え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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進化したエゴイスト

 

 

 

 鉄。それはもっともよく知られた金属であり様々な性質を持ちつつ、正しく加工されてあらゆる場面において活躍してきた素材だ。

 叩けば広がって叩けば伸びる展延性を持ち、その粘り強さによって常温の状態でも加工が可能という金属加工の入門編のような性質を持っている。

 

 鉄哲徹鐵の個性【スティール】はそんな鉄の性質を身に宿す能力と言ってもいい。

 肉体の一部や全身を金属化することができ、A組の切島と同じく盾にも矛にもなる堅実で強い個性だ。

 

 唯一の弱点といえば彼のステータスは体内の鉄分の量に左右される為、A組の砂藤のように定期的な補給が必要となる点だろう。

 逆に言えば消耗しきる前は難攻不落の鉄人。真っ向勝負で殴り勝つにはそれ相応の攻撃力と防御力を求められる。

 

 そんな彼は林間合宿での個性伸ばしで『火のついた(かまど)の中でひたすら熱に耐える』という命懸けの訓練を行った。その結果個性発動中に限るが常人では活動不可能な低温や高温の中でも戦闘を継続できるという強みを得た。

 

 轟の個性はまさに炎熱と氷結だが、その実態はあくまでも熱の変化による現象。まさに鉄哲が克服した低温と高温を武器にしてくるので楽勝……と思っていた。

 

 

「はっはー!さっきから氷ばっかり撃ってきやがるが効いてねェぞォ!?炎はどうしたァ!!」

「……」

 

 実際に轟は鉄哲に対して打つ手が無いのかマッチアップが決まってすぐに一度高火力を受けたっきりで、それ以降は効き目がないと分かっている氷結を連打するばかり。次から次へとオカワリが補充される壁を殴り砕いて愚直に突き進む様はいっそ清々しいまでに力強い。

 

 もう何度目かも分からない氷の砕ける音にいい加減辟易してきた鉄哲が声を荒げた。

 

「テメェ……!さっきからやる気ねェのかァ!?」

「……いや、そろそろいいか」

「は───ガッ!?」

 

 ウガァ!と苛立ちを前面に押し出した突撃に対し、轟は冷静に足元に小さな氷柱を作って足を引っ掛けさせて転ばせる。物の見事に引っかかった鉄哲は重厚な金属音を立ててぶっ倒れた。

 

 いや搦手かい!何て抗議の声をあげようとしたのも束の間、鉄哲の首に轟の腕が差し込まれてあっという間にガッチリと裸絞を決めてしまった。

 

「ッ……!?」

「お前の個性、鉄の性質が身体に出るんだろ?」

「何を──」

「一度熱した鉄ってのは、急速に冷やすと脆くなるらしいぞ」

「──え」

 

 そんな馬鹿な。信じたくない情報を告げられた鉄哲は素で『嘘だろ?』的なニュアンスを滲ませた動揺を顕にした。

 一応普通に授業を聞いていれば習っている範疇の知識なのだが、勉強の時間だー……と意識の区切りが出来ていない鉄哲にはそれが嘘なのか本当なのかも分からない。おい日本一のエリート校に入った男子高校生。

 

 実際の所は個性の鉄と本物の鉄では色々と異なる部分があるのだろうが、それを聞かされて不安にならないはずがない。一瞬の気の緩みが致命的な絞め落としに繋がってしまった。

 

「ぅ……!?だ、だが……個性が発動されてる間は絞め落とせねえぞ……!」

「……みてぇだな」

 

 その状況でも防御を固められてしまえば絞め落とし切れない。金属的な硬さを得た身体を絞めるには少々力不足だった。

 

 この僅かな猶予、少しでも暴れて何とか脱出できないものかと鉄哲が反動を付けようとし。

 

「だから、落ちるまで絞めるぞ」

「…………んん!!?」

「ついでに高温と低温で交互に攻撃してやる」

「おまっ……!?痛だだだだだ!!?」

 

 何か今変なこと言わなかった?確認するよりも早く轟は有言実行、左右の個性で交互に鉄哲を消耗させ始めた。

 そして絞まらないとは言ったものの、力強くギリギリと絞め上げられて痛くないはずがない。喉に食い込む前腕に苦悶の声を挙げた。

 

「ちょ、ヤベエ!?コイツ強ェ!誰かああああ!?俺このままだと絞め落とされっから助けてえええええ!!?」

「っ……!」

「無言で絞めるの怖っ!?せめてなんか言えよ!?怖ええよ!」

 

 轟からすれば一刻も早く落としたいので真剣かつ全力で絞める他なく、無駄口を叩く余裕すらない。なのでイケメンが真剣に首を絞めてくるというある意味落ちる人が多そうな光景が生み出されていた。誰得なんだコレ。

 

 そうこうしている間も鉄哲の装甲はジワジワと抵抗力を削がれ、少しずつだが首が圧迫されて息苦しいという感覚が生まれ始めた。

 

「ちょ、マジでヤベ、ェ……ッ……」

「……落ちたか」

 

 個性が効かないなら個性以外で勝てばいいじゃない。そんな屁理屈じみた反撃に鉄哲はカクンと意識を手放した。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

「……結局2-0でA組の勝ち、か」

 

 轟が鉄哲を絞め落として投獄している頃、障子達は骨抜達と交戦中だったのだがまさかのほぼ引き分けのような終わり方をしていた。

 A組が障子、尾白、飯田でB組が骨抜と角取という人数差があったにも拘らず、二人で三人と引き分けたのだから充分に賞賛すべき事だろう。

 

 事の顛末は飯田の蹴りを受けてダウン寸前まで陥った時、最後の力を振り絞って近くの巨大な煙突を【柔化】させると角取にそれを倒すように指示を出した。

 不意打ちなら障子すら運んでしまえるパワーで突き倒された煙突は勢いをつけてぐらりと傾き、倒れる寸前で【柔化】を解かれたことで超質量の一撃を落とすことになった。

 

 結果、まともに食らわずとも余波だけで人を吹き飛ばす攻撃によって轟を除く全員がダウン。やっと轟が着いた時にはタイムアップの報せが響いていた。

 

 気絶者が多いこんな状況で反省会をしても仕方ない、と述べた相澤の言葉に従ってすぐに第四セットが開始されているのだが。

 

「……これはもう、強いとしか言えんな」

「だな」

 

 彼らの視線の先にあるモニター。そこには第四セットの戦いがカメラを経由して映し出されていた。

 

 A組からは爆豪と瀬呂、耳郎に砂藤と汎用性と唯一性を兼ね備えたメンバーのチーム。B組からは凡戸に泡瀬に鎌切、そして推薦入学者の一人である取蔭のチーム。

 どちらにせよ爆豪という男がどう動いてどう対応されるかで全てが変わりそうなマッチアップだが、教師達を含めて展開が読み難いと思われていたのだ。

 

『舐めやがって……行くぞォ!!』

 

「……個々の役割分担、細かく決めすぎない自主判断を信じた指示に加えて当人の戦闘能力」

「全寮制が始まった辺りから変化は見られたが、まさかここまで変わるとはな」

 

 B組の作戦は独断専行に踏み切るであろう爆豪と他のメンバーの間に生じる時間差を突く前提のものだった。

 協調性皆無の暴君にして自他共に厳し過ぎる男。故に想定と噛み合わない現実の格差に苛立ちを募らせた所を狙う算段を立てていた。

 

 では爆豪が味方と正しく連携を取ってしまえばどうなるか?

 

 

『行け!』

 

 

 シュガーラッシュ!!

 

 

『任された!』

 

 

 ハートビート・サラウンド!!

 

 

 

『冬は調子がクソでよォ……!!』

『ンのやろッ……!?』

 

 

『やっと温まってきた』

 

 迅速にして円滑な連携。泡瀬と凡戸の二人が瞬く間に撃破&確保されていく。

 

 そして耳郎の索敵に鎌切が引っかかる。

 

 

『クッソが……!』

『遅ェ!!』

 

 大きく振り抜かれた鎌も当たらなければ大きな隙を作るだけだ。器用に調整された【爆破】が変則的な軌道を生み出し、更なる推進力を与える。

 刃を躱した刹那の間に鎌切の首根っこを鷲掴みにし、【爆破】による回転をそのままパワーへと変換する。

 

 

 『【爆破式(エクス)カタパルト】ォ!!!』

 

 

 ド派手な音を立てて壁に叩きつけられた鎌切が白目を剥いてズルリと崩れ落ちる。それと同時に微かに聞こえた遠くでの爆発音。

 グリン!と振り返ってみれば宙に浮かぶ取蔭の姿が発見され───

 

 

 

 

 

 

「……ご、五分足らずで全滅だと……!?」

「素晴らしい。アイツもアイツらも、やるようになったじゃないか」

 

 まさに完全勝利。最初から最後まで主導権を握り続け、相手の思惑を真正面から踏み潰して乗り越えるという横綱相撲の如き戦いだった。

 

 この時点で、というか第三セットで負けた時点でB組の負けは確定している。そこに畳み掛けるような四つ目の黒星にさすがのブラドキングも語気が弱々しい。

 

 何故かって?そんなもん。

 

 

 

「うーっし、やるかぁ」

「オイラ達もやってやらァ!!」

「僕だって……負けない!」

「じゃあ、作戦通りに頑張ろう!」

「お、おーっ!」

 

 

(本気で心折れないか心配してしまうな……)

 

 第五セットが一番ヤベエからですよ。

 

 

 

 






爆豪「今からそっち行ってぶっ○してやる!(有言実行)」
B組「わァ……!ァ……」

ブラキン「わァ……!ァ……」
相澤「…………(静かに同情している)」

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