季節も変わってすっかり風が冷たい今日この頃。零曰く『この辺りからヒーローコスチュームのデザインを後悔する人が増えるんだよね……』との事だったが、八百万さんや葉隠さんは特に布面積が増えて大変安心出来る格好になられた。目のやり場に困るから正直助かる。
八百万さんはマントを羽織るようになって、葉隠さんは個性に合わせたスーツを作って貰えたとかで訓練の翌日に発熱でダウン……なんて事態はなくなりそうだ。
「入学時と比べるとだいぶ皆のコスチュームも様変わりしてきたな」
「飯田はそのアーマーで夏耐え抜いたの凄いよな」
「代わりに触れた方が火傷しかけてたけどな。峰田が悲鳴あげたことあったじゃん」
「アレは悪いことをした……!」
逆に飯田は大きな変更点は見られない。金属部分を軽量化の為に別の素材に変えたくらいか。あ、峰田の件は夏場の直射日光で高温になった飯田にぶつかって火傷しかけただけだから特に何もないぞ。
一番変わったのは……緑谷と爆豪か?前はもう少し軽装だったのにピッチリ目の防寒機能付きっぽいスーツに変わってるし、腰のベルトに簡易グレネードも増えてる。
緑谷は発目作の【エアフォース】安定用のガントレットや重厚なブーツと順当な強化のアイテムが増えた。元の不審者緑色タイツマンからかなりそれっぽくなったな。
「間飛は……何かむしろスッキリしたな?」
「ん、ああ。【瞬間移動】のクールタイムを作らなくてよくなったから思い切って最小限にしてみた」
「徒手空拳よりの爆豪みてー」
そうそう、俺もかなりコスチュームを改造してみた。
元は前腕半ばまであったガントレットをゴッソリ削ったりとか、肩当と肘当てを取っ払ったりと軽量化してんだよね。
ファンタジーというかスチームパンクなゴテゴテしてた装備が最小限の防具になったお陰で、ほぼ使えなかった『10kgまでの無生物なら【瞬間移動】の対象にカウント出来る』ってのが使えそうだ。それでも5kgくらいしか猶予はないけど。
見た目の評価はまさに瀬呂が言った通り。手榴弾っぽい装飾とか【爆破】を活かす機構が無い分スマートになった爆豪のコスチュームによく似ている。パクリじゃねえから突っかかってくんな爆発さん太郎。
ああ、今日コスチュームを着ているのは当然訓練の為なんだが、ただの訓練では無い。
「来たか……」
A組21名に対し、ぞろぞろとコスチュームを着て現れた同じく21名の同級生達。
雄英高校ヒーロー科、1年B組。
「さァA組!!今日こそシロクロつけようか!!?」
「お、心操のコスチュームかっけえ」
「……だろ?」
「ん!」*1
「すっごい見覚えのあるカラーリングな気がするな……?どこで見たんだこの色」
「リアクションくらいしようか!?」
なんだよ友達と話くらいさせろよアレな人。
◇
今回の訓練は戦闘訓練。今回はA組とB組の対抗戦という形式を取っており、四人一チームで戦う。
ステージは運動場γ。工業地帯を模した視界と足場の悪さに定評のあるステージで、索敵能力はもちろんの事不意の遭遇戦にもどれだけ対応できるかが求められる。
問題は両学級共に21名ずつ在籍している事だが、そこは五人で組んだチームを一つだけ作って五対五にすればいいだけだ。
「今回の状況設定は『ヴィラングループを包囲し確保に動くヒーロー』!お互いがお互いをヴィランと認識しろ!」
相手チームの四人、或いは五人を捕まえた方が勝利となり、双方の陣営に設置された『激カワ据置プリズン』に投獄した時点で確保した判定になる。やけに緊張感が薄れるデザインだがツッコんだら負けだ。
最高効率で言えば自陣近くで戦闘不能にして即座に投獄が理想だが、当然そう上手くいくはずもない。かといって自陣の牢獄から離れた所でダウンさせたとて、運搬に時間はかかるわ人手を割く必要があるわでリスクが大きい。
組んだチームメンバーの個性や能力、相手チームのメンバーを考慮して作戦を立てなければならない上に考えることが増えた難易度の高い戦い。どちらが勝っても負けてもおかしくはない。
「じゃ、クジを引け」
「先に言っておくとどちらも第五チームが五人になるからな!」
第一セット
A組……蛙吹、口田、上鳴、切島
B組……円場、鱗、宍田、塩崎
第二セット
A組……青山、葉隠、常闇、八百万
B組……吹出、拳藤、小森、黒色
第三セット
A組……飯田、障子、轟、尾白
B組……鉄哲、回原、骨抜、角取
第四セット
A組……爆豪、耳郎、瀬呂、砂藤
B組……取蔭、凡戸、鎌切、泡瀬
第五セット
A組……緑谷、麗日、芦戸、峰田、間飛
B組……物間、小大、柳、庄田、心操
組み合わせが出揃った。
早速第一セットを始める為にそれぞれのメンバーが初期位置に向かう。その間に生徒、教師達の間ではやはりどちらが勝つのかという話題になる。
「どっちが勝つと思います?」
「どうだろうねえ……」
「正直始まるまでは何とも言えん。我らB組が勝つ!と断言できんことが悔しい……!」
「コッチは実戦経験は多いが不安定、対して成績自体はソッチの方が伸びてるしな」
「分かんねえー……上鳴か切島の土俵に持ち込めりゃいいんだが」
「それでいうなら塩崎がハマればコッチの勝ちが堅いぞ」
「ね」
「では……第一セットSTART!!」
ペタリ、ペタリ、と音を立てて壁を這い歩く梅雨ちゃん。新たに習得した【蛙】の新技である『保護色』を発揮し、チームの先頭で慎重に索敵を行いながら進んでいる。
誰もが思っていることではあるがこのチームは特に一芸特化……悪く言えば汎用性が低い者が多い。唯一オールラウンダーと言える梅雨ちゃんでさえ攻撃力の低さという明確な弱みが存在している。
対するB組には塩崎という明確な脅威が存在しており、真っ先に考慮すべき相手に挙げられていた。
「……でも、宍田君も怖いね」
「アイツパワーファイターだしなあ……もしかしたら匂いで索敵されてるかもしんねえ」
「間飛ちゃんで索敵される恐ろしさは身に染みてるものね。奇襲には十分気をつけましょ」
そしてもう一人……宍田獣郎太。獣になることでフィジカル面と索敵能力が大幅に強化される【ビースト】の個性を持つ男子も警戒している。
A組で言うところのスピードを得た障子のような性能をしており、範囲攻撃手段として上鳴こそいるものの単体の戦闘力では圧倒的に上と言ってもいい。
故にこの勝負では塩崎よりも先に宍田を落とす必要がある。塩崎の範囲制圧能力と高機動近接戦闘力の宍田を同時に相手取るのは非常に難しい。
「感謝します……左方向に塩崎さん、右の方から宍田君が!!」
「やっぱ塩崎を囮にしてくるか……!」
「来るわよ」
「ガアアアアッ!!」
剛腕を思い切りぶん回した叩きつけ。咆哮を上げながらの愚直な突撃は分かっていても脅威と言う他なく、咄嗟に【硬化】出来た切島ですら地面をガリガリと削って大きく後退させられる。
もう一人狙われていた梅雨ちゃんはギリギリのところで回避。張り付いていた壁を大きく凹ませる破壊力に危機感を煽られながらも冷静に頭を働かせる。
想定外にも対応された。宍田に一瞬の焦りが生じるも、やるべき事は決まっている。宍田の背中に乗っていた円場がバシバシと背中を叩いて喝を入れた。
「よもやこちらの動きが読まれているとは……!!」
「焦んな宍田!上鳴は仲間を巻き込めな──」
「甘ェよ!!」
「──え」
BUZZZ!!!
上鳴の放電に指向性は持たせられない。故に仲間を巻き込む位置での放電はしないと踏んでの奇襲だったのに、それが一切の躊躇いのない放電。
電気をガード出来るはずもなく、奇襲に完璧なカウンターを合わせられてしまった。
ほんの一瞬だが全力の放電、宍田と円場をダウンさせるには十分な威力だった。
「な、何故……」
「っはあ……!お前が切島ぶっ飛ばして、梅雨ちゃんが避けた後に口田を捕まえて下がってくれたからな!」
「奇襲に対する初手は上鳴ちゃんって決めてたの。私達の中で一番確実にカウンターが出来るのは上鳴ちゃんだから」
「クッソ、普通にぶっ飛ばされた。宍田強いな!」
開始早々でB組から二名の脱落が発生。梅雨ちゃんと切島によってしっかり投獄までされてしまい、あっという間にB組がかなりの不利を被ることになった。
その後も塩崎と鱗だけでは上鳴の広範囲攻撃と切島の突破力を防ぎ切ることはできず、梅雨ちゃんのサポートと口田による索敵もあってほぼ一方的にA組が勝ち星を上げた。
「珍しく真っ当に上鳴の強みが発揮されていたな。事前の打ち合わせといい素晴らしいと言わざるを得んが……切島は正面戦闘のセットアップを、口田は搦手の選択肢を増やせるようにすると尚いい。精進しろ」
「「ッシャア!!」」
「ケロ」
「……!」
「ぐぬぬぬ……!第一セットはA組の勝利か……っ!!」
(((目が怖いよブラキン先生……!)))
宍田→放電でダウン
円場→放電でダウン
鱗→口田に気を取られて梅雨ちゃんにぶん投げられて塩崎に衝突してダウン
塩崎→上鳴と切島に【ツル】を全投入。苦戦してたら横から飛んできた鱗に衝突してダウン
鱗「切島が塩崎の【ツル】を千切りながら突進しててマジでヤバかった。あれはもうターミ○ーターだって」
塩崎「」ガクブル
上鳴「ああうん、アレは怖えよ……」