「雄英広すぎワロタァ!」
「あんまり騒ぐと強めに叩くよ?」
「おいどん大人しくしてマース」
間飛と緑谷が何とかジェントルを撃退していた頃、雄英高校には続々と保護者達が来訪していた。
その中には雄英高校のOBOGだったりヒーローとして名を挙げていたりする者もチラホラ混ざっており、少々では済まない程度に喧しいこの男……間飛
実は発目以上の問題児だったということもあって入場の際に当時を知る事務員から『うわでた』とか言われていたのはご愛嬌。*1
二度もヴィランの襲撃にあった学年として一年生の保護者は基本的に崩れ掛けのジェンガくらい対応に気を張っていたのだが、彼限定で何人かの教師からしかめっ面をされてるあたり相当やらかしていたらしい。
当の本人は飄々とした態度を崩さずに文化祭を堪能するつもりでいるのだが、間飛
すっかり大人しくさせられた間飛父だが、ふとある事を思い出してボソリと呟いた。
「しっかし……うちの息子たんの同級生にエンデヴァーの子がいると聞いてたんだけど、さすがにいないか?」
「いないでしょ。いたら大騒ぎ間違いなしだし」
轟焦凍……の父親のエンデヴァー。今回の文化祭は保護者限定ということで、もしかしてエンデヴァーも来るのかな?と気になったようだ。
しかし残念なことにエンデヴァーは今や(繰り上げとはいえ)No.1ヒーロー。迂闊にイベントに参加するにはまだ基盤が整っておらず、泣く泣くスルーする事にしたとの事。
尚、どこかで『焦凍ォォオオ!!』と悲痛な叫びをあげる脇臭がいたとかなんとか。
そのエンデヴァーの息子も体育祭でチラッと見ただけで、一体どんな子なんだろうなあと二人は勝手にあれやこれやと推察を始めた。すると。
「あの……それ、うちの子の事ですか?」
「……へっ?うちのって、轟さんです?」
「はい!あ、申し遅れました。私轟焦凍の姉の轟冬美です!」
「これはこれはご丁寧に。私は間飛移の母、間飛恵です」
聞こえてきた話に思わず反応してしまった赤い毛が所々に見られる銀髪の女性、轟冬美が声をかけてきた。
彼女もまた保護者……でなくとも姉弟関係にある為許可を貰えたらしく、両親が共に不参加ということで代わりに来たとの事だ。
そんな彼女の近くにももう一人、間飛家と仲の良い人物がいた。
「あっ、氷叢さんも来てたんですね」
「……どうも」
「えっ?お知り合いなんですか!?」
「私が……ってよりは息子同士の仲が良くてですね。あの子が幼稚園の時くらいからの知り合いです」
「……ですね」
無愛想にも見える口数の少ない銀髪の男性。例えるならば某錬金術マンガの滅茶苦茶目がいい大総統的な顔立ち、と言えば伝わるだろうか。そんなイカつい男性は氷叢零治の父親だ。
子供が仲良くなって家庭のギスギスした空気が少しだけ和らいだ頃、氷叢の両親が間飛の両親にキュッと締め上げられたのは懐かしい思い出だ。
何と氷叢パパ、この見た目で舎弟根性丸出しの為か間飛父に頭が上がらないらしい。何したお前。
間飛家は与り知らぬ話だが、轟の母親である轟冷もまた元は氷叢の名を持っていた。その関係で轟家と氷叢家は少しだけ仲がいいのだが、こうして雄英高校の文化祭で再会するとは夢にも思ってなかった。
「いやあこんなところで会うとは!……所でお宅のお子さん
「えっ!?ひ、氷叢さんの家って息子さんしかいらっしゃらない、です……よね?」
「……ノーコメントで」
「うふふ。あまり触れてあげない方が良いみたいですね」
「……申し訳ない」
「ありゃあ移が悪いよ。中性的とはいえ男の子にさせていい顔じゃなかったって」
どうやら何か面白エピソードを抱えているらしい間飛父が苦笑しながらこちらこそ、と頭を下げる。思春期の息子さんの性癖をあられもない方向へと捻じ曲げた罪は重たいのだ。
談笑しつつ1年A組の出し物の会場へと向かう。うちの子はこうで、うちの子はああで、と本人が聞けばそのくらいにしてくれと止めに入りそうな親バカ姉バカな自慢話のラリー。会場についたと理解したのはいい席をとってからだった。
◇
AM9:20
買い出しに出ていた二人が戻ってきた。A組の出し物は10時からであり、この時間に戻ってこれたならまだまだ余裕がある。
それでもどこかくたびれたような風貌になっていた為、間飛はともかく緑谷は一応……ということでリカバリーガールから治療を施して貰っている。
「何かあったのか?」
「──……あれだ、ナガンさんのセンサーに引っかかって一発だけ狙撃された」*2
「やっっっば。大丈夫だったのか?」
「緑谷にあたりかけたから突き飛ばしたんだよ。何か汚れてたのはそれだ」
「なるほど」
ジェントルの事を話そうかとも思ったけれど、それで無駄に不安にさせる必要もないかと間飛は誤魔化した。巻き込まれたナガンは怒っていい。
本番まで40分。最後のリハーサルでもするかという話になったが、そうすると耳郎の喉に負荷がかかるのではとそれぞれの楽器の練習だけに留めた。
ダンス隊もダンス全体と演出との段取りを確認する程度に留め、後はひたすら緊張を解すことに費やすようだ。
わいわいと話す彼らの話題は文化祭を見に来る保護者達についてだ。
「俺の所は恐らく母さんが来るかな」
「飯田のお母さんかあ……やっぱりメガネか?」
「む、何故分かった?」
「うちは両親と弟と妹も来るみたいだわ」
「えっ、兄弟いたんだ!」
「俺のところは姉さんが来てくれるって言ってた」
「轟も!?」
「うち、父ちゃんと母ちゃんが来るんやって。き、緊張してきたあ……!」
「俺の所も父ちゃんと母ちゃんが来るらしいが……面倒事を起こしてなきゃいいんだけどなあ」
「どういう心配!?」
「間飛くんのご両親って一体……」
誰が来るのか、どんな風に見られるか。にわかに緊張してきたりと反応は様々。ヒーローを目指してストイックな日々を送っているけれど、まだまだ子供なのだ。親や兄弟が見に来るとなればこうもなるだろう。
特に今回のメインを務める楽器演奏隊とボーカルの耳郎達は緊張の度合いが大きい。爆豪だけはいつも通りなようだが。
「あ゙ー……緊張してきた」
「俺もぉ……でも耳郎ほどじゃねえよなあ」
「唯一のボーカルだ、当然だろう」
「うっ、言わないで。益々緊張するから」
ただでさえ卑下していた趣味に加え、見に来る両親は音楽関係の仕事。彼女の中のハードルは天を衝くほどに高く高く伸びきっている。
今更何を、とは言えない。誰だってそんな状況なら死ぬほど緊張するのが分かっているし、何より他人が軽い気持ちで励ましていいものでもないから。
……そんな事知ったこっちゃない奴もいるが。
「今更何言っとんだ耳」
「おいおい爆豪……しょうがねえって。どうしたって緊張するもんだろ?」
「あんだけ練習してンな事言ってんじゃねえって言ってんだ。やる事は決まってんだからトチる訳ねぇだろうが」
「……うん、そうだね」
「耳郎?」
口は悪いが要は『練習してきた事を本番でやりゃいいんだからビビんな』だ。励ましでもなんでもない爆豪のいつも通りの心構えなのだが、それが却って耳郎にはいい激励となったらしい。
小刻みに震えていた手をギュッと握ると、震えはピタリと収まった。そうだ、やるべき事は変わらない。
「皆!そろそろステージで待機だそうだ!移動しよう!」
「うっ……もう本番か」
「うっし、円陣組んで気合い入れようぜ!」
「雄英全員ンンン!!」
「「「音で殺るぞォ!!!!」」」
「……物騒じゃね?」
「爆豪がいる時点でそうなるからしゃーない」
「先に陰キャから殺したろか」
事務員A「うわでた」
事務員B「は?何でお前がここに?」
事務員C「ヒッ!?ななな、何で!?」
間飛母「……何したの?」
間飛父「さあ」
※1/4スケールの∀ガンダムを作って当時の教師ヒーローといい勝負しただけです