音本と融合した脳無に与えられていた個性は4種類。
1つは【クッション】というもので、打撃に対する耐性を獲得する能力。打撃以外のダメージを軽減することは出来ないが、打撃に対しては切島の【硬化】とはまた異なる方面で凄まじい防御力を誇る。
2つ目は【クロウハンド】。指自体が刃物のように鋭い爪となり、副産物として腕全体の硬度が上がるというシンプルながら強い個性。
3つ目は大抵の脳無に搭載されている【超再生】で、USJの時の脳無が持っていたものとほとんど同じもの。
そして4つ目が……。
「死ネ!死ねシねシネシネしネ死ねェェエエえェエ゙エ゙!!」
「イカレてんのかコイツ……!!?」
「崩落すんぞ!?地下空間でやっていい攻撃じゃねえ!」
不気味な黒い巨躯が開けた口から放たれるのは極太の杭のようなナニカ。それこそが4つ目の個性である【歯杭】だ。
歯を杭のように変形させて撃ち放つ事が出来る個性だが、人の歯のサイズなどタカが知れている上に残弾の
それを有効活用出来るようにと頬を大きく裂いてしまい、歯の向きを歪に変える事で安定した狙いを可能に。
プラスで残弾補充にも【超再生】が影響した。射出した歯の再生時間を大きく短縮し、今の音本のように乱射しても弾切れになる事がなくなった。
更に薬物によってキツめにブーストされた個性は威力もサイズも格段にランクを上げている。
「下手に受けると致命傷だなこりゃ」*1
「狙いはヘッタクソだけどな……っぶねえ!?」*2
「顔面セーフで良かったな」
「おう顔面ど真ん中に貰って来いよ。セーフって主張しとけ?」
「状況分かってンのかテメェら!!?」
撃ち出される【歯杭】をヒラヒラと躱しながら休み時間の雑談の如く、ダラダラと結論も何も無い会話をしている。
杭の太さはどう見ても成人男性の前腕程の太さがある。それを【フィジカルギフト】を持つIXAはもちろんのこと、度重なる改造の成果が残った荼毘でさえかすり傷を残すのがやっとだ。
何なら壁や天井、床に突き刺さる極太の杭を時折引っこ抜いては投げ返す始末。【超再生】にかまけて……というかほぼ固定砲台をしている事もあって回避できず、撃っている方が蜂の巣になるというおかしな状況だ。
しかしこうなるのも無理は無い。
まずIXAの打撃はほとんどが有効打にならず、云十発叩き込めばいいのかな?というレベルで軽減されている。
彼らの手札の有効なものは荼毘の青い炎か杭を投げ返すしかなく、荼毘の炎は使い過ぎれば自傷に繋がる。じゃあちまちま投げ返して少しずつ削るか、という結論に至った。
(荼毘はともかくあのガキ……!?的確に関節部分を狙って杭を残してやがる!)
「おかわり一丁ッ!」
「人の心とかないんか!?」*3
「脳無と混ざってるやつに倫理観説かれましても」*4
「正論だな」*5
なんてこったい。この場にいるヤツら全員道徳の点数赤点じゃねえか。ガ○ジーでも助走つけてドロップキックくらいはしてくるぞ。
IXAの投げ返す杭は貫通ではなく固定を狙って投げられており、肘や膝といった関節部分の動作を著しく阻害されていた。いつの間にか“敢えて動かない”から“そもそも動けない”に変わってしまったのだ。
距離を詰められてはマズイ、とますます射出の回転率を上げていくが忘れてはいけない。IXAの真骨頂はその超パワーではなくワープにある事を。
「はぁいお口チャックですよォ!!」
「ムグゴッ……!!?」
「おおえげつねぇなァ……口、閉じちまったな?」
均衡が崩れたのは一瞬の出来事。初期のゲーム&ウォッチかと言いたくなるようなカクカクワープで回避していたIXAが音本の背後に回り、顎を鷲掴みにすると勢いよく力づくで閉じきってしまった。
どうにかIXAを引き剥がしたくとも、肩や肘に膝に足首と関節を串刺しにされた身体では満足に暴れることも出来ない。
両手両足が使い物にならず、メインウェポンの発射口も塞がれた。こうなってはただただ頑丈なだけの肉袋と何ら変わらない。
「あくまでもテメェの耐性は打撃だけだろ?俺の炎はどうだろうなァ……」
「…………ッッ!!」
「……殺すなよ?」
「わーってる。死なねえ程度に焼くだけだ」
わざとらしく足音を立てながらゆっくりと歩み寄る荼毘。ニヤリといやらしい笑みを浮かべながら手のひらをそっと胸元にあてがった。
彼らには預かり知らぬ話だが音本が融合した脳無はUSJに動員された対オールマイト用のプロトタイプの一体だった。
何度も実験を重ねるうちに安定させるには個性の数を絞らなければならないという答えに行き着き、4種の個性を与えると身体能力に割り振るリソースが足りなくなってしまっていたのだ。
何が言いたいのかって?要は今の音本にはIXAを振り払えるだけの力が無いということだ。
「……お前さあ、何するかくらい先に言えよ。俺まで黒焦げになるところだったじゃねえか」
「どうせ当たらねえだろ」
「報告・連絡・相談はちゃんとしよう?」
「コイツって脳無と分離出来るのか……?音本はどうでもいいが脳無は始末しておきたいんだが」
「その娘さんとやらが何とか出来ねえのか」
「それだ」
音本……ウェルダン気味に焼かれて
この後はスタッフが美味しく……はないけどしっかり処理しました。
◇
「ミリオはどうした?」
オーバーホールと脳無という凶悪な組み合わせを前にして尚、サー・ナイトアイは一歩も退がらない。睨みつけたまま己の弟子を案じて尋ねる。
対するオーバーホールは苛立った様子でため息をつくとウンザリだとでも言いたげに話す。
「一々病人を見分けていられるか。ソイツがココにいなくて俺がココにいる……それだけで十分だろ?」
「ッ……通形先輩に何をした!?」
「落ち着けデク。どうせすれ違いになっただけだ」
声を荒らげるデクを宥めつつ、イレイザーがツラツラと推測を羅列する。
ルミリオンの個性上、オーバーホールとルミリオンではオーバーホールが一方的に削られる事になる。
もしアジトにエリちゃんが残留していたならば人質にしてでもダメージを与えられたのだろうが、生憎彼女は連合の手に落ちた。オーバーホールがルミリオンに届くことは無い。
またオーバーホールはそれらしい言葉を並べただけであって、実際にルミリオンと遭遇したのかさえ定かでない。少しくらいは心理的動揺を誘えればいいという程度のブラフだ。
「その証拠に治崎も脳無も争ったような跡が見られない。ルミリオンが何も出来ずに一撃で倒されでもしてなきゃおかしいだろうが」
「……フン、どちらにせよ俺には関係ない。死ぬ順番が少し入れ替わるだけだ」
「ッ、来るぞ──……お?」
「これは……酒木の【泥酔】か!?まさかあの脳無が……!」
烈怒頼雄斗が構えた途端、フラリと膝から力が抜けてしまう。突然の事態にまさかと疑いつつもナイトアイが答えにたどり着く。
「ヒャヒャヒャ!!ソうさ!!俺がサカキだ!」
「コイツら……脳無と構成員を融合させたってことかよ!!」
「人の命何や思うとるん!?とんだ外道やな!!」
「───うるさい」
彼らが怒りに沸いたと同時に、オーバーホールもまた限界だった。
壁にオーバーホールの指が触れた瞬間、鋭利な棘に作り替えられた壁が波涛の如く押し寄せた。
「マズっ……!?はあああっ!!」
「ほう……殴り壊すか。なら、酒木」
「アイアイサー!!死になァ!!」
「ッ──させねえ!」
咄嗟に【フルカウル】で串刺しにせんと迫り来る棘を砕くデク。ならばと酒木に指示を出すも酩酊から立ち直った切島が【
酒木と融合した脳無の個性は3種類。
最早脳無の共通項目になりつつある【超再生】に、全身に鋭い棘を生やせる【トゲトゲ】……そしてオール・フォー・ワンに使い勝手がいいと評された空中歩行を可能とする【エアウォーク】だ。
拳に生えた【トゲトゲ】の強度は鉄にも穴を開ける程だが、それすら切島の硬い装甲に食らいつくことは出来ていない。
「ああ?硬ェナおイ!!」
「ぐうっ……強ェ!!」
「倒れたらアカンで!イレイザー!」
「ああ、しっかり
そしてその【トゲトゲ】も本来の個性【泥酔】をもイレイザーヘッドが阻む。ぶつかっていた硬いスパイクが音もなく引っ込んだ。
個性が使えない、という慣れない感覚に戸惑った一瞬。酒木の頭を背後から誰かが強く殴りつけた。
「うゴっ……!?」
「ルミリオン!?無事だったか!」
「はい!途中で幹部2人と交戦しましたが、相性差で倒せました!」
「チッ……乱波と天蓋か。役に立たない奴らだ」
1人先行したルミリオンはオーバーホールとすれ違い、向かった先で【強肩】の個性と【バリア】の個性を持つ2人組と遭遇。ステゴロ一辺倒の乱波と【透過】を防ぎきれない天蓋ではルミリオンとの相性は最悪だったらしい。
幹部2人を瞬殺して戻ってきたルミリオンにさしものオーバーホールも舌打ちせざるを得ない。明らかにこの中でも頭1つ抜きん出ている実力があると判断し、このままでは負けるなと引き下がった。
「ッ!?待て!逃げるのか!」
「いいや違う。お前達を殺すには不足だと判断しただけだ」
入口と同じように壁を変形させ、通路を塞ぎきってしまう。その間にオーバーホールは先程の部屋に向かって駆けだした。
再びドアを潜って入った先にはやはり培養液のカプセルがまだ残されており、既に空になった2つのカプセルを通り過ぎてもう1つのカプセルに手を伸ばす。
「
黒い巨躯とオーバーホールの肉体が溶け合う。妄執も狂気もとっくにブレーキは壊れているのだ。
間飛「娘さん何て名前?」
荼毘「エリだ」
間飛「どんな子?見た目知らんのよ」
荼毘「こんな感じ」スマホポチー
間飛「あら可愛い」
音本(コイツらホンットに……!!)