え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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不完全な目覚め

 

 

 

 “ソレ”は突然現れた。

 

「何……!?」

 

 初めて転孤と出会った時のように大地を隆起させ、土やセメントをボロボロに崩しながら姿を見せた。

 

 最大で25mにも届く【巨大化】の個性によって得られた圧倒的な体躯、人間の肌とは思えないゴツゴツとした質感と迫り出した下顎。

 原始人を思わせるボサボサとした髪、獣の如き鋭い牙。元々待機していた山岳部周辺の人々から『野人』と呼ばれていた存在。

 

「はあ!?」

「嘘ォ……!?」

 

 オール・フォー・ワンの直属の部下にして、現在の軍勢の中で最も信頼を置かれているだけの耐久力と忠誠心を持つ男……ギガントマキアが現れた。

 

「やあ……久しぶりじゃないか、弔」

 

「オール・フォー・ワンが……!」

 

 

 

「「「何でボコボコの状態で……?」」」

 

「ふふふ……思ったよりキツイから挨拶だけしに来たよ……ぐふっ」

 

 

 何故か顔がひしゃげた脳無に入ったオール・フォー・ワンを連れて。

 

 ……あの、大丈夫ですか?

 

 

 

 

 

 やっとこさギガントマキアを発見できたオール・フォー・ワン。黒霧に解放と引き換えにギガントマキアの元へ【ワープゲート】を開くように命じて(頼み込み)駆けつけ、最も信頼している部下を回収出来る!と喜んだのも束の間。

 

 両手を広げて如何にもラスボスっぽく語りかけたオール・フォー・ワンに対し、マキアの返答は。

 

 

「……本当に主なのか?」

「言いたいことは分かる。だが私は私だよ」

「普段の数倍は薬品臭いし腐敗臭が凄まじいのだが……本当に?」

「本当の本当に私だとも。オール・フォー・ワン……君のご主人様だ」

 

 もう全っ然信じてもらえてなかった。

 

 マキアの中のオール・フォー・ワンとは泰然とした人物であり、いつ何時であっても動じることなく邪悪を体現しているのだ。

 それがどうだろう。今彼の目の前にいるオール・フォー・ワンはなんと言うか……彼に言わせればもうすっごい小物臭いのだ。具体的には頭無惨かオメェと言われそうなくらいには。

 

 何よりオール・フォー・ワンというには弱々しい。薬品の臭いも腐敗臭をも上回る死の匂いを纏うのが我が主だと思っていたのに、新品の脳無にそんなものがついているはずもなく。

 

「もしお前が本当に主ならば……」

「……うん?」

「私程度容易く打倒せしめるはずだ!!」

「…………うん!?」

 

 

「私にお前を本物の主と認めさせてみろ!!!」

 

「ちょ、待っ────!!?」

 

 

 

 

「……まさかマキアと戦う羽目になるとは思わなかったよ」

「ああうん……ご愁傷さま……?」

 

 何故ダメージを受けているのかと思えばそんな悲しいことになっていたらしく、自分が本物のオール・フォー・ワンと認めさせるまで随分と苦労していたようだ。

 

 どこか煤けた姿にオールマイトすら思わず哀れんでしまう。あまり油断してはならないと分かってはいるのだが、正直なところ今のオール・フォー・ワンからはかつての魔王と呼ばれていたプレッシャーが弱まっているのだ。

 それでもハイエンドと呼ばれる脳無の肉体を持つ以上は相当な戦闘能力を有しているのは確実だ。目を離してはならない。

 

「まったく……何もかも台無しだよ。僕の計画は大きく狂わされ!僕の後継者まで取り上げられた!!屈辱と言わずしてこれを何と言う!!?」

「……元々貴様の物などどこにも無い!!ここにいるのは!貴様の呪縛から解き放たれた、生きた人間だ!!決して貴様の為に存在する人形ではない!!」

「ああ、知っているとも……そこにいるのは生きた人間。全ては僕の為にある」

「チッ……あんな野郎の手を一度は取ったと思うとむかっ腹が立つな」

 

 堰を切ったように、子供が思い通りにいかないことに駄々をこねているように。オール・フォー・ワンは苛立ちを隠せずに声を荒げた。

 

 長い間相対し続けたオールマイトだからこそ分かる。この男は本気で自分以外の全てを駒と見なしており、自分の手のひらから離れる事を酷く嫌っているのだ。

 それが死柄木弔に裏切られ、本体のオール・フォー・ワンは再起不能なほどのダメージを与えられてタルタロス送り。何もかも想定から大きく外れてしまっている。

 

 邪智暴虐たる闇の帝王は今、普段の冷静さを捨て去る程度には怒りを抱いている。

 

「……僕には分かっている。オールマイト、実は君の活動限界が近いこともね」

「…………!」

「あと何分だ?その数分で僕を、ギガントマキアを仕留められるか?その裏切り者達を守りながら」

 

 

 

「殺れ、マキア」

 

「オオオオオオオッ!!!」

 

 

「ッ、来るぞ!!」

 

 野人が動く。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 ギガントマキアは強い。

 俺達全員でかかってもまだ全然キツかったってのに、壊理は間飛と一緒に下がらせてるしジャックガムはいないしと条件が悪化してやがる。

 

 オールマイトが味方にいるしトゥワイスも増やしてはくれているが……ダメだ。トゥワイスが生み出す分身だと動き出すまでのタイムラグの間に潰されちまってるし、オールマイトも限界が近いのか体から煙が出始めている。

 詰み、とまでは言わねえがかなり厳しい戦いだ。

 

 何よりマキアだけならまだ何とかなるんだが、あの腐れ野郎が司令塔となり援護が入るだけで厄介度が増している。よく分からねえが複数の個性を持っているのは確からしい。

 

「マキア自体はそうでもねえが……アイツが面倒くせえな」

「見下しやがって、ムカつく!!」

「トゥワイス君!一旦下がって私を増やせないかね!?」

「無理だ……!アイツ、俺を一番狙ってやがる!!何で!!?」

「妥当だろ」

 

 ……まあ、そりゃオールマイトを増やせるトゥワイスから潰しに来るわな。あとはそのトゥワイスを離脱させられるコンプレス。

 

 サイズってのはそれだけで脅威だ。パンチやキックどころかただの足踏みですら即死に繋がる。生半可な攻撃力じゃ痛みにすらならねえし、逃げながらチクチク削るのがやっとだ。

 このままじゃジリ貧だな。せめてマキアかオール・フォー・ワンのどっちかを少しでも黙らせられりゃいいんだが……!

 

「僕はね、もう君達に何の期待もしていないんだ。弔にだってそうさ!最早君達の意思を尊重する余裕は無くなった!」

「よく言うぜ。最初っから尊重する気なんざねえだろうが」

「同感だな。お前にとって都合がいい部分に許可を出しているの間違いだろうが」

「否定はしないとも。だが悪とはそういうものだろう?どこまでも自己中心的で、エゴイズムの塊!!それが今、ヴィランと呼ばれているのだからねェ!!」

 

 鬱陶しい……!奴の手から放たれる弾丸やら黒い爪が邪魔過ぎる!分かっちゃいたが、個性の扱いに手馴れてやがる!

 

 そろそろ荼毘も火傷し始めているな……これ以上の戦闘継続はマズイ。オールマイトなら何とかできねえか?

 

「すまない……!もうすぐ活動限界が来る……っ!!そうなれば私は足を引っ張ってしまう!」

「……っ、だからって見殺しにするかよ!後味クソ悪いだろうが!!」

 

「よくも……よくも謀ってくれたものだ……!!死ね!後継ィィィ!!!」

 

「しまっ───」

 

 ああクソ、ここで終わりかよ……っ!!?

 

 

 

 

 

 

 

「……間、飛…………?」

「…………」

 

「何……ッ!?」

「……!!?!?」

 

 

 完全に潰されると思ったのに。迫っていたマキアの腕がベッキリとへし折られてる。

 

 あの巨体の腕ともなればそこらの家屋くらいのサイズはあるというのに、それを、ああも見事に折れるものなのか……?

 走馬灯のようなスローモーションの中に間飛が現れたかと思えば、下からパンチを打ち込んでマキアの腕をへし折りやがった……いつもみたいな賑やかさはどこにもない。

 

 振り抜いた拳をそのままに、凍てつくような冷たさを持った視線がオール・フォー・ワンに向いている。アレは……本当に間飛か?あんな顔初めて見たぞ。

 

「……ッ!そうか……君が間飛移か」

「……」

「マキアァァアア!!そいつを殺せえええええ!!!」

 

「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ!!!」

 

 

 

 

 

「うるせえ」

 

 

 

 

 

 

 

「い、一撃で……?」

「間飛少年……!これは、既に私を……ッ!?」

 

 もう音とすら認識出来ない轟音。僅かに2mに届かないアイツが放った一撃は、あのギガントマキアをもぶっ飛ばすほどの威力があった。

 メートルにこそ届かないが、マキアの巨体が宙に浮いた。まともに顔面に一撃を受けたマキアは仰向けに倒れたままピクリとも動かず、完全にノックアウトされている。

 

 オール・フォー・ワンも無事では済んでいない。マキアの上にいたから衝撃波や倒れた時に巻き込まれたらしく、瓦礫を退かして立ち上がったが体のアチコチから血を流している。

 

「……ッ」

「お、おいトガちゃん。アイツ、何があったらあんなパワーになるんだよ!?あんなパワーじゃなかったろ……!?」

「いえ……アレが移くんの本来の(・・・)パワーです」

「……どういうことだ」

 

 トガ曰く、間飛は【フィジカルギフト】と“相性が良過ぎる”らしい。普通ならその辺の増強系よりマシ程度のパワーになるはずが、間飛だけは倍率が大きくなっているのだと。

 

 それを本人も無意識下で把握していたらしく、日常や訓練の最中でも相当の加減をしている、と。

 

「現に……移くんの腕もただでは済んでいません」

「……血?」

「皮膚が裂けて骨が折れているんでしょう……内出血も見られます」

 

 ……だとしたら、お前……アイツにはまだ上があるって事か……?

 

「ぐっ……これ以上は、マズイか……!ドクター!!」

 

 マキアとオール・フォー・ワンが逃げていく事なんてどうでも良くなるほど、俺達の目は間飛に釘付けになっていた。

 

 間飛……お前は、何なんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

「……zzz」

「あっ、また寝てやがる」

「……えっ、もしかして起こされたから不機嫌だったの!?」

 

「間飛さんどこー!?」

 

「おい誰か壊理に教えてこい。寝坊助はここに来てるって」

「荼毘行けよ」

「ちっ……おーい!」

「行くのね……」

 

 

 






壊理「急に起きたと思ったらいなくなっちゃって……『うるせえな……』って言ってて、その、怖くて……」
荼毘「分かった分かった。お前は悪くないから気にすんなって」
転孤「アイツの目つきやばかったもんな……」

間飛「zzz……」
脳筋「間飛少年……まだ寝てるし……」
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