あの会議の日から2日後の深夜。死穢八斎會の件に関わっていたヒーロー達とインターン生にとある連絡が届いた。
それはある日付を指すもので、最小限の文章で表された
決行日当日にサー・ナイトアイからされたのは構成員から確認できたかろうじて信用出来そうな【予知】についての話。
八斎會邸宅には届出の無い入り組んだ地下施設が存在しており、もし被害者と思われる女児がいるとすればそこだろうとのこと。
幸いと言うべきか【予知】の中に連合の姿は無かった。しかしそれはエリちゃんの救出も不可能ということでもある。
故に今回の目的は治崎の捕縛と連合に関する情報の入手。もし中にエリちゃんがいた場合は最優先で保護を行う。
AM8:30……決行の時が来た。
「令状読み上げたらダーッ!!と!行くんで!速やかによろしくお願いします」
「やけにしつけえな。信用されてねえのか?」
「そういう意味やないやろ意地悪やな」
無数の警官と機動隊、そしてヒーローとインターン生。死穢八斎會邸宅前に集まった彼らは気を引き締めてその瞬間を待っていた。
緊張していないはずもなく、隣の誰かが息を飲む音すら聞こえる静寂の中でインターホンに指が伸ばされ……。
「何なんですかァ」
ガオンッッ!!
チャイムが鳴ると同時に門が内側から破られた。
「ッなァ!?」
「朝から大人数でぇ……」
破られた門よりも巨大な体躯の男による大振りなパンチは警官をも吹き飛ばし、3人の警官が宙を舞う。
落ちれば大怪我は必至。即座に動いたのはイレイザーヘッドとデクの2人。イレイザーの捕縛布と【フルカウル】を発動したデクによって落下死を免れた。
大男の暴虐は止まらない。巌のように握りしめられた拳を叩きつける様に振り下ろし、ドゴン!!と重い音が響く。初手から想像以上のパワーファイターが出てきたことに誰もが困惑する中、リューキュウが動く。
「何の用ですかァ!!」
「ここに時間はかけてられない……そうでしょう?」
「……!?」
空気の壁を破りながら放たれた剛拳が硬質な爪と鱗の手に阻まれる。ガッチリと鷲掴みにされた腕を引き戻せない事に一瞬の硬直が生まれた。
リューキュウ:個性【ドラゴン】
巨大なドラゴンに変身出来る。背中の翼で空を飛び、強化されたパワーは並のヴィランならば片手で制圧してしまえる。
掴んだ腕から引き摺り倒してやろうとして───頼もしい後輩の名前を呼んだ。
「IXA!!」
「ん?誰だ!!」
「──俺だよ」
大男の懐にワープしていたIXAが拳を鳩尾近くに持ち上げ。
BANG!!!
「ッ…………!!?ガ……」
「寸勁……ワンインチパンチってな」*1
「い、一撃か……!!」
静寂、そして一撃。暴れ回る大男の鳩尾に打ち込まれた重く鋭い打撃はそれだけで意識を刈り取り、掴まれていた右腕を持ち上げられたまま地に沈んだ。
「私達は外で見張りをしています!IXA、貴方は皆と一緒に中へ!」
「了解!」
「ようわからんなもう!とりあえず入ってけ!!」
個性の性質上屋内での活躍が難しい。リューキュウはIXAに役目を託し、ファットガムの言葉にヒーロー達も勢いづいて門を潜っていく。
そうなれば当然構成員達との戦闘にもなる。敷地内に入ってすぐに如何にも、な3人の男達が立ちはだかるもヒーロー達の足止めにはなり得ない。
後から続くようにまた何人もの構成員達が何としてでも押し留める為にと組み付いてくる。組総出での時間稼ぎというあまりにも破滅的な行為にヒーロー達も呆れ、同時に治崎の手腕に冷や汗をかいた。
──これだけの人数に捨て身をさせられるのか。
情報が漏れているのかと疑いそうになるが、その実彼らにヒーロー達の動きは漏れていない。
古臭い仕来りだが、盃を交わせば親や兄貴分に忠誠を尽くすという界隈だ。ヴィラン予備軍としての監視が続くような肩身の狭い彼らは社会から切り離され、その分身内での結束力に長けている。
「ここだ。この下に隠し通路を開く仕掛けがある」
「忍者屋敷かっての!ですね!」
「……確かにこの先に道がありますね」
「分かるのかい?IXA君」
「探知範囲だけですが」
サー・ナイトアイが板敷を押さえていると駆動音を立てて壁が動き出す。重苦しい音と共に現れた地下への道──そして武器を構えた構成員。
やけに必死の形相で出てきた男たちはセンチピーダーの【ムカデ】とバブルガールの【バブル】により容易く制圧される。
彼らの隣をすり抜けて地下に入り込むと、すぐ目の前に行き止まりがあるばかりだ。
「行き止まりじゃねえか!?」
「俺見てきます!」
「いや……大丈夫ッス。分厚い壁で塞いでますが道は続いてます」
「んー便利!」
「それなら……!!」
「殴り抜けてやるぜェ!!」
【ワン・フォー・オール:フルカウル】!!
【
圧縮硬化された右腕とエネルギーの迸る左手。たかがコンクリートの壁如きでは立ちはだかるにも物足りない。分厚い、と評された障害物はただの一撃で砕かれた。
「へえ?やるじゃねえか」
「先越されたわ!ま、進みましょか……ッ!?」
若い芽のパワーに感心するロックロックとファットガムだったが、不意に彼らの顔が歪んだ。
「道が!!うねって変わっていく!!?」
「治崎じゃねえ……逸脱してる!」
地下空間そのものがうねり、歪な形へと変化していく。風の日の水面の様に揺らぐ床、天井、壁……考えられる犯人は幹部格の一人である入中によるもの。
入中の個性は【擬態】。モノに入り自由自在に操れる能力であり、しかし彼が入り操れる規模は冷蔵庫程度がせいぜいのはずだ。
恐らくは薬物により個性をブーストし、無理を通して道理を蹴っ飛ばしていると思われる。
「っそ!イレイザー消せへんのか!!?」
「本体が見えないとどうにも──……」
「そこです!」
「あ?」
「あそこに本体がいます!」
地下空間でこれ以上なく脅威である能力に対し、切り札となるのはIXA。地下そのものに潜り込もうが異次元にでも潜んでいないのなら、そこは既に彼のテリトリーだ。
これに驚かされるのは入中。1人か2人くらいは取り逃す覚悟はしていたが、まさか初見でこちらの位置を当てられるとは微塵も考えていなかった。
慌ててヒーロー達の足場を変化させようとし、うねりが一際大きくなる。
「引きこもってねえで出て来やがれ!!」
「は───がフッ!?」
ヒーロー達の足場を奪った瞬間、入中が潜む
しかしもう遅い。ヒーロー達は1階分の高さを落とされてしまう。
「チッ……良いようにやられてんなクソが!」
ここに来ての分断。苦々しい顔で間飛はひとまず先に進むことにした。
◇
「騒がしいな……ちゃんと役に立ってるのかあいつらは」
「言いたか無いですが……八斎會は終わりですね」
苛立った様子を隠そうともしないオーバーホール。カツンカツンと乱暴な足音を立てながらガシガシと頭を掻きむしっている。
様子がおかしい理由など聞くまでもない。連合によって
計画も大詰めだと言う所まで来たのに、藪をつつかれて飛び出した蛇がよりにもよって一番大切な鍵を持って行ってしまった。
「腹が立って仕方ない……!」
「……まあまあ、落ち着いてください。ここは例のバケモノ達を使う時が来たんですから」
「ふん……有象無象ぐらいは何とかしてくれればいいんだがな」
どうしても隠しきれない不機嫌さを滲ませながら歩くオーバーホールがたどり着いたのは、壊理の個性を利用する為に作られた手術室と似たような設備の部屋。決定的な違いとしては、そこにあるのは手術台などではなく培養液のカプセルであるくらいだろう。
カプセルの中でダラリと極太の腕を垂れさせているのは脳みそを剥き出しにしたような異形のナニカ。その名を脳無。
仰々しいレバーをガコン、と落とすとカプセル内の培養液が水位を減らし脳無の身体が浮力を失ってカクンと頭が前に落ちてしまう。
「……音元、酒木」
「はっ」
「んん……うぃぃ」
「頼んだぞ」
名を呼ばれた2人の男が───脳無と共に分解・修復される。
部屋から出てきたのはオーバーホールと2人の異形だった。
『オオ……コれハ素晴らしいパワーだ……!!』
『ヒャひャヒゃ!!ンだこれぇ!?サイっ高のキ分ダ!!』
「忌々しい病人共め……一度死ななきゃ分からないらしい」
狂気が加速していく。
※脳無は神野区事件のドサクサでたまたま拾った
Q.IXAの強みって何?
(from:匿名希望のプロ)
A.探知能力のせいで不意打ちが基本無意味。
Q.IXAの今の実力ってどのくらい?
(from:冷たい男の娘)
A.全盛期オールマイトの75%に探知能力とワープが搭載されたと思っていただければ。
Q.間飛君って他に推しとかいる……?
(from:シナシナしたドラゴン)
A.最推しがリューキュウから変わる事は無いと断言されております。良かったですね。
Q.アタシは?
(from:匿名にさせられたウサギ)
A.残念ですが……アッ、ちょやめt