え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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考えるより叩く方が早い時もある

 

 

 

 第一セットが終了し、A組でもB組でも反省会が行われていた。

 相澤、ブラドキングからそれぞれアドバイスを貰いつつ、生徒同士でも互いの短所や長所を指摘し合ってより磐石なものにしようとしている。

 

 A組の悪かった点は上鳴や切島が己の土俵に持ち込む事に苦戦した、或いはやや他人任せになりがちなところだ。B組はそれ以前の問題で嘘をつきたくない塩崎に嘘をついていた時点でまともなチームワークは期待できなかった。奇襲や奇策を使えないのであれば正攻法で立ち向かえばいいものを、説得を諦めたのはいい判断とは言えない。

 実際にそれをブラドキングだけでなく、B組の仲間からもそこを指摘されている。

 

 しかしそれもさほど長い時間は取れず、すぐに第二セットが始まる。

 

 A組からは常闇、葉隠、青山、八百万。B組からは拳藤、黒色、吹出、小森が。拳藤は八百万を、黒色が常闇をライバル視……同士として見ており始まる前からバチバチしている。

 互いに纏め役として動くことの多い八百万と拳藤。職場体験先が被ったり印象が被っていたりと、何かと一緒くたにされガチだ。

 

 しかし個性の万能性や成績で見れば八百万に軍配が上がり、同列と見られることに嫌気がさすこともしばしばあったと拳藤は告げる。

 

「だからさ、個人的にちゃんと戦ってみたかったんだよね!」

「……!誠心誠意、お受けいたしましょう!」

 

 頼もしい女子リーダー二人の大胆不敵な宣戦布告。チームメンバーも自然と気がひきしめられる。

 

 え?じゃあ常闇と黒色の因縁的な物は何なのかって?

 

「常闇……お前は俺と、同類だ……」

「……貴様も深淵の理解者か」

「ヒヒ……常しえの黒に住む……」

 

 

 ……まあ、ご覧の通りです。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……なーんて、だいぶビックマウスだったかな?」

 

 開始から数分としないうちに拳藤達の前に現れたのは常闇の【黒影(ダークシャドウ)】。遠くから襲来したソレは両手を広げて威嚇する獣のように彼女達を油断なく睨みつけている。

 このまま好き勝手に暴れさせているだけで消耗は計り知れない。拳藤は即座に味方に指示を出す。

 

「任せるよ黒色!」

『様子見ジャネーヨ!!今ココデヤレル奴ァヤッチマウゼ!!?』

「ああ……行ってきます(・・・・・・)

 

 

 

 

 

 【黒影】を遠くまで伸ばしての索敵兼襲撃。インターン前とは比較にならないほどの射程を得た【黒影】は長射程高火力というまさに射程の暴力といった戦闘能力を獲得した。

 

 隠密には優れていても索敵は難しい葉隠に、個性の連続使用による負荷が大きい青山……ましてや司令塔の八百万を前線に立たせるには意味が薄過ぎる事を思うと重要な役割を担っている。

 

 とりあえず相手を発見したらしい【黒影】を呼び戻し、準備を整えてから向かうべきだろうと思ったその時。

 

(フミカゲ!!ヤラレタ!!)

「っ……やはり(・・・)か!青山!」

「ウィ☆」

 

 臍の緒のように常闇と繋がっている【黒影】からの申し訳なさそうな報告。想定していたように黒色が【黒影】に“潜り込んだ”らしい。

 

 黒色支配。個性【黒】はあらゆる黒に溶け込むことが出来る。個性伸ばしの一環で動かせる物であれば溶け込んだ先の黒い物を動かすことが出来るようになっている。

 その中には影で出来た自我を持つ個性、即ち【黒影】も含まれているわけで。こうして索敵に使っていれば黒色が潜り込んでくる可能性は十分に考えられた。

 

 勢いよく帰還する【黒影】は常闇の制御が効かずに勢いのままに殴りかかってくる。予め【創造】してもらっていたライオットシールドを構えるとドゴォ!!と鈍い音を立てて漆黒の爪が阻まれた。

 

「ヒヒ……読まれたか。だが俺がいる限りお前は【黒影】を安易に使えまい」

「ならば俺ではない味方に任せるだけだ!」

「ん?ぐっ……!?」

「命中☆」

 

 黒色の個性対策かと思われた透明のライオットシールドの裏から【ネビルレーザー】が透過され黒色の顔を強かに殴りつけた。

 油断、ではなくその位置から攻撃は出来ないと判断しての位置取りだったのだが、まさかライオットシールドを貫通して真っ直ぐに飛来するとは想定していなかったらしい。

 

 第一セットと同じ初手から少人数での奇襲を敢行したB組だが、これでは第一セットの焼き直しではないかとブラドキングが顔を顰める。

 

 しかしそれでお終いに出来るほどB組も愚かではない。

 

 

「……!?何か来ます!」

「え……ッッ!!?」

 

 

 ドドドドドドォッ!!!

 

 

 そこら中のパイプや建物を薙ぎ倒して突き進んでくる巨大な物体。ギョッと全員が目を剥いて驚き、あまりにも物量ゴリ押し過ぎる攻撃に慌てて回避に移った。

 

 吹出漫我の個性【コミック】だ。オノマトペを具現化し、オノマトペが表す現象を再現させたりと汎用性の高い能力だ。

 今回使われたオノマトペはゴンッガンッといった打撃力に特化したものばかりで、一直線に建物をぶち抜くだけの破壊力を生み出している。

 

 かなり強引な遠距離砲撃支援だが、黒色を確保された事実は変わらずに【ネビルレーザー】のクリーンヒットでダウンしている黒色を【黒影】に運ばせて投獄完了。A組が一歩リードだ。

 

「ぬぅ……!こうも派手に破壊されては合流もままならん!」

 

 敵チームの投獄を終えた常闇は苛立ちを隠さずに声を少々荒らげる。事前にしておいた地形の把握がほぼパーになったとなれば怒りたくもなるのだろう。

 そして派手に破壊された地形は想像よりもずっと動きにくい。散らばった破片や積み重なった瓦礫は視界の一部を占領し、死角を生み出して奇襲の可能性を嫌でも考慮させる。

 

 とにかく合流を。はぐれた瞬間に位置を知らせた青山の【ネビルレーザー】を目印に常闇と葉隠は移動する。

 

 他三人が合流に動けている中、八百万は運の悪さもあったのか一人孤立状態になってしまっている。咄嗟の回避先をもう少し選ぶべきだったか、と悔やみながらもその顔に焦りはない。

 

「……恐らくですが、計画通りにいってませんわね?」

 

 その理由は今の攻撃が明らかにアドリブで行われたものだと判断したからだ。

 

 推測でしかないが、相手チームが一番警戒しているのは常闇であって八百万ではない。そうなると先程投獄された黒色は【黒影】の支配権を奪えるというこれ以上ない切り札になるのだが、それがあまりにも早く落とされたので咄嗟に援護をしようとした……という感じだろうか。

 でなければこんな敵味方を問わずに妨害になりかねない大規模攻撃をほとんど何の効果も見込めないタイミングで放つ意味は無い。

 

 そして八百万のその考察自体は半分当たりで半分間違っている。

 黒色がやられかけた事を察知した吹出がアドリブ気味に攻撃を放ったのは正しいが、何の狙いもなかったわけではない。

 

「……アッチか!よォーし、もっともっとドゴンッって感じのをババーンと撃っちゃうぞ!」

「うふふ、うふふ……キノコまみれにしちゃいノコ!」

 

 A組が分断されかけた時、合流の目印に使われそうなのは【黒影】か青山の【ネビルレーザー】だろう。そう当たりをつけた拳藤はそのどちらかが見えた方向に向けて攻撃するよう、吹出と小森に指示を出していた。

 実際、上空に立ち上るキラメキのレーザーを目印に合流していると同時に、B組からも位置がバレた彼らには再び攻撃が放たれている。

 

 一方でそちらに向かって移動しない……というか出来ていない八百万は現状フリーになってしまっている。位置を把握されていない為に矛先が向けられていないのだ。

 

 であるならば八百万がすべきことは。

 

 

 

 

 

「……な、何が起こった?」

 

 吹出と小森の攻撃で撹乱できているうちに八百万を叩く。それが拳藤の役割だったのだが、中々八百万を見つけられずに困っていた所に響いた砲撃音。もしや大砲でも【創造】して砲撃したのか、とやり過ぎな攻撃を想像したけれどそれにしては爆発音は聞こえてこない。

 

 八百万が何をしたのか分からないまま動くのは危険かとも思ったけれど、幸運にも撃ち放たれた物体の軌道を目指することが出来た拳藤は八百万の元に向かった。

 

「見っけ!!」

「っ……!来ましたわね!」

 

 彼女の傍らには先程使用したであろう大砲が構えられ、相手の得意分野に持ち込まれたとは思えない堂々たる態度で拳藤を見据えていた。

 

 先手必勝!と巨大化させた手のひらを思い切り叩きつける。第一セットの宍田よりも強く見えるそのパワーは生半可な防御であればソレ諸共殴り飛ばしてしまいそうだ。

 

 近接戦闘に持ち込んだ時点で私が有利、と思いながらも決して気は抜けない。拳藤に出せる攻撃力など、八百万が【創造】する道具次第で幾らでも上回ってくるのだ。

 ここで八百万を落とさなければこれ以上のチャンスは来ないと分かっているからこそ、拳藤は果敢に攻め立てる。

 

「『一は全、全は一』」

「……?」

「本来の意味とは異なる捉え方ですが……私のスタイルを確立させた言葉ですわ」

 

 辛うじて決定打を避け続ける八百万が不意にそんな事を話し始めた。一体なんの事だ、と視線だけで問いを投げかける。

 もう何度目かの【大拳】による攻撃を回避した八百万はパァンッ!!と小気味よい音を立てて手を合わせた。

 

「戦場全体を俯瞰し、一手一手で戦局全体をコントロールする……一つの行動がその後を左右し、戦局を作るのは一つ一つの行動ですわ」

「それで!?小難しいこと喋ってる間に倒しちゃう───うぐうっ!?」

 

 拳藤が踏み込んだ瞬間、八百万の身体から勢いよく伸びてきた角材がカウンター気味に腹部へと突き刺さった。肺の空気が無理やり押し出され、胃の中身が逆流してしまいそうな重い打撲に拳藤の攻めの手が緩められる。

 

 腹を抑えて後ずさる拳藤。八百万は油断なく更なる手を打つ。

 

「砲撃の音を聞きつけた誰かがここに来ることを想定していないはずがないでしょう!?」

「うわっ!?」

「トリモチ等を元に再現した峰田さんの【モギモギ】……!そして───」

 

 ベタベタと拳藤に粘着する球体が放たれ、振り払おうにも一つ一つに重りが仕込まれたソレらは個数が増えるにつれて更に動きを阻害する。

 移動も回避も不可能。ならばどれだけ鈍重であろうと問題ない。八百万が創り出した物は。

 

 

「──これでフィニッシュです!!」

 

「……!相澤先生の、捕縛布か……っ!?」

 

 形状記憶合金を編み込まれた特殊な布。擬似的な【モギモギ】へと狙いを定めての投擲ならば八百万でも可能だった。

 粘着性の球体と捕縛布。如何にパワー自慢の拳藤でもこの状況を覆すことは出来ない。彼女に出来ることは仲間達の勝利を信じて大人しく確保される事だけだった。

 

「砲撃音での位置バレ、近接戦闘なら不利……全部ブラフだったかあ……」

「ふふ、情報の明かし方も立派な戦術の一つですわ」

「参った、こりゃ勝てないや」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 一方その頃。遠距離から豪快に攻撃を受けていた常闇達はというと。

 

 

『WRYYYYYッ!!』

 

「うわわわっ!!?や、ヤバいノコおおぉぉぉっ!?」

「ババンとピンチだこれは!?バビューンと逃げなきゃ……っ!?」

 

「わははーっ!いいぞ【黒影】ーっ!」

「蹂躙だね☆」

 

 【影法師(スタンド)】の形態を取った【黒影】による超スピードのラッシュ。あまり機動力に優れない吹出と小森は転がるように逃げ回るしかなく、一方的に殴り続ける【黒影】を葉隠と青山は遠巻きに応援&同情していた。

 

 八百万の砲撃支援の内容は消毒液とサーモグラフィーゴーグルの二つで、咄嗟に考えたとは思えないほど適切な支援物資だった。

 ソレを受け取った常闇が【黒の堕天使】……【黒影】に抱えられての飛行技を発動して一気に距離を詰め、それからは形態を変えての蹂躙に。攻撃が止めば葉隠と青山も距離を詰める余裕が生まれる。

 

 その結果ますます逃げ場がなくなった二人は泣きそうな顔で逃げ回っているというわけだ。可哀想が過ぎる。

 

「……【黒影】お前テンションがハイになってるな……?」

『ンッン〜♪実ニ清々シイ気分ダ……!!』

「寄せんでいいからさっさと捕まえろ」

『アッハイ』

 

 残念ながらそこから逆転する術を持たない二人はものの数秒で鎮圧され、二度目の4-0でA組が勝利した。

 

 





※没ネタその1

吹出「『ポーヒー』!!『ポーヒー』!!」
青山「サ○ヤ人はやめて!?」
葉隠「あっいた!このぉ!」
吹出「『ピシュン』」
葉隠「消えた!?」

※没ネタその2

吹出「今、君達に音を貼り付けたッ!」
常闇「う、うぐぅっ……!?うるさい……っ!!」
吹出「これが僕の新技……【エコーズ:act1】ッ!!」
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