え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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※ちょっと今回零治くんちゃんさんが辛辣な物言いをするので不快に感じられる方もいるかもしれません。






気まずい邂逅

 

 

 

 脳無との戦いから二日後。重傷を負ったエンデヴァーは手術とリカバリーガールの【治癒】によって一命を取りとめ、顔に傷跡こそ残ったけれど何の後遺症もなく無事に退院することが出来た。

 

 スーツケースを引いて歩く姿にはダメージの跡も見られず、難しい顔をしてホークスと別れて帰宅したのだが……。

 

 

 

「おつかれ」

「……おつかれ」

「お疲れ様です」

「……ああ」

 

 轟家で待っていたのは四人。夏雄と冬美に、雄英高校から外出許可を得て出てきた焦凍と氷叢零治。蕎麦を啜っていた焦凍を除く三人がエンデヴァーの戦いを労った。

 

 尚、外では相澤が待機しており、見かけた黒猫を撫でられないかと悪戦苦闘しているが哀れにも威嚇の声が返ってきて凹んでいる。何してんだアンタ。

 

 啜っていた蕎麦が途切れてようやく焦凍も口を開き、顔に残った傷跡を見て小さく「ひでえな」と呟いた。

 

「……お前達は分かるが、何故零治君がいる?」

「冷さんが気になってたからですよ。正直僕はまだ貴方を信用してないので」

「零くん……」

「まあ、俺も同感。まだ抵抗あるわ」

「夏も?」

「それはそれとして、先日の戦いは凄かったです。アレがヤバいヴィランだっていうのは僕でも分かったので労いにも来ました」

「そうか」

 

 家族では無い彼がここにいる理由は入院中の冷……旧姓“氷叢”の冷を心配しており、その家族である夏雄と冬美の事も心配していたからだ。

 彼にとってエンデヴァーはそこらのヴィランよりも憎い存在で、エンデヴァーを嫌悪する夏雄ですら彼を見て冷静になることがあるくらいには憎しみが強い。

 

 今回の件でも雄英は彼の外出許可を出すことに抵抗があったのだが、粘り強い懇願に教師達が折れる形でここに来ることを許されている。

 

「んぐ……あんまり首突っ込む気はなかったんですけどね」

「……」

「移に、友人に『一回思ってること全部言ってきたら?』って言われたんで言いに来ました。この後はもう僕から口を出す権利ないんで」

「……ああ」

 

 零治は冷にこそ関わりがあっても、轟家の事情には関係がない。ここにいる時点で出しゃばりだという自覚もあるけれど、どうしても言わずにはいられなかった事を言いに来た。

 

「冷さんを傷つけた貴方が嫌いです。憎いし腹立つし頑固だし、友人が言ってた『頭エンデヴァー』が笑えなかったくらい嫌いです」

「…………」*1

「でも……あの人は貴方を支えると言っていたので、もう僕から言えることはありません」

「ッ…………」

「僕が口を出す権利が無いというのもそういう事です。冷さんがハッキリと貴方と向き合うと決めたので……ただの親戚としてあの人が幸せになれるように祈ってます」

「……ああ。頑張らせてもらう」

 

 エンデヴァーの返事に眉ひとつ動かさずに「言いたいことは言ったので」と一足先にその場を後にした。

 

 焦凍が蕎麦を啜る音だけが響く食卓。次に言葉を発したのは夏雄……ではなく焦凍だった。

 

「……親父、あの蒼い炎(・・・)は誰の炎だったんだ?」

「蒼い炎……あれか。残念だが何も分かっていない」

「一瞬カメラが繋がらなくなったっていう時の事?」

 

 彼が口にした疑問は一緒だけテレビに映った蒼い炎について。アレ?と思った瞬間にカメラが切り替わり、ビルの向こうで蒼い炎が燃えているのが遠くに見えているだけだった。

 どうやらヘリからの映像が著しく乱れてしまったとかで慌ててカメラが切り替えられたらしく、後からもう一度確認しても蒼い炎が誰の手によるものだったのかは不明なままだった。

 

 あの場にいたエンデヴァーなら何かしら知っているのではないかと尋ねてみたが、エンデヴァーもあの時あの場に誰がいたのかを詳しくは覚えていないし把握出来ていない。

 

 焦凍が蒼い炎について尋ねたのは間飛からの情報である荼毘と轟燈矢が本当にイコールなのかを確かめたかったからだ。もしあの場に荼毘と思わしき人物がいたのなら……と期待していた。

 

「そんなにアレが気になるのか?」

「……燈矢兄が生きてるかもしれねえ」

「っなんだと!?」

「間飛が……友達が言ってた。連合にいた荼毘って奴が燈矢兄の写真ソックリだったって」

「嘘……」

 

 希望的観測だから、と家族に明かしていなかった。だが先日の戦いでもしかしたらという思いが強まった焦凍は今なら伝えても問題ない……いや、今こそ伝えるべきだと荼毘の事を話した。

 

 公表された写真を見た間飛はインターン先で連合のメンバーである荼毘と再び遭遇しており、その時に見た彼の姿は正しく轟燈矢そのものだったという。

 

 あの時死んだと思われていた家族が生きているかもしれない。それが分かっただけでも彼らは希望を持てる。

 

 この日からようやく轟家はまた少しずつ家族になり始めた。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

『君が九人目だね……』

「…………」

『もう少し見せたかったけどもう45%……えっ?もう45%?ホントに?』

「…………」

 

 ちょっと聞いてないんだけど、ていうか優秀過ぎるしはやすぎるし……なんてワタワタしているやせ細った青年を前に、緑谷は死んだ目をしていた。

 

 

 

 

 この日の緑谷は基礎体力をつける訓練を終えた後、更に【ワン・フォー・オール】の修行にも取り組んでいた。

 全体に薄く、局所的に強く……という配分を覚えたばかりで不安定なままでは危ないだろうとオールマイトや爆豪、間飛と共に試行錯誤と安定化を目指しての反復練習をこなした。

 

 元々がスポーツマンという気質でもない緑谷の体力はスッカラカン。あの性欲魔人すら心配そうに緑谷を見つめていたりするくらいにはふらついての帰寮だった。

 

 風呂に入ることも出来ず、部屋につくなりベッドに身体を投げ出して泥のように眠りについた。

 

 

 ……そして緑谷は夢を見ていた。

 

 

(ッ……!?ここ、は……)

 

 風が哭いている荒野。鼻から上の部分と両腕だけが何とか動かせる状態で、移動しようにも足が動かせる気配はない。

 視線だけを動かして周りを見てみれば隣には見知らぬ女性、その奥にも全く知らない人が数人いた。

 

 人影は七人。そこに自分も並んでいるあたり八人と数えるべきか。その中には憧れのヒーローオールマイトらしき姿もあった。

 

 

『何故抗うんだ?僕と征こう……愚かで可愛い弟よ』

『間違っているからだ……許してはいけないからだ!兄さんの、全てを……!』

 

(これは……【ワン・フォー・オール】の面影……?)

 

 

 自分は何を見せられているのか、ここが何なんのか。緑谷の心当たりは受け継がれてきた個性以外に何もない。考えられるとすれば歴代継承者の記憶……もしくは彼らの意思が残されていたとでも言うのか。

 

 何にせよ今の自分に喋ることは許されていないらしい。鼻から上と両腕以外が黒い霞のようになってしまっている現状、出来ることは目を逸らさずに見守ることだけ。

 おぞましい気配の主……恐らく過去のオール・フォー・ワンと、彼の手を拒む青年のやり取りを第三者として見るだけ。

 

(僕に全く気づいていない……過去の再現だから?)

 

 オール・フォー・ワンが個性を奪い、与える事で救いを齎す光景。差別から解き放たれた男が涙を流して喜び、力無き者が復讐の力を得てニヤリと笑った。

 

 

 超常黎明期……突如として“人間”という規格が崩れ去った混沌の時代。異能が差別を呼び、差別が迫害を生み出し……迫害は復讐者をつくる。

 徒党を組んだ異能持ちの人間を前にマトモな人間は無力で、鉄パイプやナイフ程度では淘汰されてしまっていた。

 

 そんな時代で誰よりも早く人々をまとめ上げた人物こそ、オール・フォー・ワンだ。

 

 異能の力で暴れる者から異能を剥奪し、異能を持たなかったことを悔やむ者に異能を与えた。

 奪い与える行為を繰り返し、やがて男を頂点とした集団が生まれる。そこに正義や秩序があったのかは誰にも分からない。

 

『お前が大切だ……』

『ッ……!?やめ、ろ……!』

『やせ細ったお前にも使いやすい異能を見つけたんだ』

 

 

 ──共に征こう。

 

 

 黒い霞が一気に分散する。暗闇の都市に、室内に変化していた空間が再び荒野へと巻き戻った。

 

 

 

 

 

 ……そして緑谷に何者かが話しかける、という部分に戻るわけだが。茶化すつもりでもなく緑谷からすれば『いや……今見せられてもどうしろと?』という反応しか返せない。だって魔王はタルタロス送りで終わったし。

 

 己に受け継がれた個性がどれほどの希望が込められた代物なのかを再確認は出来たけれど、肝心のその個性をぶつける相手が既に負けてるんですがそれはどうすればよろしいんでしょうか。

 問題はそれを伝えたいのに口元が黒い霞になってるせいで喋れないということで。

 

『気をつけて、特異点はとうに……うんだいぶ前に過ぎてる』

(特異点が何なのかは知りませんが、もうゴールすら通り越してますよ……?)

『でも大丈夫。君は一人じゃない』

 

 いやあのちょっと待って?色々教えてくれてるのは分かるけど既にオール・フォー・ワンは打倒済みでして──

 

 と、残念ながら最後まで緑谷の声が彼らに届くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「初代の記憶……!見たか……!」

「……でも、オール・フォー・ワンはもう」

「ああ……ええと……うん、いつか教えてあげられたらいいね」

「……気まずいんですが」

「………………頑張れ!」

「丸投げですか!?」

 

 翌日にオールマイトに相談した緑谷だったが、二人共微妙な顔をしていたのは言うまでもない。

 

 

 

*1
何故よりにもよってそのワードを出したんだ?という渋い顔






零治「……」
相澤「……気は済んだか?」
零治「…………」
相澤「おい?」

零治「ちょ、調子に乗って言い過ぎたあ……」
相澤「ええ……」
零治「ほ、ほぼ無関係なのに何様のつもりなのか……!ううっ、氷叢の狭いコミュニティのせいで変な鬱陶しい出しゃばりになっちゃった……ああもう馬鹿!僕の馬鹿!」
相澤「分かったから暴れるな」

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