番外編アンケートから間飛の両親の過去話です。
ぶっちゃけ大体こんな感じの人でした、というだけで一話限りです。興味ない人はスルーしてもいいかもしれない……。
我らがトンチキ野郎の間飛移だが、実は彼の家族の中では比較的まともな部類に入る人間だったりする。なんなら彼のイカれてる部分は戦闘方面に集中しているので、人格面では尚更常人のソレに近い。
またまたご冗談を、なんて半笑いを浮かべながら否定してくれることを望んだそこの貴方。残念ながら事実だ。
そこで今回、間飛の両親のちょっとしたお話をしようと思う。短くて簡素で、でも何となくこういう奴らだよと伝わる話を。
◇
雄英高校ほどの有名な学校ともなれば入学してくる生徒達の中にも色々と
それこそ間飛の時代には発明狂いとかNo.2の息子とか魔王の内通者とか象徴の後継者だとか……濃いを通り越してケイオス一歩手前なメンバーが勢揃いだった。
この年の生徒達も例に漏れず濃い生徒が多く、特に濃いのが集まりやすいヒーロー科よりも更に濃い男子がサポート科に在籍していた。
「……だァーッ!?やっぱ無理!!」
「まーた何か言ってら……」
「アテクシ才能ないのかしらン……」
「ハハハ死ねカス」
「あらストレートな罵倒」
モニターと睨めっこをしていた男子が悲鳴混じりの諦観を口にするも、その隣にいた別の男子から辛辣に吐き捨てられる。目が笑ってないあたり本気で言われてるかもしれない。
頭を抱えていた彼こそが後の間飛移の父親になる男子、間飛猛勇。シンプルかつ強力な増強系の個性を持っていながらサポート科を目指した変わり者だ。
雄英高校サポート科に入学してから半年も経っていないのに、既にそれなりのサイズの機械を弄っている。
彼が睨んでいたモニターには何かしらの設計図らしきものが映っており、こういった図面を引く時の彼はいつもネガティブな言葉を並べ立てては発狂するのだ。
「てか何作ろうとしてんの?」
「え、宇宙戦艦ヤ○トだけど」
「馬鹿なの?馬鹿だろ?馬鹿だな」
……そりゃ頭抱えるわ。教師達も抱えてるもん。
「なんでだよー!!ああいうデッカイ機械はロマンの塊じゃろがい!?」
「それは否定しないけどサイズ考えろ馬鹿!?雄英どころか日本総出で支援しねえと作れそうにないもん作ろうとすんな!!」
「いや作らないよ?拙僧、ああいう空想上の機械の図面とか書きたくなる口なの」
「……クソ、ちょっと分からんでもないのが腹立つ」
本人曰くその気になれば実現できるかもしれない模様。何だコイツ。
この時のようにサブカルチャーを好む彼はサブカルチャーから得た知識をそのまま現実に持ってこようとする節がある。時々マジで実現したりするので同級生も教師達も気が気じゃない。
ちなみにだがこの時点でとあるクソヤバガン○ムを作る計画を建てていたらしく、三年生の時の体育祭と文化祭が地獄絵図になったとか。
元々彼がサポート科を望んでいたのも『マンガで見たアレコレを自分の手で作ってみたいでやんす』という理由からだったり。
そして彼と同じくサポート科にいる女子。彼女の名は間飛恵……後に間飛移の母親となる女子だ。
「恵ちゃあああんっ!!ヘルプゥ!?」
「あーはいはい……ちょっと待っててね」
「聞いてよ!?どっかの馬鹿がインチネジ混ぜやがった!!」*1
「魔女狩りの時間だ。犯人を速やかに処刑しろ」
あ、ヘルプを求められた後に涙目で話されて目が座った人がそうです。はい。
猛勇と恵の間に一切の血縁関係はなく、たまたま苗字が被っただけの赤の他人。しかし両者ともあまりにキャラが濃いせいで『実は遠縁の親戚なんじゃないか』説が持ち上がったりもしていた。
猛勇が『発目明とは別のベクトルでヤベーメカニック』なら恵は『拳藤の三倍頼れる姉御』である。これで高校一年生なんですよ。
「ごめん恵ちゃーん!そっちに猛勇逃げた!」*2
「ヴェハハハァ!!こンのヤツガレが簡単に捕まるとでも」
「A☆TE☆MI」
「グフゥッ!?マジカル八極拳だとぅ──!?」
あとついでにヒーロー科よりも戦闘力が高い。試しに入学試験用のロボットと戦わせたら無双ゲームみたいになってたとか。さすがに0ポイントは無理だったけど。
こうして奇行に走る猛勇を叩きのめしたり、無茶な要望をしてくるヒーロー科の生徒達をズンバラリンと辛口で切り捨てたり。よく周りからは(戦国時代的な意味での)大和撫子と呼ばれていた。
この年代のサポート科の生徒達は二人の間飛によって支えられたり巻き込まれたりと、忙しくて楽しい日々を過ごしていた。
もうすぐで二年生になるぞ、という頃に当時の教師が彼らにとある課題を出した。
「二年生になって少ししたら自分で作ったサポートアイテムの試験運用をする機会が大きく増えるだろう。そこで今日から自分が使うことを想定したサポートアイテムを作ってみてほしい」
「え……それは俺達も戦闘訓練をするってことです?」
「そんなぁ!私、戦うなんて考えてなかったよ!?」
「違う違う。訓練場を借りて実際に使ったらどうなるかを考えてみるんだよ」
これまでは試験運用してもらっては使い心地を確認してもらい、その人の意見を元に作り直す……をひたすら繰り返すという確実だけど手間がかかる手法を行ってきた。
二年生ともなればあまり時間をかけるわけにもいかないので、サポートアイテムを使用する人物の視点をより詳しく知れるようになり、作り直す回数をなるべく減らせるように頑張ろう!という授業だ。
時にはサポートアイテムを使用する者ですら気づけていない違和感があったりもするのだ。控えめに症状を語る患者から正確に診断しなければならない医者と同じで、少ない言葉や不明な感覚を読み取る必要がある。
故にまず自分自身にとっての最高のサポートアイテムを作ってみよう、という話になる。
「うえ、マジかー……朕は朕の事が一番よく分からんのに」
「……猛勇の個性ってなんだっけ?」
「【猛化】よ?頭がヒャッハーする代わりにスーパーなサ○ヤ人的なパワーを得られるヤツ」
「恵ちゃんはどうするの?個性二つあるよね」
「んー……単純に近接戦闘に特化させようかなあ」
「うちなんか【手のひらから輪ゴムが出る】個性なんだけど……滅茶苦茶強い輪ゴム鉄砲でも作ろうかな」
ヒーロー科と違って個性に自信が無い者も多いサポート科。期限はまだまだ先とはいえこの時点で大半の生徒達は頭を悩ませる事になってしまった。
当日は雄英高校の教職にいるプロヒーローに対して、或いは救出すべき被災者がいる状況での使用を求められる。何をどうするべきかとその日から試行錯誤を重ねることになった。
◇
「それじゃ、全員サポートアイテム用意出来てるか?」
先生が全員をキョロキョロと見渡しながら確認する。今日はある意味では皆が待っていた日……自分用のサポートアイテムを使ってみる日だ。
私には【フィジカルギフト】と【スタミナタンク】という如何にも殴り合い特化!な個性が備わっている為、どうしても近接戦闘の補助だとかそういう方面でしかサポートアイテムを作れなかった。
先生がよく言っている『単純な増強系はサポート科泣かせ』というのがよく分かる。工夫のしようがないというか余計なものを足す必要がないというか……。
友人達は自分に足りない攻撃力とか機動力とかを補ったり、逆に自分の個性を最大限活かせるような物を作成していたりした。
「それでもキツそうだ……やっぱプロヒーローは強いんだね」
「自信満々に行った男子が簡単に返り討ちにされてるもんねー……」
それでもプロヒーローの壁というのは厚く高い壁だ。我こそはという態度で向かって行った男子達がコロリンコロリンと転がされてしまっている。
あ、そういえばあの馬鹿もプロヒーローに挑むとか言ってたっけ?
「……絶対ろくな事にならない気がする」
「あー……恵ちゃんはさ、見てないんだっけ?」
「え?何が?」
「馬鹿な方の間飛の作ってたヤツ」
馬鹿な方の間飛……それで私の方を挙げられた時はちょっと凹みそうだ。
それでええと、アイツが作ってるヤツは見てないかな。皆で作ってるから工房が足りなくてあっちこっちで作ってたんだよね。同じ工房にいなかったから知らないかな。
でも彼女は同じところで作ってたはず。ということは彼女はあの馬鹿が何を作っていたのか知っている?
「ああ、うん……見れば分かると思うよ?」
「……?」
彼女の視線の先を追いかけるようにモニターに目をやると、そこには5mほどのパワードスーツらしきものを装着した馬鹿の姿があった。
……ああそうだよ。あの馬鹿はああいうことする奴だよ。個性を活かせって言われてんのに、何一から十まで機械で殴ってんだ。
でもあのパワードスーツ自体は普通に強いな。あの先生の蹴りとかそれなりに強いはずなのに完全に防ぎきってるし、なんならカウンター狙ってる。
なんだかんだ小学校からの腐れ縁だから知ってるよ。アレがアイツなりに頑張った上で自分の“好き”を詰め込んだ物だって。
負けず嫌いで人一倍努力して、それなのにそれを誰にも悟らせないようにヘラヘラと立ち回っては道化を演じて人に寄り添う。
「ヒーローになればよかったのにね」
……何て言うのはダメだろうか。でも私はアイツ以上のヒーローを知らないから。
せめて惜しむくらいは許して欲しい。
うぇーい。俺サイキョー。アタイってば天才ね。
いやあプロトタイプになっちゃったけどモビルスーツモドキがちゃんと動いてよかったよかった。うっかり先生ぶっ飛ばしちゃったけど訓練だから許されるよネ!
でもめっちゃ怒られたのはなんでやろなぁ……?ちょっとゴム弾のガトリング砲とパワーアームが付いただけの簡素な装備なのに。
まあまあこれでもまだプロトタイプだから。マジモンのヤベーのはまだ製作途中なので待て、しかして希望せよってなァ!!
「あ、馬鹿な方の間飛が帰ってきた」
「おかえり馬鹿な方」
「日に日に罵倒が激しくなるゥ!?」
「胸に手を当ててやらかした事を数えてろ」
しょんなぁ。ちょーっとビル一つ粉々にする銃を作ったり一撃で確実に気絶させる空気鉄砲作っただけじゃんか。それの何が悪いんだい。*3
おっ、今度は俺ちゃんじゃない方の間飛が挑むのか。なんだかんだ救助の方に行くと思ってたけど度胸あるなあ。
作ったアイテムは……なんだっけアレ。何かどっかで見たことあるような気がするんだけど。何て言うんだっけ?自立飛行型ドローン?いや何か違うな。
まあ使ってるところ見りゃ分かるか。さっさとそれが何か教えてくれー。
「…………ファ○ネルやんけ!?」
「え?何?ファン、何て?」
ちょいちょいちょい。あの子ってば優等生の面してこういうことするんだから。俺たそが分かりやすく馬鹿やってる馬鹿ならあの子は真顔で馬鹿やる狂人タイプでしょもう。
うわー、うわー……多分ゴム弾っぽいの撃ってるし盾にもなるし、なんなら突撃して殴り倒してるやんけ。何なんあの子。
「……やっぱ、カッコイイねぇ」
だから憧れるんだよねえ。初めて“勝てない”と思わされたあの日からずーっと。
他愛ない日常での知恵比べから運動なんかでも俺ちゃんが負けっぱなし。唯一対等にいられるのがこの機械弄りくらいかな。
いつか胸を張ってあの子に勝った、って思える日が来るのかねえ……?
「ヘイヘイヘーイ!!ちょいとそのファ○ネルについて見せて貰おうか!」
「え?ファ○ネル?」
「……ご存知でない?」
「ロボット系のマンガとかアニメはあんまりっていつも言ってるじゃん」
「oh......」
【間飛猛勇】
同じ苗字の同年代に脳を焼かれた。ふざけてるように見えて一途に背中を追いかけていたので途中で何人か堕としてたけど気づいてない。最初から最後まで恵ちゃん一筋。
この時点で立派な細マッチョ。卒業する頃にはいい感じのマッチョになってた。
【間飛恵】
同じ苗字の同年代に魅せられた。卒業する頃には物腰柔らかなバブみの塊になったが数年経つと立派なオカンになってた。猛勇に色んな所で勝ってたという自覚がなく、むしろ追いかける側のつもりでいた。
友人曰くどスケベボディ。同性ですらムラっとするらしく更衣室が変な空気になりがちだったとか。
※たまたま同じ苗字で出くわして意気投合し、そのままゴールインまでしたので周囲から『キューピット仕事し過ぎワロタァ!』と揶揄われることが度々。