え?OFA?何それ……   作:南亭骨帯

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スタートライン

 

 

 

 間飛君とエンデヴァーが出ていった後、残された僕達の空気はそんなにいいものではなかった。

 ……それを言い出したら最初からピリピリしてただろ、ってかっちゃんなら言うかもしれないけど。

 

 でも今のソレはピリピリ、というよりはなんとも言えないと表現するべきか……方向性を見失っててどう舵を切ればいいのか分からなくなってるというのが正しいと思う。

 

 遠慮がちに食べてた僕はまだ白米が残っていて、自分の家だから遠慮するわけない轟君といつも通りを崩さないかっちゃんは既に食べ終えていて。このまま黙っていても気まずくなる一方だから口を開きたいのに。

 

「……うちね、本当は四人兄弟だったの」

「姉さん……?」

 

 ……それは冬美さんも同じだったらしい。轟君の静止も聞かずに話を続け始めた。

 

「下から焦凍、夏雄、私……そして燈矢。ずっと前に……死んじゃったんだ」

「それは……」

「だからお父さんも止めるに止めれなかったんだと思うの。自分の子供を自分の夢の為に死なせてしまって……せめてこれだけでも、って」

 

 冬美さんが語ったのは燈矢さんの死因。山火事に巻き込まれて遺体を見つけることすら出来なかった、と。

 それまでもずっと無理やり個性の練習を重ねていたから火傷が絶えなくて、エンデヴァーが止めても家族が止めても燈矢さんが止まらなくなってしまった……と。

 

 そうして燈矢さんが亡くなってから、エンデヴァーは今のような超スパルタな訓練を轟君に強いるようになったそうだ。

 

 

 僕達の知らないエンデヴァーは……僕達が思っているよりもずっと弱い人だったのかもしれない。常に一番を目指す凄い人は、家族の死を消化出来ない普通の人だったんだ。

 

 なのに世間は『オールマイトなら……』と何かと前例を引き合いに出してはエンデヴァーを小さく責め立てる。誹謗中傷でもなんでもない事実が追い詰めてるんだ。

 

「……夏だって本当は許したくないって言ってたんだけどね。燈矢兄が生きてるなら、燈矢兄が帰ってくるまでは我慢してくれるって」

「…………」

 

 前に『個性婚』を授業で扱ってグループディスカッションをした時、先生だけじゃなくて他の人達も色んな理由を持ち出してしない方がいいという結論を出していた。

 今なら分かる。自分の子供の個性が望ましいものじゃなかったら……こう、なるから……なってしまう、から。だから個性婚なんてしちゃいけないんだって。

 

 冬美さんは少しの間目を閉じ、ゆっくりと目を開けてこう言った。

 

「……ね、皆は何でヒーローになりたいって思ったの?」

「何で、ですか?」

「うん。それっぽく言うなら“原点(オリジン)”っていうのかな?興味本位だから言いたくないならいいんだけど……」

「いえ、大丈夫ですよ」

 

 原点……それはやっぱり、あの日見たオールマイトに憧れたからに他ならない。

 誰もが怖くて泣いていて、そんな中で一人笑顔を崩すことなく全員を救い出してみせたオールマイトの映像が脳裏に焼き付いている。

 

 ……そういえば僕達三人ともオールマイトが原点にいるんだ。

 かっちゃんはNo.1ヒーロー(オールマイト)になりたくて……いや、超えたくて努力し続けている。轟君は僕と似ている。いつか見たオールマイトの姿に憧れて、エンデヴァーを憎みながらもヒーローを目指そうとしていた。

 

 

 ……ん?

 

「……そういえば、間飛君が何でヒーローになりたいのか知らないかも……?」

「あ?……言われてみりゃそうだな」

「え、そうなの?」

「は、はい。思い出してみても……間飛君がヒーローを目指す理由を聞いたことがないです」

 

 あんなに強くてあんなに努力してるけど、間飛君の原点を僕達は知らない。何が彼をあそこまで上り詰めさせたのか。

 

 ……今度聞いてみようかな。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 インターン中でも授業を全て無視できる訳では無い。食事を終えて燈矢についての情報交換も終われば轟家に留まる理由はない。

 一度荷物を取りに戻る必要がある間飛以外の三人とエンデヴァーを乗せた車が夜道を走っていく。目的地は雄英高校だ。

 

「今後は週末に加え……コマをズラせるなら平日最低二日は働いてもらう」

「前回の間飛や切島達もそんな感じだったな」

「期末の予習もやらなきゃ……轟君今度英語教えてくれない?ちょっと不安で」

「クソ……眠てえ」

「眠いなら寝ても構わんぞ」

 

 車内の空気は穏やかで、今後の予定や勉学についての相談に疲れが溜まっていた爆豪が眠気を申告したりしていた。

 雇われているらしい運転手は『肝の据わりようがすげーな!さすがは雄英生ってか!?』と何かテンションが高い。ボリュームもデカイ。

 

 彼なりにも思うところはあるらしく、ここ数日の変わろうとしているエンデヴァーを面白おかしく語っていた。

 

 

「……ん?」

 

 

 しかしだ。この個性社会では平穏が崩れるのに前兆などない。

 

 車のライトが照らし出した数メートル先、歩行者信号でもないのに道路の真ん中に立つ人影があった。

 運転手が苛立ち混じりに『何だアイツは』と呟いた瞬間、ソレがまともな人間ではないことに気づいた。

 

 

「いい家に住んでるなエンデヴァー!!」

 

「っ、夏兄!?」

「しっかり掴まっとけジャリンコォ!!」

 

 包帯のように白い帯状の何かでグルグル巻きにされている夏雄が見えた。恐らく道路に使われている白線塗料だろう。

 

 咄嗟にハンドルを切って夏雄ごと轢いてしまわないように回避し、急停止するとほぼ同時にエンデヴァーが飛び出した。

 

「彼を放せ!」

「俺を覚えているかエンデヴァー!!」

 

 エンデヴァーを指名しておきながら話を聞く気はないのか、夏雄を盾にしながら男は弾むような声音で楽しむように問いかけた。

 

 そしてエンデヴァーは男のことを覚えている。七年前に暴行犯として取り押さえた、ヴィランネームを自称していた男。その名を──……

 

「『エンディング』!!」

「貴様ッ……!!」

 

 矢印を描いていた白線塗料が夏雄の顔に突きつけられる。男子大学生を拘束できる程度の強度があるソレが人の皮膚も内臓も貫けないとは思えない。

 

「さあ!!俺を殺してくれ!!」

 

 自分の身体を抱きしめながら、エンディングは笑う。しかし迂闊に動けば夏雄が危ない。たったそれだけで最強の【ヘルフレイム】を使うことが出来ない。

 

 どうする。エンデヴァーに決断が迫られている。

 

 

「知らねえのか?ヒーローは不殺が基本だってよォ!?」

 

「ッ……!インターン生か!!」

 

 引き伸ばされた決断の時間に割り込んだのは爆豪、次いで緑谷と轟。コスチュームを装着しながら車から飛び出してきたのだ。

 

 殺されたいのはエンデヴァーにであってインターン生のガキではない。エンディングは夏雄を抱えたまま距離を取ろうとして後ろに下がった。

 

(馬鹿が、体勢を崩したな!?今なら奴よりも速く──……ッ)

 

 エンデヴァーなら隙を突くのに絶好の瞬間だった。しかし何故かその足を止めてしまっている。

 

「早く俺を殺さねえから……死人が増えちまうんだ!!」

 

 その間にもエンディングは動いている。白線を車の下に伸ばすと車ごと宙へとぶん投げてしまう。更に縛り上げられている夏雄を見せつけるように走ってくるタクシーの前へと垂らした。

 

 

「夏兄を……放せ!!」

 

「増えねェよ!!」

 

 対する轟と爆豪。轟は見様見真似と呼ぶには様になった足裏からの炎の放出によって加速し、爆豪は明らかにこれまでとは違う【爆破】で今まで以上の速度を出してみせた。

 

 夏雄を縛っていた白線が砕かれ、突きつけられていた白い槍から解き放たれる。

 

「そうだ……!!増えない、増やさない……!!」

 

 そしてかち上げられた車達には緑谷が対処する。即座に起動した【フルカウル】で跳躍し、これまでの感覚を思い出しながらエネルギーを走らせた。

 

 伸びる黒い縄。歴代継承者の個性が一つ……【黒鞭】を完全に掌握した。

 

 彼の両手から伸びた【黒鞭】が車を掴み、数秒後の悲劇を拒絶する。死人は一人として許さないと、緑谷はエンディングを睨みつける。

 

「お前の望みは何一つ……叶わない!!」

「な───」

 

 強く揺れた程度の衝撃での着地。ただのインターン生と侮った子供が尽く手札を潰していく。

 

 しかしエンディングの怒りが叫ばれることは無い。加速した轟の氷に縛られ、動けなくなったところに炎を纏った拳を叩きつけられたからだ。

 

 僅か数秒。エンデヴァーが足を止めたヴィランを三人のインターン生が仕留めてみせた。

 

 

「白線野郎は!?」

 

「確保完了だ」

「違う……!お前じゃ……っない……!ダメだ……」

 

 夏雄を抱きしめるエンデヴァーに代わって爆豪が尋ねれば、轟の氷によって拘束されたエンディングが情けなく泣き言を漏らしていた。

 

 やや乱暴ではあったが無事に着地出来た車の中からは運転手や同乗者が降りてきており、驚きや吐き気こそ口にするけれど怪我は何一つなかったようだ。

 

「……完全、勝利だ」

「はっ……何だっけなァNo.1?この冬?一回でも?俺より速く?ヴィランを退治してみせろだったか!?」

「かっちゃん……」

 

 100点満点の対応が出来たことを喜ぶより先にエンデヴァーへとわざとらしく尋ねる爆豪。らしいと言えばらしいけど今それをするのはどうなんだろうかと緑谷は困ったように笑った。

 

 どうだ、という爆豪の問いに対し、エンデヴァーは簡潔に答えた。

 

「ああ……!!見事だった……!!俺のミスを、最速で……カバー、してくれて……!」

「……急にしおらしくなりやがって。けっ」

 

 あの一瞬。エンデヴァーは考えてしまった。

 

 ただでさえ我慢してくれているのに、自分が助けてしまえば文句すら言えなくなってしまうんじゃないか……と。

 あの瞬間、エンデヴァーはヒーローとしてではなく、轟炎司としての在り方を考えてしまったのだ。

 

「……安心、しろよ。俺は簡単には許さないから……助けられようが、言い続けてやるよ!!」

「…………」

「姉ちゃんが嬉しそうにしてても!焦凍が優しくても!!……俺だけは最後まで許してやらねえから……!!」

「……ああ、そうしてくれ」

 

 許して欲しいんじゃない、償いたいのだから。エンデヴァーは、轟炎司は目を逸らすことなく夏雄にそう言った。

 

 








轟「そういや間飛の奴、探知能力があるんだが……それで人の身体も分かっちまうとか言ってたような」
エンデ「……つまりどういうことだ」
轟「姉さんの裸とか分かっちまったかもしれねえ」
エンデ「何故それを早く言わない!?IXAを呼び戻せ!事の次第によっては焼き尽くしてやるぞ!!」
緑谷「ふ、普段は使ってないらしいので大丈夫ですって!?寮でも自分から申告したくらいですから!!」

※ちゃんと切ってたので探知してません


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