え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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周回遅れの情報共有

 

 

 

 サー・ナイトアイ事務所の2階、大会議室。

 

 集められたのはインターンに参加している1年A組の5名……緑谷、切島、麗日、梅雨ちゃん、間飛。現地集合と伝えられた彼らは同じ駅を出て同じ方向へと向かい、同じ角を曲がって辿り着いた。

 

 そこではビッグ4も勢揃いしており、イレイザーヘッドやリューキュウにファットガム……【ワン・フォー・オール】関係者であるグラントリノとサー・ナイトアイとマイナーヒーローが数名。

 明らかにこれまでと空気の違う状況に動揺が走る。

 

「今日はお集まりいただきありがとうございます。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか……知り得た情報の共有と共に協議を行わせていただきます」

「ハッサイ……?俺置いてきぼりなんスけど、なんスか?」

「悪いこと考えとるかもしれんから皆で煮詰めましょのお時間や」

 

 ファットガムは視線を天喰に向ける。彼の肘近くに巻かれた包帯を見ながら、僅かに顔を顰めた。

 

 

 サー・ナイトアイの事務所は約2週間程前から死穢八斎會について独自調査を進めており、そのキッカケは『レザボアドッグス』と名乗る強盗団の事故だ。

 もう1人のサイドキックであるセンチピーダーが立ち上がりバブルガールの説明に続く。

 

「調べたところここ一年以内の間に全国の組外の人間や同じく裏稼業団体との接触が急増しており、組織の拡大・金集めを目的に動いているものと見ています」

 

 機械音を立ててゆっくりと広げられたスクリーンに映されたのはペストマスクの男と全身タイツの男が並んで立っている1枚の写真。分倍河原仁(トゥワイス)で間違いないだろう。

 尾行を警戒されていた為追跡は叶わなかったものの、その後の警察の調査から組織間で何かしらのいざこざが起こったことは確かだろう。

 

 連合が関わっている、ということでグラントリノにも声がかかった。塚内警部にも声掛けはされたらしいが、他で目撃情報が入った為にそちらへ行っているとのこと。

 

 しかし1つ大きな問題も起こっている。

 

「……恐らくですが、ヴィラン連合と死穢八斎會の同盟は破綻してると思われます」

「何やて?」

「連合との接触が確認されて数日と経たず、死穢八斎會の構成員達に動きが見られました。どうも何かを探しているのでは、と」

 

 それがグラントリノが参戦した理由である連合と死穢八斎會の決裂。ある日を境に強い苛立ちが見られるようになり、明らかに殺気立っていた。

 

 確認できた会話内容は『持っていかれた』と『取り返せ』というもの。連合に何かしらの重要な物を奪われたと見るべきだろう。

 

「そんでこの2人がスーパー重要参考人として連れてこられとるワケやけど……あ、初対面の方も多い思いますんで!ファットガムですよろしくね!」

「「丸くて可愛い!」」

「お!アメちゃんやろーな!」

 

 愛嬌に溢れた自己紹介を挟みつつ、ファットガムは神妙な顔をして話す。

 

「先日の【烈怒頼雄斗】デビュー戦でな……今までに見たことない種類のモンが環に撃ち込まれた。それが個性を壊すクスリや」

「ッ……!?個性を、壊す……!?」

 

「えッ!?た、環は大丈夫なんだろ!?」

「ああ。寝たら回復していたよ。見てくれこの立派な牛の蹄」

「朝食は牛丼かな!?」

「朝から結構ガッツリいくんスね」

 

 そこじゃない。

 

 個性の機能停止を引き起こす、という意味合いであればイレイザーヘッドも同じなのでは?との意見も出た。

 しかしイレイザーの【抹消】とは明確に異なる点がある。それは 個性を停止(・・)させる事と攻撃(・・)している事だ。

 

 基本となる人体に何かしらの仕組みをプラスアルファされたものが個性であり、そのプラスアルファを一括りにして個性因子と呼んでいる。

 イレイザーの個性はその個性因子の動きを一時的に止めてしまうだけであり、何時間もたった一人の人間を見つめ続けたところで個性が消えるなんてことは起こらないのだ。

 

 放たれた弾丸は2発。1発は天喰が被弾し、先述した通り一時的に個性を使えなくなるというダメージを受けた。そしてもう1発は……。

 

「切島君が身を挺して弾いたおかげで、中身の入った1発が手に入ったっちゅうわけや」

「あ、俺っスか!?ってことは……あの時弾いた奴もだったってことか」

「おん、そんでその中身を調べた結果……ムッチャ気色悪いモンが出てきた」

 

 

 ──中身は、人の血や細胞だった。

 

 

 超常社会でそれが意味するところは、個性を壊す効果が人由来……即ち誰かの個性によるものだということになる。個性による個性の破壊、それは間飛の眉を微かに動かさせる。

 

(転孤……いやねえな。アイツならそんなもんを無作為にばら撒くはずがねえ)

「……間飛君?顔色が悪いけど大丈夫?」

「あ、大丈夫ッス。すんません」

 

 しかしそれらの情報が何故死穢八斎會に繋がるのか?それは切島に捕らえられた男が使用した違法薬物を辿っていくと、中間売買組織の1つと死穢八斎會に繋がりがあったことが判明していたからだ。

 

 それだけではない。先日リューキュウの下でインターンに勤しんでいた間飛達が倒した巨大化ヴィラン。そのうち片方のグループの元締がその繋がりのあった中間売買組織だった。

 巨大化した一人は効果の持続が短い粗悪品を使用していたらしく、現在は後遺症に悩まされているとか。

 

 多発しつつある組織的犯行を辿っていくと死穢八斎會周りに繋がってくる。この時点でかなり怪しいと見ていいだろう。

 

「若頭の治崎の個性は【オーバーホール】。対象の分解・修復が可能な個性で……治崎には娘がいます。出生届もなく詳細は不明ですが、近隣住民から『包帯が沢山巻かれていたのを見た』という話もあります」

「……娘の身体を銃弾にして捌いてる、って事か」

「ガキにしちゃ物分りがいいな。……しかしそうだとすればかなりクソみてえな事企んでそうだが」

 

 それだけでは終わらない。

 

「ん?じゃあ、連合が奪ったのって……もしかしたらその娘だったりしません?」

「……可能性はある。だとすれば死穢八斎會よりもマズイ所に渡ってしまった事になる」

「ヴィラン連合が個性破壊の手段を手に入れた……考えたくもねえな」

(すんませんソレもう持ってるんで多分何も変わんないです)*1

 

 サー・ナイトアイを中心に真剣な議論をしているところ悪いのだが、間飛だけは知っている。死柄木弔……志村転孤が既に自力で他者の個性を壊す手段を持っていることを。

 

 物凄く真剣に考えているのだろう。が、間飛だけは少し感覚が異なる。何せ唯一この中でヴィラン連合の手札を知っており、既に彼らの目的が変わっているのも分かっている。

 間飛の予想は『多分死穢八斎會が連合の誰かの地雷踏み抜いてしばかれただけだろ』だ。あながち間違ってないのが酷い。

 

「じゃあどうすんだ?こんだけ頭数揃えて踏み込んで、そこにはとっくに娘はいませんってんなら手を出す必要もないだろ」

「ですがストックが無いとは限らない。何よりこれ以上野放しにしておけないのは確かです」

「一理あるわな。組織的犯罪を増やされても敵わん」

 

 それはそれとしてその娘が既に死穢八斎會に居なくとも放置は出来ない。かつて大事件を引き起こしたこともある【弱個性改善薬(トリガー)】の件もあるのだ、楽観視は出来ない。

 

「……私の【予知】を使う事も考えたのですが、どういう訳か今の私の【予知】はかなり不安定になっています。今この場で誰かの未来を見てもノイズが走るばかりです」

「はあ?アンタも例のクスリとやらをどっかで食らってんじゃねえのか?」

「さすがに銃撃されていれば気づくでしょうよ……」

 

 本来ならばサー・ナイトアイの個性は発動から1時間の間他人の生涯を記録したフィルムを見ている様な形で予知する事になる。

 そのフィルムは全編人物のすぐ近くからの視点。見えるのはあくまでも個人の行動と僅かな周辺環境のみだ。

 

 それが現在、彼の【予知】は酷く不確かで曖昧になってしまっている。

 フィルムの例え方を流用するならば異なるフィルムと継ぎ接ぎにされているように映像が飛び飛びになってしまうのだとか。

 

「可能な限り確度を高め、早期解決を目指します……御協力よろしくお願いします」

 

 会議は一旦終了。今回の内容を纏めた資料を配布されて解散となった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 事務所1階エントランス。ウォーターサーバーの近くにあるテーブルを囲んだ雄英生達は厳しい顔で話し合っていた。

 議題はヴィラン連合の目的について……そして自分達に出来ることは何なのか、答えが出るはずもないのに焦燥感がただ無為に過ごす事を許してはくれないのだ。

 

「何か……想像してたよりもずっとデカい事に関わることになりそうだな」

「そうね。まさかヴィラン連合まで関わってくるなんて」

「1年生が被害にあったんだって?特に間飛君は拉致までされたと聞いたが……大丈夫だったのかい?」

「んん……ちょいとゴタゴタはしましたが問題は無かったっスね」

 

 それは1年生に比べれば成熟している3年生でも同じ。どこか落ち着かない様子でビッグ4の面々もいつもの様な明るさや騒がしさは無い。

 

 すると元気の無い彼らの元にコツコツと歩み寄る人影、イレイザーヘッドが頭が痛いとばかりに頭を手で押さえつつ彼らに声をかけた。

 

「疲れたか?元気が無いようだが」

「先生……」

「あ、学外ではイレイザーヘッドで通せ」

「イレ先」

「間飛お前わざとだろ」

「え?いや、零から教えて貰った呼び方なんスけど……ダメなやつでした?」

「氷叢……?」

「……ど、同級生から教えてもらったあだ名?なんですけど」

 

 まあそれはいいか、と受け入れ(諦め)つつイレイザーはボソリと呟いた。

 

「今日は君達のインターン中止を提言する予定だったんだが……」

「えっ!?な、何で今更……!!」

「連合が関わってくると言っていただろう?」

「てか、だった(・・・)なんスか?」

「ああ……それぞれのインターン先のヒーローが是非に、って言ってるんだ」

 

 インターン中止を覆すほどの理由。それはプロヒーロー達からの強い要望だった。

 

 サー・ナイトアイは後継者として少しでも多くのことを学ばせたい、ファットガムは先の1件から切島を気に入っている事もあって元々かなり乗り気。

 リューキュウは現代には珍しいサポート力に秀でた麗日と梅雨ちゃんに期待を寄せていることもあって出来れば場数を踏んでもらいたい。

 

 そしてビッグ4と間飛は純粋な戦力としての期待値が高い。むしろ今回の作戦上メイン戦力として数えられていると言っても過言では無い。

 

「それに連合が関わる可能性は正直低いとも思ってるからな。個人的には継続に賛成している」

「じゃあ……」

「インターンは継続だ。お前達の役割も薄いだろうし、今回の作戦もお前達の返事次第……その分だと聞くまでもないようだが」

 

 作戦決行日まではいつも通りに過ごせ、とイレイザーは話を締めくくった。

 

 

 

 

 戦いの時はそう遠くない。

 

 

 

*1
気の毒なものを見る目





ファットガム(あの子か……)
ロックロック(リューキュウのモチベとかいう奴は)

バブルガール(サーが滅茶苦茶見てた子だ)
センチピーダー(サーが見てた子か)

ナイトアイ(あの子に更に【OFA】渡したらどうなるんだろうか)

間飛「何かめっちゃ見られてる……?」
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