え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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轟家は今日も平和です

 

 

 

 子供の視線は大人のソレよりもずっと雄弁だ。

 

 我が子が育ちきってから気付かされた基本的な事だが、こうしてインターンに来た学生達に気付かされるとは思わなかった。

 

「ヘイヘイヘーイ。まだまだやれんだろ爆発さんタロー」

「ったり前だボケが!!舐めてンじゃねえぞ!!」

「た、タフ過ぎる……」

「俺でも……結構、キツイ、のに……」

 

 間飛移……ヒーローネームIXA。奴が来てから三人の目付きが変わった。

 

 思えばインターンに来た時からおかしいとは思っていた。三人の目はライバルを見るソレでありながら、かつての俺のように頂点を睨みつけるギラギラとした輝きがあった。

 

 IXAへの視線で納得した。この三人ですら奴には勝てないのか、と。

 

 まだまだ未熟な所が多いものの、俺が求めているレベルは高校一年生に求める水準ではない事くらい自覚している。

 しかしだ。この三人はプロになっても通用するだけの実力は備えていると見ていい。たとえビルボード上位十名に入れなくとも、二桁順位までは順調に到達出来るだろう。

 

 その上で尚、あの男は更に上回っている。

 

「……来てすぐに三人よりも早く『俺より先にヴィランを倒す』とはな」

「スピード勝負なら【瞬間移動】はズルにも程があるんでしょうがないんじゃないスか?距離や地形によってはオールマイトもホークスも追い越せるんですから」

「む……」

 

 ……癪だが認めざるを得ない。コイツは焦凍をも上回る逸材だ。

 

 

 あれだけ執着して手を伸ばし続けていたのに、いざNo.1になってみれば何も感じていなかった。焦凍を上回る間飛移という存在を見ても特にそれらしい感情はそこまで強く湧かなかった。

 

 やっと手にした頂点も、死に物狂いで残そうとした焦凍の道も望まぬ形になっているのに……何故、こう、何も感じないのだろうか。少し前の自分なら間違いなく怒りとやるせなさで荒れていたというのに。

 

「エンデヴァー、10時の方角にひったくりが居ます」

「……行ってこい」

「へ?」

「お前はコイツらに歩調を合わせるべきではない」

 

 少々扱いが雑になってしまうが、それも奴の実力を知っていれば誰もが納得するだろう。コイツは縛り付けない方が強い。

 既に何百何千という訓練を受け重ねてきたというのなら、今は実戦を身体に叩き込む方がいい。それがIXAの成長に繋がるはずだ。

 

 

 

「……なあ親父」

「何だ?」

「間飛のやつ、俺らの行先とか集合場所とか知ってるのか?」

「IXAァァァ!!戻ってこぉぉおおい!!?」

 

 早く言えしょぉぉぉとおおおおおお!!?

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 昼の過酷な実戦も終わり、すっかり冷えきった夜。雄英高校の制服に着替えた四人はエンデヴァーに……轟炎司に連れられて轟家へと足を運んでいた。

 

「……なぁ、何で半分野郎の家に来たんだ俺らは」

「姉さんが飯食べに来いって」

「何故そうなる」

「友達を紹介して欲しいって」

 

 やっぱりやめといた方がよかったんじゃないか。炎司はひっそり悩みながらもここまで連れてきた以上はどうしようもないと悟り、それでも気まずそうにしている。

 

 焦凍がいつも通りの表情で『何かダメだったか?』という雰囲気で理由を話すが、爆豪だけは面倒くさそうに顔を顰めている。別に嫌とかそういう事ではなく、少しでも鍛錬に時間を割きたかったらしい。

 

 今どき珍しい和風を全面に押し出した引き戸を開けると、奥の方からパタパタとスリッパの足音を立ててエプロン姿の冬美が姿を見せた。

 

「忙しい中お越しくださってありがとうございます!初めまして。焦凍がお世話になっております、姉の冬美です!」

「焦凍の友達させてもらってます間飛移です。はじめまして」

「あ、えと……み、緑谷出久です!」

「……爆豪勝己」

 

 普段からは想像もつかない礼儀正しくハキハキとした間飛、いつも通りにやや吃りつつもちゃんと名乗る緑谷、論外の爆豪。

 三者三様の挨拶に頬を緩ませながら焦凍と共に三人をリビングまで案内する。

 

 食卓に着くとそこには夏雄が既に待っており、炎司の顔を見てギョッとし……後ろにいた焦凍と雄英生三人を見て更に驚いていた。

 

 全員揃った事だし、とそれぞれが席について夕食の時間となる。

 

 

「竜田揚げウメー……これめっちゃ丁寧ッスね」

「そお?よかった!」

「お手伝いさんが腰やっちゃって引退してから、ずっと姉ちゃんが作ってたからな。作り慣れてるんだよ」

「いやすげえッスよ?飯作るのって毎日の事なんで丁寧にやるのは意外と疲れますし」

「そ、そうでもないよ?夏も言ってるけど慣れてるし」

 

「……間飛打ち解けるの早いな」

「…………むぅ……!!」

「と、轟君……?どうしたの?」

「……けっ」

 

 飯のこととなれば家事スキルを持つ間飛が黙っているはずもなく。味の感想からヌルッと雑談に持ち込んですぐにそれなりの会話が出来るようになっていた。お前二度と陰キャ名乗るな。

 自分よりもずっとスムーズにコミュニケーションを取れてるから焦凍は少しムッとするわ、炎司は炎司で『娘はやらんぞ……!』と明後日の方向に考えを飛躍させている。

 

 それにしても元々父親とあまり食卓を共にする気がなかった夏雄が少しの間父親の存在を忘れる程度には談笑していた……のに、茶碗が空になってから数分後。夏雄は思い出したように顔を顰めて席を外してしまった。

 

「……少しは歩み寄れたかなって、思ったんだけどなあ……」

「……あー、とどろ……焦凍から聞いた例の件の事です?」

「ちょっ、間飛君……!?」

「ううん……いいの。ごめんなさい」

 

 寂しそうに夏雄の背中を見送る冬美に対し、間飛は思い出したように轟家の禍根を口にした。咄嗟に緑谷が止めようとしたけれど、それを更に冬美から止められてしまう。

 

 一瞬前までは温かみのあった食卓が急に冷え込んだような気がしてしまう。静けさとは想像よりもずっと早く蔓延してしまうらしい。

 

 しかし訪れた静寂はすぐに壊された。

 

「……あ、そういやエンデヴァーさん」

「……何だ」

「体育祭ン時に“頭エンデヴァー”とか言ってすんませんした」

「よりによって今それを謝るのか貴様ァ!!?」

 

 いや壊し方よ。シリアスさんただでさえ息が続かないのに秒ももたなくなるからやめて?

 あーもう、障子の向こうで夏雄のものらしき「ングッ……w」って笑いをこらえる声が聞こえちゃったじゃん。なんて事してくれてんの。

 冬美に至っては一瞬のフリーズの後に思わず吹き出してしまっている。そりゃ父親の名前を使ってのとんでもねえ悪口ですし。

 

 緑谷は『そういやそんな事言ってたね……』と苦笑い。爆豪は『何となく意味は分かるけど身も蓋もねえ悪口だな』とノーコメント。焦凍は『頭エンデヴァー……じゃあ親父は全身エンデヴァー?』とド天然思考。事態に収拾がつかないんですが。

 

「いやーこのタイミング逃したら忘れちゃいそうで」

「よくもまあいけしゃあしゃあと……!!」

「だってあのまま黙って飯食うよりマシですし。美味い飯なら美味いまま食べたいんで」

「…………っ」

 

 四川麻婆のレンゲを口にしながら間飛は視線を炎司に向ける。口の中身がなくなった所で更に切り込んだ。

 

「ぶっちゃけインターンの途中参加に許可出したのもあれですよね?燈矢って人の事聞きたかったんじゃないです?」

「え……」

「…………ああ」

 

 遠慮のない間飛の発言に炎司は静かに頷き、冬美は客人から出てくるはずのない名前を聞いて硬直した。

 

 そして思い出した。前に焦凍が言っていた『轟燈矢が生きているかもしれない』という話を。

 

「……写真とかあります?」

「…………遺影、ならある」

 

 箸を置いた炎司と間飛が立ち上がり、食卓を後にする。焦凍の友達だし……と冬美は少し躊躇って、立ち上がろうとしてそこでやめた。父親に任せるらしい。

 

 廊下に出てまた別の部屋に……仏間へと入る。線香の匂いが残る空間はシンと静まり返っており、無神論者でも口を噤む奇妙な厳かさがあった。

 プライベート、なんて言葉では済まされない空間に一歩足を踏み入れる。

 

 仏壇には真っ白な髪の毛の少年の遺影が置かれており、どこか焦凍に似ていた。

 

「……やっぱり、荼毘だ」

「そう、か……」

「死穢八斎會の時に会ったアイツはこの写真よりもずっと育ってましたが……この写真の子供が大きくなったらああなる、と言われたら納得します」

 

 青い炎使いの遺影を見た間飛がこう断言した。ならば疑いようもないだろう。

 

「燈矢が……生きて、くれていたのか……!!」

「……ちょいとアングラでしたが、いい友人に恵まれてましたよ」

「良かった……っ……!!」

 

 膝から崩れ落ちる炎司。無理もないだろう、自分の過ちで死なせてしまった事をずっと悔やんでいた子供が生きていたのだ。

 

 間飛は知っている。荼毘と名乗った青年が、轟燈矢が楽しそうに笑っていた事を。志村転孤と笑い合い、壊理ちゃんを抱き抱えて優しい顔をしていたことを。

 

「……ん?」

「どうした?」

「そういやアイツ幼女誘拐犯になるのか……?」

「おい待てどういうことだ」

 

 一応ヴィランに酷い目に遭わされていた幼女を救い出したー……のだけれど、救い出した先もヴィラン、というか半ヴィジランテの組織。これは助けたと言えるのかそれとも誘拐扱いなのか。

 まだその辺の知識が不明瞭なのでエンデヴァーに尋ねてみると、顔を顰めて頭を抱えてしまった。そりゃそうなるよね。

 

「ぐ、ぐぐ……!!何故、何故そうなるんだ燈矢ァ……!?」

「壊理ちゃんっていうちっちゃい女の子なんですが、滅茶苦茶懐かれてましたよ。泥k……は言っちゃいけねえか」

「待て!まさか燈矢はロリコンなのか……!?」*1

 

 そうはならんやろ。

 

 年齢差10歳を軽く超えているカップルなんてお父さん許しませんよとか言ってる場合じゃないでしょうが。

 ……え?壊理ちゃんにその気はあるのかって?ハハッ……ノーコメントで。

 

 何にせよ燈矢が生きていた。それは喜ばしいことであり、同時にすべき事が増えてしまった。

 

「間飛……頼みたいことがある」

「無理っス」

「判断が早い!?せめて話ぐらいは聞いてくれ……!!」

「いやだってアレですよね?戻って来るように言って欲しいってことですよね?」

「あ、ああ……」

 

 じゃあやっぱり無理です、とにべもなく切り捨てた。

 

 それとなく間飛から尋ねた事もあるのだが、荼毘にはまだ戻る意思は無さそうだった。もし強引にでも戻そうとすればそれこそ溝はより深まってしまうだろう。

 

 しかし何かしらを達成した後に戻るつもりはあるらしいので、その時が早く訪れるのを待つしかない。

 

 

 

 

 

「一つだけ伝言預かってるんで……一応お伝えしますね?」

「な、何だ……?」

「『加齢臭悪化してんぞクソ親父』だそうです」

「とおおおおやあああああ!!?」

 

 死体蹴りはマナー違反なのでやめたげてよ。

 

 

 

*1
年齢的に疑うべきはハイジコンプレックスの方。ロリータコンプレックスの定義は12~15歳が対象になるゾ






炎司「」
冬美「お父さん……?ど、どうしたの?」
夏雄(……何してんだ兄ちゃん)

間飛「お姉さんのご飯美味いな」
焦凍「ああ。自慢の姉さんだ」
爆豪「麻婆のレシピくれ」
焦凍「頼んでおく」
緑谷(これすっごく辛いけど……轟くんちってこれが普通なの……!?かっちゃん用に辛くしただけだよね……?)

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