え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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一人だけインフレ後の火力してるんだけど

 

 

 

 移は強い。

 

 今更確認するまでもないけど、移には弱点らしい弱点がない。なのに強みを押し付けられると一方的に蹂躙されるしかない理不尽さがある。

 

 ……情けないけど今の私達に移に勝てるだけの手札は人使の【洗脳】しかない。

 私やレイ子の個性では先に感知されて叩き落とされるし、庄田の個性でも大体同じ末路を辿ると思う。物間が【コピー】して増やしたとしてもそれは変わらない。何なら無駄まである。

 

 私達の作戦は『とにかく移以外のメンバーを一人でも多く捕縛する』だ。その後はもう逃げに徹して人数差での勝利を狙うしかない。

 

 その為には確実に脱落させなきゃならない人がいる。

 

 緑谷出久。彼と移を同時に相手取れるだけのパワーも防御も私達には無い。それ以外ならまだ何とか……いや、その油断が命取りになるんだった。

 

 私とレイ子の役目は緑谷以外を引き付けて切り離すこと。その間に物間と人使がやってくれると信じて。

 

「……ウラメシい。撃ち落とされた」

「ん」

 

 ああ、やっぱりか。他は知らないけど移が放置してくれるはずがないか。

 庄田の【ツインインパクト】で強引に気絶させられたら、って思ってたけどさすがに無理があった。打撃を与えた箇所にもう一回強化された打撃を発生させられる……つまりは何の痕跡も残らない小細工だから奇襲になると思ったんだけど。

 

 一つ残らず落とされたんじゃどうしようもない。今のうちに少しでも距離を取らないと……。

 

 

「よぉ」

 

「っ……!?」

「……ん」

 

 ……ダメか。分かっていたつもりだけど、速いね。もうこんなところまで来ちゃったんだ。

 

 移の右手には巨大な瓦礫を、左手には峰田の【モギモギ】が。ということは私の予想は間違ってなかったらしい。

 

「……間飛って、自分以外はワープできないって聞いてたけど?」

「ああ……そりゃ厳密には“重量制限の問題でほとんど俺以外をワープ対象としてカウント出来ない”って話だな」

「ん」

「っ……!?まさか、麗日の個性で……!?」

 

 移が自分以外に何かをワープさせられないのはコスチュームでほとんど重量制限を埋めてしまうからだと聞いた。今朝会った時点で軽くなったコスチュームを見て嫌な予感はしていたんだ。

 

 今、移が持っている瓦礫には一切の重さが無い。麗日の【無重力】で重さが消えている(・・・・・・・・)のだ。

 理論上、彼の個性は麗日が挟まるだけでどんなに重たい物でもワープに巻き込んで持ち運べてしまうことが証明されちゃった。

 

「死なない程度に派手にいくが……まあ大丈夫だよな?」

 

 大丈夫じゃないから加減はして欲しいかな。せめて一秒でも長く移を足止めしないと……!!

 

 

 

 

 

 柳と小大に出来ることはそう多くは無い、というか出来ることは多くても間飛に通じないものが多いという話だ。

 二人の個性は既存の物質を変化させ、操作する能力だ。物理的な干渉でどうとでも出来るのであれば、間飛は簡単にそれらを迎撃してしまう。

 

 それでも中々踏み込んで来ないのは心操の位置を探っているからだ。

 もしB組がこの二人を落とされると困ると考えているのなら、ここに来るのは庄田よりも心操の可能性が高いと間飛は睨んでいる。物間?緑谷から逃げ切れるんならまあ考えてもいいんじゃない?

 

 冷静に考えた場合、A組の負け筋は誰も捕まえられないまま間飛以外のメンバーが一人でも捕まるパターンが最も可能性が高い。正面からぶつかり合えばほぼほぼA組が勝つのだから当然だ。

 そこで確保人数の差という条件での勝利を狙う為に間飛以外を狙うんじゃないか、と間飛達は推察した。

 

(俺以外を狙って確実に捕まえられる個性持ちは心操……と、心操をコピった物間の二人)

 

 故に、二人を相手に戦闘を長引かせて心操か庄田を釣れないかと試しているのだ。派手に瓦礫を叩きつけたのも心操達に聞こえるような音を立てる為だ。

 その間も決して油断はしない。探知範囲外から物間と庄田の二人がかりの【ツインインパクト】で遠距離攻撃を実行されてもおかしくないからだ。

 

 しかしそのどちらもこちらに向かってくる気配はなければ援護をしてくる様子もなく、緑谷の方に三名を固めているらしい。堅実に一人ずつ落とす腹積もりのようだ。

 

「……これ以上は同じか」

「っ、この……!」

 

 そんな人物では無いと分かっていてもその一言に苛立ちを覚える。牽制や足止めを目的に放たれていた柳の【ポルターガイスト】の軌道が攻撃的なものに変わった。

 複数箇所から取り囲むようにぶつけようとしていた【サイズ】の変わった瓦礫が間飛目掛けて殺到する。

 

 

 グシャリ、と音を立てて衝突するそれらの中に間飛の姿はなかった。

 

「しまっ──」

「俺相手に自分の視界を遮るのは悪手だ」

 

 頑なに使われなかった左腕につけられた【モギモギ】が柳の背中に複数個付着する。気づいた時にはもう遅く、そこから【瞬間移動】で粘着から逃れた間飛が正面に現れた。

 

 足裏を腹部にあてがい、一息に押し飛ばす。蹴ったのではなく押し飛ばしたことでダメージは抑えられたものの、強いノックバックによって背中の【モギモギ】が壁にくっついてしまった。

 この時点で柳は移動が不可能となった。

 

 間飛が動いたのを見た小大も反撃の為に動いた。足元にあった小石を投げると同時に個性を最大出力。リリースと同時に【サイズ】が膨れ上がり、人一人ならば容易く潰してしまいそうな岩石に変わる。

 

「ふんっ!!」

「……!!」

 

 が、間飛に届くことは無い。振り抜かれた拳が巨大化した小石を砕き、個性が解かれたことで極小の欠片となってパラパラと落ちる。

 

 あらゆる抵抗が片手間に叩き落とされる。自発的な攻撃力の低さという弱みが露骨に出てしまっている。

 

 

「ミズーリ・スマッシュ!!」

 

「ふぎゃ!?」

「っ!?」

 

 スカァンッ!!と小気味よい音を鳴らし、加減された手刀が二人の頭を叩いた。致命傷には程遠いけれど、的確に意識を刈り取るレベルに調整された一撃を受けた。

 電源が落ちるようにカクンと意識を手放した二人の身体から力が抜け、倒れるところを間飛に止められる。

 

「これで二人」

「……ん」

「あら?まだ意識あったか」

 

 しかしギリギリのところで意識を保っている小大から僅かに声が聞こえた。残念ながらダメージ自体はしっかりと通っているので、ここから反撃を……というのはかなり難しいだろう。

 

 それを分かっている間飛は小大に追撃を入れようとはしないし、小大もこれ以上の抵抗は無意味だろうと動こうとはしない。

 

「くや、しいなぁ……」

「……」

「勝ちた……かった、のに……」

「……今回は俺の勝ちだ。次も負けねえからな」

 

 悔しさを口にしながら、今度こそゆっくりと沈黙した。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 少し時を遡って間飛が二人の方へと向かった直後、麗日達は緑谷のフォローに向かっていた。

 緑谷と物間が戦えば緑谷が勝つとは思う。しかしそこに心操という変数が入るだけで結果がまるっきり変わってしまってもおかしくはないのだ。それだけのポテンシャルが心操にはある。

 

 間飛が最後に探知した方角へと走る三人。迂闊に声を発すると心操に割り込まれて【洗脳】されるかもしれないと、予め決めていた二、三種程度の簡素なハンドサインで会話しながら進んでいく。

 

(……?デクくんが戦っとるんやったら静かすぎん?)

 

 麗日がふと気づいた違和感。緑谷が戦っているのならばあの超パワーを振り回しているはずなのだから何かしら音が響くはずなのだが、互いの足音すら聞こえるくらいに静まり返っている。

 まさか既に決着がついたのか?それとも別の場所で戦っている?湧いた疑問は次から次へと仮説を増やしてしまう。

 

 他の二人の肩を叩いて引き留め、口元を見やすくした状態で麗日は疑問を共有した。

 

「……静か過ぎない?」

「言われて見りゃ確かに……緑谷が戦ってるんならもうちょいガンガン音しそうだよな」

「もしかして、負けちゃった……?」

 

 最悪のパターンが頭を過ぎるが、それにしてはアナウンスも何も聞こえてこない。誰かが確保された場合は確保されたというアナウンスが流れるはずだ。

 

 じゃあ結局緑谷はどうなった?と振り出しに戻ってしまう。兎にも角にも緑谷の姿を確認しないことには始まらない。

 出来れば間飛に戻ってきて欲しいけれどそれは難しいだろう。自分達の足で探すしかない。

 

 それにしたって一体どこに……。

 

 

 

 

「君もうなんでもアリになって来たねえ!?」

「…………」*1

「……なあ、別に【洗脳】使わねえから答えてくんね?コレ、何?」

 

「……いた、けど……何?」

「何だあの黒いの」

「何アレー!?」

 

 あ、みっけ……たけど、その黒いウネウネis何?

 

 

 

*1
死んだ目をしている緑谷






柳「反則!チート!バグ!イレギュラー!」
間飛「罵倒なのか褒め言葉なのか……」
小大「ね」
柳「握力500kg!森の賢者!学名ゴリラ・ゴリラ!」
間飛「後半全部ゴリラの事じゃねえか」
小大「んふっ……w」

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