12月。冷え込んだ寒空に雪の結晶が降り、日没が早い一年の終わりが近づいた頃。
雄英高校学生寮ハイツアライアンスでは一階の共同スペースに全員が揃っており、一律に同じ服に身を包んでいた。
「「「Merry Christmas!!!」」」
本日は聖夜。良い子がサンタクロースを待ち侘びる一番もどかしくて、一番騒がしい日だ。
「インターン行けってよー……雄英史上最も忙しねェ一年生だろコレ」
「爆豪とか物間いる時点でお察しでしょ」
「あ゙あ゙!?」
間飛と砂藤というA組が誇る二大シェフ*1によるお手製のご馳走を前にする話でもないが、直近で出てきた大きな話題となればどうしても学業の事が顔を出す。
死穢八斎會の一件の後からほとんど全員のインターンが停止しており、いつ頃再開という具体的な話もなかったところに突然の『お前らインターン行ってこい』という御触れが出たのだ。
元を辿ると公安からの指示という話だとトガから聞いた間飛から聞いているだけに、一体何が起こっているのかと少し不安になってくる。
というのもヒーローへの期待と不安が強まっている昨今、既に“次の世代”というものを気にする声が多いらしい。
ヒーローサイドではオールマイトという一強時代が終わりを迎え、ヴィランの世界でもオール・フォー・ワンの投獄という形での引退が起こった。
いつの日か死穢八斎會の若頭が言っていたように、今の世界は闇にも光にも支配者……圧倒的な頂点が不在なのだ。その座を狙って世界が荒れるのは確定と言っていい。
故に、今のうちから次の時代を支えていけるだけのヒーローを育成しておきたい……それが公安の方針なのだろう。
とはいえその辺りはまだまだ学生である彼らには無関係。さしあたってはインターン先をどうしようかなという話にしかならない。
「麗日と梅雨ちゃんはまたリューキュウだよね……あ、間飛もか」
「間飛くんは何か違うとこ行くって言ってたかな。耳郎ちゃんは?」
「そうなの?けどまあ、アイツどこに行って何を学ぶ必要があるんだろうねー……」
皆が行先に悩んだり困ったりしているのに選ぶ事が出来るとはなんと贅沢な!なんて冗談っぽく笑う耳郎。しかし実際間飛以外でインターン先を選べる人間は極僅かだ。
インターンに行ってこいとは言うが、何も一年A組だけに限った話ではない。B組もインターンに向かうし、二、三年生だって同じだ。
そうなるとインターン先の取り合いという事態になってしまう。一つの事務所で抱えられる人間には限度があるし、ビルボード上位のヒーローとなれば尚更取り合いになってしまう。
「緑谷君はアレかい?ナイトアイ事務所」
「僕もそう思ってたんだけど……何か今それどころじゃないって。グラントリノも同じ感じ」
「それはしょうがねえな。無理なもんは無理か」
「今回は課題としての参加だから学校から紹介はして頂けるそうだが……どうなるんだろうな」
現在はどこの事務所でもバタバタしているのか断られることも多い。緑谷が挙げたサー・ナイトアイやグラントリノのように様々なヒーローがアチコチを飛び回って何かしらの調査をしているらしい。
爆豪が職場体験で指名を貰ったベストジーニストもそうだ。神野の怪我を引き摺ってる訳でもないが今は別件で手が塞がっていると断られてしまった。
「おォい!!清しこの夜だぞ!?いつまでも学業に現抜かしてんじゃねえ!!」
「ツッコミが斬新過ぎるな」
「まぁまぁ、峰田の言い分も一理あるぜ」
「それな。飯も出来たし」
「「「二大シェフー!!」」」
難しい話はそこまでだ、と間飛と砂藤が戻ってきた。
砂藤の手には
「悪い遅くなった……というか俺いるのか?教師がいると休まらないだろ」
「相澤先生も来たぞ!丁度いい!」
「聞けよ……いや、いい。無粋だったな」
先生まで揃っての一年A組。誰もが相澤の言葉をわざと無視し、無言で『いいからはよ』と黙らせた。相澤が生徒の圧に負けるという少し珍しい事態に。
何はともあれ、クリスマスパーティーの始まりだ。
「砂藤のチキン美味ェ。火の通り具合バッチリじゃん」
「お前のシチューも凄ェよ。これ何時間煮込んだ?」
「8時間」
「滅茶苦茶手間かけてんじゃねえか」
「ダハハハ!!爆豪サンタ服似合わねー!?」
「あまり茶化すのは良くないぞ切島君!」
「飯田は力入れ過ぎだって……その付け髭本格的過ぎんだろ。てか食べにくくないか?」
「そろそろ外すぞ」
『フミカゲ!コレ美味イゾ!』
「分かったから口の中に捩じ込むな……モガっ……
「【黒影】の反逆か?」
「アレだろ。孫が無限に食えると思ってるタイプの祖父母」
「「それだ!」」
「チョコフォンデュで唐揚げフォンデュしてんじゃねえよ!?」
「……めっちゃ後悔してる」
「うわー!美味しくなさそー!」
「三奈もやめときなね……?」
思い思いに好きなものを食べ、好きなものを飲む。時々変な組み合わせをしては苦しむ者や互いの料理を褒めあっていたり……外の寒さを忘れてしまいそうなくらい温かなパーティーだ。
この手のイベントはどうでもいいと逃げるかと思われていた爆豪も騒ぎこそしないものの、静かに食事を摘んでは切島や上鳴に絡まれている。
でもあんまり調子に乗るのはよくない。あ、二人の口の中にチキン捩じ込まれてら。
「間飛ちゃん料理上手いわね」
「ん?ああ。【フィジカルギフト】の継承の影響……ってのもだけど、半分趣味みたいなもんでね」
「え!そうなの!?」
「凝り性の両親から生まれたお陰で俺も凝り性なんだ。どうせ作るなら美味いもんがいい的な」
「それな。俺は個性の関係もあるが、どうせなら美味い方がいいよな」
シェフ二人にレシピを強請る者もいれば『今度はこれ作って!』と頼む者、かと思えば『もう少しパラパラに出来たろ』と辛口評価な爆豪もいた。
全体的には概ね好評と言った感じで、寸胴鍋にそれなりの量を作っていたはずのビーフシチューも腹ぺこ思春期の前にはスッカラカンになっている。
料理を粗方楽しんだ後はクリスマスといえばコレ!なプレゼント交換会。箱に入れられたりサイズ的に直接結ばれたりしているリボンを混ぜ、引っ張った先にあるプレゼントが貰える、というパターンのものを採用。
それぞれがリボンを選び終え、いざ結果発表。
「お、オシャレなセーターだ」
「それ俺のだ。こっちは……カエルの手鏡、ってことは梅雨ちゃんか?」
「メガネ渡されても使えねえだろクソメガネ!!」
「度なしの伊達だから安心してくれ!……金塊……!?あ、いや、お菓子入りの偽物か」
「ダンベルー!重ー!!」
「青山……お前……」
「僕のプロマイド☆」
「先生、コレ、は……?」
「よく分からんから若い奴らに人気らしいのを買ってきた。ガンリキネコだったか?バスケットボール……あんまりした事ないな」
「は、はは……先生と交換したのか俺」
「お餅だ!……ん?」
「オールマイトのストラップ!……へ?」
「常闇……」
「間飛?どうし……あっ」
「バスターソード……二本目なんだが」*2
「二刀流……!?」
「ソワっとすんな」
悲喜交々……というには喜が多めだが、それもまた醍醐味だ。一名バスターソードの二刀流が完成しているがまあ気にしない気にしない。
多すぎない?と言われていたディナーも何だかんだ全て完食され、メインイベントも終われば後片付けの時間だ。
調理に回っていた間飛と砂藤の二人も免除されていたけれど、ここまで含めてパーティーだしと片付けに参加。ちなみに料理の材料費はオールマイトが全て持ってくれた。やったね。
動かしていたテーブルやソファーも元の位置に戻して……としていた緑谷と爆豪にふと轟が声をかけた。
「緑谷、爆豪」
「ん?」
「あ?」
「もし行く宛てがねえなら……来るか?」
「
芦戸「これどっちが作ったの?」
間飛「エビフライとかフライドチキンとか揚げ物系は全部砂藤が担当してたぞ。揚げるのは慣れてるからって」
砂藤「それ以外は間飛だ。俺ずっと揚げてるだけだったけど間飛の手際滅茶苦茶よかったな」
葉隠「どれも美味しい!」
轟「シチューまだあるか?」
飯田「轟君が三杯目に……!?」
緑谷「よっぽど気に入ったんだね」
轟「これ美味え」
Q.間飛が入れたプレゼントってなんだったの?
A.