え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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多対一は倒す順番に気をつけて

 

 

 

 オーバーホールとの戦いが始まった瞬間、カルドルとリューキュウは共にひとつの結論にたどり着いていた。

 

 ──地面に居座らせてはいけない。

 

 ヴィランとしての名前にもなっている彼の個性【オーバーホール】は分解と修復を自在に操る能力だ。彼が干渉出来るのは既存の物体の“形状”であって、手元から八百万の【創造】のように何かを生み出している訳では無い。

 材料がそこら中にある地面から引き剥がすだけでもオーバーホールの手札はかなり削られる。故に2人はオーバーホールを空高く打ち上げる為に動いた。

 

「IXA!一瞬腕を弾いて!」

「りょー……かいっ、とぉ!!」

「ぐっ!?何なんだ……お前の、お前達のそのパワーは!!」

「今!皆離れろ!!

 

 

 【アイスバーグ】ッッ!!!」

 

 

 IXAの蹴りに加えデクからの追撃を入れられた一瞬の隙に捩じ込まれたのは、氷山を思わせる巨大な氷の一突き。先を尖らせていればそれだけで絶命するほどの貫通力を打撃として扱い、爆発的に膨れ上がった氷によってオーバーホールの身体が空へと投げ出された。

 

 当然氷は放置できない。せっかく地面から引き剥がしたというのに氷を利用されてはたまらない。足場としての運用に切り替える為サイズを落とし、掴んだところでナイフ一本が関の山の小ささにまで落とし込む。

 

「ゴボッ……な、んだコレは……ッ!?」

「うっははははは!マジか!?マジかよアイツ!!とんでもなく強くなってやがる!分かっちゃいたけど最高だなオイ!!」

「何て威力……!」

「気をつけて!手段を選ばないヴィランは恐ろしいよ!」

 

 決戦の舞台は遮るもののない空。動けるメンバーは必然と絞られ、ワープによって高度が稼げるIXAとIXAについてこられるデク……そして自力での浮遊が可能なネジレチャンとカルドル、飛行が可能なリューキュウ達だ。

 しかしリューキュウ自身が戦うことは出来ない。【ドラゴン】に変じた彼女の背中にはフロッピーとウラビティをサポートとして連れてきている。

 

 カルドルの氷を足場に全員がオーバーホールを取り囲み、唯一足場を持たないオーバーホールが重力の鎖に絡め取られる。

 

「ねじれもカルドルも遠距離に徹して!IXA!デク!やれるね!?」

「はいっ!」

「無論、いけますとも!」

「頭数を揃えただけでいい気になるなァ!!」

 

 最高傑作未満(ニアハイエンド)と名付けられた脳無を利用するだけはあった。まるでオールマイトがしていたように、力任せに拳を振り抜くことで反動を利用し空を駆ける。

 

 そうした彼が真っ先に目をつけたのはリューキュウだ。お荷物を背負った状態で戦場に来るなど、ヴィランの前では狙ってくださいとアピールしているようなもの。

 ギラリと鋭利に形を変えた手が迫り、既のところで空振る。撃ち込まれた氷と未熟な後継者の一撃が阻んでいた。

 

「させ、ないっ……!」

「ならまずは……足場を創るお前からだ!!」

「ッ!?速───」

 

 ただでさえ想定外の連続。何度も何度も自分の行く手を阻まれる事にとうとう強い怒りが露になる。浮き出る血管と憤怒のまま、矛先を変えた。

 

 

 

 SMASH!!!!

 

 

 

「な……」

「おい」

「……!!?」

 

 

「今、何しようとした?」

 

 

 無理やりに融合させた腕が、纏わせていた瓦礫が砕ける。まるで【崩壊】を受けたように跡形もなく空に融けていくそれを見ることも出来ない。

 

 理由?そんなもの、目の前にいる自分をも超える憤怒に満ちたIXAを見たからに他ならない。

 

 一切の加減無く振り抜かれたソレはただの風圧だけでオーバーホールの鎧を吹き飛ばし、彼に怒りすらも忘れさせる程の恐怖を刻んだ。

 自分なんかよりも余程冷たく恐ろしい目に射抜かれたことで、オーバーホールの手が一瞬止まった。

 

「【ねじれる洪水(グリングフロッド)】!!」

「ぐあっ……!?」

「余所見厳禁ッ!【フロストフォール】ッ!」

「この……鬱陶しい!」

 

 隙だらけの横っ面に重ねられた一点集中のねじれる波動が撃ち込まれる。呆けていた意識が戻る前にカルドルが更なるダメージを、と痛いではすまない速度で氷の礫を降らせる。

 

 ほんの僅かな間とはいえ子供に本気で恐怖したという事実から目を背けようと、オーバーホールもまた必死に抵抗する。ギシリ、と固く握り締めた拳を横薙に振り回すだけで衝撃波が発生。直撃せずとも空中での体勢維持を難しくさせる。

 

 砕かれ散った鎧と腕の残骸を何とか掻き集め、再び腕を形成。多少サイズは縮んでしまったがまだやりようはある。

 

 鬱陶しい氷の足場はほとんど散らした。であれば脅威足り得るのはリューキュウとあのIXAとかいうガキ……と決めつけたのが悪かった。

 

「治崎ィィイイッ!!」

「……ッまだ、ガキがいたか!」

「うるせえ」

 

 キッとリューキュウ達に視線を向けたタイミングを見計らい、IXAの蹴りで加速したデクが太陽を背に突っ込んで来る。

 来てみろと吠える刹那、IXAの手刀が再び融合していた腕を引きちぎった。

 

 バツン!といっそ快感だと思うほど小気味よい音を立てて腕を失い、融合で歪となった腕だけがオーバーホールに残された盾であり矛だ。

 

「ッオオオオオオ!!」

「はあ!?コイツ自分の身体を肉壁にしやがった!!」

「終われるものか!!こんな所で!俺はまだ、何も成し遂げちゃいない!!」

 

 オーバーホールがとった行動は1つ。己の片腕を潰してでも右腕に全ての使用可能なリソースを注ぎ込んだだけ。

 首から下……失われた左腕と更に歪となった右腕以外が元の肉体へと戻り、改造で得た力が束ねられていく。

 

 

「壊れろ!何もかも!!」

「そんなことッ、させるもんかあああああ!!!」

 

 

 【ワン・フォー・オール:フルカウル】45%(・・・)

 全身を27%のフルカウル、右腕に限定して限界を超えた出力を込められたエネルギー。

 

 エゴで束ねられた拳は、希望をもって紡がれた拳とぶつかり……打ち砕かれた。

 

 

「何故……だ……」

 

「あの娘の価値も分からんガキに……っ!?」

 

「……俺に言わせりゃそもそもお前らの計画は破綻してんだよ。オールマイトやらエンデヴァーやらが席巻する現代で、たかだか銃弾如き(・・)に当たる奴は少ねえよ」

 

 

 超常社会だからこその理論だがな、という皮肉めいた自嘲は……やけにオーバーホールの耳に残っていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 死穢八斎會解体作戦。

 味方側の死者はゼロ。重軽傷者が何名か出たものの、後遺症が残るほどのダメージを受けたものはおらず、むしろ死穢八斎會の構成員達の方がボロボロという有様。

 

 最も大きい被害は何かと問われるとやはり道路や建造物になってくる。現代ならばこれらの被害も誰かしらの個性で数日と経たないうちに修復されているだろう。

 

 オーバーホールが倒れたことで個性が解除され、玄野や脳無も分離した。どうやら意識を失った時点で解除されるようにしていたらしい。定着率がどうの、と玄野は言っていたとか。

 何はともあれ死穢八斎會は終わった。一人一人が移動監獄(プリズン)に入れられ、このまま投獄されるらしい。

 

 後始末と反省会を行う中、カルドルはIXAにベッタベタに引っ付いていた。

 

「……リューキュウ、アレは?」

「ん?ああ、アレ?」

「ええ、アレです」

「えっとね?上で戦ってた時にカルドルが狙われたんだけど……そこにIXAがすんごく怒りながら割り込んでて」

「正直怖かったわ。間飛ちゃんのあんな顔初めて見たもの」

 

「えへへェ……ありがとぉねぇ移ぅ……

「分かったから離れろい。暑いんじゃい」

 

 すいませんカルドルも見たことない顔してるんですがそれは。

 

 一応空中で全員の足場を保たせたり、大技や防御を連発していた為それなりの消耗はしている。

 しかしカルドルなら今の状態から並のヴィランなら30人は余裕で倒せる余力を残しているのだが、それはそれとして助けられたことが嬉し過ぎてデロンデロンに溶けてしまっている。それでいいのか氷使い。

 

 遠巻きに彼女……失礼、彼を見つめるビッグ4の残りの3人もこれには苦笑い。常日頃ダダ甘な惚気を聞かされているからこの程度で済んでいるらしい。

 

「氷叢くんいつも言ってたね!ねえねえ知ってる?氷叢くんって間飛くんと居るとふにゃふにゃになっちゃうんだって!」

「……まあ、見れば分かるな」

「禁断の愛なんだよね!」

 

 ……本人は頑なにノーマルと主張しているが、実の所は自覚しているのかもしれない。え?何がって?……HAHAHA!!

 

 

 

「……緑谷、少しいいだろうか」

「サー?どうしました?」

 

 間飛達がワチャワチャしている一方でナイトアイは少し頼りなさげに緑谷に声をかけていた。短い付き合いだがそれがらしくない、と感じるくらいには弱々しい。

 

 一体何が?と恐怖と好奇心が半々の気持ちで次の言葉を待つ。

 

「…………今度また、オールマイトと会ってみようと思う」

「!!」

「確かめたいことも出来たし、希望(・・)も見えた。顔を突き合せて話さねばならん」

「ぜ、絶対そうした方がいいですっ!すぐ会いに行きましょう!」

「落ち着け……気持ちは分かるがな」

 

 フッと笑いながらナイトアイが思い返すのはついさっきの間飛との会話。

 

 

 

『君……青い炎を使う何者かと遭遇しなかったか?』

『ん?しましたけど……ほら、オバホ殴り飛ばす時も使ってましたし』

『……?敵ではなかったのか』

『……多分?』

『ちょっと聞きたいことが増えたな?』

 

 あまりにも不確定要素が多すぎてイタズラに不安を煽るだけだと黙っていた彼の未来。結果的には無事に済んだものの、彼が死んでいた可能性もあったと思うとゾッとする。

 

 ナイトアイが聞きたかったのは【予知】で見た青い炎の男についてと……【予知】という個性を踏まえた上での未来についてどう思うか、という質問。

 

 かつて目の当たりにした『オールマイトが死ぬ』という未来。絶望的な未来が来ると分かった時、君はどう感じるのか、と。

 

 間飛は少し首を傾げると、不思議そうに尋ねた。

 

『そりゃあ……何としてでも運命を捻じ曲げようとしますし、それでダメなら覚悟して臨みますとしか』

『……変えられないとしてもか?』

『いやいや、“命”を“運ぶ”と書いて運命って読むんスよ?命を運ぶのは自分の意志でしょうよ』

 

 受け売りみたいなものだけど、と断って間飛は続けた。

 

 明日死ぬと分かってても覚悟があれば幸福であると言える人もいれば、未来なんか見えてなくても覚悟があれば絶望なんて乗り越えられるという人もいる。

 

 しかし最も大切なのは自分で道を切り拓くことでは無いのか、と。

 

『所詮未来なんていつかは通る道くらいのもんです。その時にならないと分からないんですからアテにし過ぎるのも良くないっスよ』

『……そう、だな』

 

 あっけらかんと語る間飛に肩の力が抜けてしまった時点で、ナイトアイはこれ以上1人で抱え込めなくなっていたのだろう。

 憑き物が落ちたような顔で、ナイトアイは礼を言って去っていった。

 

 

 

(結局その時にならないと分からない……か。いつから私は【予知】に屈したんだろうな)

 

 【予知】に異変が起きる前、使う予定の無い日にルミリオンを見た時に死ぬ未来が見えていた。それも死穢八斎會に突入する日……今日この日に死ぬのだと。

 【予知】に異変が起きてからは縋るように『アレは何かの間違いだ』と自分に言い聞かせ、確証を得られないまま今日という日が来てしまった。

 

 結果は死者ゼロ。ルミリオンどころか警察の1人も死にはしなかった。

 

 あれほどビクビクと怯えていた【予知】もここまで外れてしまっては笑うしかない。ご都合主義にも程があるハッピーエンドなのに、ナイトアイの中にあるのは確かな充足感と喜び。

 

「バブルガール……センチピーダー……これからもよろしく頼むぞ」

「はいっ!」

「ええ、勿論」

 

 気に食わない未来なら捻じ曲げてやれ。誰にも理解されない未来への絶望を振り切ったナイトアイは晴れやかな顔をしていた。

 

 

 

 

 

「……もしもし、オールマイトですか?オールマイトですよね??」

『ねえ怖いって!?』

「インターンが落ち着いたので一度貴方に会いに行きます。逃げないでくださいね」

『え?く、来るって?ちょ、待って!?まだ心の準備が───』

「よしアポは取った。明日行くぞ」

((……判断が早い))

 

 

 






〜普段〜

波動「氷叢くんおはよー!」
氷叢「おはよ……朝から元気だね」

通形「ヘイヘイヘーイ!ついてこれる!?」
氷叢「動きがやかましい!」

天喰「……美味っ」
氷叢「いつも思うけど結構食べるよね……」

〜対間飛〜

間飛「はよっす」
氷叢「おはよぉ……眠いよぉ……」

間飛「ほらまだいけるいける」
氷叢「ひぃん……勘弁してぇ」

間飛「……食う?」←視線を感じたのでお裾分け
氷叢「食う!」←食べさせてもらえるのが嬉しい

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