え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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轟さんちはさておいて

 

 

 

 エンデヴァーの記者会見から一夜明け、通常通りの授業と訓練に戻る間飛達。インターン明けという事で勉強方面にやや不安を感じる彼らだったが、半日も経てば僅かにだが遅れた分を取り戻せてくる。

 

 実質No.1ヒーローの……クラスメイトの父親のスキャンダルという事でやはりA組全体が少々落ち着かないようで、轟に視線が向けられては言葉を選びすぎて何も話せずに終わっていた。

 そうなれば轟はいつも通りに話してくれる友人の元に逃げ込むわけで。

 

「……精神的に疲れる」

「気を遣われると遣われた側も疲弊するよなあ……分かる分かる」

「ん」*1

「間飛さんその唐揚げおひとつ頂けませんか?こちらからはカツを一切れお渡ししますので」

「交渉成立。端っこのヤツくれ」

「お前らはいつも通りで安心するな……正直ありがてえ」

 

 A組の中でいつも通りのコミュニケーションを取ってくれているのが爆豪か間飛の2人だけで、昼食を摂るにも逃げるように間飛達に合流していた。爆豪じゃないのかって?アッチは高確率で切島か上鳴がついてくるので諦めたらしい。

 

 B組の心操と小大は気にしていない訳では無いが、A組よりはまだフランクに話しかけてくれる。発目は言うまでもなくその辺りに気を遣ったりはしない。優しさからではなく、本人の中ではどうでもいい事として流されているだけだが。

 今だって彼の目の前で呑気におかずのトレードをしており、発目の口の中に唐揚げを押し込んでいる。詰まるぞ。

 

「聞いていいなら聞きてえことだらけだけどさ、轟を追い詰めてまで聞きてえわけじゃねえし」

「んぐっ……エンデヴァーの記者会見は私も見ましたね。私の記憶が正しければもう少し苛烈な雰囲気の方だったと思うのですが、やけに小さく見えました」

「……やっぱり親父もキツイんだろうな」

「ん」*2

「あいよ」

 

 ずっと拒み続けて来た轟には、エンデヴァーを視界に入れようとしなかった彼の息子だからこそ気づけなかった。あのエンデヴァーが精神的には弱っているという事実に。

 

 SNSでは幻滅したというコメントと同じくらいエンデヴァーを心配する声が上がっていた。現状でエンデヴァーの過ちが市民に何らかの不利益を出した訳では無いこともあって、怒りを心配が上回っているらしい。

 一部を抜粋すると『何かエンデヴァー萎びた?』や『これじゃ【ヘルフレイム】じゃなくて【じっくりコトコトフレイム】やんけ』だの……ウケ狙いの微妙なコメントもあった。

 

 少なくとも市民からの信頼と評価は少し落ちた程度に留まっているのだが、それとは無関係なところでエンデヴァーに精神的な疲弊が積み重ねられているのだろう。

 

「それよか聞いたか?もう少し経ったら文化祭があるらしいぜ」

「文化祭……雄英の文化祭ならとんでもねえ規模になりそうだな」

「ええ!雄英体育祭がヒーロー科主体なら、雄英文化祭は他科が主役!まあ注目度は雲泥の差がありますが……私達にとっては楽しみな催しなのです!」

「急に元気になるな。うるせえ」

「すいません!」

 

 話題を切り替えて直近の大イベント、文化祭について話そうとすると途端に発目が元気になる。良い子の皆様はいきなり爆音で喋り出すのはやめようね。

 

「……貴方達の前で言うのは躊躇われるのですが、現状のヒーロー科を重点的に行われた寮制度なんかでストレスが溜まってる人もいるんですよね」

「ん……」*3

「ああいえ、別に貴方達が悪いとは思ってませんよ?寧ろサポート科では『これでもっと研究開発出来るぜやったー!』な人が多いので」

「容易に想像がつくなあ……?」

「でも普通科や経営科は分からないので適当なことは言えませんね……申し訳ありません」

「いやいいよ。教えてくれてありがとな」

 

 ヴィランの活性化という事態に対して雄英が取れる対策は少ない。動けない、という意味ではなく選択肢が少ないという意味で。

 

 生徒達を全寮制に変えたり警備を増やしたり……出来ることは『隔離』か『警戒』のどちらか、或いは両方。それ以外に何かあるのかと問われても選択肢を提示出来るわけではないが、生徒達の間で不満が生じているのも事実だ。

 

「しかし……そうなるとアレだな。俺らも文化祭の出し物をするなら色々と考えねえとな」

「ん」*4

「面倒だな。何も考えずに楽しみたかったんだが……こればっかりはしょうがないか」

 

 とりあえず発目から他科の状況を聞けただけでも収穫はあった。今から出来ることは何も無いが、とりあえずクラス全体に共有くらいはしておくべきだろう。

 

 またあの気遣い空間に戻るのか……とややげんなりしている轟の背中を押して教室へと戻った。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「午後は……というか今日からしばらくの間特別講師が来て下さる」

「特別講師?」

「本当なら全校朝会で紹介されるはずだったんだが、肝心の講師の方々が多忙でな。昼になってようやく時間が取れたらしい」

 

 午後の授業が始まる前に相澤はそう切り出した。

 外部の人間に声をかけてまで頼み込むという雄英にしては少し珍しい話にA組も興奮と困惑が混じり、にわかにざわめきたつ。

 

「2、3年が訓練中という事で先にこちらに来てくださっている。失礼のないように……ではお願いします」

「はぁい」

「ああ」

「ん゙っ!?」

 

 カラカラとドアを開けて入ってくる2人の女性。2色の長髪の女性はさておき、間飛にとって見覚えしかないもう1人に思わず声を漏らしてしまう。緑谷や爆豪といった極一部の者達も同じように驚いている。

 

 パッと見では自分達とそう年齢の変わらない八重歯が特徴的な女性と、あのスナイプですら嫉妬せざるを得ない恵まれた個性の持主として有名な女性ヒーロー。

 

 渡我被身子レディ・ナガン……2人が特別講師のようだ。

 

「自己紹介をお願いします」

「ああ……さて、生徒の中には私の事を知っている人もいるんじゃないか?これでもそれなりに名が売れているという自負はあるんだが」

「れ、レディ・ナガンっスよね……?」

「おっ、ちゃんと知ってる人が居てくれて有難いね。これだけ偉そうに言っておいて知らないなんて言われたら泣きを見るところだった」

 

 朗らかに笑うナガンだが、A組21名のうち18名がその名を知っている。ヒーロー全体で言えばギリギリメジャーどころではあるが、遠距離系の個性ならば誰しもが一度は彼女に憧れるとも言われるほどだ。*5

 

 一般的には知られていないがヒーロー公安委員会の直属のヒーローでもあり、世間に発表されていない功績が多数あるのではとまことしやかに囁かれていた。

 

 ナガンに続いてトガも自己紹介に入る。

 

「初めまして、渡我被身子です。私はほとんどナガンさんのオマケみたいなものですが……仲良くしてくれると嬉しいのです」

「ハイハイハァイ!渡我さんってオイラ達とそう年齢変わんねえっスよね!?ここはオイラとしっぽり仲良く──へぶっ!!?」

「おお……間飛ナイス」

 

 ニパッと可愛らしいスマイルで短く締めくくった自己紹介が終わると同時にエロブドウ節が炸裂……しかけたので消しゴムを射出。狙いをつけたデコピンによる狙撃で意識を刈り取りつつ消しゴムを手元に帰ってこさせる。無駄な神業である。これには相澤先生も手放しに褒めざるを得ない。

 

 しかしそれを撃った当人である間飛は普通にイラッとした顔をしていた。言うまでもなくエロブドウに向けてである。

 

「何か機嫌悪いけど、どうかしたか?」

「すまん。何かイラッとした」

「お、おお……そうか……」

「私語は慎め。お2人はヒーロー公安委員会から来て下さって貴重な時間を使って頂いてるんだぞ」

「「はい」」

「ははは……そう畏まらなくてもいいよ。私達は仕事がないくらいがいいんだから」

「ですです。逆に私達が動かなきゃいけないって相当な事なので」

 

 今回2人が来たのは雄英高校にヒーロー公安委員会についての説明や紹介をする事と、そんな組織に所属しているからこその経験や技術を教える為だ。

 

 というのも現在のヒーロー達は戦闘力にこそ長けているものの、潜入や工作といった搦手においてはやや人員が足りていない面があるのだ。

 公安による後ろ暗い仕事の人手を増やしたいというより、これからのヴィランはより狡猾でより組織的なものが増えると予想されているのが現実。今と同じヒーローの在り方では限界が来るという上層部の判断から2人が派遣されたのだ。

 

 一応彼女達以外にも派遣される予定ではあるのだが、1年生の担当は彼女達なのでA組が他の派遣された者達に会うことはないだろう。

 

「それじゃあ早速訓練場に……って、今訓練場って空いてるか?」

「空いてます。市街地の奴が1つ」

「ありがとう。じゃあコスチュームに着替えて訓練場に行こうか」

「何をするんです?」

「そりゃあ勿論───」

 

 

 

 

「───隠れんぼと鬼ごっこさ」

 

 

 ニヤリと笑い、彼女は教室を後にした。

 

 

 

*1
「よく分かんないけど大変だね」

*2
「移ごめん、そこのおしぼり取って」

*3
「ごめんね……」

*4
「だね。下手なことすると反感買いそう」

*5
知らなかったのは轟、切島、麗日の3名だった






──何でレディ・ナガンを知らないの?

切島「紅ライオット一筋だし……」
麗日「うちあんまり詳しくなくて……」
轟「それどころじゃなくて……」

──轟さんすいませんでした。

ナガン「知らないのはしょうがないさ。私の活躍が足りてないだけだしな」
トガ「……昨日『知らないって言われたらどうしよう……!?』って震えてたじゃないですか」
ナガン「シャラップ」

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