え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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つみですお疲れ様でした

 

 

 

『私の夢はヒーローになって、教科書に載るくらいの偉大な男になる事です』

 

 ほんの10年ちょっと前の話。ジェントル・クリミナルという男がまだヒーローを目指していた頃の話だ。

 

 決してレベルが高いとは言えないヒーロー科のある高校に入学し、落第点を取り続けて留年が確定。加えてその時点で4回目の仮免試験にも不合格ということで学校から自主退学を勧められていた。

 

 既にサイドキックに、と事務所から声がかかったという同級生を遠い目で見つめても現実は変わらず。泣きそうな自分を誤魔化して涙を拭う母親を安心させようとしていた。

 

 

 どうしてもヒーローに、偉大な男になりたい。夢を燻らせながら日々を過ごす彼に転機が訪れた。

 

 ゴンドラを使ってビルを外側から清掃していた所、ワイヤーがちぎれて落ちる瞬間に立ち会ったのだ。

 

『私の個性ならクッションになるはずだ……!』

 

 それをチャンス(・・・・)と見た彼はすぐさま飛びついた。

 将来も使い続けるやり方で空中に不可視のトランポリンを作り出し、空中を跳ねて救助へと向かった。これで私もヒーローの仲間入りだ!と。

 

 だからだろうか。

 

 

『わっ!?』

『え───』

 

 

 要救助者(功績)ばかりを見ていた彼は、彼と同じように救助に向かおうとしたヒーローの足を止めて……否、弾いてしまった。

 

 自分より先に誰かに踏まれたトランポリンではすぐさま跳ねる事は出来なくて。不可視のトランポリンに阻まれたヒーローでは間に合わなくて。轟音を立てて落ちたゴンドラの中では清掃員が苦しんでいた。

 

 助けたいという意志がどれほど素晴らしいものであろうとも、この法治国家日本に於いて資格を持たない人間の個性の使用は違法。その上で彼は助けるどころか邪魔でしか無かった。

 公務執行妨害等、幾つかの罪を同時に犯した彼を何も知らぬまま受け入れるほどヒーロー科は、世間は優しく出来ていない。

 

 高校を退学し誹謗中傷を受け、両親から勘当までされてしまえば、数年もしない内にすっかり夢をも忘れる程世間の荒波に揉まれる事になった。

 

 

 同級生が脚光を浴びているのに、自分は?その同級生にすら忘れ去られてしまっているのに、それでいいのか?

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

『これは警鐘なのだよ!!私の侵入によって卵たちもまた強く育つのだ!』

『真に憂いてるが故なのね!かっこいいわジェントル!!』

 

 入念な下調べと計画立案。普段はそれなりに雑でアドリブ任せなジェントルの珍しい様子に相棒(ラブラバ)すら気圧されていた。

 

 雄英高校に辿り着くまでの経路を説明し、そこから先はラブラバの仕事。雄英バリアーを始めとする警備システムをハッキングするのが彼女の役割だ。

 ムフー!と胸を張る彼女だが、実際彼女の電子機器への強さは異常と言わざるを得ない。それら全てがほぼ独学と聞けば尚更だろう。

 

『ラブラバには本当に……感謝しているよ』

『やめてジェントル!私がジェントルを大好きなの!』

『……ラブラバ、本当だよ』

 

 思い返されるのはラブラバが来る前の日々。

 何とか新たな道を見つけたジェントルが迷惑な動画投稿者として動き出した頃、ラブラバは妄執的な愛で彼の下へと辿り着いた。

 

 誰にも必要とされていないと思っていた自分のファン。彼の心は彼女の存在にどれほど救われていたのか。

 

 雄英高校への侵入に自慢のヒゲと魂を懸けて、世の為人の為自分の夢の為……そして何よりもラブラバの想いに応える為に。何としても成功させてみせると誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 走馬灯のように頭をよぎる思い出。そうだ、成功させると誓ったのだ。ジェントルは限界が近い自分の体に活を入れてまた立ち上がる。

 

 しかしだ、ジェントル・クリミナルは追い詰められている。

 あれ程成功させると誓っていながら、たった二人の生徒にラブラバを捕らえられた。自分自身もそれなりに消耗してしまった。

 

 また、失敗するのか。

 

 

 

「いいはずがあるものか……ッ!」

 

(ここに来て、動きが良くなっている……!?)

 

 既にこの夢は自分だけのものでは無い。こんな自分を愛してくれる、信じてついて来てくれるラブラバがいるのだから。

 ジェントルはただその一心で緑谷に食らいついた。トランポリンやカウンターを駆使して【フルカウル】の攻撃を凌ぎ、跳ね返す。

 

 そうすればいつか、道が拓けると信じて。

 

 防ぐ、躱す。躱す、防いで跳ね返す。跳んで避けて罠を張って、また避けて。押し飛ばして距離を取ったらまた罠を張って……。

 決して多いとは言えない己の手札を最大限に使いこなし、それでも着実に少しずつ削られてしまう。

 

 いつか、道が拓けるはずだから。

 

「……ここにいたか」

 

 ざふりと近くにまた一人、障害となる人物が降り立った。だが諦めない。今度はそこら中の木に【弾性】を付与して、それから……。

 

「私は……ッ!私は諦め──」

「ハイ、ストップ」

「……ッ!?ラブ、ラバ……」

「間飛くん……?」

「ああコイツ?気絶させただけでそれ以上は何もしてねえよ。ヒーローに殺しは御法度なんでね」

 

 肩に無造作に担がれていたのが自分の相棒だと今更ながら理解する。目を閉じたままダラリと手を垂らし、動く気配はない。

 

 

 道が、拓けるはず……

 

 

「彼女をどうするつもりだ!」

「どうって……ヴィランなんだから捕まった後は警察のお仕事だろ。わざわざ拷問する理由もねえし」

「返せ!その子は私の大切なパートナーだ!」

「ヴィランが『捕まえた仲間を解放しろ!』と宣って言うこと聞くヒーローはいねえって。不安ならお前も捕まるしか確実な方法はない」

 

 助けたくとも緑谷一人に苦戦していたジェントルでは助け出す手段がない。ましてや間飛は確実に緑谷より強く、緑谷もまだまだ余力がある。わざわざ一人で相手をしてやる理由などない。

 

 

 道が…………

 

 

「撃っていいのは撃たれる覚悟がある奴だけ……よく聞くフレーズだろ?」

「……何が言いたい」

「テメェの夢の為に誰かの夢を踏み潰すのが摂理ってンなら、誰かの夢がテメェの夢を踏み潰すのも摂理だよな?」

「………………」

「お前らは雄英に侵入したい。俺達は安全に文化祭がしたい……この場合は俺達の夢、ってか目標が踏み潰す側なわけだ」

 

 

 道はもう無い。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 このオッサン普通に強いって。マジで。

 

 試しに残ってた空気の膜に軽くスマッシュぶち込んだけど破れる気配はなかったし、なんなら勢いよく跳ね返してきやがったし。化け物個性やんけ。

 

 前に少し検索かけたら恐らくオッサンが最初にやらかしたっぽい事件について出てきてたけど、これでヒーロー科の落ちこぼれ少年扱いとかマジか。同年代にオールマイトかエンデヴァーしかいなかったのかな?

 

 まあその辺はさておき。俺はコイツらの言い草に腹が立つ。まるで自分達の夢は特別だーみたいな言い方して、他人の夢は無価値ですみたいな言い草してて……言い方が悪かっただけだとは思うんだが。

 

「なあ、何がしたかったんだ?」

「…………」

「雄英に侵入してやる、とは聞いたがそこから何をどうしたかったのかさっぱり分からねえんだよ」

「……それを語って聞かせる義理はないだろう」

「ねえな。警察の所で話せばそれでいいわけだし」

 

 まあ捕まった所で刑罰はたかが知れてるだろうけど。精々が何ヶ月かの服役で済むんじゃね?……え、何をそんな意外そうな、というか信じられないような目でこっちを見るんだよ。

 

「私は……それなりに罪を重ねているのではないか?それがたった数ヶ月なはずが……」

「いやいやいや。もっとやべえヴィランが多いのにアンタみたいな小悪党(・・・)にそんな構ってられねえよ」

「小、悪党……だと?」

「……え、もしかして自分が超有名な大物ヴィランとか思ってた?」

「…………」

 

 何かごめん。

 

 でも実際扱いは小悪党なんだよな。動画投稿までしているのに捕まってない実力のあるヴィラン、というよりはそこまで本腰入れて捕まえてやろうとしている人間が少なかっただけってのが正しい気がする。

 だってもし本気ならホークスかミルコみたいな機動力に長けた上位のプロヒーローを呼ぶだろうし。神出鬼没相手ならそうするしかねえしな。

 

 やってる事もイマイチパッとしないっていうか、ヴィジランテ半分迷惑系動画投稿者半分なせいで対処の優先度はかなり低かったと思われる。ヴィジランテの類は善良な市民を傷つけないと思われてるし。

 

「話題作りの為に雄英に侵入したかった、ってんなら多分話題にもならねえぞ」

「……何?」

「つかそもそもたどり着けない。さっきからナガンさんの殺気がチクチクしてる」

「ナガン……?…………レディ・ナガン!?」

 

 気づいてなかったか。そりゃそうか。

 

 俺達が制圧済みと判断してるのか警戒はしてても撃つ気は無さそうだ。なんなら俺に狙いつけてない?ちょっと後頭部が怖いんだけど。

 

「……話題にもならないとはどういう事だ?」

「いつぞやの連合と違って殺意がある訳でもない、誰かを殺す気もない迷惑系動画投稿者が来ただけ。よくあるネットの炎上パターンでしかねえし」

「あー……言われてみればそうだね。そういう人は結構いるって相澤先生も言ってたし」

「そうなの!?」

 

 そらそうよ。雄英高校なんて面白要素の塊を撮影したがるバカは多いぞ。そういう奴らは大抵センサーの前にカメラに見つかって音もなく仕留められる訳だが。

 仮にジェントルが侵入まで漕ぎ着けたとしても相澤先生とスナイプ先生で終わったんじゃねえかな。

 

 というか忘れてない?雄英にはオールマイトもいるんですよ?すれ違いざまにスコーンと叩かれて終わるわ。

 

「それならまだ誰かの保護者のフリして入った方が成功率高かったんじゃね?」

「……確かに!」

「ええ……」

 

 やっぱり小悪党じゃねえか。やり口が全体的にお粗末過ぎる。

 

 最初から失敗すると決まっていたようなものだと気づいたのか、ジェントルが急に語り出した。

 

 曰く、教科書に載るくらい偉大な男になりたくてヒーローを目指していたとか。ああ、それであの公務執行妨害をやらかした、と。

 ヒーローとしての道が閉ざされたのならば、義賊として世の中の悪を裏側から治して行こうとジェントル・クリミナルとして活動を始めたそうだ。

 

 ……そうはならんやろ。

 

「ステインもだけどさあ……ヒーローに何を期待してんだアンタらは」

「……?」

「ヒーロー科の生徒が言うのもあれだが、所詮ヒーローなんて職業の一つだからな?教科書に載りたいだけなら凶悪なヴィランになった方がよっぽど早い」

「なっ……」

「そもそも教科書に載る程って、多分オールマイトクラスでやっと載るくらいだろ。エンデヴァーが載るとは思えんし」

「それは……そうだが……」

 

 このヒーロー飽和社会に一人ヒーローが増えたくらいで教科書に載れるもんかよ。ビルボードトップクラスでも載るか怪しいのに。

 

「まあアレだ。アンタが思ってるよりもずっとヒーローはシビアだし、雄英はアンタが思ってるよりずっと甘くなかったわけだ」

「…………そうか」

「自首を勧めるぜジェントル。でないとナガンのライフルが火を噴くぞ」

「自首します」

 

 それがいいと思う。既にハウンドドッグとエクトプラズムの分身がこっちに来てるし。

 

 

 

 

 

 

「……俺が言うのもなんだが、よく死ななかったな」

「え?」

「ウチデモ上位ノ戦闘力二人ダ。四肢ノ複雑骨折クライナラアッテモオカシクナカッタゾ」

「…………最近の若い子怖ァ……!?」

 

 

 






ジェントル「最近の若い子って凄いんだねえ……」
ハウンド「さすがにあのレベルはそういないがな」
エクト「……イヤ、意外トイナイカ?」
ハウンド「轟、爆豪、ビッグ4……いるな」
ジェントル「いるんだ……怖ァ……」

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