え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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番外編⑫怪物の宴・後編

 

 

 

 

 二人が戦っている場所の上空。空を埋め尽くさんばかりの……というには少々足りないが、20はくだらないドローンが滞空していた。

 

 ただのパンチやキックの余波だけで機体がグラグラと揺れており、それでも何とか戦いの様子を俯瞰して撮影している。

 

 それらが撮影した映像はそのままモニタールームへと送られ、そこでは相澤を筆頭に何人もの教師や生徒達が息を飲んで見守っていた。

 

「……分かってはいたが、ここまでとは」

 

 思わず零れた相澤の呟きはこの場に集まった者達の総意だ。ヒーロー科の1年生全員にビッグ4、公安から来た二人も口に出さずとも同じ感想を抱いている。

 

「これ切島でも危なそうだな」

「……自信ねえな。いや普通に無理だわ」

「鉄哲は……君も無理か。アレは硬さだけでどうこうできなさそうだ」

「ンな事ねえ!……って言いてえが、無理だな。ぶっ飛ばされて終わりだろうなあ……」

 

 1年生随一の防御力となれば切島か鉄哲の2人だろう。しかしその2人ですらスッパリと無理と判断を下す超パワーの応酬は彼らにより鮮烈に凄まじさを伝える。

 

 パンチ一振りキック一撃が当たり前のように衝撃波を撒き散らし、両者の攻撃がぶつかり合えば轟音と共に周囲の地面に亀裂が入る。

 【瞬間移動】による回避や読み合いの尽くをオールマイトが読み切って迎撃、或いはカウンターを狙っている。間飛はそれを更に上回ってやるとばかりに【瞬間移動】を絡めて猛攻を続けている。

 

 この戦いがたった二人によるものだと聞かされていなければ、一体どこの組織同士の衝突かと勘違いするだろう。

 

 大半が口をポッカリと開けたままでモニターを見つめる中、何人かは確かな意志を持って観察し思考を回していた。

 

(右、跳んで上から……ガード後に足払い…………【瞬間移動】で離脱して……)

(これで五回目。アイツの飛び蹴りに助走は多分要らねえが、狙い所でしか使わねえのか使用可能な条件があるのか……)

(癖らしい癖が無い分間飛は読まれにくいはずだが……オールマイトさんは何を基準にワープ先を読んでいる?ワープを確認してから反応できる時と出来ない時の差は一体……)

 

 上から順に緑谷、爆豪、相澤。その他にもミリオや轟といったストイックな生徒達は漠然と見るのではなく、考察や脳内シミュレーションを重ねながら見ている。一つ『自分なら』を挟むと2、3手としないうちに負けてしまう脳内と比べ、現実で互角を演じる間飛はより一層異質さが際立つ。

 

 純粋なパワーやスピードは勿論のことオールマイトの【瞬間移動】への先読みと対処能力、間飛の判断速度や手数の多さには舌を巻いてしまう。

 

「……凄い」

「ね」

 

 B組のグループから聞こえてきた単純で、しかしそれ以上無い賞賛。それが全てだろう。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 オールマイトと間飛の戦いは『どちらが先に崩されるか』で結果が変わってくる。

 

 【瞬間移動】を併せ持つ間飛には絶対の回避と機動力があるけれど、対するオールマイトは長い戦いの中で鍛えられた頑強な肉体と積み上げた経験値による『予測』がある。

 まともに一撃を受ければ崩されるのは間飛の方だが、一方でオールマイトには持久力という弱みが生まれている。

 

 間飛に一撃を入れられるのが先か、オールマイトの体力が削られるのが先か。どちらかが崩れた瞬間に天秤は大きく傾くだろう。

 

「Shit…!!離脱が早い!」

「ッッッ……!!危ねえなマジで!?」

 

 竜巻の如きラリアットで絡めとったのも束の間。【瞬間移動】で抜け出されると同時にデコピンの衝撃波がオールマイトの額を殴りつけた。

 既にクリーンヒットでなくとも何発かを叩き込んだというのにオールマイトに倒れる気配はなく、それどころか気迫が増しているのではないかとさえ思う。

 

 ならば、とその場で一秒間の回転……そして【瞬間移動】を挟んでオールマイトの頭上へ現れると。

 

「【偽・踵半月輪(ルナ・アーク)】ッッ!!」

「ぐっ……!?おおおおっ!!?」

 

 回転の威力を乗せた後ろ回し蹴り。本家本元のミルコが使った時でさえ余波でガラスや鉄製品を破壊する威力のソレを、【フィジカルギフト】で強化されたパワーで放てば200kgを超えるオールマイトすら吹き飛ばすのは当然だろう。

 

 ギリギリで挟み込まれた腕のガード諸共吹っ飛ばされる。今までなら耐えられていたはずのノックバックに耐えられなくなっている。チャンスだ。

 攻め立てるならここしかないと間飛が追撃に入る。だが……。

 

「New Hampshire SMASH!!」

「なっ────痛ゥ!?」

 

 オールマイトの身体が宙に浮いた瞬間、パンチを反対側に振り抜く事で加速。突如速度が反転した不可思議な挙動に一瞬思考が停止し、重量級のタックルに跳ね飛ばされてしまう。

 

 そうなれば次はオールマイトのターン。撥ね飛ばされて宙に浮いた間飛へと遠慮のないスマッシュの連打を放つ。

 

「おおおおおおっ!!」

「ヤベェ……!」

 

 絨毯爆撃を思わせる超パワーの超連打。逃げ場のないラッシュだが間飛なら逃げ場がある。衝撃波が到達する前に【瞬間移動】で姿を消して着地。そのままクラウチングスタートの体勢に入ると一気に加速した。

 

 二人共にパワーもスピードも桁違いな為、たった一歩の踏み込みが容赦なく10mや20mの距離を食い潰す。オールマイトがラッシュから迎撃へと切り替えた頃には目の前に間飛が迫って来ている。

 

 だが、間に合った。オールマイトの豪腕が振り抜かれた。

 

「───いいや、こっちだ」

「ッッッ……!!」

 

 間飛が消えた。いや、背後へとワープしていた。

 あれだけのスピードでの突貫から音もなく背後へと回り込むと、振り向きざまに膝蹴りを後頭部へと叩き込む。

 意識外からのダメージがオールマイトの体勢を崩す。突き飛ばされたように前へと倒れかけるが、更に間飛の膝蹴りがもう一度叩き込まれた。

 

「ぐおっ!?」

「もう一丁ッ!!」

 

 そして締めとばかりにサマーソルトキック。グルンと一回転しながらの蹴りにたたらを踏んでしまう。

 

 背後から3連続の蹴り。このままターンを継続されると押し切られる。オールマイトは多少強引にでも引き剥がすべきだと乱暴に裏拳で薙ぎ払った。

 

 ズアッ!!と地面を削り取るほどの衝撃波が放たれる。扇状に放たれたソレは間飛を捉えることこそ叶わなかったものの、彼に【瞬間移動】での回避を強制させることは出来たらしい。

 振り返った少し先で獰猛に笑う間飛と目が合う。そうか、来るなら来いとオールマイトもまた笑みでもって応えた。

 

「おおおおおおおおおおおっ!!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!」

 

 1mも無い距離……互いの間合いの中に踏み込んでの突き(ラッシュ)の速さ比べ。一撃一撃がスマッシュの名に相応しい破壊力を秘めているというのに、その全てが全くの互角でぶつかり合う。

 

 爆ぜるような轟音が連続し、二人の立っている場所を中心にビキリ、バキリ、と地面に亀裂が入っていく。

 時間にして5秒弱。至近距離でのノーガードのラッシュが両者共に吹っ飛ぶ事で切り上げられた。

 

「Detroit SMASH!!」

「おわっ!?」

 

 ノックバックから先に立ち直ったのはオールマイト。ボッ!!と空気の壁を突き破って放たれたパンチが間飛のギリギリを掠めた。

 

 ならばお返しだとばかりに間飛も回し蹴りを打つ。こちらも衝撃波を放ち、砂利を巻き上げた事で更に威力と凶悪さを増している。

 

「ふんっ!」

「簡単に消してくれやがって……!」

「君にだけは言われたくないね!」

 

 しかしただ手刀を振るっただけで掻き消されてしまう。お互い既に疲れきっているというのに、未だ手足を少し振るだけでこの威力だ。

 

 もう二人共に限界が近い。

 

「……これで最後にしようか。間飛少年」

「もう限界ですか?頼りねえッスね」

「HAHAHA!いいや!君が頼もし過ぎるだけさ!さあ、構えたまえ……!!」

「そりゃどうも……ッ!!」

 

 故に、この一撃で終わらせよう。

 

 オールマイトは拳を硬く強く握りしめ、間飛は腰を深く落とし深呼吸。

 

 

 

 激突は一秒後だった。

 

 

 

 

「「United States of……!!」」

 

 

 

 大上段に振り上げられた拳と腰だめに構えられた掌底がぶつかり────

 

 

 

「SMASH!!!」

 

「STRIKE!!!」

 

 

 

 

 

 ───音が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あっ、こっちいました!」

「怪我は?」

「ん」*1

「うわあ……こっちもヤベェな」

 

 全てのドローンが撃墜され、最後の衝突の結末を見ることが叶わなかった彼らは訓練場へ向かうと二人を探していた。

 オールマイトはコスチュームということもあって割と早い段階で見つかったが、どうも間飛は地面にめり込みかけてたようで2分ほど探し回ってようやく発見された。

 

 二人ともズタボロのボロ雑巾になっており、オールマイトは公表済みとはいえトゥルーフォームになっていたせいで見つけた生徒が「死んでるぅぅぅううう!?」と叫んだのも無理はないだろう。*2

 

 幸いというかそうなるようにしていたのか、骨折や打撲ばかりで命に別状は無い。意識を失っているようだがそれも少し時間が経てば目を覚ますだろう。

 

「これ結局どっちが勝ったんスかね?」

「さあな……」

「どっちにしても間飛スゲー!で終わるんじゃね?」

「相手がオールマイトだもんなあ……」

 

 リカバリーガールの元へ二人を運びながら結末はどうなったのかを予想し語り合う彼ら。どっちが強かったのかも気になるがまずは健闘をたたえている。

 

 運んでいる者以外は訓練場を見て回っているのだが、破壊の跡が凄まじい。平気で地形を変えるレベルの威力を連発していたせいでボコボコだしグチャグチャだし、と後始末が大変そうだ。

 

「……さて、俺達もそろそろ行くか」

「うむ」

「先生達なんかあるんですか?」

 

 相澤とブラドキングが何やら覚悟を決めた顔で呟き、それに氷叢がどうしたのかと聞けば予想していない答えが返ってきた。

 

「リカバリーガールがご立腹だ。俺達全員説教だろうな」

「……ああ」

 

 そういやこういうのってリカバリーガール的にはストップかけますもんね……。生徒達は哀愁漂う彼らの背中を敬礼で見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ君の勝ちでしょ。だって先に私が気絶したし」

「いやいやいや。吹っ飛んだ距離的に俺の負けです」

「No.1ヒーローとしては相討ちの時点で負けもいい所なんだよね。だから君の勝ちで」

「今アンタ引退済みでしょうが。引退したヒーローにも勝ててないんで俺の負けですって」

「いいや!君の勝ちだね!」

「ハァン!?アンタの勝ちでしょうが!」

 

「黙りな怪我人共」

 

「「はい……」」

 

 

 

 

*1
「命に別状は無さそうです」

*2
鉄哲が見つけた






リカ婆「(#^ω^)」
教師達「「「ヒエッ……」」」


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