え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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かえってきました

 

 

 

 死穢八斎會若頭、ヴィラン名【オーバーホール】の逮捕の報せは瞬く間に広まった。指定ヴィラン団体の一つであり、数少ない摘発を免れた天然記念物(ヴィラン予備軍)の事実上の壊滅は世間の注目を集める。

 

 それは雄英高校でも同じ事だ。

 

 

 

 インターン中とはいえ、いやインターン中だからこそ書類や被害等の処理をする必要があった。手取り足取り教えられつつ、翌日は病院で身体を休める事に費やした。

 

 全てが終わってA組の5人が帰寮する頃には日が暮れており、眠たそうに目を擦っていた。

 ちなみにだがサー・ナイトアイもリューキュウもまだまだやらなきゃならない事は山積みで、インターン生に任せられない部分の対応に当たっている。

 

 さほど汚れていない制服で彼らがハイツアライアンスの玄関を潜った時、峰田の声が響いた。

 

 

「帰ってきたあああ!!奴らが帰ってきたァ!!」

「うるせー……もうちょい静かに出迎えてくれよ」

「無茶言うな!心配するに決まってンダルォ!?」

「え!?帰ってきた!?」

「おかえりー!大丈夫だった!?」

 

 キレ散らかしながら心配するという器用な真似をし、峰田の声に気づいた他のA組も集まってくる。

 心配そうに、或いは『まあ間飛も緑谷もいるし』と信頼している表情で5人を取り囲んでいく。約1名焼きたてのガトーショコラを抱えて甘い匂いを漂わせているが……とりあえずスルー。

 

 報道された内容は死穢八斎會の解体についてと、作戦に参加したヒーロー達へのインタビュー。当然インターン生の5人にも焦点は当てられていた。

 

【次世代の英雄達!】

雄英高校インターン生大活躍!

 

 作戦行動中を撮影した動画や写真が放送され、そこには緑谷や間飛の姿も写っていたのだ。

 

「どんなヴィランだったんだ?」

「えっと……」

「脳無がいた」

「え……」

 

 轟からの純粋な質問に対し、返事に詰まった緑谷に変わってサラリと間飛が答えた。それに轟だけでなくA組も、インターンに参加していたはずの他のメンバーもギョッと目を剥いて驚いている。

 

「間飛くん……!?それ、話していいって言われてないよ!?」

「え?ナイトアイとリューキュウに許可は取ったけど」

「いつの間に!?」

「の、脳無って……どういう事?」

「何か拾ってきたらしいぞ」

「犬か何かと間違えてねえか?」

 

 無責任に広めていい情報では無いのではと緑谷が止めに入るけれど、いつの間にやらちゃっかり許可を得ていたらしい。次世代のヒーロー達に警鐘を鳴らす意味でも伝えるべきだと思ったとか。

 

 オーバーホールは目的の為に手段を選ばず、己の身をも異形の怪物に作り替えてまで戦う道を選んだ。その前には幼子を切り刻み銃弾に込めたり、使い物にならなくなれば分解して作り直し(・・・・・・・・)ていたという。

 これから先、彼ほどの狂気に全てを委ねるヴィランが現れないとは言いきれない。ましてや脳無という事例がある以上、どれだけ警戒してもしたりないだろう。

 

「……そういえばちっちゃい女の子も結局いなかったわね」

「あ……」

「ヴィラン連合に奪われたって話だったが……大丈夫なんかな」

「(多分大丈夫だろうけど何で知ってんだとか言われそうだし言えねえ)無事だと思いたいな」*1

 

 無事帰ってきた5人を歓迎するムードはすっかりなりを潜め、沈痛な面持ちで静かに解散した。

 

「あ、そういや轟」

「ん……何だ?」

「聞きてえんだけど……お前の兄ちゃんに毛先が赤くて白い髪の人っているか?」

「っ……いや、いねえ……」

「そか。じゃあ違うか」

 

 最後に小さな疑問を残して。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 同時刻、エンデヴァー事務所にて。

 あまり外部の人間が踏み入ることの無い部屋の中、眉間に皺を寄せたエンデヴァーと淡々と話すサー・ナイトアイが睨み合うようにしていた。

 

「……それは、本当なのか?」

「はい。IXA……間飛移が遭遇した男の特徴に間違いはありません」

「そう……か……」

 

 エンデヴァーの手元にあるのは死穢八斎會への突入前に見た【予知】の中に見えたとある人物についての情報をまとめたもの。また、間飛に話を聞いて実際にどんな人物だったのか判明した部分も記載されている。

 

 それらに目を通した実質No.1となった彼からいつものような苛烈なオーラは感じられず、年相応の疲れきった中年の弱さが見えてしまっている。

 

 毛先だけが赤く、薄ら青みがかった白髪の男。全身に酷い火傷を負っていたのに治っていたという情報が追加され、公安の者の個性を頼って何とか絵に起こされた男の見た目が添付されていた。

 

 見間違えるはずもない。母によく似た顔立ちと父親によく似た執念……あの日死亡したとされていた轟燈矢だ。

 

「正直に申し上げますと……幻滅しました。()に並び立てる者がいるとするならば貴方だろうと思っていただけに、とても残念です」

「……ヤツの元サイドキックからそんな評価を得ていたとはな。皮肉な話だ」

「まさかNo.2……いえ現No.1の貴方が個性婚(・・・)とは。それも自分の野望の代役として子を成すなど、想像もつかなかった」

 

 個性婚……第2、3世代の頃に頻発した現代では禁忌とすらされる行い。

 自身の個性をより強いものにして子孫に受け継がせる為に配偶者を選び、もはや人体実験ではないかと非人道的な思想とされ世界中で問題になっていた。

 

 それをNo.2にしてNo.1の座を確約された男が行っていたなど、どう足掻いてもポジティブな話には持っていけないだろう。

 公表するにせよ秘匿するにせよ、慎重な扱いが求められる。

 

「しかしこの際それはどうでもいい。問題は彼が何故死穢八斎會のアジトにいたのかという話です」

「ヴィランと手を組んでいる……?だとすれば何故……」

「それ以上に、生きていたのなら何故貴方に会いに──……いえ、失言でした。忘れてください」

「構わん。燈矢の事だ、俺を……憎んでいるのだろうな。帰ってこようと思わないほどに」

 

 轟燈矢はエンデヴァーを憎んでいる。エンデヴァー自身がそれを誰よりも理解していた。

 

 

 先に述べた通り、エンデヴァーは……轟炎司はオールマイトを超えるヒーローになる事を望んで燈矢を作り出した。子供には強度が高過ぎるのではと思うトレーニングを施し、ひたすらに火力を上げさせていた。

 

 炎への耐性の低さが分かるまでは。

 

 大抵の個性は自身が傷つかないようにと能力で起こる事象への耐性がセットになっていることが多い。例えば爆豪の【爆破】は手のひらに強い爆発耐性を与えてくれている。普通の人間ならば手のひらが焼けて皮膚が裂けるところをノーダメージで済ませている。

 

 しかし燈矢に限っては母親の……氷叢(・・)冷の氷結の個性に適した体質であり、炎耐性を有してこそいるものの全力の炎には耐えられなかった。

 

「……それであの子の最後は山火事に巻き込まれての焼死。俺は、俺達はあの時あの子を死なせてしまったと思っていた」

「それが実は生きていて……ヴィランになった、と」

「信じ難い話だがな……精神的に弱っていれば人目も憚らず取り乱していたかもしれん」

 

 直視したくない現実から目を背けずにいられたのはヒーローとしてのプライドや責任……何よりオールマイトの勝ち逃げという事態を比較的冷静に受け止められていた事が大きい。

 

 もしだ。もしエンデヴァーがオールマイトの弱々しい姿を見ていたり、オールマイトですら敵わない何者かを見ていたならばこうはならなかった。オールマイトですら勝てないヴィランでもいようものならば尚更だ。

 

「……どうされるおつもりですか」

「まずは会わねばならん。事務所で何度も話し合いを重ねるくらいなら燈矢を探すべきだ」

「殺される可能性もあるのでは?憎悪からヴィランに堕ちたと言うのであれば……」

「かもしれんな……」

 

 エンデヴァーの中で方針は既に決まっている。燈矢の感情全てを受け止める、と。

 

「燈矢を死なせたのも、ヴィランに堕ちた原因も俺にある」

「……正気ですか。貴方は次のNo.1なんですよ」

「……繰り上げでな。望んでいない形での玉座など誰が喜ぶ」

「繰り上げでもです。貴方がオールマイトになれなくとも、貴方は次の象徴にならねばならない……!どれだけ過去が消えないとしても、貴方が未来を放棄する理由にはならない!!」

 

 悪いのは自分なんだからどうとでもしてくれ、というのはあまりに無責任だろう。ナイトアイは声を荒げて詰め寄った。

 

 【予知】という個性上、ナイトアイは誰よりも未来に対する在り方に頓着している。

 オールマイトが死ぬという未来に絶望していた自分がどの面下げて、とは思う。しかし自暴自棄とも言える生命をかけた責任の取り方だけは間違っているだろう、と。

 

「……エンデヴァー、償いというのは決して自分が楽になりたいからという理由で行っていいものでは無い。赦される為にする事だ」

「…………」

「燈矢君が……貴方のご子息が貴方を憎んでいるというのなら、貴方は彼の為に苦しまなければならない。しかしそれは貴方が一方的に決めつけていいわけではないのです」

「……では、どうすればいい。俺が支払える対価など何も……」

「それを本人に聞かねばならない。轟燈矢が轟炎司に何を望むのか、何をどうすれば償いになるのか」

 

 燈矢が望む罰を与えられ、エンデヴァーがそれに殉じるというのならば止めはしない。仮に燈矢がエンデヴァーの死を望んだ時、死は初めて償いとしての意味を持つだろう。

 

「しかし、思考を止めて生命を投げ捨てる事だけは許されない。それは貴方があらゆる責務を放棄し、同時に燈矢君の憎悪の行き先を奪う事になる」

「……」

「次の象徴になることと燈矢君への償い……この2つの両立が叶うかどうかはまだ分かりませんが、もしどちらかを選ぶことを迫られた時、貴方はどちらを選びますか?」

「俺、は……」

 

 消えない過去の罪状と避けられない未来の責務。一個人に背負わせるにはあまりにも酷な選択だろう。詰め寄ったナイトアイとてこんな絶望的な2択など考えたくもない。

 

 答えのない2択に決断を下したのは、衆目に晒される場所だった。

 

 

*1
白々しさMAX





轟「間飛なんか機嫌いいな」
八百万「ですわね」
葉隠「何かあったの?」
間飛「最推しのサイン貰った」
葉隠「えっ!誰の誰の!?教えて!」
間飛「リューキュウ」
轟(そういやそんな事言ってたな)
葉隠「……ふーん」
間飛「何ぞ」
葉隠「別に?」
八百万「そちらのペンダントは?」
間飛「リューキュウの鱗」
「「「え……?」」」

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