線の先に居たのは青ざめた顔の角が生えた少女。

 はて、こんな腐りきった空気の中にこんな年端もいかない少女……推察される年齢的に幼女と言っても差支えのない人物にさすがの荼毘も戸惑う。

 

「……よォ。自由連合から出向してきた荼毘ってンだ」

「だ、び?」

「ああ……ところで、その手の包帯どうした?」

「ッ!!コレは……なんでもない」

「……そうかい」

 

 問題を起こしても面倒だ、と彼にしては比較的穏便な切り口で話しかける。ひとまず敵対した誰かが乗り込んできたわけじゃないぞと説明はしたけれど、どうもそういう話には無関係のようだ。

 

 オドオドと気弱な振る舞いの幼女の手元に視線を落とすと、幼い体躯には釣り合わない包帯が腕と足に巻かれていた。それを指摘するとますます怯えてしまい、フルフルと弱々しく震えて隠そうとしてしまう。

 

 ろくでもないことしてンのは確かだな。そう判断した荼毘は幼女をヒョイと抱き抱えた。

 

「きゃっ……」

「ッ!?何故そのガキがここに……!!」

「……なあ、お前ここから出たいか?」

「え……」

「テメェ何を言ってやがる!?立場分かってんのか!!」

「ちょっ、荼毘?何してんだお前」

 

 粘ついた殺意の無い、純粋な問いかけ。大きく見開かれた彼女の瞳には真剣な表情の荼毘が写っており、本心を言えと言葉では無い圧を感じる。

 

 グッと唇を噛み締め、彼女は呟いた。

 

「出たい……けど、出られない。出ちゃいけないの」

「……ふぅん」

「チッ……分かったらそのガキをこっちに───」

 

「うるせえ」

 

 

 バンッ!!と拳銃とは比にならない破裂音。反動で自身の腕が吹っ飛ぶ程の一瞬の高火力が名も無き部下を瞬く間に焼き尽くした。

 

 突然の蛮行に反応など出来るはずもなく、無抵抗のまま男の姿は消え去る。

 

「おまっ……!?」

「Mr……悪い。逃げるぞ」

「ああもう!後で説明しろよ!!」

 

 黒霧の【ワープゲート】の要請にはどうしても2分程のラグがある。特に地下空間のここでは更に通信に時間がかかるだろう。

 

 先程の音を聞きつけた死穢八斎會の構成員達が何事かと顔を出し、幼女を抱えた荼毘の姿を見て顔色を変えて武器を構えた。

 どうやら余程の厄ネタらしいと気づいた荼毘は再び容赦のない蒼炎を手のひらから吐き出す。2度目ということもあって反動がそろそろダメージになってくる頃だ。

 

「クソ……手からまた血が出てきやがった」

「……助けて、くれるの?」

「あ?あー……そうだな。俺ァお前みたいに家族から虐げられてる奴は助けてやるつもりだ」

「本当、に……?」

「当たり前だろ。俺達ゃ自由連合……やりたい事をやりたいようにやるのが唯一のルールだ」

 

 ホントは他にも色々規則はあるがな、と口角を吊り上げながら語る。そして何より、彼の過去の体験から己と同じように傷ついた子供を見過ごす事が出来ない。ましてやこんなにも小さい子ならば尚更。

 

(今更ヒーローみてえな真似事すんのもバカバカしいが……あのクソ親父モドキはさすがに見過ごせねえ。むかっ腹が立つ)

 

 荼毘にとっての地雷とは『己の思い通りに子供をコントロールしようとする大人』だ。明らかに痛みと恐怖で躾られた幼女を見て何も思わないほど心は死んではない……はずだろう。

 

 実際の所はどこぞの大バカ野郎に絆されたせいだと自覚している部分もある。どいつもこいつもイカれたヴィランのはずなのに下手な表のブラック企業より明るい雰囲気だったりする。心変わりの一つや二つくらい起きる。

 

 どうせまだまだオカワリが来る。後何発俺の腕が保つかと手のひらを顔の前まで持ってくると──

 

 

「……ん?はああああっ!!?」

「うおっ!?うるせえななんだよいきな──どちら様?」

「待て待て待て!?何で……何で治ってる(・・・・)!?」

「ウッソだろお前荼毘か!?」

 

 ──酷く変色していたはずの皮膚が綺麗さっぱり治ってしまっていた。

 

 隣にいたコンプレスが一瞬荼毘を荼毘と認識出来なかったのも当たり前だろう。何せこの一瞬のうちに黒髪は白髪に、焼けただれて変色した皮膚は綺麗な肌に。唯一共通している声や顔のパーツで何とか判別できるか、という具合だ。

 

 何故、どうしてと騒ぎたくなるがここは既に戦場。異常事態を放置するのはやや怖いが確実な死を避けるためには無視せざるを得ない。

 

「だが……治ったンなら躊躇う必要ナシだ!!」

「ッ──!!総員退避!!」

 

 

 BOOOOOOM!!!

 

 

 地下通路を満たす程の巨大な蒼い炎が回避をも許さんと焼き払った。逃げ場のない膨大な熱エネルギーは構成員達の生命を焦がすには過剰な程の火力を有しており、壁や天井に垂れ下がったパイプなんかは燃えたり溶けたりしてしまっている。

 

 これまでとは一線を画す超火力。コンプレスと幼女はもちろん、撃ち放ったはずの荼毘本人すらも驚きを隠せない。

 

「す、すげえ威力出たな……?」

「初めて出たぞこんな威力」

 

「……貴方達何してるんです?」

 

「お、来てくれたか」

「悪い、俺の独断専行だ」

「まったく、もう少し後先を考えて……おや、その子は?」

「独断専行した理由だ。急げ」

「ふむ……分かりました。しかしその見た目はどうしたので?」

「後で話してやるから早くしろ!!」

 

 荼毘とMr.コンプレスの出向から約15分。荼毘が彼らの重要なピースを奪取した事で自由連合と死穢八斎會の同盟は破棄された。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……で、結局その姿は何なんだ?」

「原因は知らねえ。この見た目は俺が大火傷する前そのままの姿だよ」

「火傷が治ったって事でいいのか?良いわけねえだろ!!」

 

 黒霧の【ワープゲート】で帰還してからというものの、荼毘は質問責めにあっていた。そりゃやらかした事はやらかしてるわけだし、組織のトップとして詰めなきゃならない転孤はさておきオカマ2人が喧しいったらありゃしない。

 

 そしてもう1つ。その荼毘が独断専行した理由だと言う幼女……エリちゃんだ。

 

 どうもオーバーホールが直々に『今からそっち行ってぶっ殺してやる』と呪詛を吐き散らかすくらいには重要な存在らしい。今は荼毘の足に隠れたりオカマ2人に身だしなみを整えられたりしている。

 

「もしかしたらエリが治したんじゃないか?」

「……いや無理だろ。あの火傷は治せるようなもんじゃねえ。それこそ時間ごと巻き戻しでもしないと──」

「ッ……ご、ごめんなさいッ!!」

「ん?いや別にお前が悪いわけじゃ無い」

「違うの……!私の個性が……!!」

「……マジ?」

 

 原因を考察していると、急にエリちゃんが泣きそうな顔で謝ってきた。いやいやお前は悪くねえしと慰めようとしたけれど、続く言葉に慰められなかった。

 

 何でも彼女の個性は【巻き戻す能力】らしく、その能力で荼毘の身体を火傷する前に巻き戻した(・・・・・)ということらしい。

 それだけなら別に良かったのだが、もし個性が暴走し続ければ巻き戻し過ぎて消滅(・・)させてしまうらしい。

 

 つまりあの時はたまたまちょうどいいところで巻き戻しが収まっただけで、巻き戻しが続行されていれば荼毘が消滅していた可能性もあったのだ。彼女の謝罪はそれを分かっているからこそのものだ。

 

「あっぶねえ……!?」

「オジサンの隣で死にかけるのやめてくんない?怖いって」

「好き好んでやるわけねえだろ」

「にしても……個性の暴走はマズイな。最悪死人が出るんだろ?」

「……うん」

 

 強すぎる力を持ってしまった彼女は迂闊に試すことも出来ない。何せ少しでも制御を誤れば本当に人が一人消えるのだ。練習すら難しい個性とは誰も想像もしていなかった。

 

 どうするべきかと悩む彼らに黒霧がふと尋ねた。

 

「そういえば……荼毘さんの炎の反動はどうなったんです?」

「反動自体は消えてねえよ。出力がデケェから使い過ぎるとまた火傷する」

「……だったら火傷を治し続ける訓練、というのはどうでしょう?」

「正気かテメェ」

 

 一歩間違えたら消えるっつってんだろうが、とキレる荼毘。うーん、正論。

 

 というか本人が了承してねえだろ……とエリちゃんに目を向けると、ある事に気がついた。

 

「……角どうした?」

「えっ?」

「あそこで会った時はここら辺に角があったと思うんだが……無いな」

「もしかしたら角があると使えるとか?」

「巻き戻したから角が消えた、ってか?そんな事あんのかね」

「えっと……ある、と思う」

「あるんかい」

 

 つまりあの時の巻き戻しでエネルギーを使い切ってしまったから角が無いんだな、と結論づけた。そして同時に転孤も思いついた。

 

「じゃあ暴走してもたかが知れてんだろ。荼毘、手伝ってやれ」

「……まあ、消える心配はないか」

 

 蓄積分が無いなら消えないはず。多分きっと恐らくMaybe。かなりアバウトな考察から始まったエリちゃんの個性制御訓練に不安しかないけれど大丈夫なのだろうか。

 

 

 

「……おお、本当に治った」

「ふぅ……ふぅ……」

「よく頑張ったわねえ〜!偉いわ!」

「頑張った子にはキャワイイおリボンと甘くて美味しいリンゴをあげちゃう!」

「リンゴ……!」*1

「ああヨダレが……」*2

 

 保護者達に見えるでしょ?コイツら凶悪ヴィラン(笑)集団なんスよね。そうはならんやろ。

 

 

*1
ここ一番の反応

*2
ほぼ保護者してる黒霧






マグネ「……」
ジャックガム「……」
トゥワイス「……」
転孤「……」
黒霧「……」

荼毘「……ンだよ」←エリちゃんの口拭いてる
エリ「ん……ありがとう……?」
荼毘「ああ、どういたしまして」
荼毘「これで手も拭け」
エリ「……」コクコク

連合’s(((滅茶苦茶お兄ちゃんしてる)))
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