クリスマスパーティーもつい昨日の事じゃないかと思うほど時間は早く過ぎる。既に一週間は経っているなどと言われても『うっそだァ!』と半笑いで否定したくなる。
大晦日の翌日……年が明けたばかりでも雄英生達は大忙し。全寮化の理由からして年越しと言えども帰宅は難しいかと思われていたけれど、最も危険視されていたヴィラン連合を始めとしてオール・フォー・ワンの軍勢が著しく弱体化している事もあって一日だけの帰宅が許された。
ちなみにだが連合は捕まった訳ではなく、泥花市の一件が片付いた後はさっさとどこかに逃げてしまった。オールマイト?我が子を見送るような目で見てましたが?*1
年も明けたし寮に戻ってまた授業をー……とはならない。彼らは一度雄英高校に向かうとコスチュームを受け取ってそのままインターンへ行くように言われている。
現代の継承者である緑谷と幼馴染である爆豪は轟からエンデヴァーのインターンに来ないかという打診を受け、貴重なNo.1の世界を見るチャンスということで悩む間もなく参加を表明していた。
これから緑谷、爆豪、轟の濃密な訓練が始まる。
だけどここでの主人公は間飛なので、およそ一万字くらいになりそうな彼らのストーリーはスルーさせていただきますね。*2
というわけでカメラは間飛へ。
職場体験ではミルコの下で、インターンはリューキュウの下で行っていた間飛だったが再開したインターンではリューキュウでもミルコでも無い事務所に向かうことにしていた。
間飛はリューキュウの下でインターンを続けるつもりでいたのだが、彼女の方から『今うちに来てもあんまり教えられることないんだよねえ……』と凄く申し訳なさそうに断られたらしい。
そこに丁度よくインターン来てみるか?と声がかかったのでどうせ行かなきゃいけないなら……なんて軽い気持ちで間飛はそこを選んだ。
【ワン・フォー・オール】についての情報を持っており、緑谷を鍛えてみせた実力者。そう、彼のヒーローネームは───
「邪魔すんでー!」
「邪魔すんなら帰ってー」
……コテコテのやり取りをしている眼鏡をかけた男性、サー・ナイトアイがそうです。はい。
「あの子クソ度胸が過ぎないかな……?」
「後輩が頼もしいやら恐ろしいやらなんだよね!いや特に緑谷君と彼」
◇
「まさかユーモアを大事にすると知っていたとはいえ、初手でコテコテのネタを振ってくるとは……やるじゃないか」
「ノータイムで応えられる人が言うことじゃないと思います」
それはそう。いやそうだけどそこじゃなくて。
改めて紹介すると間飛にインターンの誘いを出したのはサー・ナイトアイ。【予知】の個性を持っているかつてはオールマイトのサイドキックをもこなしていた実力者だ。
彼と間飛が関わるのはこれが二度目だ。一度死穢八斎會の作戦でリューキュウ事務所のインターン中ということで、彼女のサイドキック(ほぼメイン火力枠)として参加していた。
彼と間飛の間ではさほど会話もなければ顔を合わせていた時間もそう長くはないが、リューキュウ伝いに誘いをかけられる程度には興味を持たれていたらしい。
しかし間飛の心境は穏やかでは無い。だって【ワン・フォー・オール】関係者からのお誘いなんて絶対なんか頼まれるのが目に見えてるし。
何も考えずに飛びついたはいいけれど、後になってよくよく考えたら面倒事持ってこられるんじゃね?と少し後悔していた。
その上でコイツは入ってくるなり某新喜劇の鉄板(?)なやり取りをぶち込んでいたわけだが。本当に何してんだお前。
「……もう最初に聞きたいんですけど、このインターンって【ワン・フォー・オール】か【オール・フォー・ワン】絡みの面倒事ですよね?」
「ああ、やはりそう思うか。あながち間違いでもないから否定はしないが……」
「とりあえず面倒事ではあるんですね」
諦めたように乾いた笑みを浮かべる間飛。元は全くの部外者だったのに、今や対オール・フォー・ワンの戦力のメイン扱いされているのだから哀れと言う他ない。
間飛とて色々提案したり首を突っ込みに行った自覚はある。だがその始まりは『何か知らんけど自分の持ってる個性とよく似たヤベー裏事情のある個性のせいで疑われた』ところにある。
誰が悪いかと言われたら決定打になったのはオールマイトのトゥルーフォームバレなので多分脳筋が悪い。
話が逸れたがサー・ナイトアイが間飛を呼んだ理由。それは……。
「
「……と、言うと?」
「君の個性である【瞬間移動】は受け継がれてきた【フィジカルギフト】との噛み合いが良すぎる。故に、誰も……君自身ですらも【瞬間移動】の真価に気づいていない」
間飛移という人間を象徴する個性、【瞬間移動】を強化したい。サー・ナイトアイはそう告げた。
そもそもの話だが【瞬間移動】後に【フィジカルギフト】で殴るだけで大抵の相手はノックアウトが可能だ。それこそ死穢八斎會のオーバーホール程の実力者でもまともに受ければ危ないと分かっている。
もしオール・フォー・ワンを倒しきってしまえば、その後の彼の超パワーは誰に向けても過剰な攻撃力になってしまう。
オールマイトを見れば分かるのだが彼が本気でSMASHを打つこと自体が珍しかったりする。増強系でも通りすがりに水平チョップで一撃、なんてこともよくある話だった。
最後の戦いの後を考慮するならば、この先求められるのは超パワーである【フィジカルギフト】よりも加減が利いて汎用性の高い【瞬間移動】を鍛えることだとナイトアイは語る。
「戦う前から終わった後の話とは……油断してませんよね?」
「これは油断では無い、万全を期す為の一手だ。それに……私達がいるのだから考える余裕があるのだ。君も含めて、な」
「……そこまで言われちゃコッチとしては反論も何も無いですよ。乗り掛かった船なら進もうが沈もうが付き合うしかねえか」
間飛の不安に対する回答はシンプル。今更負けることなど考慮するはずが無いだろう?とナイトアイは驕りでも油断でもなく、信頼で言ってのけた。
気持ちがいいくらいに単純明快な信頼に間飛は両手を挙げて「降参ッスよ」と苦笑いを浮かべている。
無論間飛とてまだまだ子供だ。何から何まで彼に背負わせるつもりなどないが……もう既に色々背負わせてる気がしなくもないけども!なんなら元々無関係だったけども!!大人として少しでも頼り甲斐のある所を見せなければならない。
ナイトアイは降参のポーズを了承と受け取り、デスクの上に置いていたスマートフォンに触れるとすぐに誰かの声が聞こえてきた。
「そういう事です。よろしくお願いします」
『オッケーにゃん!そろそろあちきらもそっちに着くから準備しといて欲しいにゃん!』
「ラグドール?って……まさか最初から断らせる気無かったッスね?」
「いいや。君が断る“未来”が見えなかっただけさ」
してやったり。そんな言葉がしっくりくる笑みを浮かべ、ナイトアイはバブルガールとセンチピーダーにいつでも出発出来るようにと声をかけた。
◇
壮観、と言うしかねえな。コレ。
「ホントならしっかり前口上*3からしたいんだけど、色んな人を待たせてたからごめんね?」
「おう!ひっさしぶりだなァIXA!!」
「来たか。こっちはいつでも始められるぞ」
「小僧一人にゃちと贅沢……でもねえか。むしろコッチが危ねぇかもな」
迎えに来たラグドールの車に乗って一時間。行先はワイプシの方々の私有地だという合宿先でもあった山の中。
ようやく着いたー……と固まった身体を早く解したくて車から出てみればプロヒーローがずらりと並んでおられる。ワイプシの方々で四人、それ以外に三人のプロヒーローが。
No.4ヒーローのミルコに公安の狙撃手レディ・ナガン、オールマイトの師匠らしいグラントリノ。どこのヴィラン組織潰しに行くんですか?と尋ねたくなるメンバーだな。
「これからインターンの間、お前は俺達とひたすら組手をし続ける。ナガンの狙撃やピクシーボブの【土流】で妨害も入るし、ミルコや虎も容赦なく殴りに来る」
「うへぇ……キツそう」
「(普通ならキツイどころか死んでもおかしくねえんだが……)それだけじゃねえ。途中からは休憩中でも不意打ちをかけにいく」
要は俺が緑谷に課した訓練と同じで、四六時中【瞬間移動】から派生した探知能力をフルで使い続けろと言うことか。どっから何が飛んでくるか分からねえからしっかり感知して避けろ、と。
期待出来そうな進化としては探知範囲の増加と精密性か?それだけならこんな急拵えで鍛えなくても……。
「但し、だ。組手中も含めてピクシーボブとナガンに反撃は許可しねえ」
「マジのクソゲーですか?」
急拵えとかそんなレベルじゃねえわソレ。俺に何をする気だ。というか俺を何にしたいんだ。
「……これは私の希望的観測も込みでの話だが、君は私の【予知】とまでは言わずともミリオ以上の“予測”を身につけられると思っている」
「ナイトアイ」
「ミリオや私のサイドキックが予測をする際、取捨選択する情報の多くは視覚から得ているものから来ている」
それを空間単位で把握出来てる俺ならより精度の高い予測が出来る、と。なるほどそれで探知能力の精密性を上げようって話か。
ホークスなんかは街を歩きながら平気で複数の仕事をやってのけると言うし、探知範囲を広げてそこに精度の高い予測が加われば……ホークスと同じレベルは難しくても近づけるようにはなるな。
ただ先に一つお尋ねしたいんですが。
「あのー……」
「ん?質問か?」
「いや……俺が探知能力フルで使うと皆さんの裸体を把握してしまうんですが……?」
「「「あっ」」」
それでもええんか……?
ミリオ「俺もですか?」
ナイトアイ「お前も時々混ざってこい」
ミリオ「……どっちに?」
ナイトアイ「間飛側だが」
ミリオ「」
ナイトアイ「お前達も混ざって構わんからな」
サイド's「「アッハイ」」
ミルコ「よォし!ぶっ飛ばす!!」
ナガン「一応ゴム弾だが死ぬほど痛いぞ」
グラントリノ「人間痛みが無きゃ覚えが悪いからな」
間飛(俺死ぬかもしれん)