100話超えたら匿名設定解除するつもりが忘れてたので今更ですが解除しますね……。
フィジカル・ファンタジー改め
スポットライトが当たりがちな1年A組だが、何も文化祭を楽しみにしているのは彼らだけでは無い。彼らがダンスの練習や演出の打ち合わせに勤しむ間、他の学年や学科が何をしているのかご紹介しよう。
【1年B組視点】
「【ロミオとジュリエットとアズカバンの囚人~王の帰還~】でいこうか!!」
「「「おっしゃああああ!!」」」
「……これ著作権とか大丈夫なのか」
「完全オリジナルだから問題ないさぁ!」
頭のてっぺんからつま先までパクリだろ。
彼らの出し物は『演劇』だ。(物間曰く)完全オリジナル脚本の超スペクタクルファンタジーらしいがタイトルの時点で既視感の塊にしか見えないのは気の所為だろうか。
勇者役やらプリンセス役やら決めなければならない事はかなり多いが、その分壮大かつ作り込まれた設定の演劇が出来る!とB組は男子と一部の女子を中心にやる気をみせていた。
一方で心操や拳藤といった比較的常識人なメンバーは「本当にそうか……?」とか「著作権……」と不安そうにしている。
とはいえやる事が決まってしまえば何だかんだで協力はしてくれるのが彼らだ。やれやれといった雰囲気で何をすればいいのかと尋ねてみれば。
「いや拳藤はやることないよ?」
「えっ?」
「……あ。そういや物間何かしてたな」
「拳藤にはミスコンに出てもらうからね!」
「…………ハア!?」
何か知らんうちにミスコンにエントリーされていたことが発覚。友人が勝手に応募してましたが現実にあるとは。
無断でしていい事じゃないだろ!といつもの手刀。呼吸のように当たり前に沈められる物間にはもはや誰もリアクションをしない。
とはいえ物間も考え無しで勝手にエントリーさせたわけじゃない。
演劇という出し物の性質上、B組21名全員に役割が与えられるわけではない。小道具や衣装が用意できてしまえば後は演者と演出以外の仕事は無くなってしまう。
「だ……だから少しでもB組に注目を集めて貰おうとしただけだよ……」
「……むぅ、一理あるか?」
「だったら本人に許可取れよ」
「心操……馬鹿正直に言って拳藤が出てくれると思うかい?」
「謙遜して辞退するな」
「だろう?」
否定できない。心操は静かに首を振って無言で「諦めろ」と拳藤に伝えた。拳藤とて真正面からミスコンに出てくれ!と言われて出ていたかと言われると怪しい。珍しく拳藤が物間に口で負けた瞬間だった。
「ん」*1
「えーっと、まず勇者パーティーと魔王役と……」
「Oh!思ったよりSTAR W○RSデスネー!」
「名前は出さねえ方がいいぞ角取」
それにもう拳藤抜きでいくことで話は進んでしまっているらしい。渋々ではあるが拳藤のミスコン出場が認可された。
「それはそれとして報告くらいしろ!」
「カフッ!」
「……いつも思うんだがその手刀どうなってんだ」
◇
【サポート科視点】
例年サポート科は年度初めから文化祭に向けて少しずつ準備をしている事が多いのだが、それも2年生から上に限定される。何せ入学したての1年生に求めるには酷な話なのだから当然だろう。
しかし時々1年生の頃から機械バカとでも言うべき者がいたりする。そういう生徒は文化祭に関係なく入学したばかりの頃から機械いじりをするので、文化祭の頃には上級生に混ざって技術発表に参加したり技術展示会に展示したりするのだ。
今年の1年生にそういう生徒がいたかどうかというと……。
「んん……?ここの伝達がイマイチですね。もしや関節部が……」
「……1年生からああいうの作れるヤツいるんだな」
「去年はいなかったッスね。まあデカイだけかもしれませんが」
「アレ先輩が滅茶苦茶褒めてたぞ。なんなら片手間に作ってた小型カメラドローンが普通に実用レベルだったとか」
「やっば。さすが発目」
工房の中でも一際目立つ3メートルはあろうかというロボット。どこか不安定な挙動に首を傾げていた発目は工具を片手に関節部やら駆動部やらを確認して回っている。
あんな大物を製作していればかかり切りになるなんて当然のはずなのだが、休憩中にすらも何かを作っていたりと根っからのメカニックな彼女は他の生徒達からも一目置かれていた。
「でもアレはびっくりしたよな」
「ああ、アレは驚いたッス。よくコッチに来てたのは見てましたが……」
「ヒーロー科の1年だっけ?あの子コッチに来てもいいとこまでいけたんじゃないかな」
それとは別にもう一人。話題になっていたらしい。
「間飛って言ってたっけ?発目の世話してくれてる男子」
「ッスね」
「……あの子がいると発目が身だしなみに気を遣うから有難いよね。いっそコッチに来てくれないかしら」
我らがハジケリストはここでも話題に事欠かないようだ。
というのも発目は放置すると昼飯を平気で抜いたりするので間飛がよく迎えに来ているのだが、個性伸ばしで空間把握能力に目覚めてからサポート科で別の需要が生まれていた。
『……ん?そこの裏のコード危なくないッスか?』
『え?あ、マジだ。抜けかけてた』
『おーい!誰かコレ運ぶの手伝ってくんね!?』
『俺手伝いましょうか?』*2
『おー、助か……力つっよ!?』
『なあ発目。上から人降ってくんのか?サポート科って』*3
『足踏み外しただけです……すんません……』
『たまによくあるヤツですね!』
ただでさえ機械やらコードやらでごちゃごちゃしている工房。それを余さず把握するどころか危険を察知して対処出来る実力のある間飛は普通に欲しがられていた。
しかしそれとはまた別で優秀かつ問題児な発目の手綱を握れる人物という事でも欲しがられている。
「あの子サポート科に来てくれませんかね?」
「ん……まあ無理だろうな。アイテム開発以上にヒーロー適性が高過ぎる」
「それもそっかあ……」
「発目のブレーキ役が見つかっただけでもマシだと思っとくか」
「……さっきから何か視線を感じますね。何かしましたかね?」
割と好き放題に言われているけれど気にも留めない。発目はいつも通りにマイペースで機械を弄るのだった。
◇
【ヒーロー科3年視点】
文化祭は他科が中心のイベントとは言うものの、やはりヒーロー科とて楽しみにしているイベントであることに変わりはなく。各クラスでも何の出し物をしようかとワイワイ話していたのだが。
「地球滅べ」
「ヒーロー志望の発言とは思えないんだよね!」
「ねえねえ氷叢くん何があったの?」
「……頼むからそっとしておいてあげてくれ」
死んだ顔で物騒なことを呟く氷叢。彼がこうなっているのはミスコンへのエントリーが原因だ。
元々1年生の時から文化祭でのミスコンに参加してきた彼だが、最初の一回だけは本人も半分悪ノリから進んで参加していた。
それがまさか現在ミスコンの覇者と呼ばれているサポート科の絢爛崎美々美と波動ねじれと並んでトップ3を独占し続けているのだからこうもなる。
断ればいいって?前年の3位を出し惜しみする理由がどこにあるのか。
というか本人もそこまで酷く怒っている訳では無い。どちらかというと『氷叢はミスコンに出るとして』で話が進んでいることにちょっと不満を持っているだけだ。
「……最後の年くらい皆と出し物の方に参加したかったんだけどなあ」
「でも間飛くんがミスコン見てくれるのは今年だけだよ?」
「多分見飽きてるよ?」
「それはそれで君達の関係が気になるんだよね!?」
「違うよ!?移のお母さんから『着てみない?』って勧められた事があっただけで……!」
「それで、着た……のか……?」
「……着たよ」*4
この2年間トップ3が不動だったお陰で雄英のミスコンは魔境という言葉が広まってしまった。それがまさか単なる悪ノリから始まったものだとは誰も思うまい。
これまでのミスコンで70人の性癖をあられもない方へと捻じ曲げた実績は伊達では無い。曲げられた被害者の声を一部紹介しよう。
・男……?嘘だ……嘘だァ!!
・ついてるだと?それがどうした……お得だな。
・私の性癖には大変あっていますね(錯乱)
・俺は……普通だったのにさ……君のせいで、大変なことになっちゃったよ……!
・閃いた
・↑通報した
・こんなのもう女の子だろふざけるな
・俺の隣いつでも空いてますよ?
「これを僕に読んでもらえたとしてもだよ?僕にどうしろと???」
「半分大喜利になってないか……」
「私の所にはこんなの来なかったのにね!変なの!」
(それは皆で弾いてるからなんだよね!)*5
生々しいというか不快に感じる可能性がある感想は教師や同級生が弾いていたのだが、男子だからそんなの来ないでしょ!と楽観視してたらこのザマである。2年生からは氷叢宛の感想も弾かれるようになった。判断が遅い。
今回は最後の年という事で絢爛崎もねじれも気合いが入っている為、殊更レベルの高い勝負となることが予想されている。勝手にエントリーされていた拳藤には気の毒だが、三人のうちの誰が優勝するのかという話になっているのであまり期待は出来ないかもしれない。
「……はぁ」
「どうするの?やっぱり棄権する?」
「いや、参加するよ。もう2年連続で出てるし、最後までやり抜くよ…………移、来るかな……?」
頬を薄らと赤く染めて呟く彼を見て『やっぱり性別間違えてない?』ともう何度目か分からない疑問を持つクラスメイト達だった。
◇
【教師視点】
「……というわけで、出来れば君達にも警備の手伝いをして欲しい」
「ああ、構わない」
「えー……私も文化祭見て回りたかったです」
校長室に呼ばれたレディ・ナガンと渡我被身子の二人に頼まれたのは文化祭当日の警備。元々ハウンドドッグを放つつもりではいたがそれだけでいいのだろうか?ということで公安から来てくれている二人にも頼むことにした。
しかしトガからすると少し残念な話だ。中学校を卒業してすぐに公安預かりとなった彼女は高校の大規模な文化祭に参加したことがなく、出来ればこの機会に文化祭を体験してみたかったのだ。
その辺の事情を知っているナガンはあまり強く咎めることも出来ず、困った顔でチラリと根津に視線を向けた。
「なら大丈夫なのさ!念には念を、という意味で頼んだのであって絶対ではないのさ。ナガンさんもハウンドドッグも優秀なヒーロー、並大抵のヴィランなら近寄ろうともしないはずだよ」
「え、いいんですか?」
「お前もまだ未成年だ。本来なら雄英生に混ざって青春しててもおかしくないんだからいいんだよ」
「あ、ありがとうございます……!」
そんな事を言われてダメですという教師は雄英には居ない。守られるべき子供なら生徒達と同じく青春を謳歌する権利がある。根津はHAHAHA!と朗らかに笑いながら許可を出した。
わしゃわしゃとナガンに撫で回されるトガ。こうしてみると年の離れた姉妹のようで何とも微笑ましい。
「……そうだ、せっかくなら案内をつけた方が良くないか?」
「ふぇ?」
「うん?確かにせっかくの文化祭だし、一人で回るのも味気ないとは思うけど……生徒達は皆忙しいよ?出し物するし」
「何、一人候補がいるんでな。少し聞いてみる」
「?」
そう言うとナガンは校長室を出て誰かに電話をかけ始めた。
「……ああ繋がったか。間飛だよな?」
『ええ間飛ですが……何かありました?』
「お前の所の出し物って結構早くに終わるよな?」
『ちょっと待ってくださいね……えーっと、はい。何なら朝の一発目ですね』
「よしよし……なら一つ頼み事があるんだが………………」
数分と経たないうちにナガンは戻ってくるとニヤニヤと笑いながらトガの肩に手を置き一言。
「間飛が一緒に回ってくれるってよ?」
「…………うぇぇ!?」
「ああ……そういう……」
「にゃにゃ、何がですかぁ!?」
知らなかったのかトガ……歳を重ねると若い子にちょっくら世話を焼きたくなるのが人間というものだ。ましてや色恋沙汰なら尚更。ナガンは満面の笑みでサムズアップすると「頑張れ!」と励ました。人の心とか無いんか?
こうして雄英高校全体で文化祭への準備は進められ、残すところ一日となった。
心操(演技中)「ギヒッ……早めにオレが戦線に立てば良かったかねぇ……」
物間「何か凄くしっくりくるね……?」
心操「業魔!鉄神剣ッッ!!!!」
小大「……んん?(何か既視感が……)」
サポA「いらっしゃい」
サポB「いつでも歓迎するよ!」
サポC「welcome(精一杯のイケボ)」
間飛「はあ……?」
氷叢(移にミスコン出るよって言いたいけど……言い難い……!勇気が出ないっていうか、普通に引かれる案件だよねコレ!)
ミリオ「あ、間飛君にはもう伝えてるよ?」
氷叢「……え?」
ねじれ「『楽しみにしてる』だって!よかったね!」
氷叢「…………」コクン
ナガン「」ニヤニヤ
根津「」ニコニコ
トガ「あわわ……」