え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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番外編強化月間となりました。
今月は番外編多めに投稿したいと思います。

さしあたってまずはアンケートの一番人気だった話を前後編でお送り致します。後編はまた後日……。





番外編⑪恋愛会談・学生の部(強制参加)

 

 

 

 個性の発現によって一度は大きく荒れ果てた。世界というものはこうして度々誰に怒りをぶつければいいのか分からない不条理というものが顔を出す。

 誰が悪いのかと問うても答えは返ってくるはずもなく。ただただタラレバ論を持ち出しては見たくもない現実から目を背けようと必死になる。そうして最後には現実を直視して、ポッキリと心が折れてしまうなんてことも珍しくはない。

 

 このヒーロー社会においてもそれは変わらない。精々規模の大小の振れ幅が大きくなっただけで、場合によってはとんでもない損失ではないか?と頭を抱える事例も数多く確認された。

 

 その中の代表例として『何でこんなに有用な人材がヴィランになってしまったんだ』というもの。

 

 例えば【血狂い】と呼ばれた男はヒーローになればそれはそれは頼もしい存在となっただろうし、かつて魔王の名を世界中に轟かせた現在オギャバブ中の男なら個性に悩む人々に救いの手を差し伸べられていただろう。

 

 ……え?後者はそれをやった上で悪事を行ってたじゃんって?…………ノーコメントで。

 

 まあとにかくだ。何が言いたいのかというと……

 

 

 

 

 

 

 

 ジャパニーズ変態ヴィラン、強くね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 必要最低限の装飾とは対照的に充実した家具家電。寒くも暑くもない適温と呼ぶに相応しい快適な一室。異形型への配慮の為か天井は高すぎるくらいに高く、椅子もベッドも大小様々な種類が取り揃えられている。

 

 塵一つも落ちちゃいない清潔な空間にデーンと鎮座する真っ白な円卓。ご丁寧に似たようなシンプルな造りの椅子と合わせられたそこには互いを知ってるような知らないような、微妙な顔ぶれで囲まれていた。

 

「……これ、さ。多分そう(・・)だよね……?」

「ですねえ……ちゃんと警戒してたはずなんですが……あれぇ?」

「ん」*1

「どういう仕組みなんですかねコレ?何が欲しいって考えると手元に出てくるんですが」

「…………は、ははは……はは」

 

 上から順番に葉隠、トガ、小大、発目……そして氷叢。何かもう一人絶望してる人がいるがどうしたのだろうか。

 

 

 小大が言うニュースでやっていた、とはこの空間に彼女達を閉じ込めた犯人についてだ。

 

『……えー、速報です。先日オールマイトによって逮捕された【TS化通り魔】の護送車を【アオハル喰い】が襲撃したようです』

 

 【アオハル喰い】というふざけた呼び名を与えられたヴィラン……彼女の個性は【領域展開】というどっかで聞いたことしかない名前で、特定の条件を満たすまで出られない別次元の空間に人を放り込めるという能力だ。いや強っよ。

 

 運命のイタズラ……というか最早テロだが、彼女は先の【TS化通り魔】と色んな価値観(性癖)で意気投合。そのまま手を組んで【性癖解放戦線】なるヴィラン組織を作り上げた。どうしてそうなる。

 

 彼らの信念はただ一つ。己の内にあるチ○コに従えとの事。最低過ぎる。

 

 ……要は『自分の性癖シチュをこの目で見たい!』という欲望を自重しない変態の集まりだ。

 

 

「何でしたっけ……確か変な指示を出されて従わないと酷い目に遭わされるとか言ってませんでした?」

「具体的には何をされる、とは発表されてなかったはずなのです」

「その指示ってどこにあるんだろ?」

「…………あれ?小大さん、今普通に喋りませんでした?」

「……あれ?あ、本当だ」

 

 世間に公表された情報を思い出しながら頭の中を整理していると、「ん」か「ね」しか発声していないはずの小大の話し声が普通に聞こえてきた。これには発目も他のメンバーも仰天する。

 

 すると突然彼女達の目の前に小さなモニターが現れる。襲撃か、と椅子から離れようとするも、どういうわけか接着剤でも使われたかのように椅子から離れることが出来ない。

 ただガタンと椅子を鳴らすだけで終わったトガを嘲笑うようにモニターが起動。企業のロゴや読み込み画面が挟まることなく文章が表示された。

 

 

これからあなた達には

 

「「「ッ……!!」」」

 

 

 

これからあなた達には恋バナをしてもらいます

 

 

「「「……何で?」」」

 

 

 てっきり『殺し合いをしてもらいます』とでも続くかと思っていたのに、予想だにしないワードが並んだことで全員の思考は空白に塗りつぶされる。目的が不明にもほどがある。

 

 そうしているうちにも文章は続く。

 

私は若者の甘酸っぱいてぇてぇ恋バナを味わいたいのだ

 

ここで見聞きした事をあなた達は忘れ、私自身も決して口外はしない

 

ただいくつかルールがある

 

「……何かもうバカバカしくないです?」

「無駄にプライバシー配慮してるのは何……?」

 

 モニターに表示されたルールは以下の通り。

 

・好きな人の名前は聞こえない

・好きな人がバレても話せない

・嘘をついたらペナルティ

・ここにいる者達の共通点に気づいたら終了

 

 

 【アオハル喰い】が課した条件は一番最後の項目、共通点の推理だ。それ以外は羞恥心に打ち勝てるのならばさほど問題ではないだろう。打ち勝てるかは知らないけど。

 

 ペナルティとは?と首を傾げる皆にモニターは丁寧に答えてくれる。

 

 

黒歴史or好きな人への願望……のどちらかが公開される

 

「殺しましょう」

「トガさん!?」

「賛成」

「氷叢さん!!?」

「……ちょっと困る」

「むむ、黒歴史……何かありましたかね?」

 

 約一名無敵の人がいた気がするが気の所為だろう。

 思春期の乙女(1名男の娘)になんてことを。どっちの地獄がいい?と聞かれたような感覚にトガと氷叢は真っ先に殺意を持ち出した。

 しかし結局椅子から離れられないのでどうすることも出来ず、ただ無意味に体力を消費するだけだった。

 

 モニターはそれっきり何も映すことはなく姿を消した。後に残るのは気まずい沈黙のみだ。

 

 だいたい2分ほど押し黙った後、発目が口を開いた。

 

「私は⬛︎⬛︎さんが好きですね!」

「発目さーん!?」

「……確かに聞き取れなかった」

「ちょ、そこじゃなくて!?」

「ですが指示に従うしかないのでは?命の危険がないならそうするしかありませんよ」

「ぐうっ……!仕方、ないか」

 

 さすが発目。ここでも自分のペースを微塵も崩さない。初手全ツッパという暴挙に悲鳴じみた声を上げる氷叢だったが、冷静に正論を述べられてはどうしようもない。

 

 何とかぐうの音だけは出せた氷叢を他所に発目の話は続く。

 

「といっても出会ってから日は浅いんですけどね。雄英に来てからです」

「そ、そうなんだ」

「最初は利用する気満々だったんですが……その、あの人、人を褒めることに躊躇がなくてストレートに褒めてくるんですよね……」

「あー……そういう人凄いよね。尊敬する」

「一度照れくさくて意図的に誤魔化したりもしましたが……褒める時は真っ直ぐ目を見てくるんですよ。それでその、好きになったと言いますか」

 

 発目の意外な一面に驚き、語る内容に他のメンバーの方が照れくさくなってしまう。お手本のような甘酸っぱさに生唾をゴクリと飲み込む。

 あの発明以外眼中に無いですという発目が顔を赤くし、少し俯いて恥ずかしそうにしているのだ。こんな可愛い子に好かれるなんてどこのラッキーボーイだ、と全員の感想が一致した。

 

 消え入りそうな声で終わった発目はそれ以上追求されたくなかったのか、次はあなたが、と小大に話を振る。

 

「私も……雄英に来てから、だね」

「雄英は色んな人が居ますからね」

「はい。私は⬛︎が……あ、聞き取れないんだっけ」

 

 小さいけれどしっかりと全員に聞こえるように、小大はなれない様子で話す。

 

「私、小中学校で男子から避けられ気味で……女子からは少し煙たがられてたんです」

「えっ、そうなの?」

「何か『盗るな!』とか言われたりしました。何も盗ったことないんですけど……」

(……ああ、だいたい察しました。男子の方も多分そういうことでしょうね)

 

 小大にとっては少し苦い昔の話。男子からは距離を置かれ、女子の一部からは嫌悪され。何もしていないのにそんな事をされて来た彼女は信頼出来る友人に酷く甘えがちだ。*2

 

 本人は知らないことだが、小大はかなりの美少女だ。ひっそりと非公認のファンクラブが生まれるくらいには昔から可愛いと思われてきた。

 男子が避けていたのはファンクラブの掟か照れくささからであり、女子の嫌悪は好きな人が小大を好きになっていた事による逆恨み。どちらにせよ小大には何の落ち度もない話だ。

 

 しかし当の小大はわけも分からぬまま寂しい学校生活を送る羽目になっていた。

 

「だから……気兼ねなく甘えられる⬛︎がいてくれて嬉しくて」

「……」

「……⬛︎のことが大好きです」

(((何この可愛い生き物……!?)))

 

 だからこそだろう。初対面から気安く話してくれて甘えられるほどの芯の強さを持つ彼に惹かれたのは。小大は恥ずかしそうに、けれど嬉しそうに微笑んだ。周囲は可愛さにやられた。ユイチャンカワイイヤッター!!

 

 大事な思い出を抱きしめるように話す小大。もしここにブラックコーヒーがあれば数分後には立派なコーヒー牛乳に変化していただろう。グラブジャムン*3もビックリな甘さだ。酸っぱさどこいった。

 

 無意識にコーヒーを手元に召喚して口直しという名の中和をすると、今度は一つ咳払いをしてトガのターンだ。

 

「私は……中学校卒業の時、ですね」

「わあ!ギリギリだあ!」

「楽しんでません?……ちょっと明かせない話なので濁しますが、初対面の私の身勝手なワガママにあっさり応えてくれたのです」

「身勝手な」

「ワガママ?」

「個性関係のアレコレなので……」

 

 読者の皆さんはご存知だと思うので事情については割愛するとして。*4

 

 あの時は好きになった、というよりは救われただけで恋心には発展していなかった。

 しかし彼女はその後も吸血欲求の為に彼の元を訪ね、その度に少しずつ好きになっていったらしい。恋心の発端は彼に父性を感じたから、というのはナイショだ。

 

「……その人の包容力がヤバくてですね。大抵の事なら笑って流すか軽く怒って終わらせちゃうんです」

「寛容な人って事ですか?」

「いや……どうなんでしょう。どちらかと言うと『全部受け止めてあげるから安心してね』というのが近い気もします」

「大人だあ!!」

「葉隠さん……?ま、まあ確かに私は⬛︎く……その人のそういう優しさを好きになりました。はい、おしまいです!」

 

 これ以上は私がキャパオーバーです!と言わんばかりの態度で強引に話を終えると、散々リアクションしてくれた葉隠はどうなんだ、と矛先を向けた。

 

 透明故に表情はさっぱり分からないが、やや上擦った声が彼女の胸中をそのまま表している。

 

「うええ!?わ、私に好きな人なんていませんよ!?」

 

ギルティ。嘘を検知しました。

 

「……へ?」

 

 急に矛先を向けられて思わず否定した瞬間、消えたはずのモニターが再び現れる。画面には短く文章が映されており、ピーピーと小さく機械的なサイレンを鳴らしている。

 

 そう、ルールの一つである『嘘をついたらペナルティ』に抵触したのだ。もっともどの部分が嘘だったのかは発表されないが……彼女の話の中に嘘をついた部分があるとすればあそこしかないだろう。

 

 嘘をついた葉隠にペナルティが降りかかる。

 

 

葉隠透はソフトM。縛られて罵られ、見下されながら『それでも愛してるよ……』と耳元で囁いて欲しい願望がある。

 

 

「野郎ぶっ殺してやるゥ!!!」

 

「落ち着いてぇ!?」

「……あれだけ怒っても椅子から離れられないんですね」

「見えないのに何をしてるのか分かっちゃいますね!」

 

 ドタバタガッシャン、と身体を揺すってもルールは絶対。モニターから流れる音声を止める術のない葉隠は無事にペナルティを乗り切った。乗り切った……のかしらコレ。

 

 今ならオールマイトも超えるんじゃないかと思うほどの気迫を振りまきながらも、少し経って頭が冷えると観念したように話し出す。

 

「…………⬛︎⬛︎くんです」

「……すいません、聞き取れないんですよ」

「だってだってだってぇ!気づいたら好きになっちゃってたんですぅ!!どこが、とか何が、とか話せないんですからどうしたらいいんですかコレ!?」

「そんな事言われても……せめていつから、とか分かんない?」

「………………ピエ」

「……なんかまずい事聞いたかな」

 

 逆ギレのように語った葉隠。半ば諦めの境地に達している氷叢が冷静に少しでも何か話せることはないのかと尋ねてみると、小さく小鳥のように声を漏らして押し黙ってしまった。

 これを恋バナにカウントしていいのだろうかという悩みが生まれたが、当の本人はこれ以上話せません状態なのでどうしようもない。

 

 ちなみに葉隠の脳内は真っピンクに染まっている。ペナルティで願望を詳しく言語化されたせいで妄想が捗っているらしい。よかったね。

 

 葉隠があれで終わりならば残っているのはあと一人、氷叢だ。

 この中で唯一の男子ということで何か毛色の違う話が聞けるのではないかと全員が妙にソワソワしていたりもする。

 

「……幼馴染の人なんだよね。好きな人」

「幼馴染……王道ですね」

「王道……かなあ?まあ古い付き合いだね。幼稚園からの付き合いだし」

「思ったよりも長かった」

 

 この辺も皆さんご存知だと思うので割愛。*5

 

 ところで淡々と語る彼だが、最初からやけに一人だけずっと悩んでいた。5人目の恋バナということもあって少し飽き始めたトガが首を傾げながら尋ねた。

 

「そういえば、何で零くんはずっと顔色が悪いんですか?」

「え?」

「そういえば最初の方で乾いた笑みを浮かべてましたね……何かあったんですか?」

「大丈夫ですか……?」

「……………………」

 

 トガが切り込むとそれに続いて他のメンバーも尋ねる。しかし尋ねれば尋ねるほど彼の口は固くなってしまう。

 さすがにおかしいとだんだん語気が強まり、終いには知ってることがあるなら教えてくれと懇願するような尋ね方になった。

 

 やがてこの状況に耐えかねたのか、氷叢は諦めたように重苦しい口を開いた。

 

「……正直に言うと、僕はメンバーを把握した時点で共通点が分かってたんだ」

「えっ!?」

「じゃ、じゃあ教えてくださいよ!?早く出ましょうこんなとこ!」

「でも、これを何も考えずに口に出していいのかと思って……外れた時のことも考えて確証が持てるまで黙っておくつもりだった」

 

 彼が見出したこのメンバーの共通点。それは。

 

 

「『同じ人を好きになっている』……って共通点かあ、って」

 

「え……」

「…………あ」

「……と、いうことは……?」

「……それって」

 

「……皆、納得したよね?」

 

「「「「……………………」」」」

 

 沈黙はもう答え合わせと同じだろう。顔を赤くしたり青くしたり、その果てに全員の表情が死んだ。虚無とはまさにこのことだろう。

 

 彼女達の怒りはこの状況を作り出したクソヴィランへのものなのか、はたまた何人堕としてんだアイツはという八つ当たりなのか……どちらにせよ【アオハル喰い】の末路は悲惨なものだった、とだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

 

 

「ヌッッッッ!!!かわい子ちゃん5名ご招待!あ、話せないのは困るんで最低限会話は出来るようにさせてもらいますね」

「……甘酸っぱいのお手本キタ━(゚∀゚)━!」

「フヒッ、一途な恋する乙女からしか得られない栄養……!ンンww甘露でござるなぁwww」

「は?そんなんもう好きじゃん。私のパパになってくれるかもしれない人じゃん。何それ羨まマウンテンにもほどがあらんか?」

「あっ……ッス────…………いやあ、ほぼイキかけました。あんな美少女たそがマゾ趣味とは……!」

「男の娘は実在したのか……!ああ……!神よ感謝致しま────え?共通点バレた?早くね!!?」

「あっあっあっ。あーっ!困りますお客さま困ります!困ります!あーっ!?お客さまァ!?」

「あ、ちょ、待……!?本気で死ぬ……!?」

「だ、誰か助け────」

 

 

 

 

 

*1
「ニュースでやってた通りだ」

*2
捏造設定です。

*3
世界一甘いお菓子。身も蓋もない言い方をするなら究極に甘いドーナツのシロップ漬けみたいなやつ。

*4
メメタァ!!

*5
メメタァ!!





・性癖解放戦線
世界で最も人数が多い組織。世界中に支部を持つが一番強い(濃い)のは日本。真っ当にヒーローを勤めれば英雄に、真っ当に悪事に手を染めれば第2の魔王になれる奴がリーダーをしている。何でこんなことしてるんですかね。

・TS化通り魔
本作で一番人気があると思われるオリキャラ。例の乗っ取りヴィランレベルにヤベー奴。変態性に振り切れてなかったらどこぞの顔金玉より大悪党になっていたかもしれない。目隠れムチムチのっぽちゃんが大好物。

・アオハル喰い
若者達にアオハル空間を強制し、それを文字通り壁になって見守りたいという願望の持ち主。真っ当にヴィランしてたらエンデヴァーくらいなら倒せた。ヴィラン名はネットのハンドルネームから。チャラく見える真面目くん×儚げ美人男の娘のカプで一升の米を美味しく頂ける。
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