今回は曲の歌詞を使用してるのでもしかしたらガイドラインに引っかかって書き直しになることもあるかもしれません。その時は申し訳ありませんがガイドライン違反にならないように書き直して再投稿するので生暖かい目で見ててください。
AM9:57
照明は消えて暗闇の中に期待と不安が渦巻く空間。保護者達と展示的な出し物故に時間のある生徒達……と、パトロールをサボっている教師が数名。
1年A組担任の相澤と英語担当のプレゼントマイクもまたそのうちに含まれている。
「さて……どうかな」
「どうかなって、他人事だなイレイザー!俺ァちょー楽しみよ!」
「楽しみなのは同じだ。だが……」
暗がりの中、ステージの上で配置に着く教え子達を見守りながらも顔は険しい。
というのも最近の雄英高校の改革や対応をA組のせいだと八つ当たり気味に思い込んでいる者が多いのだ。他科はもちろんの事、同じヒーロー科の2、3年生の中にもそう感じている者も少なくない。
最初から楽しもうという気はなく、品定めか難癖か……どちらにせよ好意的な感情から見に来てくれている生徒がどれほどいるのか。相澤にも生徒達の心を完全に推し量ることなんて出来やしない。
せめて『所詮は素人芸の自己満足か』などと思われなければいいのだがと祈るしかないが。
「……まあ俺はそこまで心配してないよ」
「ほう?やっぱ可愛い生徒だからか?」
「違う。練習してる時のアイツらを見てたからだ」
彼らなら出来るだろうという信頼がある。どんな事であれ本気で取り組もうとした彼らに難しいことはあっても、不可能だとは思わない。
さあ、魅せる時だ。
「いくぞゴラァアアア!!!」
怒号、そして【爆破】を加えたド派手なスタート。
爆豪のドラムから上鳴の弾けるようなギター、八百万の跳ねるようなシンセサイザー、常闇の尖ったギター……そして耳郎の確かな技巧が光るベースが重なる。
開幕から派手な演出で観客の興味を惹き、耳郎がマイク越しに声を張上げた。
「よろしくお願いしまァす!!」
ビリビリと響き渡るハスキーボイスが、歌い出す。
明るいイエローの衣装に身を包んだダンス隊が息のあったステップを踏み、そこに硬さは微塵も見られない。
彼らのステップによる揺れが伝わり、観客達も徐々にリズムに乗せて身体を揺らし始める。
伏せられていた耳郎の目が真っ直ぐに観客達と向き合った。
(今……!)
緑谷と青山が跳躍。緑谷は空中で上手く青山をキャッチすると即座に真上へと投げ、短いレーザーをショットガンのように周囲へと撒き散らす。
ほんの一瞬、放たれたレーザーが薄暗い屋内を照らし花火のような美しさを魅せる。
彼らの脳裏を過ぎるのは練習の日々。ただの興味から始まったステップの練習は本気でいいものにしたいという意思が伴い、上手くいかない事に悩んだりもしていた。
演出をどうするかと話し合っては決まらず、ああでもないこうでもないと頭を抱えたりもした。
けれど今、こうしてステージに立った瞬間に悩みも迷いも超えて良かった。心の底から彼らはここに居ることを喜んでいる。
照明係の位置から瀬呂の【テープ】が放たれ、それを土台に轟の氷結が迸る。舞台目掛けて掛けられた氷の橋にスポットライトが反射し、その間をくぐり抜けるように真っ白な鳩が飛び交った。
八百万の腕から【創造】されたクラッカーが盛大に紙テープと紙吹雪をばら撒き、サビへと入る。
「おおおおおお!!?」
「なんっっっっだこれぇ!?」
「すっげええええ!!」
「楽しみたい方!ハイタッチして!」
「え?お、おわあああっ!?」
「浮いたァ!?」
麗日の【無重力】を付与された観客達が空へと浮かび上がる。彼らが上げたのは突然の浮遊感への悲鳴ではなく、普段は味わえない非日常な体験への楽しさから来る声だ。
「ギター行ってこい!」
「おうよ!」
「マジのエレキギターじゃん!」
「そういう意味じゃねー!でもすげー!」
「うおおお!ド派手!」
氷塊を抱え【硬化】させた腕で削ることでキラキラと光る氷の粒を落とす切島。その下で観客と同じく【無重力】を受け取った上鳴がギターを掻き鳴らしながら放電し、氷の粒も相まって幻想的な輝きを見せた。
「青山ァ!気張れよ!」
「ウィ☆」
背中にロープを付けた青山を間飛が引き上げ、再び即興のミラーボールと化す。先程とは違ってロープを利用している為、間飛が手放さない限りはキラメキをばら撒き続ける。
光、音、浮遊……持ちうるものを費やした彼らのステージを品定めとして見る者は既にいない。
「響香……」
あの日ヒーローを目指したいと泣きそうな顔で打ち明けた少女。涙をこぼすくらいに悩んで迷って、それでも決断した少女が。今こうしてステージの上に立っている。
ずっと憧れてくれて、ずっと好きでいてくれた彼女はこんなにも生き生きと歌っている。
いつかの『楽しい』から始まった彼女の音楽が何人もの観客を虜にし、いい仲間達に恵まれて堂々としている。
(父さん……母さん……見てくれてるかな?)
マイクを握り締めた彼女の目は誰かを探していた。
自分の音楽の
自分の『好き』を教えてくれた両親に伝えたい。自分の背中を押してくれた両親に応えたい。
(私は……私が誰に何をもたらせるのか……見ててね)
そして目いっぱい空気を吸って───
「ああ……!見てる……!見てるぞ響香!!」
心の底から楽しくて仕方ないという表情で、より一層の感情を込めた歌声が響く。言葉はいらない、見ていればわかる。あの子は今楽しいんだと。
好きで、カッコよくて、ロックだから。あの子が音楽をやる理由はそれだけだ。耳郎響徳は静かに涙を落としながら、決して目を離さない。一秒一瞬でも長く彼女の輝きを目に焼きつける為に。
「ありがとうございましたァ!!」
万雷の喝采と賞賛の中で1年A組の音楽は幕を閉じた。
耳郎父「わァ……!ァ……!」
耳郎母「泣いちゃった!」
間飛父「ファーwwwww」
間飛母「綺麗!可愛い!カッコイイ!」
氷叢父「……!」オテテブンブン
冬美「凄い……!」
緑谷母「イズグゥゥゥウウウ!!」
爆豪母「あらあら緑谷さん……」
※なるべく元の意味のままに意訳していますが違和感があったらごめんなさい