全員のパフォーマンスも終了し、出し物を終えた生徒達は結果発表の夕方5時まで自由時間。それじゃあナガンさんから頼まれていた事だしとトガちを迎えに行ったんだが……。
「……いつから雄英生に?」
「ツッコまないでいただけると嬉しいです」
「お、おう……」
可愛いからいいと思うんですが。それでもダメ?アッハイ。
それにしてもさすがは雄英と言うべきか、生徒による出し物のはずなのに売店の食べ物もレベルが高い。経営科が出してるクレープ屋に来てみたんだが食品サンプルまで取り揃えてマジの店にしか見えねえな。
俺がチョコバナナクレープでトガちはストロベリーアイスクレープを注文したんだが、出てきたクレープが包装紙からトッピングとデコレーションもしっかりしている。コレが文化祭用の一過性の物とかマジか。
「雄英凄いですねえ……他のお店と遜色ない出来ですよ」
「だな。こっち食ってみる?」
「いただきます!」
トガちも同じ感想を抱いたようで、田舎から都会へ来たお上りさんみたいにあっちこっちに視線を向けてキョロキョロしている。ああもう、口元にクリームがついてましてよ。*1
しかし、案内しろと言われても俺も今年が初めてなんだがなあ。強いて言うなら心操関連でちょっと仲良くなった普通科と発目関連で仲良くなったサポート科くらいしか行くところないな。
とりあえずサポート科の方に顔出すか。
「サポート科に行くんですか?」
「午前中はプレゼンテーションがあるとか言ってたが、今は終わってるかもしれねえしな」
父ちゃんもメカニックとして見ておきたいって言ってたし、何かしら面白そうな物があるといいんだが。
見れるかわからんが発目に連絡を……わあ爆速既読。この感じだとプレゼンは終わってんのか。じゃあ行ってみるか。
「いらっしゃいませ間飛さん!!」
「声デケェうるせえ。あと大袈裟だろ」
「これは失礼。ちょっと前まで企業の方々に大声で説明をしていたものでして」
「これまた濃い方が……」
そういや初対面か。濃いけど面白くていいやつだからそんな警戒しなくていいぞ。
前にも見せてもらったクソデカロボットが展示されているが、これ何用のロボットなんだろうか。戦闘用なのか単なる力仕事用なのか、はたまた汎用で何でもござれなのか。
「間飛さん、そちらの方は?」
「トガち……渡我被身子な。一応年上だぞ」
「一応ってなんですか」
「そうでしたか!これは失礼を。トガちさんも楽しんでいってくださいね!向こうの方には体験ブースもあるのでオススメですよ!」
さっきから向こうでワイワイやってるのはそれか。免許無しでも使える小型サポートアイテムを試射会という形でお客さんに楽しんで貰ってる、と。普通に面白そうだな。
俺達も列に加わって待ってる間にどんなアイテムなのかを確認してみたけど、ピストル型とボール型の2種類があるらしい。
ピストル型はテーザー銃*2をより軽量かつ単純にしたもので、当たれば一瞬だけ放電する特殊な弾丸を撃つもの。
ボール型はペイントボールに消火剤とローションを混ぜて足止め&炎熱系対策を上乗せしたもの。
さすがに現物を使わせてもらえる訳ではなく、安全なゴム弾にしたものとそれっぽい水の入ったカプセルを投げるだけらしいけども。
「あの的のど真ん中に当たったら景品が貰えるみたいです!」
「景品は何だ……って、何あれカッケェ」
「あっちの方もかぁいいです!」
3回のうちに1回でも真ん中に当てると、幾つかある景品の中から選べるとのこと。俺が目をつけたのはファイナルなファンタジーの7作目で有名なバスターソード。トガちが見つけたのはデカいモフモフの猫のぬいぐるみ……えっ、何あれ。“GANRIKI NEKO”?何それ。
アレがかぁいいかはさておいて欲しいなら取るしかねぇなァ!?
前にいたオジサンが苦笑いをしながら横に掃けたので今度は俺の番だ。
「おおっと雄英生!それもヒーロー科じゃないか!?どっちで挑む?」
「ボール型で」
「OK!それじゃあ名前を教えてくれ!」
「ヒーロー科1年A組、間飛移です!」
「ヒッ!?ま、間飛!?」
「……はい?」
あの、俺なんかしました?え、君じゃない?君と同じ苗字のOBにヤベー人がいたからビックリしただけ?
次会ったら1回父ちゃんシバくか。
気を取り直しまして、ボール型でのチャレンジ。チャンスは3回というが……1回ありゃ十分だ。
渡された少し柔らかいカプセルをポーンポーンと手の上で軽く投げ、狙いはもちろんど真ん中ァ!
スパァンッッ!!!
「う、うおおおおお!?お見事ォ!!まさかの一発目でど真ん中だ!」
「ッシ!」
ははは。そう褒めるでない。空間把握能力と【フィジカルギフト】があるからこれで外す方がヤバいだけだから。結構ズルしてたから。いやホントに。
残った2発をお返しして選ぶ景品は勿論……。
「あのガンリキネコ?で」
「はーい!おめでとうございます!……アレ欲しい人いたんだ」
そんな事言わないでもろて。少なくともトガちには需要があったんだから。
ほーれガンリキネコのぬいぐるみだぞー。
「わああ……!ありがとうございます!かぁいい……!」
(これ俺がおかしいんかな?)
……ごめん、やっぱり俺には分からんわ。
◇
抱える程もあるGANRIKI NEKOのぬいぐるみを持ったままでは回るものも回れない。少々申し訳なさそうに発目に預かって貰えないか頼んだところ快く引き受けてもらった。何やら不思議そうに首を傾げていたが、何だったのだろうか。*3
規模の大きい雄英とはいえやはり学生である事に変わりはなく、サポート科やヒーロー科が大々的な出し物をする一方でごく普通の出し物をする所だってある。
それが普通科のお化け屋敷なわけだが。
「アアア……」
「ピィッ!?」
(全部場所分かってますなんて言えねえ……)
普段は気配を消して奇襲をかける側のトガは悲鳴をあげ、探知能力持ちの間飛には何から何までお見通し。滅茶苦茶ビビる女子と平然として頼もしい男子というテンプレートな2人組になっていた。
元々トガは怖がりというわけではないが、こういったビックリ系の脅かしにはあまり強くない。戦闘中なら冷静に対処できるのだろうが、お化け屋敷でナイフを取り出す阿呆ではない。
ただでさえ鋭い感覚を持っているのに、アチコチから悲鳴やら物音がする度に足がすくんで体を強ばらせてしまっている。3歩進んで1回休みみたいになってんな。
ちなみに間飛はホラー耐性もしっかり完備。仮に探知能力がなくても涙目で飛びついてくるトガを片手間に支えるくらいには余裕がある。
これではさすがに、ということで探知能力をOFFにしても感覚が鋭すぎてどこから来るのか分かってしまう。お陰でキャーキャー怖がるトガをしっかり受け止められているのだ。
「ほらもうすぐで出口だから。な?」
「ひぃん……」
「うわぁ涙目。しっかり捕まってろよ?」
「うん……」
それはそれとして怖がる度に間飛に引っ付いているのでアチコチの柔らかい所がムニッ♡と押し付けられたりもしている。間飛は耐えた。(理性が)死ぬかと思った。
最後の最後に天井から血糊塗れで落ちてくる日本人形でトガは泣いた。
「……ぐすん」
「大丈夫か?」
「学生が出していいクオリティじゃないですぅ……!」
「個性ありきだとああいう風になるんだな」
シンプルに腰を抜かしたトガを抱え、何とかベンチに辿り着いた間飛は泣きべそをかくトガを宥めていた。保護者の中にも腰を抜かしたという人もいるのでクオリティは本当に高かったらしい。
泣いて叫んで怖がった事で疲れたのか、トガは少しグッタリとしていた。具体的には間飛に膝枕を要求して横になるくらいには。
実の所はちょっとくらい怖がる素振りをみせて抱きついちゃえ!と思っていたのだが完全に誤算だった模様。普通に怖かったし抱きつけたけど違うんです、そうじゃない……とはトガの談。
「それにしても……文化祭って楽しいんですね」
「……最初から最後まで参加出来たら良かったんだけどな」
「……?いや、割と最初のほうから……ああ、そういう事ですか」
疲れてぼんやりとした頭から零れた感想は彼女が思っているよりもずっと間飛に気を遣わせてしまっていた。本人はさほど気にしていないのだが、自分が楽しめる事を目の前の少女が同じように楽しめなかったと思ってしまえばどうしたって気にしてしまうだろう。
遠くを見ている間飛の顔は頭を預けた体勢では見えないけれど、きっと悲しそうな顔をしているんだろうなあ……なんて他人事のように感じていた。
「別にいいんです。もし、もし移くんと会わなかったらヴィランになってたかもしれないんですから。こうして
「……そいつは出会えた甲斐が有るな」
「ずっと自慢しちゃってください。自分は女の子を一人ヴィランに堕ちる前に救ったんだって」
それがどうしたと少女は微笑む。勝手に哀れまれるほど悲惨な人生を送った覚えは無い。
ただの文化祭に何をそんなにセンチメンタルな雰囲気になっているのか。トガは間飛の顔に手を添えニッコリと笑って言った。
「移くん……」
「……何?」
「一番近いトイレってどこですか……?」
「我慢してたの!?そこの角曲がったところにあるはずだから行ってきな!?」
……色々飲み食いしてたもんね。
トガ「えい」パーン
サポA「うわぁおど真ん中」
サポB「景品どれにします?」
トガ「そのバスターソード?で!」
トガ「どうぞ!」
間飛「わーい!」
周囲(((微笑ましいなあ)))