番外編強化月間第2弾……オールマイトVS間飛の前編になります。
後編はなるべく早く投稿させていただきますので許して。
最近雄英教師達の間でとある議論が流行っていた。
その議論自体に大した意味はなく、ただ想像の中であれこれを語ってこうでもないああでもないと意見を出し合うだけ。勝ち負けは勿論の事、片方が説得されたり論破されたりということも無い。
それはパソコンのローディング待ちだとか休憩時間だとか、短い時間にさらりと行われては結論を出さないまま終わることも珍しくない議論。
即ち、コイツとコイツならどっちが強い?というともすれば男子小学生かとツッコミを入れられるような議論だ。
事の発端は相澤が担任を務めるA組の期末テストの実技試験の準備をしていた時のことだ。
A組の生徒は全体的に『強いけどどこか人格に癖がある』という印象があり、ましてや連携すら成り立つか怪しい組み合わせもある。
しかし中には梅雨ちゃんや瀬呂といった“基本スペックとコミュ力から誰と組ませても強い”生徒もいる。
そういった生徒には同じくらいの実力で何かしら明確な弱点を持つ生徒を組ませようと思い、教師達の間で強さ議論が巻き起こったのだ。
今の議論はこの時の延長戦のようなもの。『あの子は誰までなら勝てそう?』とか『この子とあの子ならこの子が相性差で勝つかな?』とか……ちょっとした脳トレ感覚で行われていたのだが。
ある時こんな爆弾をプレゼントマイクが投げ込んだ。
『そういやさ、間飛リスナーならオールマイト相手でもいい勝負できんじゃね?』
誓って本人には何の意図もなく、ただただ疑問に思ったから口に出しただけのものだ。そこにオールマイトへの侮りも無ければ間飛への媚びも無い、至って単純な発言。
問題はそれを相澤が『は?アイツならいっそ勝つだろ』と即答したせいでいつもの議論より熱が入った事だろうか。何してんだアンタ。
実にくだらない話だが本っ当に無駄にヒートアップした議論は珍しく長命。二週間経っても話題はそのままだった。
そうしてある日、うっかりそれをご本人に漏らしてしまい……。
『じゃあ試してみます?俺も一回やってみたかったんで』
……何か本人が一番ノリノリというよく分からない結果に辿り着いた。
◇
期末テストの実技試験でも使われた訓練場の一つ。パワーローダーによって穴だらけにされていたが今やすっかり元通りとなった遮るもののないボコボコとした地面の上で、ジャージ姿の間飛とコスチュームに身を包んだオールマイトの二人だけが存在していた。
「間飛少年……本当にいいんだね?」
「リカバリーガールがいるんで。それに……オールマイトなら致命傷までは持っていかないでしょう?」
「当たり前だよ!?教師だしヒーローだし!」
「それに、一回俺がどのくらいオールマイトに近いのか確かめてみたかったんで」
グッグッ、と確かめるようにストレッチを行う間飛。朝食べた物が腹の中に存在しない感覚は彼にとって絶好調の証。丁寧に解された身体に硬さは無い。
やや頼りない立ち姿のオールマイトは困ったように頭をかきながら、背中に冷たいものを感じていた。
「……というか、色々言う割にはオールマイトもノってくれたじゃないスか」
「ああ、いや、うん……今ちょっとやっぱやめときゃ良かったって思ってるけども……」
「おいNo.1」
「“元”だから!今はエンデヴァー君だから!」
生徒と教師が真剣勝負、なんて機会は実は少ない。年に二度も機会があるかという程だ。
だからだろうか。いざこうして教え子が闘志を剥き出しにして目の前に立っていると少々気圧されるものがある。それが雄英でもトップクラスの実力者である間飛なら尚更。
彼から陽炎のように静かに立ち上る闘志は否が応でもオールマイトに戦闘前の心構えを持たせる。苦笑いこそしているけれど、体は自然といつでも動けるようになっていた。
「制限時間は1時間。タイムアップでも終わるし、遠くで私達を見ている相澤君からストップがかかった時点で……もしくはどちらかが降参した時点で終了」
「ええ」
「終わったら一緒にリカバリーガールに怒られようか」
「怒られるだけの余裕が残ってたらいいっスね、お互い」
二人が軽く手を挙げ、相澤へと合図を送る。両者の準備が整ったようだ。
二人の間に20mの距離が開けられたまま、シンと空気が静まり返る。そして───
『START!!!』*1
「Detroit……!」
「デトロイトォ!」
───拳がぶつかり合う。
「ぬうっ……!まさか完っ璧に相殺されるとはね!」
「小手調べで喜べるかよ!」
景気づけの一発。何の小細工もない大振りな右の一振りは爆弾でも叩きつけたような音を立ててぶつかり、一分の譲り合いもなく消えた。
片や本気で打ち放った打撃を止められた事に震え喜び、片や既に追いつかれていた事実に頼もしさと恐ろしさを感じている。
たった一度のぶつかり合いで理解した。これは本気でやらねば、と。
ズン、と地面を踏み砕く勢いでオールマイトが走る……否、最早跳躍と言うべき圧倒的加速を行う。
一歩で20mを容易く食い潰し、小柄な人の頭ほどはある拳を躊躇いなく振り下ろす。
「Texas……SMASH!!」
真っ直ぐに振り抜いた初撃と違い、ほぼ真下に向けて叩きつけられる超パワー。巻き上げるのは土煙なんて生易しいものでは無い、竜巻の如き余波は地面を抉りとって撥ね飛ばしてしまう。
しかしそこに手応えはない。元々素振りの余波で退治することの多いオールマイトだからこそ分かる、余波すら何ら効果がなかったという感覚。
オールマイトに並ぶ超パワーを持ちながら、それを更に凶悪な物へと変えるもうひとつの個性。
「【瞬間移動】か!」
「
「うおっ……!?」
あの一瞬でオールマイトの一撃を避けた間飛が猛スピードで飛び蹴りを放つ。およそ人体が出していい音じゃない威力の飛び蹴りを交差させただけの腕で受け止め、地面に二本のラインを抉り刻みながら吹っ飛ばされる。
オールマイトの【テキサス・スマッシュ】で彼の視界が塞がれた瞬間を狙った助走を付けた飛び蹴り。瞬時に下す判断としては十分過ぎる。
ビリビリと確かな衝撃を受け止めた腕の痺れは純粋なパワーによって生み出された。オールマイトにとって久しい感覚だ。
「まさか私が他人のパワーに驚かされるとはね……!」
「パワーファイターは何もアンタだけの称号じゃねえだろ?」
「違いない!」
こっちは一撃入れてやったぞとでも言いたげに間飛は手のひらを上に向けると、指でチョイチョイと挑発してみせる。彼の前でここまで不敵に笑ってみせる者など滅多にいないだろう。
しかし普通に考えればこの勝負は圧倒的にオールマイトが不利だ。オールマイトの武器である超パワーは間飛も同じレベルのものを有しており、間飛は更に【瞬間移動】を持っている。
ただ闇雲に殴りかかったところでオールマイトの消耗が増すだけだろう。
ではどうするか?
「Carolina……!」
腕を交差させクロスチョップの構えを取りながらの突撃。力強く振り抜かれたところでそこに間飛の姿はなく、空振りに終わる。
だがオールマイトはそこで終わらない。
「──そこだ!」
「ッ!?」
ならば闇雲ではなく、確かな経験則と直感から間飛のワープ先を予想して殴ればいい。
もう一度カウンターを叩き込もうとしていた間飛を丸太のような腕が絡め取り、唸りをあげてグルグルと回転していく。
「Oklahoma……SMASH!!!」
「ッッッ……ダァッ!?」
「立て直すのが早いな!流石だ!」
溜めに溜めた速度を間飛に押し付け、回転のままに放り投げる。空気の壁を破るほどの勢いだというのに、間飛は空中で無理やり身体を回転させて勢いを殺しきってしまう。
読まれた。そうは分かってもオールマイトがどんな原理で判断しているのか分からない以上は結局考えるだけ無駄でしかない。それにそうしている間にオールマイトは離れた距離を容易く詰めてくる。
「Detroit……!」
「させっかよ!」
「Ouch!?」
弓のように引き絞られた左腕が振り向かれる寸前で間飛の手刀が肩へと叩き込まれる。動かそうとしていた関節部への痛みは想像よりも次の動作を阻害するのだ。
痛みに顔を顰め、パンチを止められたオールマイトを更に間飛の左手の掌底が弾き飛ばす。既のところで挟み込まれたオールマイトの前腕に防がれたものの、完全に防御しきれた訳では無い。
地面を抉っていた足が地面から離れ、背中から地面へと倒れてしまう。それでも勢いは止まらずゴロゴロと二、三回転してようやくオールマイトが立ち上がった。
「【
「うおわっ!?最初の飛び蹴りそんな名前だったのかい!?」
「ミルコ直伝っスよ!」
「なんてこと教えてくれてるのあの人!?」
そこへ容赦のない飛び蹴りが再び飛来。慌てて横っ飛びしながら技名について聞いてみると何か聞き捨てならない言葉が聞こえた。あの人何やってんだ。*2
蹴りと呼ぶには砲撃レベルの速度と威力を有しているお陰で兵器扱いの方が正しい気がするけれど。アレがほぼノーモーションで飛んで来かねない事に気づいたオールマイトはほんのり青ざめた。
ザリッ、と通り過ぎた間飛がもう一度地面を蹴って加速する。次は蹴りではなく硬く握られた拳を使うらしい。避けてばかりでいられるかとオールマイトも迎撃の体勢にはいる……が、間飛の姿が3m手前で忽然と消えた。
何故、と疑問が湧くより早く【瞬間移動】による何らかの作戦だとオールマイトの脳内は結論づけた。
そして間飛が移動した先はおそらく……。
「上か!」
「キッッショ!何で分かるんだよ!」
自分の真上。その場から大きく飛び退いた瞬間、間飛の放った打撃が地面を砕いた。盛大に亀裂を走らせ、破砕音を響かせる。
次はバックステップで回避したオールマイトの番だ。
着地からノータイムで加速。駆け抜けながらの手刀による一閃。【Missouri・SMASH】と名付けられた一撃が間飛の脇腹を捉え……振り抜かれた。
「……今の状況から【瞬間移動】で避けられるのか」
「ノーダメージ……とは、いかねえが……な」
しかし、完全なヒットとは言い難い。振り抜く寸前で間飛の身体が掻き消えた。いや、【瞬間移動】でダメージを最小限に抑えられた。
それでも。それでもクリーンヒットには程遠いはずなのに、間飛には確かな痛みとダメージが通っていた。No.1のパワーは例えまともに当たっていなくとも痛手となっている。
出来れば降参を勧めたいが……と口にしようとしてやめた。
「そりゃあNo.1ヒーローに……こんな若造が簡単に追いつけるわけねえよなァ!!」
「当然だとも。私は平和の象徴……そう簡単には負けられないんだよ!」
あんなにもギラギラと燃える目をした生徒を受け止めてやれなくて何が教師か。高い高い壁として彼の前に立ちはだかってこそ、
とっくに“先代”の枠組みに入ってしまっているけれど、同じく受け継いできた人間として負けられない。オールマイトは力強く笑って拳を構えた。
【オールマイトが勝つ派】
・セメントス
・ミッドナイト
・エクトプラズム
・ハウンドドッグ
・根津
・スナイプ
【間飛が勝つ派】
・相澤
・ブラドキング
・パワーローダー
・トガ
・レディ・ナガン
【わかんない派】
・13号
・プレゼントマイク
・ランチラッシュ
【馬鹿なことしてんじゃねえ派】
・リカバリーガール