え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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前回の感想欄に『TS個性のヴィランさん脱獄はよ』が幾つかあって腹と頭を抱えました。謎の需要が生まれておられる……!



タグに【氷叢】と【男の娘】と【恋愛要素】を追加しました。




闇には闇なりの生き方がある

 

 

 

「っはぁ……こんなモン、俺1人に任せていい案件じゃねえだろ」

 

 かすり傷と火傷をいくつか残しながら、荼毘は気怠げに笑う。

 

 彼の手には死穢八斎會で回収した武器や薬品を詰め込んだ袋が下がっており、足元には指ひとつ動かない漆黒の怪物が転がっている。

 

「ああ……お疲れ。首尾は?」

「ニアハイエンド1体と肉壁2体、ついでに個性破壊弾とやらと銃火器を幾つか。満足か?」

「上出来だ」

 

 黒霧の【ワープゲート】に放り込めればそれでお終いとはいえ3体の脳無を回収し、武器の調達までこなした荼毘を転孤は手放しで褒め称えた。

 

 彼らの次の……最後の標的は“ドクター”だ。脳無を山ほど抱えていると仮定するならば武器はいくらあっても足りない。

 転孤の個性が『覚醒(・・)』した今、過剰な装備は不要だという意見もあった。しかし転孤は所詮1人の人間でしかなく、頭か心臓に穴を空けられてしまえばそれだけで死ぬのだ。

 

「ああそうそう……間飛と会ったぞ」

「……は?何でアイツがヤクザの所に?」

「インターンとかだろ。雄英ならあるんじゃねえの?」

「インターン……そんなものが」

(そういやコイツ滅茶苦茶世間知らずだもんな)*1

 

 意外な場所での再会に荼毘も驚いていた。世間は狭いとは言うがそれにしたって狭すぎやしないだろうか。

 

 

 

 間飛がオーバーホールの一撃に割り込む直前、荼毘は間飛を引き留めてある物を手渡していた。

 

『ちょっと待て。一応コレ持っていけ』

『……?何だコレ。何かの欠片か?』

『ソイツは例の娘の角の欠片だよ』

『角ぉ?』

 

 荼毘の青い炎だけでは消費しきれない個性のエネルギーの塊。何とかならないものかと手癖で角を触っているとポロッと欠片が落ちてしまった。

 幾つか落ちたうちの一つを指先で摘み上げ、軽く力を入れると砕け──巻き戻す能力が微かに発動した。

 

『サイズにもよるがソイツだと3分くらいの傷は治してくれる。せいぜい上手く使え』

『……巻き戻す、ねえ』

『あとついでにコレも』

『ん?』

『俺の炎をつけた手袋』*2

『要らねえ!?』

『先に手袋が燃え尽きるだけだからさっさと行ってこい。最悪その欠片使え』

『おぉい!?ああもう、後で覚えてろ!』

 

 ついでだからと自分の代わりに憂さ晴らししてもらおうと自分の炎を託し(押し付け)た。幼女を虐めた罪は重い。

 

 

 そうして現在、壊理ちゃんは連合に引き取られている。少なくとも死穢八斎會にいる頃と比べてどうかと言われると……。

 

「……で、いつまでそうしてんだ」

「……」

「怪我はもう治ったって。だからそんなに心配すんじゃねえ」

「……や」

「はっ、荼毘兄ちゃんが怪我して来たのが悪いもんなァ?甘んじて引っ付かれとけ」

「可愛いからいいだろ?変わって欲しいくらいだぜ!ずっとお前が相手しとけよ!傍から見てりゃ微笑ましいぞ」

 

 壊理ちゃんから見た荼毘は戦う事も厭わず自分を助けてくれた優しい人として映り、致命傷には程遠くとも治したはずの怪我を増やして帰ってきたものだからセミのように背中にくっついていた。

 

 未だ壊理ちゃんの個性制御には課題が多いけれど、ひとまず個性のオンオフくらいはハッキリ切り替えが出来るようになった。ただ、オンにした瞬間の出力が強すぎる事もあるので荼毘は引き続き酷めの火傷を負ってから試している。

 

 制御練習の副産物として僅かに荼毘の高熱耐性も強化されつつある。今までなら1秒以上の放出は自殺行為にも等しい反動があったけれど、今や練習用の火傷を負うのに10秒ほど出しっぱなしにしてようやく火傷するレベルに。

 

「そういや壊理。お前を虐めていた悪い大人達、捕まったってよ」

「え……」

「俺らのお友達(・・・)が頑張ってくれたらしい。治崎のオジサンはカッコイイヒーローに負けたんだ」

「……ほん、と?」

「ああ、嘘じゃない」

 

 一度背中から引き剥がしてヒョイっと抱き抱え、すっかり元通りになった手で撫でながら荼毘は話す。

 

 自分を切ったり刺したり、ダメ(・・)になったらバラバラにして元に戻されて……怖くて痛くて、でも止めてくれなかった大人達。そんな悪い大人達が、捕まった?

 

 6歳の、それも劣悪な環境で育った子供では処理しきれない情報と感情。荼毘が不思議そうに顔を覗き込み、目が合った瞬間。

 

「よかった……」

「ああ」

「よかっ、たぁ……!」

「泣け泣け。ここのバカは止めたりしねえよ」

「何故1回罵倒を挟んだ?」

「怖かった……!痛かった……!」

 

 雫が1つ、2つ……後から後からポロポロと涙が落ちていく。凍りついていた感情が不完全ながら動き出し、声を上げて泣き始めた。

 

 まだ笑えなくとも、心の底から安心出来なくても。今この時だけは恐怖から解放されていた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 IXAやデク達が戦っていた頃、とある山間部ではまた別の戦いが起こっていた。

 

 作戦に参加するはずだった老人グラントリノが不参加だった理由。それが今目の前にいる脳無に関係している。

 

「ちっ……この数日の間に目撃情報が集中したと思えば、こりゃまたとんでもねえのが出てきたな」

「気をつけて!動きは鈍いが防御力が異常に高い!」

 

 山の中を不気味なナニカが練り歩いていた、という通報が数多く届いた。通報者に直接会って詳しく話を聞いてみると、出てきた特徴の全てが脳無ではないかという疑いを強めた。

 

 死穢八斎會もそうだが、脳無という存在は放置できない。ナイトアイに断りを入れて別行動を取り、いざ確保に来てみればこのザマだ。

 動きは鈍重、攻撃は的外れ。だというのにグラントリノの攻撃を何度受けても倒れる気配が無い。

 

『おいおい……まだヒーローをしていたのかい?』

「ッッッ!!?お前……オール・フォー・ワンか!?」

『誤算だったよ。まさか僕が負けてタルタロス送りになるどころか、死柄木弔を取り上げられるなんてね……』

 

 脳無から、ではない。脳無の口内に仕込まれた小さなスピーカーから聞こえた声は間違いなく討伐されたはずの魔王のもの。

 馬鹿な、捕まったはずでは?とグラントリノ達に動揺が走る。スピーカーの向こう側に誰がいるのか分かっているのに、脳が理解を拒む。

 

『正直に言うと本気で困ってるんだぜ?大切なマスターピースを奪われ、僕自身(・・)も投獄……計画が台無しなんだよ』

「計画だあ?テメェはとうに何もかも失ってんだろうが。タルタロスの底で大人しくしてやがれ」

『ふふふ……まあいいさ。真相に気づいた時にはもう手遅れだろうからね』

 

 不気味な余裕。タルタロスの奥底で精神が砕かれ、死柄木弔を取り上げられて尚この口ぶり。一体何が起きている?

 共に来ていた塚内警部が確認をしてもタルタロスに異常はなく、脱獄など以ての外だと言う。

 

 では目の前でスピーカーから声を発している者は何なんだ。間違いなく魔王以外の何者でもないのに、その魔王自身は未だタルタロス。何が起きている?

 

『この脳無は君たちに上げようじゃないか。ハンティングトロフィーくらいは欲しいだろう?』

「何を……」

『ただし、少しばかり彼と遊んで貰うよ。おいで……』

 

 

 

 

 

 

『マキア』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、ドクター」

「何じゃ?言っとくが今のアンタのソレ(・・)以上の器はないからの」

 

 機械の駆動音、或いはゴポゴポと液体が揺らぐ音。それ以外はたった2人の会話が行われるだけの暗い部屋。

 微かに照らしてくれるモニターや機械からの光が時折黒い身体に遮られ、ドクターと呼ばれた人物が振り返りもせずに声の主に素っ気なく返す。

 

 ただ声をかけただけだろう?と粘つく笑みを浮かべながら、一体の脳無が尋ねた。

 

「僕が聞きたいのはそんな事じゃないさ……一体何があったら死柄木弔を取り上げられるような事態になったのかを聞きたくてね」

「……それがよく分からんでな。神野区の事件の少し前から死柄木の動向があまり把握出来とらん。さすがにワシ1人では対処しきれんからアンタを起こしたんじゃぞ」

「ふむ……仕方ない。個性を絞ってマキアを器にするしかないかな?」

 

 さして困ったようにも思えない声音であっさりと計画を変える。マスターピースは惜しいが選り好みが出来る状況ではない。

 現状で出来る最善手を選ばされている不快感に顔を歪めながら、脳無……否、魔王(・・)は怨嗟のように呟いた。

 

 

 

 

「殺してやる……殺してやるぞ間飛移」*3

 

 

 闇はまだ晴れてなどいない。

 

 

 

*1
お前も大して変わらないのでは

*2
The☆高温。ぶっちゃけただの軍手。

*3
キラキラと口から虹色を吐き出す間飛(幻覚)





顔金「あぶぅ……」
看守「……これ本当に大丈夫か?」
顔金「キャッキャッ」
看守「ダメかもしれん」

(またしても何も知らない)魔王
「ふふふ……本体に何があったか知らないが殺してやる。殺してやるぞ間飛移」
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